ズボラな女性を飼い主に   作:彰吏

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普段料理しないけど、休日に息抜きで料理すると楽しいんですよね。ですけど、平日は面倒くさくてろくに料理しないんですけど。やっぱり、あれですかね。心に余裕があるときじゃないと楽しめない体になったのかな。( ´・ω・` )カナシイ
そんな私が息抜きで書いていた話をまとめたのがこれだ。




3

 

 

 家事代行サービス。俺の行っているバイトを説明する際に一番しっくりくるのがこの仕事だろうと思っていたが、どちらから言うと家政夫のほうが近いらしい。俺も詳しくは知らないが陽乃さんがそのように言っていたのでそうなのだろう。俺としてはわざわざバイトの内容を教えることなどないのでどちらでもいいことなのだが。

 ともあれ俺は少し前から陽乃さんに家政夫として雇われているのである。今日も今日とて働くために陽乃さんの住んでいるマンションを目指しているところだ。基本的には掃除や洗濯などを行い、事前に頼まれれば買い物も行っている。週2回で午前中だけの時もあれば午後の時もあったりと時間はまちまちだ。陽乃さんの予定で時間が変わるのでなく、俺の予定で時間が変わってしまっているのは申し訳ないけど、そこらへんの融通が利くのがいい職場だと思います。今日は午後から働くことになっており、合鍵も事前に預かっているのでオートロックも難なく通過する。

 合鍵は午後からの時には事前に陽乃さんから貸し与えられている。仕事が終わったら陽乃さん本人に直接返すかポストに入れておくかしているのだが、意外なことに毎回簡単に合鍵を貸してくれるのだ。陽乃さんからしたら雇ってる人になにを疑うのかって感じだろうけど、それにしても簡単に貸しすぎだと思うのだ。貸してもらえないと俺が困るのだが、毎回貸してもらおうと思い言うと勝手に持って行っていいよみたいな感じで渡されているのだ。もしかしたらめんどくさいだけかもしれないけど、それならそれで安心できるのかな?

 そんなことをつらつら考えながら掃除をしたけど特筆することなく終了。それにしても週2回きて掃除しているのに、毎回来るたびに見事に部屋が汚くなっているのは何でなんすかね。初めて来た時に比べれば汚くはないけど、それでも毎回洗濯物が溜まっていたり、空き缶やコンビニ弁当の残骸がそこら中に転がっていたり、仕事に使うと思われる資料が散乱していたりと本当にこれでいいのかと思ってしまう感じの部屋になっている。半年であの有様になったと思うと、数日で掃除が必要なレベルで物が散乱してしまうのも納得いくような気もしないでもない。あまりの汚さにもしかしたらわざとやっているという可能性も考えたが、良く考えたらそんなことする必要が全くないな。こんなことを考えても詮無きことだと納得して、洗濯をすることにした。

 洗濯をする時は、掃除をした際に拾った服を洗濯機に放り込んで回すところから始まる。床に置きっぱなしの服というのは大体が下着なのだが、もうあれだよね、毎回毎回無造作に床に置いてあるのを洗濯機に放り込んでいるうちに何も思わなくなったよね。まあ、元から下着ぐらいじゃ何も思わないけど。本当だよ。その後、洗濯機が止まれば洗濯物を回収して干す作業へと移行する。干す際にも悶々としていた時期があったけど、それももう昔のことである。たぶん普通なら下着とかは、家政夫や家事代行サービスの人は洗わないことも多いと思うが、陽乃さんの場合は面白がってやっているとか俺をからかうためとかそんなところだろう思っている。または、自分で洗うのがめんどくさいか。

 この後は買い物を頼まれていれば買い物に行くとこだが、今日は特に頼まれていない。このように時間が余った場合は、普段は掃除しないようなところをやることにしている。例えば窓拭きやエアコンの掃除などである。今日は窓まわりを重点的にやることにした。

 このようにして俺は家政夫の仕事を順調にこなしているのだが、部屋を掃除している際に気になることがあったのだ。部屋に散乱しているゴミにやたらとコンビニ弁当やカップ麺の空き容器があるのだ。これだけで十分な程にアウトなのだが、今日はこれらに加えて某10秒メシを見付けたのだ。それも下駄箱の上に置きっぱなしという。これらの事態を鑑みてある事を決めた。

 

「ご飯作ってみるか」

 

 

────────────────────

 

 

「ん?あれ?このご飯はどうしたの?」

「夕ご飯を作ってみました」

「そうなんだ。へえー、ありがとう。えっ、ちょっと待ってね。今日って一緒に夕ご飯を食べに行くんじゃなかったの?」

「えっ?」

 

