ストライクウィッチーズ~約束の空~   作:カメクリオ

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第七輪 Sの夢/まだ見ぬ先を求めて

シャーリーはいつものように格納庫でストライカーを整備していた。ストライカーのチューニング、これをしている時は彼女にとって心安らぐ貴重な瞬間であった。

 

「朝食の後から見かけないと思ったらここにいたのか」

 

笑顔でストライカーを弄りに没頭していると後ろから声がかかる。それに反応して振り向くとそこにはソーマがいて彼はシャーリーへ歩み寄ってきた。

 

「ストライカーの整備自分でやってるんだな」

 

「整備というよりかは改造だけどな。そっちこそなんでここに来たんだ?いつもここに顔出さないだろ」

 

耳を傾けながらもストライカーを弄る手を止めないシャーリーをソーマは眺める。ストライカーは軍の所有物であり、整備をするのは基本整備士たち。いくらウィッチと言えども個人で勝手に改造の手を施すなどいいのだろうか、と疑問が頭を過った。

しかしその疑問はとりあえず置いてシャーリーの質問に答える。

 

「やっておきたいことがあってさ。って言ってもまあこっちも整備なんだけど」

 

「整備?ストライカー持ってないのにか?」

 

「ああ。だからストライカーじゃなくて」

 

首を傾げるシャーリーにそう言ってソーマはウィザードライバーを起動し、コネクトの魔法で魔法陣を展開させる。

 

『コネクト、プリーズ!』

 

魔法陣からソーマが出したのはバイク『マシンウィンガー』。だが普通のバイクとは異なり、魔法使いウィザードとしてのソーマの顔面を象ったように前面部分に緑の宝石が埋め込まれていて、一見してバイクとは思えない見た目をしている。

 

「おぉ…」

 

「こっちの方」

 

「これバイクか?お前の?」

 

「そ、最近使ってなかったから動作に問題がないか点検しておこうかと思ってさ」

 

「なあ、見てみていいか?」

 

「どうぞ」

 

許可を得た途端、水を得た魚のようにシャーリーはマシンウィンガーに飛びつく勢いで観察を始める。

 

「変わった形のバイクだなぁ。エンジンは何使ってるんだ?」

 

「確かストライカーと同じ魔導エンジンだったかな。貰い物で俺が作ったわけじゃないからそのあたりのことは詳しくは知らないんだよな」

 

そうソーマが返答している間もシャーリーは回りながら、時折止まって興味を持った箇所を見たり触ったりしている。

すっかり興味津々になっている彼女のその様子をソーマは穏やかな顔で眺めていた。

 

「バイク好きなんだな」

 

「まあね、私は元々バイク乗りだったし」

 

「マジ?」

 

「本当だよ。ボンネビル・ソルトフラッツってリベリオンの大会で優勝したことだってある。嘘だと思うなら後で私の部屋に来いよ、優勝トロフィー見せてあげるから」

 

「いや疑ってるとかそんなんじゃないんだけどさ。優勝するだけの実力があるのになんでウィッチになったのかなと思って。それだけ頑張れたってことはその世界が好きだったんだろ?その道で頑張っていこうとか考えなかったのか?」

 

「うん勿論好きだよ。でも挑戦してみたくなったんだ新しい世界に」

 

観察を止め、マシンウィンガーに手を置いてシャーリーは語り始める。

 

「大会で優勝したその日に聞いたんだ。魔導エンジンを操って空を飛ぶ世界最速のウィッチたちの話を。ストライカーでなら音速の世界にも辿り着けるかもしれない。そう思って私は軍に志願したんだ」

 

自分の動機を、目標を、夢をキラキラした少年のような瞳で話すシャーリー。眩しく映るその姿にソーマはポツリと呟いた。

 

「かっこいいな」

 

「そ、そうか?嬉しいけど、そうはっきり言われるとなんか照れくさいな」

 

「恥ずかしがることないだろ。自分で決断してその夢に真っ直ぐ進んで、夢を叶えてまた次の夢に挑戦してって、最高にかっこいいじゃんか」

 

「だからやめろって。そう言うソーマだってあるだろ?夢」

 

「…夢か」

 

訊ねられて言い淀むソーマ。予期せぬ驚きと触れられて欲しくない領域に踏み込まれた不快感が混ざったような表情を作った。たった一瞬微々たる変化だった。だがその僅かな変化をシャーリーは見逃さなかった。

