イナズマイレブン アテナの楯   作:百合マスター

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不定期更新になって申し訳ないです、百合マスターです。

サッカーバトルとはいえ、やはりサッカー描写って難しいですね。これが試合になったら、一体何千文字になるのか……。

オリキャラには出来るだけ、オリジナル必殺技でいきたいですが、メガネさん程のネーミングセンスないんですよね……。

では、どうぞ!


虚空の女神

私……立花唯那は改めて軽いウォーミングアップのために加奈多たちとパス練習をしていた。三角形に広がり、トラップやダイレクトなどを交えながら行っていると、そこへ二人の少女が姿を現す。

 

一人は途中でいなくなっていた慧斗だ。なんだか憑き物が落ちたように晴れ晴れした表情をしている。もう一人は天乃川アテナさんだ。慧斗を背中から抱き付いている。

 

「……さっきは単独行動して悪かった。もう坂野上には謝罪した」

 

「それなら良いんじゃないかな。さ、二人もパス練習しよ?」

 

どういう心境の変化なのか分からないけど、きっと桜花姉が色々と話してくれていたのだろう。それなら、私がやることは、素直に慧斗を受け入れて、またいつも通りに接することだけだ。

 

後ろを向けば加奈多と瞬夜も頷いてくれた。

 

「良かったですね、ケイちゃん」

 

「……ケイちゃん言うな」

 

それにしても、いつの間にアテナさんと慧斗はこんなに仲良くなったんだろう。それとも二人共知り合いなのかな。

 

「大月、天乃川と知り合いなのか?」

 

気になっていたことを瞬夜が代わりに聞いてくれた。その問いかけに当人の二人は顔を合わせると、慧斗は嫌そうに、アテナさんは微笑みながら、同時に頷いた。

 

「オレの親父とアテナの母親は幼馴染だから、ついでに知り合っただけだ」

 

「うふふ、ケイちゃんからお三方の話は伺ってました。ケイちゃんったら、普段は仏頂面なのにとても楽しそうに話してたので、いつかはお話したいと思ってたんですよ♪」

 

慧斗がそっぽを向いてツーンとした口調で話す中、アテナさんは慧斗に抱きついたままだった。仲良しなのは良いことだね。

 

「それなら練習終わりにたくさん話しましょう、ね!」

 

私はなんとなく強烈なパスをアテナさんに送ると、素早く慧斗から体を離した後、足を蹴りあげて、その力でボールの勢いを相殺し、受け止めた。

 

そうしてつま先にあるボールをふわりと浮かせると、ボレーで私に同じくらい強烈なパスを返してきた。

 

もはやシュートに近いパスを私は胸でトラップを試みる。バァン! と胸を貫通するような強い衝撃を感じながら、その衝撃を殺してボールを地面に落とした。

 

「へぇ……お可愛い顔してますけど、中身は中々のタフな姫君ですわね」

 

「ありがとう。アテナさんも振る舞いは御淑やかなのに、とても熱いパスだったよ!」

 

アテナさんがニコニコとしていたので、釣られて私もニコッと微笑む。それにしてもユニフォームの胸部が少しだけ焦げて僅かに煙がシュウ……とあがっていた。

 

何故か周りが私たちを固唾を飲んで注目されていた。不思議に思いながらも、私は自然と慧斗の方へ行き、抱き寄せていた。

 

自分でもよく分からないし、慧斗も不思議そうにしているけど、アテナさんにボディタッチされてる慧斗を見てたら、なんか心がモヤモヤした。

 

「お前ら、準備が出来てるならグラウンド中央に集合しろ」

 

そこへ響木監督が桜花姉と共にグラウンドに現れて、集合をかけていた。そうだ、こっちのポジションとか決めておかないといけないんだった。

 

「とりあえずポジションどうしようか?」

 

「……FWは当然オレのワントップだ」

 

「じゃ、私とユイでMFね!」

 

「私はDFが良いですねぇ」

 

「じゃあ、俺がキーパーをやるか」

 

私が問いかけると、上から慧斗、加奈多、アテナさん、瞬夜が答えてくれた。皆の希望通りにすれば、ちょうどフォーメーションが完成するから、これで良いかな。

 

「じゃあ、ポジションはそれで良いとして、フォーメーションはダイヤで良いかな?」

 

ダイヤとは単純にダイヤのように前に一人、中には左右に別れて二人、後は中央に一人、そしてGKという攻守でバランスの取れたフォーメーションのことだ。

 

私の提案に全員が頷いたので、それで決定した。準備が整ったのでグラウンドの中央へ行くと、既に利根川東泉側がいた。

 

