イナズマイレブン アテナの楯 作:百合マスター
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原作をリスペクトして、次回予告や今日の格言してますが、格言て作るの難しいですね……。
ところで、オリオンの刻印……終わってしまいましたね。それに伴い、ゲームタイトルも変更されたとのことなので、タグを追加しました。
それではどうぞ!
夢を見ていた……。
それは私がまだ小さかった頃、家庭の事情で外国で暮らしていた時の風景だった。草原が広がり、奥には森があり、自然や動物たちが溢れる豊かな場所だった。
当時の私は人見知りで、泣き虫で、暗くて、どうしようもなく弱い自分だった。でも、ある日……両親に連れていって貰って、とあるサッカーのプロリーグの試合を見たことがあった。
そこには1人の日本人選手が活躍していた。粘り強いディフェンス、相手を抜き去る華麗なドリブル、最後に強力無比なシュート。
そして、その人に対しての熱い声援と拍手が巻き起こる。私も、あの人みたいに輝けるサッカーがしてみたい。
そうして始めたサッカーは楽しくて、サッカーを通してどんどん仲間や友達が出来て、とても嬉しかった。
そんな楽しい思い出が流れていたが、突然目の前が真っ暗になる。私は誰かの掌に立っていた。誰なのかを確認するために顔を上げる。
そこにいたのは…………。
────な。
──ちばな。
誰かが私の名前を呼んでいる。なんだか温かくて、自然と目が覚めていく。ぼんやりとした視界の中、オレンジ色のバンダナが映る。
「立花」
靄が無くなり、完全に視界がクリアになると目の前には心配そうな表情をしている円堂さんの姿があった。
「あれ、円堂さん……どうしてここに?」
「覚えてないのか? お前、練習終わりに倒れたんだぞ。一応うちの学校の保健室で寝かせてたけど、俺が看病するからといって、加奈多には先にお前の分の荷物持たせて帰らせた」
「すみません……円堂さん。あはは、いきなり倒れちゃって、私ったら情けないなぁ」
コツン、と自分の頭を軽く叩いておどけてみせたけど、心の中では己の未熟さと恥ずかしさでいっぱいだった。おまけに円堂さんや加奈多にも迷惑と心配をかけちゃったし。
こんなことで皆の足を引っ張っちゃいそうで怖い。慧斗のことだって、本当なら桜花学園側のキャプテンとして、私が解決しないといけないことだった。
それなのに、何でアテナさんにボール奪われた程度で、あんなに頭が真っ白になっちゃったんだろう。ズキズキとトゲが刺さったようなモヤモヤとした気持ちになってしまう。
「立花……お前、なにそんなに悩んでるんだ?」
「え?」
「お前、今、酷い顔してるぞ。まるで魚の骨が喉に何百本も刺さってるみたいな感じだろ」
「……はい、まさにそんな感じです。」
円堂さんの例えは意外と当たっていた。まさに色々な悩みという名の骨がたくさん刺さっていて、物凄く苦しい気分だ。
「……だったら、ご飯食ったら取れるかもな。じゃあ、ちょっと付き合えよ。最高に美味いラーメン屋知ってるからさ!」
「え、えぇ!? そ、それって……デデデ……っ!」
「ん? どうしてそんなに顔真っ赤にしてるんだ?」
私はあられもない想像をしてしまった。男の子が女の子を二人っきり、つまりは男女だけで食事に誘う行為はデートという恋人同士がするものだと、桜花姉が言っていた。
そう意識してしまったら、恥ずかしくなって顔に血が昇り、おそらく赤リンゴみたいに真っ赤になっているのだろう。
「その、デート……の誘い、ですか?」
「ん? デート? ……あ、いやいや! そういう意味じゃないぞ!? オレはただ悩みを聞こうとしていただけで……とにかく行くぞ!」
私が問い掛けると、予想外といった様子で慌てて否定すると、私をベッドから起こして、強引に手を引いて歩き出した。
ちょっと病み上がりでフラフラするけど、後ろ姿から見てる円堂さんの耳が僅かにだけど、赤くなっていることに気付いて、やっぱり円堂さんって可愛いな、と思った。
私は円堂さんに連れられて利根川中学を後にして、そこから最寄りの駅から電車で稲妻町に向かうことになった。
あまり地元から離れたことが無かった私は千葉は東京から近いとはいえ、少しだけ胸を昂らせながら、窓から外の景色を眺めていた。