 

「この力で皆の希望を照らすために戦う。それが今の俺の夢かな」

 

「そっか、かっこいいじゃん。そっちもさ」

 

ハリケーンウィザードリングを嵌めた指を見せて言うソーマに気持ちのいい笑みと共にシャーリーはその言葉を送る。言われたソーマは目を横にずらし、指で頬を掻いてから気まずそうに言葉を返す。

 

「…照れるなこれ」

 

「だろ?」

 

「「……」」

 

訪れる静寂。じっとお互いに視線を向けたまま動かない二人。

そして数秒ほど経った後に

 

「「ぷっ、はっはは!」」

 

顔を見合わせた二人が同時に噴き出し、笑い声が格納庫に木霊する。

 

「今度一緒にツーリングしようよ。私とお前のバイクでさ」

 

「お、いいなそれ。おすすめの場所とかあるか?」

 

「あるよ。じゃあ今度の休暇にいくか。あ、たぶんルッキーニも一緒になると思うけどいいか?」

 

「人数多い方が楽しいしな、問題ないよ。休暇の日程合わせないといけないし詳しいことはまた今度話し合って決めるか」

 

 

それからしばらくして

 

「海上訓練?」

 

「はい。明日10:00にミーティングルームに集合せよとのことです」

 

シャーリーがストライカーを弄り、ソーマがマシンウィンガーの車体を蛇口に繋いだホースで洗い流していると、その二人の元に宮藤とリーネがやって来た。彼女たちが持ってきたミーナからの伝令にソーマは困ったように後頭部を掻く。

 

「俺水着持ってないんだよなぁ。用意した方がいいよな?」

 

「そうだなぁ。訓練そのものは海上に落ちた時の非常事態に備えての訓練をするはずだからソーマの場合なくてもいいとは思うけど、自由時間もあるからな。あって越したことはないんじゃないか?」

 

「それミーナ中佐も同じこと言ってました。訓練の後は皆で海水浴できるって」

 

シャーリーに重ねて宮藤が先ほど言われた内容を思い出して言う。

実際のところは宮藤の言うように軽いニュアンスではなかったのだが、似たようなものだろう。

 

「じゃあ買ってくるか。予報じゃ今日はネウロイも来ないみたいだし。二人は自分の水着あるのか?」

 

「私は大丈夫です。坂本少佐が以前使っていたものを貸してくれるみたいなので」

 

「リーネは?」

 

「わ、私は…」

 

「リーネちゃん?」

 

頬を赤くするリーネ。その反応に宮藤もソーマも首を傾げる。一方でシャーリーはピンと来たようでニヤニヤと意地らしい微笑を浮かべている。

 

「私も同行させてもらっていいですか?」

 

「いいよ。なら時間もないし今から行こうぜ。こいつで送ってくから」

 

「そのバイク、ソーマさんのだったんですか?」

 

「いいなぁーリーネ、私もそれ乗ってみたかったんだけどなぁ」

 

自分の知るバイクとは程遠い見えない奇抜な見た目をしたそれに驚く宮藤の傍らでシャーリーは心底から残念そうに呟く。

 

「そう言われてもな。見ての通りこのバイク二人までなんだ。悪い、また今度な」

 

「ん~わかってるけど…それでもなぁ」

 

シャーリーは諦め切れない様子で悩みあぐねていた。そうしてしばらくシャーリーは声を上げた。

 

「そうだ!あれを使うか!」

 

「あれ?」

 

何か妙案を思いついた様子のシャーリーを前に三人は首を傾げた。

 

 

 

 

 

「さっき言ってたあれってこれのことか」

 

買い出しのために街に出るとミーナに申請して無事了承を得たソーマが戻ってくるとシャーリーはマシンウィンガーにサイドカーを取り付けていた。これならば確かにシャーリーも加えて三人乗りが可能だ。

 

「よし、これで三人乗れるぞ」

 

「じゃあ行くか。二人とも乗ってくれ」

 

まず真っ先にソーマがバイクに跨る。そしてその後部座席にシャーリーは乗った。

そのシャーリーに顔を向けてソーマは疑問を口にした。

 

「え?お前がこっちなの?」

 