相手のメンバーは六人なので、そこからぽん子ちゃんが抜けてるみたいだ。木野さんと一緒にいて何やら話し込んでる。

 

「揃ったな。これより桜花学園チームと利根川東泉チームのサッカーバトルを始める。勝利条件は1点先取したチームの勝ちだ」

 

響木監督からの説明を聞き終えると、それぞれがポジションについた。ちなみに相手のフォーメーションはイナズマをイメージされたようにジグザグの配置だった。

 

「では、キックオフ」

 

ピーッ! と木野さんが笛を吹き、私がボールに触り試合は始まった。それと同時に慧斗がボールを受け取り、前線に一気に走り出す。

 

「いかせるか!」

 

FWの下町さんと要さんが立ち塞がるが、これを慧斗は冷静にボールを上に蹴って、ムーンサルトのように飛んで華麗に抜いた。

 

「「なに!?」」

 

二人が驚くけど、慧斗はFWとして必要な能力が全てアベレージ以上に高い。だからこれくらいは出来て当然なんだ。

 

「慧斗!」

 

私がパスを要求すると、慧斗は直ぐにパスをくれる。トラップして受けとると、そのままドリブルで持ち込んでいく。

 

そして終盤まで持っていくと、慧斗にパスして戻す。

 

「行かせないよ」

 

慧斗の目の前に六豹君が立ち塞がり、ボールを奪いに来る。それを彼女は立ち止まってボールを細やかに動かして、六豹君の追撃を避けていく。

 

「……鬱陶しい」

 

何度も慧斗は降りきろうとしても、六豹君の諦めないしつこい守りにイラついたように舌打ちをする。そして一歩だけ後退した。

 

「……アルカムフォース」

 

慧斗は胸に手を押し当てた後、片手で目の前に円を描くように動かすと、空間が歪んでいき闇で覆われる。その空間を走り抜けると、六豹君の後ろにあった同じ空間から、慧斗が抜け出てきた。

 

無事にドリブル技で六豹君を振り切ったが、次にDFの坂野上君が立ち塞がった。

 

「行かせないぞ!」

 

「慧斗! 戻して!」

 

「……分かった」

 

ドリブル技の後だから、慧斗に僅かな綻びがあったので、そう指示を出すと直ぐにパスを出してくれた。私はそれをダイレクトにオーバーラップしていた瞬夜にパスを出す。

 

「えぇ!? ゴールキーパーがここまで来てたの!?」

 

神出鬼没の如く突然現れた瞬夜に坂野上君は六豹君とダブルで慧斗のマークにつきながら、驚きの表情を浮かべている。

 

こういうオーバーラップは強力な攻撃に繋がるけど、その代わりに守備がかなり疎かになる。一応、加奈多がフォローとしてゴール前に立ってるけど、彼女もシュートが大好きだからなぁ。

 

「円堂さん! 胸を借りた気持ちで行きます!」

 

「よし、来い! 雪崎!!」

 

瞬夜は勢いのままゴール前に迫っていく。瞬夜のコントロールは酷いけど強力なパワーシュートがある。それが円堂さんにどこまで通用するのか気になっていた。

 

「うおぉぉぉぉッ!!」

 

ボールを持ったまま足を上げて、振り落とすように地面にボーンを落としながら擦り付けるようにスピンを加える。

 

強烈なスピンのかかったボールが地面を削りながら待機してると、そこに瞬夜は全力で蹴り込む。スピンボールに対してトゥキックをしたことで、ボールの回りには強烈な回転の威力が残りながらボール自体は無回転となる。

 

ボール回りに渦が出来たまま放たれた無回転シュートの名前は……。

 

「ソロアルカム!!」

 

コントロールに難のあるシュート技だが、威力の高いシュートが奇跡的にゴールの隅ギリギリに向かっていく。

 

「隅っこか……っ!!」

 

円堂さんはキーパー技を出そうとしていたが、それが守備範囲外だったのか、少しだけ焦ったような表情をしている。

 

「やるな……だが……だぁぁっ!!」

 

円堂さんが気合いをいれるように両方の拳を突き出してから、両手を広げると二つの魔神が現れた。私たちから見て左側が本来の魔神で、右側には新しい赤色の魔神が姿を現していた。

 

そんなF○の召喚獣を呼び出すみたいなノリで、こんな荒業をしようとしているなんて、円堂さん凄すぎる! 多分、円堂さんのことだから、閃きだけでやってるんだろうけど。

 

「はぁぁ!! スーパーダブルマジン・ザ・ハンド!!」

 

「……えぇ」

 

円堂さんのネーミングセンスに少しだけ呆れながらも、あれは本当に凄いと驚愕した。

 

