これで最後になります。改めて読んでみると、ライブ感で書いてるせいかよく分かりませんね。特に、バイトしてるわりにプレゼントする物がリーズナブルすぎませんかね?
陽乃視点
「最近はどうなの?」
「何が」
「もー、惚けちゃって。居るんでしょ、彼。お弁当なんて作って貰っちゃって」
金曜日の夜。1週間のうちの平日最後の日であり、休日への入り口でもある。そのため多くの大人は、ハメを外し夜遅くまで飲むことになる。私の場合は、そうならない様に1次会で帰ることが多いのだが、今日はそうもいかずに女子会(2次会)に行くことになってしまった。
それでも始めのうちはたまにはいいかな、とか思っていたが、やれ彼氏に振られたやら、どこぞの部署の誰それがかっこいいやら、今度合コンやるから来いだの、あまり聞いてて面白くない、そして身にもならないものばかりでここに来てしまったことを後悔してきた。
ちょっと早めに抜け出そうかな、とか考えてたらどうやら話題の中心がいつの間にか私に移ろうとしていたらしい。話を振ってきたのはよくお昼ご飯を一緒に食べる同期で、どうやら彼女が私に彼氏らしき人がいるみたいな話を他の人にしたらしい。全員の視線が私に向いている。特に、先程まで彼氏と別れたと話していた人の目がやばかった。
さて、本当のことを言うかどうか。私雪ノ下陽乃は、歳下の大学生を家政夫として雇っています、と。うん、これはダメだわ。いや、お酒の席だからもしかしたら笑い話で済むかもしれないけど、後から大変なことになりそう。それよりも、私が精神的に辛い。久しぶりに会った歳下の男性を思わず家政夫として雇用してあろう事か好きになりました、なんて言えるわけがない。
そうなると嘘というか、他の言い方をしなければならないだろう。うーん、以前聞かれた時と同じように自分で作ってますとか家政婦さんを雇ってとかそのへんが無難かな。
でも、せっかくだからアドバイスを欲しい気も……。この前やっと比企谷くんが私のことを意識してくれてる感じのことを言ったようにも思えたけど、その後特に変化らしい変化がないし……。いや、自分の事だし他の人の意見を聞くのはまたにしよう。流石にこの場で、この人数の、それも同じ職場の同性に話すことではないだろう。
「前も言ったけど、あれは自分で作ってるの。あなたの言うところの、彼氏なんて呼べる人は居ない」
「えー」
「事実そうなのだから、しょうがないでしょ」
私がそう言うと、ほとんどの人がなんだつまらないみたいな感じで他の話に移り、私に話をふってきた彼女は、未だに私を疑うように見ていたが、私が相手するつもりがないと見るや、他の人と話し出した。
「私先に帰るね」
その後、他の子の話に適当に相槌を打ちながらお酒を飲み続け、いい感じに酔ったし時間的にもそろそろいいだろうと思った私は、一足先に席を立つことにした。残念がる人や素直に別れの挨拶をしてくれる人と、まだ帰さないと縋りつこうとする人など、みんなそれぞれの形で見送られ私はその場を後にした。
「うーん、星は見えないけど月は綺麗ね」
飲んでいた場所から家まで電車で1駅しか離れていなかったので、何となく歩いて帰ることにした。線路沿いで人通りもそこまでないので、歩きながら伸びをして独り言を呟いた。呟きながら片手のスマホを操作する。
比企谷くんに電話するためだ。いつもなら絶対しないことなのだが、ほろ酔いなのでしょうがないだろう。そう、ほろ酔いなのだ。そのせいで、何となく比企谷くんとの関係性に不安を感じてしまい、今比企谷くんに電話をしてしまっているんだろう。
「まあ、出ないんだけどね…」
今日は元から飲み会の予定だったので、比企谷くんに家政夫のバイトを頼んでいない。そして現在の時刻は夜中12時を少し回っている。そんな時間に、彼が電話に出れないのは道理である。
だけど、もしかしたら親しい人と同じ時間を過ごしているのかもしれない。そんな訳ないとそんなことは十分に理解しているつもりだし、理性はもう何もしないで真っ直ぐ家に帰って寝ろと言っている。それでも、なぜか無性に比企谷くんのことが気になるのだ。
「うーん、やっぱり飲みすぎたのかな」
私は独り言ちる。酒を飲み過ぎたのもあるが、比企谷くんに気持ちを傾け過ぎているのかもしれない。
こんなの自分らしくないのは分かっているが、どうしても比企谷くんの声を聞きたくて、会いたくて、何よりも自分を安心させたくて、私は家に向かっていた足を比企谷くんの家に向かわせてしまった。まるで熱に浮かされたウブな女の子が彼氏を求めているかのように。
「何やってるんだろ、私」