「私が後ろじゃ嫌か?」

 

「そういうわけじゃないけど。てっきりリーネが後ろに乗るかと」

 

「別に隠さなくなって正直に言っていいんだぞ。リーネが後ろに座ってる方がいいって」

 

「そうじゃないって」

 

「冗談だよ、冗談。ふっふーん、いいから行こうぜ」

 

ソーマの困り顔を見てからかったシャーリーはにひひと笑う。完全に遊ばれてるなと、その表情から悟ったソーマは目を細めつつリーネに視線を切り替える。

 

「リーネ、悪いけどそっちに乗ってくれるか」

 

「わかりました」

 

バイクにさほど興味がないリーネは快く承諾しサイドカーに乗り込む。リーネとシャーリーがヘルメットを被ったのを確認してソーマはハンドルグリップを握る手を強める。

 

「行っていいか?」

 

「はい」

 

「いつでもいいよ」

 

「…っ!」

 

ソーマの腰に腕が回され、柔らかい感触が生じた。その瞬間彼の体は電撃が走ったようにピクリと跳ね上がる。

グラマラスシャーリーと謳われる彼女の実った特大な果実が密着したせいだ。

 

「ソーマさん?」

 

「どうかしたのかー?」

 

「あ、ああ、いやなんでもない」

 

(ヤバい、これは…耐えられるか俺)

 

出発しない彼を不審がってリーネとシャーリーが声をかける。背中に感じる慣れない感覚、理性を奪おうとする圧倒的な破壊力にどうにか平静を保ちつつ彼女たちに返事をし、ソーマはバイクを走らせる。

 

 

 

 

「ここまで来ておいて今更言うのもなんだけど三人も離れてよかったのかな」

 

「いいんじゃないか。中佐が許可してくれたんなら。それにいつネウロイが来るのかわからなくなってるならこういう時に気を休めておかないとやってけないだろ」

 

「まぁそれは言えてるな」

 

「あ、ここみたいですね」

 

マシンウィンガーを街の入り口に置いて会話をしていると目的の水着を売っている服屋に到着する。

 

「男のはあっちか。俺向こう行ってるよ」

 

「おっけー。こっちに来るのは気まずいだろうから終わったらそっちいくよ」

 

中に入って早々、二人と別れてソーマは男性売り場の水着コーナーに移動する。

 

「何色にするかな。緑だとなんか代わり映えしないしピンクもな、ちょっと抵抗あるな。いやこれどっちかってっとマゼンタか?まぁそれはどっちでもいいか…どうするかな」

 

赤・黄色・紫とカラーのバリエーションが大量にありどれにするか迷う。特段こだわりはないがどうせなら少し考えてから決めたい。

 

「これでいいか」

 

色々見比べて数ある中から選んだのは黒を基調とし橙のラインが入った水着。派手でもなければ地味でもないと個人的に思う丁度いいデザインだ。

会計を済ませてソーマは店の商品を見ながらシャーリーとリーネを待つ。

 

「まだあっちは時間かかりそうだな」

 

十分弱過ぎたが二人が来る気配はない。女性の買い物は相応にして長いものと聞いたことがある。ソーマはもう少しだけ待ってみることにした。

店内をちらちらと見て回っていると窓越しに向かいの店の商品が見え、ソーマは足を止めた。

 

「そうだ、今の内に買っておくか」

 

 

一旦向かいの店に赴いて帰って来たソーマは再び男性用売り場に舞い戻るが未だシャーリーとリーネの姿はなかった。

さすがにかかりすぎる。もしかして良からぬことに巻き込まれたのだろうかと心配になってソーマは女性用の売り場へと向かう。

その試着室の前で待ち構えているシャーリーがいた。ひとまず危惧していたような厄介な事にはなっていなさそうでソーマは安心した。

 

「シャーリー、まだかかりそうか?」

 

「ごめんソーマ、もうちょっとだけ待っててくれ。後もう少しのはずだから」

 

近づいたソーマに気付いたシャーリーは振り向いて申し訳なさそうに両手を合わせて謝罪を述べる。

 

「待つのは全然いいけど何に時間かかってるんだ?」

 

「リーネに合う水着がなかなかなくてさ。今お店の人に頼んで一緒に見繕ってるんだ」

 

