イナズマイレブン アテナの楯 作:百合マスター
ではどうぞ
私……立花唯那はこれから始まる対決の行く末を想像してワクワクが止まらなかった。
グラウンドを両校の部員同士で協力して整備して、完璧な環境に整えた後、私たちはグラウンドから間近なところから観戦することになった。
私は瞬夜と見ることにして、他は利根川東泉の部員(とは言っても部員四人と可愛いタヌキだけだけど)で固まり、桜花姉は響木監督と楽しそうに行方を見守っていて、加奈多は木野さんとマネージャー同士で気が合ったのか、仲良く話しながら、審判としてフィールドに立っている。
一方の当人たちはというと、慧斗は真剣な表情で靴紐を結び直すために、膝をつきながら頭でリフティングをしていた。凄く器用なことしてるけど、その姿がちょっと可愛い。
そして円堂さんはグローブを入念に締めながら、足でリフティングをしてきた。こちらも負けず劣らずの器用さがあるな、と思わず見惚れる。
「円堂君、大月さん、準備は良い?」
「おう! いつでもいいぜ、秋!」
「……ああ」
木野さんの確認に円堂さんは元気良く、慧斗は大人しめのテンションで返事した。
いよいよ始まるのか。慧斗は絶対にあの必殺シュートを撃つだろうし、円堂さんのマジン・ザ・ハンドも見られそうだし、本当に楽しみで仕方ない。
「では、これより円堂さんVS慧斗クンの一球勝負を始めます。ルールは慧斗クンが得点したら、慧斗クンの勝ちで」
「円堂君が止めたら、円堂君の勝ちよ」
まさにシンプルなルールでこれといって思うことはない。二人の実力を見られる良いルールだと思う。
「円堂さん! 勝ってください!!」
利根川東泉の声援の中でも一際声を張り上げていたのは、確か円堂さんが来るまではチームのキャプテンだった坂野上君だ。連合チームのメンバーの一覧に彼の名前と顔写真があった。
彼も相当熱そうなサッカーをしそうで楽しみだ。それは今は置いといて、円堂さんと慧斗に集中しないと。
「瞬夜はどっちが勝つと思う?」
私は勝負が始まる前に瞬夜にそう聞いてみた。彼はサッカー部の黒一点であり、ディフェンスの司令塔として活躍している。それと同時に攻撃的なディフェンダー……リベロでもあるので、その意見が聞きたくなったのだ。
「まぁ、大月は十中八九あの必殺シュートを使うだろうし、円堂さんの性格からして様子見など一切せず、マジン・ザ・ハンドを使うだろう。それにこれだけシンプルな勝負だ、見ての通り、てことになるだろうな」
「そうだよね……」
瞬夜と同じ考えだったので、私はスッキリ納得して、本格的に始まろうとしている二人の方に視線を戻した。
「それじゃ」
「「始め!!」」
ピーっ! というマネージャー二人からのホイッスルにより、勝負は始まった。
「ふっ!!」
慧斗はいきなりボールを高々と天高く蹴り上げた後、グッ、と足に力を溜めてグラウンドにクレーターを作るくらいに力強く飛んだ。
「おぉっ!」
円堂さんはそれを見てワクワクした様子で慧斗の様子を見守る。私たち桜花学園側は既に彼女の必殺シュートは分かっているので、衝撃に備えた。加奈多も木野さんの抱き寄せて衝撃から守るように庇った。
「ハァァッ!!」
そして慧斗は咆哮をあげながらオーバーヘッドの構えからエネルギーを溜めるように上に三回転して、バイシクルシュートの構えに移った。
それはまるで機械仕掛けの騎士が大剣で神々の戦いを終わらせるような強大なる一撃を体現したようなオーラだった。
突風が吹き荒れ、神々しいというよりも邪悪さが混ざった光がグラウンド全体を包み込む。
「ラグナログブレード」
慧斗が必殺シュートの名前を呟きながら、高々と蹴りという名の大剣を振り下ろした。
ザシュッ!! という剣が空気を斬り裂いたような音を響かせながら、天から一気に降下しながら、鋭く速い、超光速のシュートが円堂さんに向かって放たれる。
「はは、良いじゃないか!! 想像以上のシュートだ。豪炎寺のファイアトルネードにも負けてないぞ!! だけどな、絶対に止めて見せる!!」
円堂さんは楽しそうに笑いながらも、直ぐに真剣な表情に戻り、ドシッと両足を開いて豪快に構えた。
円堂さんは後ろを振り向き、心臓にエネルギーを溜め込むようにグググと右手を胸に押し当てている。そして慧斗とは真逆の聖なる神々しい光を放っている。
カッ!! と目を見開いて円堂さんは体全体をしならせながら、右手を高々と上げた。その瞬間、黄金色に輝く魔神の姿が降臨する。
その圧倒的な威圧感に私は見惚れてしまう。その場にいる全員がきっとそうだっただろう。もちろん、慧斗のシュートも凄まじい。
だけど、それ以上に次元が違うような存在がそこにはあった。
「だぁっ!!」