左の魔神が片手を大きく伸ばしてボールをガッチリ掴んだ。本来ならそこで止められるんだろうけど、まだ姿が薄くて不完全だらか、瞬夜のシュートを完全に止めきれず、弾かれた。

 

それが丁度私のところに飛んで来る。

 

「決めろユイ!!」

 

「……うん!!」

 

私は瞬夜の言葉に答えてボールを受け取ろうとした時、目の前に影が差し込んだ。あれ、そういえばアテナさんってキックオフした瞬間にどこかに行っちゃったよね。

 

それに何でアテナさんじゃなくて加奈多がゴールをフォローしてたんだろう。

 

その答えに行き着いた瞬間、目に入ったのは、目の前でボールを横から膝に挟んで奪い取るアテナさんの姿だった。

 

「え?」

 

「申し訳ありませんが、ここはわたくしが決めさせて頂きますね」

 

アテナさんは地面に着地した後、直ぐにシュート体勢に入る。前に地面すれすれで飛ぶ、背中からは蛇を模様した銃を持ち、アテナさんが着てたようなドレスを着た女性のような虚像が現れる。

 

彼女はアテナさんに向かって銃を撃つと、赤と青の二つの光線が彼女を包み込む。

 

「アテナアサルト」

 

必殺技の呼び声と共に矢の如く速いシュートが放たれた。それは赤色の魔神がいる方に飛んでいく。円堂さんも既に反応して待ち構えていた。

 

「決めさせて頂きます」

 

「させるかぁぁぁッ!!」

 

そして赤色の魔神が片手を突き出してシュートをガッチリと掴んだ。しかしこれもまた姿が薄く、まだ完全には力を出し切れていない。

 

「ぐぅぅ……っ!」

 

円堂さんは後退りしそうになりながらも、足腰にしっかり力をいれてその場から一歩たりとも動いていない。これだけ強烈なシュートを二発も放たれても、まだ笑っていた。

 

「へへ、本当に……一年生(ルーキー)って良いな。これだけ強いのに、まだまだ成長の余地があるんだからな」

 

円堂さんがなんだかおじいちゃんみたいなこと言ってる。

 

そんな円堂さんも限界が来たようで、不完全だった魔神たちが完全に消失してシュートが円堂さんの顔面に衝突した。

 

「ぐはっ!!」

 

そのままボールは円堂さんごとゴールに突き刺さった。あの慧斗でも止められたのに、こぼれ球なのと、あの人の技が未完成なのもあるけど、あの威力は本当に凄い。

 

でもアテナアサルトって……アテナさんと同じ名前なんだね。

 

「いてぇ……けど、アテナのシュート凄かったぞ!」

 

「うふふ、ありがとうございます」

 

「大月のラグナログブレードにも迫る威力だな。ナイスシュート、天乃川」

 

「アテナちゃんって、凄いね!」

 

皆がアテナさんに駆け寄る中、アテナさんから受けたどこか冷たい瞳が未だに目に焼き付いて離れなかった。あれはミーティングの時に感じた凍てつくような視線と同じだった。

 

「皆さんのアシストがあったからこそですよ。こんな素敵なチームでプレー出来るなんて、わたくしは幸せですわ」

 

アテナさんが微笑むと、全員が見惚れていた。なんだろう、この蚊帳の外に出されたような感覚は。

 

「……♪」

 

一人で立っている私を見て、何故かアテナさんはニヤリと今まで見たことの無い歪んだ笑みを浮かべていた。どうして、あんな顔してるのかな。

 

「サッカーバトルは桜花学園の勝ちだな。もう時間もおしているし、今日はここまでだな」

 

「「「ありがとうございました」」」

 

全員で号令をした後、各々解散となった。それなのに私はその場から一歩動けなかった。何かをされた訳ではない。

 

ただ、たまたまアテナさんが飛び出してきて、私に渡る予定のボールをカットされただけだ。だけど、胸に穴が空いたように、私の頭は真っ白になった。

 

「ユイ! 大丈夫……?」

 

「え……ぁ」

 

加奈多に声を掛けられただけで、驚いて体の力が抜けてしまった。膝から崩れ落ちて、意識が遠退いていく。

 

意識が無くなる直前に再び冷たい視線を感じた後、私は意識を完全に手放した。




初日から倒れるなんて、なんだか情けないな……。そう落ち込んでいると、円堂さんからとある場所に連れていってもらうことに。

次回、イナズマイレブンアテナの楯

『始まりの場所』

イナズマイレブンアテナの楯、今日の格言。

『一年生(ルーキー)って良いな。これだけ強いのに、まだまだ成長の余地があるんだからな』

以上。

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