町は夕日の色に染まっていて、その景色がとても美しかった。私が無言で眺めていると、隣にいた円堂さんが笑っていた。
「円堂さん、どうして笑ってるんですか?」
「あ、いや……なんか立花がキラキラした目で外の景色を眺めてる姿が微笑ましくてな」
「むー、子供扱いですか……?」
「あはは、そんなことないぞ。単純に笑顔が可愛かっただけだ」
そう言って、円堂さんも窓の景色に目を向けた。もしかして、私が気付く前から円堂さんは私のことを見つめていたのだろうか。
それに笑顔が可愛いとか、さりげなく褒めてくるし。確か元々の雷門イレブンには三人のマネージャーさんがいたよね。
もしかして彼女たちにも、こんな風なことを言っているのだろうか。だとしたら、円堂さんは相当な天然ジゴロなのかもしれない。
私は制服のスカートをギュッ、と手で握りながら、円堂さんの可愛いという言葉からの照れ臭さを堪えた。そして稲妻町に着くまで無言の状態が続いた。
ようやく稲妻町に着くと、円堂さんは町案内をしてくれながら、目的地のある商店街に入った。そこにはコンビニや肉まん屋さんなど、色々と食欲を刺激されるような店が並んでいた。
「円堂さん、稲妻町って良い町ですね」
「だろ? オレも元々は雷門中でサッカーやってて、帰りはよく仲間と今向かってる店に寄ってたんだ」
「それってイナズマイレブンの原動力となってそうですね」
「なってるさ。オレたちだって最初は前途多難で、だけど諦めず自分たちのサッカーを信じて、優勝までしたんだ。その勝因の一つとして、その店で皆で作戦会議したりとかもあるからな」
そのことで話している円堂さんの表情は輝いていた。三年生になった円堂さんはフットボールフロンティアで見ていた姿よりも落ち着きを持ち大人びていたけど、やっぱり、円堂さんは円堂さんなんだと再認識した。
そうこう話している内に少しだけ古びたラーメン屋が見えてきた。その看板には雷雷軒と書かれており、おそらくこれが円堂さんの言っていた店だと思う。
「よし、着いた。ここが雷雷軒だ。響木監督! 店もう空いてますかー?」
円堂さんはそう言いながらガラガラ、と店の扉を開けて中に入っていく。私もそれに続いて恐る恐る入ると、年季の入った歴史溢れる内装が目に入った。
「おお、円堂と立花……さっきぶりだな。まぁ座れ、今日は俺の驕りにしておいてやるから、たんと食え」
「流石、響木監督! 太っ腹!」
私と円堂さんはカウンター席に座り、メニュー表を眺める。ラーメン、チャーハン、餃子など一通りあり、どれも美味しそうだ。
「じゃ、オレはラーメンと餃子。立花は?」
「あ、えーと……」
「遠慮するなよ、腹一杯になるまで食べて良いんだぞ?」
「っ!」
……普段は食費の事とか、色々と考えてるから家でも少なめで食べていたけど、今日は響木監督のおごりだから、遠慮する必要は無いのかな。
いやいや、と私は首を振った。ここでがっついたら、何だか女の子としていけない気がする。だけど、円堂さんは食べて良いと言ってくださってるし、何より空腹も限界まで来ている。
……私はメニューを再び見た。そして意を決して口を開いた。ドン引きされないことを願いながら。
「……じゃあ遠慮なく」
「響木監督、ラーメンおかわりお願いします」
私はゆっくりと確実に目の前に皿を積み上げていく。十杯を超えたあたりから数えていない。隣の円堂さんは口をあんぐりと開けていて、響木監督も冷や汗をかいた様子でラーメンを作っている。
「た、立花……お前見た目に似合わず、凄く食べるんだな」
「モグモグ……んぐ。そう、ですね。大きくなりたくて食べていたら、いつの間にか、こんなに食べるようになりました」
円堂さんの問いかけに答えながら、大盛のチャーハンを平らげて、餃子を頬張った。あまりにも美味しくて頬っぺたが落ちそうだった。
「た、立花すまん。……もう材料が無い」
響木監督が最後の一杯のラーメンを出してくれたところで、そう言ってきた。流石にこれ以上は迷惑だろうし、桜花姉にも腹八分目が良いと言われてきたからね。
「分かりました。ちょうど腹八分目くらいだったので、それで終わりにします。ありがとうございます」
「ははっ、なんか立花の意外な一面が見られて嬉しいぞ!」