円堂さんは気合いの掛け声と共に両手を大きく広げる。その動作は魔神も同じように取り、オーラがグラウンド全体に解き放たれる。
目前に迫るラグナログブレードに見劣りしない魔神がグッと力をこめている。
そして。
「マジン・ザ・ハンド!!」
円堂さんの叫び声と共に腕が突き出され、二つの大きな必殺技が……激突した。
砂を巻き上げ、この場にいた全員が踏ん張ってないと吹き飛ばされそうな凄まじい衝撃に驚愕しながら、目はしっかり見開いて行方を見守る。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「負けるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
今まで聞いたことが無いような慧斗の叫び声と円堂さんの叫び声が響き渡る中、意外にも円堂さんの魔神が押されていた。
「まさか、円堂さんのマジン・ザ・ハンドが……っ!?」
坂野上君が有り得るかもしれない、どんでん返しな未来に少し顔色を悪くしているが、こっちも決して良いとは思えない。
そう、相手はあの円堂さんだ。スペインの名門であるバルセロナオーブに負けてから、私はもちろんのこと、チームメイトでも想像出来ない程の膨大な特訓をしてきたはずだ。
それこそ文字通り、血の滲むようなものだろう。
「ほんとっ!! すげぇ……シュートだ……っ!! 今の豪炎寺がどうかは分からないけど、少なくともバルセロナオーブ戦の豪炎寺を遥かに超えるすげぇシュートだ……ぞ!!」
……認めた。
あの円堂さんが、豪炎寺さんを一番近くで見続けていた円堂さんが慧斗のことを認めた。
「だけどなぁ……オレを今までと同じ円堂守だと思うなよ……っ!! オレのサッカーは常に進化し続ける、相手が強ければ強いほどに!」
確かに円堂さんは試合の中でどんどん進化していき、少し前まで格上だった相手とも同等以上に渡り合えるようになっていった。
あれが円堂守という男の子のサッカー……。
「オレは仲間たちと誓ったんだ。絶対に世界一になれるくらいに強くなるって!!」
円堂さんの魔神が……更に大きくなっていく。慧斗も目を見開いて、驚愕したような表情を浮かべていた。
「だから……このシュートを絶対に……止めるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
『グォォォッッ!!!!!』
円堂さんの覚悟がこもった声と共に一瞬、ほんの一瞬だけ魔神が全てを超越したような黄金と闇夜が混ざったようなオーラを出した。
それは直ぐに無くなったが……円堂さんはラグナログブレードを完璧に止めた。あれだけ叫んでいたが、足は一切定位置から引かれることはなく、その場に踏み止まり、グローブから煙を吹き出しながらも、その表情には余裕があった。
「馬鹿……な」
慧斗は地面に着地したと同時に絶望したような表情を浮かべながら、仰向けに倒れ込んだ。
……凄い。
ただただ、円堂さんの凄さに圧倒された。
ラグナログブレードなんて、止められたところは見たことが無かったのに……円堂さんは止めてしまった。いや、内心では何となく予感はしていたんだ。
それでも、こんな結果になるなんて。
「円堂さんの勝ち……か。慧斗クンも凄かったけど、やっぱり円堂さんの方が今は強いね」
加奈多は静かにそう告げながら、慧斗にタオルを顔に落としてやり、地面にソッと水筒を置いた。そのタオルは直ぐに目元の部分が濡れ始めたが、そこは見なかったことにしよう。
慧斗もかなりの悔しさだっただろうけど、これは彼女にとって、物凄い成長に繋がる。そう確信している。
一方の円堂さんは木野さんからタオルと水筒を受け取り、笑顔で木野さんと話している。
いつかは、あの人からゴールを奪ってみたい。そう思いながら、私は円堂さんに歩み寄った。
「円堂さん……改めまして、桜花学園中等部一年生サッカー部キャプテン……立花唯那です。本日の対決ありがとうございました。彼女、慧斗にはとても良い経験になりました」
「ああ、こっちこそ、改めましてだな。利根川東泉三年生サッカー部キャプテンの円堂守だ。オレも今ので本来なら感じられなかったはずのものを感じられたような気がする」
円堂さんは自分の手のひらを見た後、ニカッと笑いながらグローブを外して手を差し出してきた。
「これからよろしくな、立花」
「はい! 円堂さん!」
私も釣られて微笑み、その手をしっかり握り返した。
対決が終わり、円堂さんの凄さを改めて目の当たりにした私達は帰路についていた。え? 私と加奈多の日常を見るの?
次回 イナズマイレブンアテナの楯
『立花家の日常』
イナズマイレブンアテナの楯、今日の格言
『オレを今までと同じ円堂守だと思うなよ。オレのサッカーは常に進化し続ける、相手が強ければ強いほどに』
以上。