「それなら時間かかるのもわかるけど、にしたってかかりすぎじゃないか?チラッと見ただけだけどリーネが着たら可愛く見えそうなの結構あると思うけどな」

 

店内にある女性用の水着を見渡してソーマは言う。それに対してシャーリーは言い辛そうに苦い顔をして言葉を絞り出す。

 

「可愛いとかの問題じゃないんだよな」

 

「どういう問題よ?」

 

「シャーリーさん、やっぱりこれもダメみたいです。胸のあたりがきつくて、それにこんなに肌が見える水着とてもじゃないけど私には…」

 

ソーマが訊ねるとそれに合わせるように試着室のカーテンが開いた。

音と声に反応してソーマが視線を向ければ、そこにある光景にその眉が動いた。試着室から姿を見せたのはリーネ。白い水着を着た彼女は、腹部が外気に晒し、いつもは大人しく鳴りを潜めている胸元は苦しそうにぎっちり寄せられていた。

 

「ええっ!?ソーマさん!な、なんでいるんですか!?」

 

「なかなか来ないから気になって来たんだよ。なるほどなぁ、こういうことか。これは確かに可愛いとかの話じゃないな」

 

「私ほどじゃないけどリーネも結構あるからピッタリ合うサイズがなくてさ」

 

狼狽えるリーネ。それを見て納得した様子のソーマにシャーリーが説明する。

大人しい性格とは真逆にリーネはシャーリーに次いでバストが大きく、水着が合わないのだ。

恥じらうリーネに気を遣ってなるべく彼女を直視しないようにしてソーマはシャーリーと話す。

 

「だったらシャーリーと同じような水着でいいんじゃないか?シャーリーに合うサイズがあるならリーネだって着れるはずだろ」

 

「私もそう言ったんだけどさ、私の水着今リーネが着てるみたいに露出の多いタイプのやつで、リーネがあまりそういうのは着たくないって言うんだよ。で、今店の人にワンピースタイプの水着で合うサイズがあるか見てもらってるってわけ。それなら肌覆う面積も多いしな」

 

確かにリーネの性格的やイメージを考えてみるとワンピースタイプの水着はピッタリだろう。しかし…とソーマは今のリーネの姿を見つめる。

 

「それでもいいと思うけどな。合ってるし可愛いし」

 

「あ、あまり見ないでください!」

 

異性に見つめられて相当恥ずかしかったのか、可愛いと言われて照れたのか…どちらかあるいはその両方かは不明だがピシャリと勢いよくカーテンを閉める。

 

「す、すみません。失礼なこと言って」

 

「俺の方こそごめん。今のは俺が悪かった」

 

カーテン一枚を隔てた先にいる相手にお互いに謝る二人。やや気まずい空気が漂う中ソーマは一息置いてシャーリーに話しかける。

 

「まだ時間かかりそうだし先中佐たちに頼まれた日用品買っておくよ。さっきバイク止めたとこで待ち合わせよう」

 

「色々負担かけさせて悪いな」

 

「いいって。じゃ、また後でな」

 

「おう」

 

 

 

 

夕日が見え始めた黄昏時、バイクに寄りかかってソーマが待っているとシャーリーとリーネが街の出口から戻ってきた。

 

「おっ待たせ~!」

 

「無事いいものが買えたみたいだな。よかった」

 

「すみません。私のせいでお二人に迷惑をかけてしまって」

 

「俺は気にしてないよ。こういう皆で買い物なんて滅多になかったから楽しかったし」

 

「そうそう、私もあんまりああいうとこ行かないから新鮮だったよ」

 

頭を下げて謝るリーネ。彼女の律儀さにソーマもシャーリーもふふっと綻んだ。

 

「さて、目的の水着も頼まれた物も買ったし日が暮れない内に帰るか」

 

買った物をバイクの収納口に閉まって入りきらなかった分はサイドカーに積み込む。リーネには少しばかり不自由をさせるが、自分のせいで時間を食ってしまったからと嫌な顔一つせず受け入れてくれた。

リーネがサイドカーに乗り込んだのを見届けてソーマはバイクに乗り、シャーリーもその後ろに座る。シャーリーはソーマの腰に手を回して身体を密着させる。

再び襲いかかる心を乱す魅惑的な感触にソーマはピクっと身体を跳ね上げる。

 