「円堂……お前他人事だと思って……」
円堂さんは楽しそうに笑って、響木監督は苦笑いを浮かべている中、私はラーメンをゆっくりと食べ終わり、手を合わせた。
「ご馳走様でした……」
私はお腹を撫でながら、久しぶりにたくさん食べて満足感に包まれていた。家でも最低でも三合は食べてるけど、それでも足りなささはあったから……。
円堂さんと響木監督が何やら話していたけど、先に外に出るように言われてるし、立て込んだ話かもしれないから、静かに外に出た。
ガラガラ、と扉を開けて外に出ると辺りは少し暗くなっていた。こんな時間まで外にいるのはサッカーをしたり、たまに旅行した時以外でそんなに無かった。
「お待たせ……っと、そろそろ暗くなってきたな。悪いんだけど、もうひとつ付き合ってくれ」
「はい、良いですよ」
腹を満足させた後はどこに行くのかな。もしかして河川敷でサッカーとか、それとも雷門中でサッカー? それとも秘密の場所でサッカーかな。
私はサッカーのことばかり考えながら、円堂さんについていった。商店街を出て、街中を抜け、そして森林がある場所に着いた。
湖があったり、近くには鉄塔や古びた倉庫等があった。この場所でサッカーするのかと思ってたけど、円堂さんは鉄塔に登り始めた。
「立花、あともう少しで着くから、ついてきてくれ」
私は言われるがままに円堂さんに続いて鉄塔を登った。下から誰かに見られないようにスカートをおさえて登り切った。
そして私の目の前には……絶景が広がっていた。稲妻町の全体を見渡せて、更には丸い夕日がしっかり見ることが出来た。
あまりにの絶景に、私は口をポカーン、と開けて惚けながら見つめていた。こんな素敵なところにつれてきてくれるなんて、円堂さんはロマンチストなのだろうか。
「すごい、ですね……素敵、素敵なところです……」
「だろ? オレも強化委員として役割もあって、しばらくここには来てなかったんだけどな。悩みがある時はいつもここに来て、考え込んでた」
少しだけ、驚いた。あの伝説のゴールキーパーの円堂さんでも悩むことはあるんだな、と思っていた。そんな一面も知れて嬉しい気持ちもあった。
「円堂さんも悩む時があるんですね? なんだかサッカーしてる時の円堂さんは頼もしくて、かっこよくて、オーラも凄くて、あまりそういうイメージありませんでした」
「あはは、オレだって人間だ。悩みなんていくらでもあるさ。最初はゴッドハンドどころか、必殺技さえ満足にマスター出来なかった時もあったし、特にマジン・ザ・ハンドは苦労したなぁ」
円堂さんはここには無い過ぎ去った思い出を見つめるような遠い目をした。私もサッカーを始めた頃は必殺技なんて遠い夢のような話に感じたし、たくさん悩みもした。
そんな悩みは自分が凡人だから、と卑下していたけど……円堂さんを見て、最初はどんな天才でも出来ないこともあったんだな、と知った。
「お前が悩んでる姿見てたら、昔のオレを思い出してな。それで、ここに連れてきた訳だ。どうだ、少しは悩みから来る不安は薄れたか?」
「……そうですね、はい……薄れました!」
これだけ広大な景色を見たら、悩みがちっぽけに感じられてきたし、何より円堂さんがこうして心配してくれたことが何よりも嬉しかった。
「それじゃ、円堂さん! 私とサッカーしてください! 不安が薄れたら、なんだかサッカーしたくなりました!」
「おっ、そうかそうか! じゃ、今度はサッカーしようぜ! 下に特訓出来るスペースもあるからさ!」
その後、私たちは時間を忘れてサッカーに明け暮れた。そして夜の八時になったところで、私は加奈多から、円堂さんはお母さんから電話が掛かってきて、大目玉を食らうことはここだけの話にしてください……。
ちなみに、私は夜遅いということで円堂さんの家にお泊まりすることになった。円堂さんのお母さんのご飯も美味しかったのは言うまでもない。
円堂さんとのサッカー楽しかったなぁ。余韻に浸ることなく、桜花姉が迎えに来てくれた車内で、練習試合の相手を探す話題に。
その候補の中にはある学校の名前があった。この人たちの目……。
次回、イナズマイレブン アテナの楯
『闇の中の月』
イナズマイレブン アテナの楯、今日の格言
『腹八分目が良いらしい』
以上。