比企谷くんの部屋の前まで来て、私は動けなくなってしまった。それも10分あまりの事で、意を決してドアノブに手をかけたが当然空いておらず、思い出したかのようにチャイムを鳴らしたが部屋の中から反応がなく、今度こそ私はその場で動けなくなってしまった。そこで、少しずつ酔いが覚めていき自身の行動を振り返って恥ずかしくなってきた。もう帰ろうか、なんて思いドアの前から離れようとした。
「陽乃さん……、何、してるんですか?」
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八幡視点
この前のお買い物から数日経って、俺は家政夫のバイトに支障が出ない範囲で他のバイトに勤しむようになった。陽乃さんから給料が少ないとかではなく、それ以外のお金が入り用になったのだ。そのお金で何をするのかというと、陽乃さんに贈り物をしたいのだ。陽乃さんから給料としてもらっているお金で、陽乃さんに贈り物を買うのは自分で許せないのとなんか違う気がした。そういうことで、バイトを増やすことにしたのだ。
陽乃さんへの贈り物をしたい、いや、する理由は今のこの関係をハッキリするために必要だと思ったからだ。今のこの関係、雇用主と労働者、部屋の主人と家政夫。これを変えてしまいたいのだ。いや、後者はそのままでもいいかなとか考えているが、前者の関係だけはこれを機にぶち壊したいのだ。
ぶっちゃけ、俺は陽乃さんのことが好きになってしまったのだと思う。この前のお買い物の時にも、自然に一緒に居たいと思ってしまったし、これまで家政夫として働いてきて、全く苦になるどころか、当たり前の日常のひとつになってしまった。家族以外で同じ部屋の中で過ごし、一緒に家事をやったり、食事を共にしたり、ただいまやおかえりの挨拶を交わしたりと色々行ってきたが、それらが俺の中で違和感なくあるのだ。逆にこのまま陽乃さんと離れてしまったら、俺の中で大きな穴が空いてしまうのではないか、そんなことを考えるほどに陽乃さんの存在が大きくなってしまった。
それにどうやら陽乃さんのオフの姿を知っているのは、家族以外だと俺だけみたいだ。この前それとなく聞いたからこれは確か。もしかしたら、陽乃さんの家族も知らないかもしれない。その事実だけで、なんというか信用されてるような、これは自惚れてるような気がするが特別な存在になれるのではないか。
これらが好きという感情なのか、それに直結するものかはイマイチよく分からないが、一緒にいても苦痛でない、そして俺のことを信用してくれてる。それが一緒に生きていきたい理由になるのではないか、そんなふうに考えてしまったらもうあとは行動に移すだけだ。
そんなこんな数ヶ月バイトに明け暮れることで、やっとこさ目標金額まで貯めることができ、そのお金で目星をつけていたものも無事に手に入れることができた。あとはどのタイミングで渡すかだ。いつ渡すにしても、ちゃんと腰を据えてゆっくり話ができる時じゃないとダメだよな。
そんなことを考えながらバイトから帰ってくると、俺の部屋の前に人影があった。それは先程まで考えていたことの中心人物であり、最近の俺の思考の半分以上がこの人なのではないかというほど、それほど俺の中で大きな存在になってしまった人。その人は俺がよく見る姿ではなく1日働いていたから少し寄れている部分があるスーツを着ていた。
「陽乃さん……、何、してるんですか?」
俺の声を聞いてこちらを向いた陽乃さんは驚いたような顔をすると、一瞬にして泣き出しそうな顔をした。その事に戸惑いそうになったが、すぐに立ち直り俺は陽乃さんとの距離をゼロにした。
「驚かして、ごめんなさい」
「謝らないでよ」
「でも…」
「泣いてないから」
震えた声でそう言う陽乃さんは、目を俺に押し当てないようにするためか、ずっと下を向いている。ただ、抱き締めてる俺を振りほどこうとはしてこないから、嫌がっているわけでないのだろう。そして、俺が悪感情があって泣いている訳ではない。そう冷静に判断した俺は、陽乃さんの背中に回していた手で背中を優しく叩いた。
「泣いていいんですよ」
「なんで…優しくするの?」
「陽乃さんが大切だからですよ」
自然に出たその言葉を皮切りに陽乃さんは静かに泣き、俺は背中をゆっくり叩いたり頭を撫でながら色んなことを考えた。
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「あのー、そろそろそこから出ませんか?」
「うー」
「そんな唸り声あげてないで、ね?」
「あー」
「はぁ、温かいもの入れてくるので、できるまでには出てきてくださいね」