 思い立ったが吉日と言うし早速今日の夕ご飯から作ることにした。

 まず初めに陽乃さんに夕ご飯を一緒に食べましょうと連絡した。せっかく作るのだから美味しく食べてほしいし、すでにどこかでご飯を食べたあとだとお互いに変な空気になりそうだと思ったからである。

 その結果、陽乃さんは19時を少し過ぎたぐらいに帰ってきてくれた。そして俺の予想通り驚いているようだ。まさか俺が普通の料理を作れるとは思っていなかっただろうからな。ちなみに今日の献立は、煮込みハンバーグをメインに明太子のポテトサラダとクラムチャウダー、そしてバケットという洋風なものである。

 陽乃さんが驚いたところまでは予想通りだったのだが、なんというか俺の思っていることとは別のことで驚いてる感じなんだよな。陽乃さんの口振りから察するにどうやら俺と2人で外食するつもりだったらしい。なんでそんなことになってるんですかね?

 

「比企谷くんのメールにそう書いてあったから。『夕ご飯を一緒に食べましょう』って…」

 

 確かにそう送った覚えがあるが、それで何で外食になるんだ。普通に読めば……あ、これってどちらとも取れるな。むしろ俺が料理するよりは外食するほうが可能性として高いな。ご飯作って待ってます的なこと書かなかった俺が悪いな、100悪い。

 

「なんかごめんなさい。これだと勘違いしますよね」

「本当にね。まあ、それはいいよ。私が勝手に勘違いしただけだしね。それよりも比企谷くんがせっかく作ってくれた美味しそうなご飯を食べようよ」

「はい」

 

 なんとか許してくれるようでよかった。着替えてきた(スーツ→ジャージ)陽乃さんと対面に座って一緒に夕ご飯食べた。陽乃さんのジャージ姿も見慣れたものだ。なんか、あれはあれで似合ってるような気がしてきた。てか、かわいい。言ったらなにされるか分からないから言わないけど。

 

「これ、美味しいね。おもわずおかわりしたいぐらい」

「ありがとうございます。腕によりをかけて作った甲斐があります。それに明日の朝ご飯用に残しておいたポテトサラダとクラムチャウダーならおかわりありますから、よかったらしてください」

 

 この会話をしている間もおいしそうに食べている陽乃さん。こんなにおいしそうに食べてくれるなら作り甲斐があるってものだ。それはそれとして、時たま見せられる色っぽい所作をできることならやめて頂きたい。得に垂れてきた髪を耳にかける仕草とかヤバいの一言につきる。これを見ているとなんというかいたたまれない。それなら見るなよと言われそうだが、如何せん対面で座っているので目がいってしまうのだ。いくら格好がメガネにジャージそしてノーメイクでも、それをしているのが陽乃さんだと結局のところ美人なわけで。それで、美人が対面で食事していたら見るでしょ。見るよな。そういう事で納得してくれ。

 傍から見たら部屋着の姉が弟のためにご飯を作ってくれて一緒に食べてるように見えるかもしれない。残念ながら実際は作ったのは俺で、この部屋も陽乃さんの部屋なわけで。それよりも陽乃さんと俺が姉弟という方が現実味がないな。こんな美人すぎる姉がいたらどうなってしまうのか、なんて間の抜けたをことを考えながら陽乃さん見ていると今まで黙って食べていたのにそれをやめてこっちを見てきた。

 

「比企谷くんさ、なんで突然料理しようと思ったの?いや、うれしいし、それに美味しいから文句はないけど。理由だけでも教えてくれないかなって」

 

 当然の疑問だろう。俺でも突然手料理をご馳走されたら、なにかあるのかと疑うだろう。ましてやそれをやっているのが俺ならなおさらだろう。しかし、これにもちゃんと理由がある。

 

「そうですね、これはプレゼンというかなんというか。とりあえず、有用性を伝えられたらいいと思いまして」

「プレゼン?有用性?どういうこと?」

 

 首を傾げながら?マークを浮かべている陽乃さん。それでも、すぐにまた真剣な表情になり俺の話を聞く体制になった。

 あ、だけどなくなったと思ってさっき俺が持ってきたビールに手を伸ばそうとしてる。すぐに手を引っ込めたけど。別にいいっすよ、飲んでも。

 

「これから俺が来るときだけでもいいので、料理を作らせてもらえないかと思いまして。具体的には朝、昼、晩の3食なんですが」

「えっと、それは私的には有難い話なんだけど、そこまでしてもらうのは流石に悪いよ」

 