(おかしい、なんかさっきより押し付けられている感じがする)

 

バイクを発進させてしばらく。

どうにか意識を取られぬようバイクを走らせていたが背後の温もりと柔らかさがやはり気になる。むしろ時間が経つにつれて、基地が近くなるにつれてその感触が強くなっているように思えて、気になってしょうがない。

 

「もしかしてまだ気になる?」

 

不意に耳元で囁くシャーリー。その声に含まれる小悪魔にも似たいたずらの色にソーマはまさか、とある考えが過ぎり小声で反発する。

 

「おまっ、気付いててわざとやってたのか!?さっきからずっと!」

 

「さっきからっていうか、基地出る時からずっとだな。いやぁ、あんなわかりやすい反応するから面白くてさ~つい」

 

「つい、ってなんだよ!ついって!運転に集中できないから離れてくれよ!」

 

「離れたら落ちるだろー。我慢しろって。それに、嫌いじゃないだろ?こういうの」

 

「…そりゃあ、悪くはな―じゃねーよ!何引き出そうとしてんだよ!」

 

「はっはっは!ほんっと面白いな!」

 

いいようにソーマをからかって気持ちよく笑うシャーリー。サイドカーのリーネには会話の内容は何一つとして聞こえていなかったが楽しそうに笑顔の二人を見てつられて笑った。

 

 

 

 

基地に戻った頃にはもう空は朱色に染まっていた。格納庫の前にバイクを止めて荷物を運んだ後、三人は部屋の椅子で体を休めていた。

 

「私は部屋に戻りますね。今日は本当にありがとうございました」

 

「おう、また後でな」

 

「私も部屋で休んでよっかな」

 

「シャーリー、ちょっと待った」

 

「ん?」

 

リーネに続いて自室に向かおうとしたところをソーマに呼び止められるシャーリー。一体何だろうかと思っていると彼は今日買った荷物の中から小さな袋を出してシャーリーに手渡した。

 

「はい、これ」

 

「なんだこれ?」

 

「プレゼント」

 

「プレゼント?なんで?」

 

手に持った袋をシャーリーは疑問の眼差しを注ぎ、目をパチクリさせる。

 

「こないだ大尉に昇進しただろ。そのお祝い」

 

「…あ、あ~!あったな!そういや」

 

暫しの間を置いてシャーリーは思い出したように声を上げる。

 

「あったな、ってお前。忘れてたのか?自分のことだろ」

 

「いやぁ、階級とかそういうのあんまりこだわりなくてさ。すっかり忘れてたよ」

 

「そういう発言軍人としてどうかと思うぞ。その方がシャーリーらしいと言えばらしいけど」

 

バルクホルン辺りにでも聞かれていたら間違いなく呆れの一言が投下されていたであろうことをてんで恥じることなく言ってのけるシャーリーにソーマは苦笑する。

 

「中身空けて見ていいか?」

 

「もちろん」

 

何が入っているのかとわくわくしながらシャーリーは袋に入っていた箱を開けてみる。赤い宝石のネックレスがあった。

 

「うわっ、すっげえ。いいのか?こんな高そうなの貰っちゃって」

 

「俺が勝手にしたくてやったことだしお前がそういうの気にする必要ないって。むしろ好みとかよく調べずに買っちゃったから気に入ってくれたかどうか」

 

「そりゃあもちろん。気持ちだけでも嬉しいのにこんなプレゼント貰ったらめちゃくちゃ嬉しいに決まってんだろ。ほんとありがとな」

 

「それならよかった。買った方としても嬉しいよ。じゃあまた後でな」

 

「ああ、お疲れ様。ゆっくり休んでな」

 

そう言ってソーマはその場を去っていく。食堂に一人となったシャーリーは貰った赤いネックレスを首にかけて、窓の近くまで近づく。

軍服というのを差し引いてもこの宝石の輝きが自分に見合っているのだろうかと鏡面に映った自分を見て思う。

 

「たまにはこういうのも悪くない、かもな」

 

かわいい服を着たいと思ったことはあったがお洒落にはさほど関心はなかった。

これを機にそういう物を買ってみようか。ドレスでも着れば少しはマシになるだろうか…

鏡面に映る自分の姿を見ながらそんなことを考えるシャーリーはどこか嬉しそうに笑っていた。

 

 

 

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