無事泣き止んだ陽乃さんがやんわり俺の腕の中から出ようとしたので、さすがにこれ以上抱き締めるのも悪いと思い解放してあげたら、流れるような動作で俺の鞄を取り上げ鍵を探し出して、いち早く俺の部屋に入ったと思ったら、布団の中で籠城を始めた。呼びかけてもよく分からない唸り声をあげててなかなか出てきてくれないので、俺は一旦諦めて落ち着いてもらえるように、飲み物を入れることにした。このような状況昔に1度あったななんて、少し微笑ましく思いながらできた飲み物を持って陽乃さんの所に行くと、布団の中から顔だけ出したミノムシみたいな状態でこちらを見ていた。
「なに入れたの?」
「ミルクココアですよ。嫌いでしたっけ?」
「そんなことないけど…」
陽乃さんはそう言うと渋々ながら布団から出ました、みたいな顔でココアを受け取り、ベッドに座り直した。俺はその横に腰掛けた。
「なんかさ、」
「はい?」
「近くない?」
「そうですか?そんなことないと思いますが」
嘘である。俺は陽乃さんと隣合って座る時は、できることなら握りこぶし1つ分ないし2つ分はあけるようにしていた。今ではほぼゼロ距離、腕同士がぶつかって嫌だろうと思う距離である。もちろん狙って座ってる。
「そ、そう。それならいいよ」
「はい」
2人して同時にココアを飲む。俺としては、なぜ俺の家の前に居たのか理由を聞きたいところだが、先程まで泣いていたのと関係ありそうで少し聞きにくい。そんな俺の思いを読んだのか、俺が顔に出やすいのか分からないが陽乃さんがこちらに向き直り話し出した。
「話す前に聞きたいんだけど」
「なんですか?」
「笑わないでね」
「笑いませんよ」
「じゃあ、話すね。ここに来たのはただ比企谷くんに会いたくなったから。なんかね、比企谷くんのことばっかり考えちゃって。そしたら、比企谷くんって私のことどう思っているのかとか実は彼女がいるんじゃないかとか不安になっちゃって。それで、いざ比企谷くんの顔を見たらなんか安心しちゃってね」
思わず涙が出ちゃったんだ。そんな風に簡単にまとめ陽乃さんの言葉を聞いて、俺は嬉しくなって舞い上がりそうになった。だって、自分が好きでもう愛してると言っても過言ではない人に会いたくなったや安心して泣いてしまったなどと言われたらもう感無量だろう。
もうここしかないんじゃないか。陽乃さんと2人きりで話すことができる、そして、俺の部屋なので当然陽乃さんへの贈り物もある。
「陽乃さん。陽乃さんに渡したい物があるんです」
俺は陽乃さんの返事を待たずに立ち上がり、机のサイドボードの中にしまって置いたものを取り出した。それは一目で贈り物と分かるように綺麗にラッピングしてある。
「これは?」
「俺から陽乃さんへのプレゼントですね」
「ピアス?」
「はい、似合うと思って…ダメでしたか?」
「いいえ、ありがとう、うれしい」
どうやら喜んでくれたようだ。陽乃さんは嬉しそうにピアスを掲げて見ているのですが、お気に召してもらえたと思っておこう。さて、ここからだ。
「それでですね陽乃さん」
「うん?」
「陽乃さんのところでのバイトやめたいです」
「え……」
「待ってください、泣かないでください。まだ、話の続きなんですから」
「泣いてない…よ……」
「そうですか」
めっちゃ泣きそうな顔してるんだが…。あまりの可愛さに抱き締めたいんだが、我慢しろ俺。ここで欲望のままに行動したら意味ないだろ。
「その代わり」
「その代わり?」
「陽乃さんの彼氏としてこれからも陽乃さんの家で家事をさせてください」
「へ?」
あれ?もしかして通じてない。ちくしょう、恥ずかしいけど、こうなったらストレートだ。
「陽乃さんのことが好きです。なので、バイトとかそういうの抜きで陽乃さんの部屋に俺を置いてください」
[おまけ]
「そういえば比企谷くん」
「なんです?」
「なんでピアスにしたの?」
「何がですか?」
「だからあの時のプレゼントのこと」
「あー、あれですか。ただ、陽乃さんに似合いそうだなと思ったからですよ」
「本当?」
「本当ですよ。自分で言うのもなんですけど、初めてのプレゼントにしてはいい物を贈れたんじゃないかと」
「本当に自分で言うことじゃないね」
「そんなわけで別に深い理由なんてないですよ。強いて言うなら、これを着けた陽乃さんは綺麗だろうなと思っただけですよ」
「そ、そう。それならいいよ。あと、正直なのは良い事だけど恥ずかしくなるからお手柔らかにお願い」
「善処します」
「善処って、はあ」
(バレなくてよかった。まさか、俺の存在をいつも感じていてほしいから、なんてキモい理由言えるわけないわな)