 申し訳なさそうな顔をしながら、やんわり断ってくる。ただ、ここで俺が引き下がると陽乃さんの食生活が改善されない。否、社会人としての生活力が改善されない。

 

「別に大丈夫ですよ。朝ごはんだって毎朝自分で作っていますし、大学行く時にはお弁当も作っています。それが、一人分がから二人分に増えるぐらいどうってことないですよ」

「いやー、だけどね」

「それに自分で言うのもあれなんですけど、結構上手く作れると思ってるんです」

「本当に自分で言うことじゃないね」

 

 呆れたようなそれでいて困ったような表情を浮かべながら手に持っていたビールを煽る陽乃さん。ビールを飲んでひとつ溜息をはいて、俺のほうを一瞬見てそしてさっきまで食べていたご飯を見て、そしてまた俺のほうを見た。

 

「だけど、それをすることによって比企谷くんにはなにもメリットがないよね」

 

 俺は笑いそうになった。表情は変わってない自信があるのだが、それでも心の中では笑っている。なぜなら俺の思った通りの展開になっているからだ。

 そうなのだ。メリット、利点。陽乃さんからしたら、俺にはそれがないと思うかもしれない。だけど、これは裏を返せばそれがあるならやってもいいと言っているようなものだ。言質はとった。

 

「メリットですか。そうですね、今まで一人暮らしで培った料理の腕前を他の人のために使いたくなった。そして俺の作った料理を食べてもらって、さっきまでの陽乃さんみたいな顔を見ることができる。これは初めて他の人に料理を食べてもらってわかったことですけど、自分の作った料理を他の人と一緒に食べて、感想を言ってもらっておいしそうに食べてくれるだけでこんなに嬉しいんですね」

 

 ポカーン、である。俺が、ではなく陽乃さんがである。これは新発見なのだが、美人だとどんな表情でも美人らしい。この場合は美人というか、ただただ可愛いということなのだが。これが普通ならきっと間の抜けたような、それこそ見たら笑われるようなアホ面なのだろう。だが、陽乃さんレベルになるとなんというか、いつもは美しいや見た目麗しいなどのイメージなのだが、そんな人が突然見せる可愛い表情には計り知れない破壊力があるのだ。具体的に言うとあまりの可愛さに胸が辛くなる。

 

「比企谷くん、それ、本気で言ってるの?」

「ええ、まあ」

「いや、だけどそれって他の人に料理を作る理由にはなるけど、私に料理を作る理由にはならなくないかな」

「はぁ」

 

 そうだろうか。俺にはこれだけでも理由として充分だと思うんだけど。それに俺だって誰彼構わず料理を作るわけではないんだけどな。だけどあともうひと押しって感じだな。さて、どうしたものか……。

 

「陽乃さん、今日の朝ごはん何食べたんですか?ついでに昼ごはんも宜しければ教えて貰ってもいいですか」

「えーと……」

 

 露骨にどもって目線を明らかに逸らす陽乃さんを俺は溜息を吐きながら見た。図星かよ。

 

「比企谷くんには関係ないんじゃないかな」

 

 そう言うと誤魔化すようにビールを飲んでいますけど、見た感じたぶんカラだったんだろうな、全く飲めていなそうだし少し恥ずかしそうにしてる。

 それに俺には関係が大有りなんだけど。

 

「陽乃さん。陽乃さんは料理が上手いと思うので、料理の重要性も十分理解していると思っていましたけど」

「分かっているけど、時間がないんだもん」

「なので、俺が作るって言ってるですよ」

「でも…」

「それに陽乃さん(の体調)が心配なんですよ」

「えっ」

 

 

 

 

 

 






おまけ【無自覚で幸せオーラがでる陽乃】


「陽乃、ご飯食べに行こ」
「ごめんね、今日はお弁当なんだ」
「そうなんだ〜」
「誘ってくれてありがとう。明日は一緒に食べようね」
「うん。それにしても、最近になってお弁当を持ってくるようになったけど、美味しそうなお弁当だね」
「そうでしょう〜」
「今度からは私もお弁当にしようかな」
「そうしなよ。お店やコンビニのよりも美味しいよ」
「陽乃はお弁当食べてる時だけは本当に幸せそうな顔しながら、大切そうに食べてるもんね」
「うそ〜」
「本当だよ。まるで誰かに愛情込めて作ってもらった物を食べてるみたい。それに愛妻弁当を食べてる時の部長みたい」
 
 
 


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