低体温症 -Wolf Hunting-   作:仲村 リョウ

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低体温症常設化記念

その場の勢いなので続くかはどうかはモチベ次第


チャプター1:バーガータウン
プロローグ


薄暗い機内の中。小刻みに揺れる振動……ライフルの銃口を地面に設置しながら杖代わりと言わんばかりに俺はストックの部分に両手を乗せ頭部を当てて俯いている。別に鬱になっているわけではない。ここまで起きてきた出来事を繰り返して脳内に思い出しているうちに、いつのまにかこの体勢になっていたのだ。AR-15の事件が起き、そしてAR小隊が隔離されていた施設への襲撃ーー物事はこんなにも単純で早く動くものなのかと改めて実感させられる。

俺の力ではどうしようもない運命という残酷な結末ーー

どう足掻こうとも変えることのできない未来という時間ーー

人間の力なんてたかが知れてるーーもし神がいるとするなら彼らにとってこの光景はお遊戯に過ぎないのだろうーー

 

そして俺は考える。以前、エルダーブレインから言われた言葉を思い出すーー

 

『だが………お前とM4は別だ』

 

『いずれ………お前が我々のことを理解してくれると嬉しいよ。その時はーーあの娘も一緒に迎え入れよう』

 

その言葉を意味する通りエルダーブレインはM4と接触し、今の彼女のメンタルモデルはまともに銃を握ることすら出来ないほどボロボロになった。

あいつはーーM4になにを見せたというのだろう。そして、それを目の当たりにした俺はなにを思ったのだろう。

あいつ(エルダーブレイン)には何が見えているのだろうかーー

 

そんなことを永遠に考えると頭の中がおかしくなりそうになったーー

 

このままだと彼女の言う通り、俺も狂気に取り憑かれてしまうのかもしれないーー

 

 

「指揮官ーー」

「………」

「指揮官」

「……………ん?」

「酷い顔してるぞ」

「……………そうなのか」

 

M16の声に我へと帰った俺は顔を上げて彼女を見つめた。自分では分からないが、どうやら俺は酷い顔をしているらしい。

 

「どうしたの?具合でも悪い?」

「いや、気にするなSOP。ただの考え事だ」

「指揮官が考え事とはまたまた珍しいな。悩みなんてないと思っていたけど」

「…………俺も人間だ。悩みの一つや二つくらいある」

 

そう言いながら現AR小隊の面々の姿を視界に入れる。

 

ーー小隊とは言え随分と少なくなってしまったものだ。前までは共に任務に行くたびにSOPに抱っこを要求されてはM4が止めに入り、その姿を見てAR-15が呆れながら溜息を吐き、M16は他人事のように笑っていた。今ではそんな空気すら作れないーー

 

分かっていたことだ。俺が今いる世界は戦場のど真ん中。誰かを失うのも慣れたと思っていたがーー俺もまだ人間だったらしい。

 

「それでーーどんな顔だったんだ?」

「一言で言えば()()()()()ってところかな」

「ちょっとM16!」

 

あまりにストレート過ぎる言葉にまずいと思ったのか635が慌ててM16の名前を叫んだ。

 

()()()()()……か」

 

果たしてどんな顔をしているのだろうか俺はーー

 

「ハッーーそいつは傑作だな」

「し、指揮官?」

「気にすんな635。ただのジョークだ。仮に本気で言われたとしても気にしねーよ」

「は、はぁ……指揮官がいいのでしたら……」

「そうだぞRO635。指揮官はもう少し砕けた方が話しやすいぞ」

「あなたは砕けすぎなんですM16」

「じゃあじゃあ!抱っこしてよ指揮官!」

「お前は黙ってろ」

 

(´・ω・)のような顔をして大人しくなるSOP。その姿を見た635は思わず吹いてしまっていた。

 

ああーーこういうところはやはり変わりはないのか………

 

「あー!指揮官が笑った!」

「は?」

「ハハッーー珍しいものが見れたな」

「おいーー」

「そんなに珍しいものなのですか?」

「ああーー私が覚えている限りだと指揮官が笑ったところなんて見たことないよ」

 

なんだそれ………俺はそんなに無愛想な奴……って、自分が一番自覚してるいるな。

 

「もう一回笑ってよ指揮官!ほら、スマーイル!」

 

頬を両方の人差し指でニィーっと釣り上げるSOP。俺はそんなSOPの顔を見るなり鼻で笑いーー

 

「やるかバーカ」

 

そう言いながらSOPの頭を乱暴に撫で回す。彼女はなぜか嬉しそうにしながらはしゃいでいる。本当に子供のようなはしゃぎ方だ。

 

だが、そんなくだらないやり取りも終わりを告げることになった。緊急連絡を知らせるアラームが鳴り響き俺はやれやれと思いながらデバイスを取り出しホログラムを起動させた。どうやら相手はヘリアンのようだ。

 

ヘリアン≪指揮官、まだ輸送機の中か!≫

 

「ああ、そうだがーー」

 

珍しく彼女が慌てているーー何かあったのだろう。

 

「基地まで3時間ほどはかかると言ったはずだが」

 

ヘリアン≪直ちに航路を変更してプランCを実行しろ!≫

 

「おい、落ち着け。なにがあった」

 

ヘリアン≪お前達が現在いる現在通過中のS03地区でジュピターの砲撃を受けている!3分前にも輸送機が一機撃墜された所だ!直ちに航路を変更しろ、いいな!≫

 

「ちっーー了解」

 

俺は左腕に装着しているデバイスを操作し始める。

この輸送機はオートパイロットで飛行しているため俺とAR小隊以外誰も乗っておらず、権限さえあればリモートでも航路を変更することができるのだ。

デバイスの画面には枝のように別れた点線が表示され、それぞれにA.B.Cと振られている。これは各航路ルートを示しいるのだろう。ヘリアンの言われた通りにルートを変更しようとしたその時だーー

 

「うわわっ!?」

「なにが起きたんですか!?」

 

爆発音と共に機内が激しく揺れ、思わず前方へとバランスを崩してしまう。

 

「くそっ!砲撃を食らいやがったんだ!」

 

異常のアラームが鳴り響き、小刻みに揺れ続ける機内。座っていた座席に手をかけてなんとか立ち上がるなりコクピットへと向かう。辿り着くなりモニターを見ると輸送機の尾翼部分が赤色に染まっているのを確認できた。

これが何を意味するのか見ればわかるだろうーー

 

「どんな様子だ指揮官!」

「尾翼がやられたーー墜落は間逃れないな」

「クソッーー」

 

横目でM16を見ると若干に焦りの表情を見せている。無理もない。現に輸送機は高度を下げて落下し始めているのだ。

 

「ヘリアン聞こえるか!尾翼がやられた!」

 

ヘリアン≪ーー…………!!≫

 

「ヘリアン!ーークソッ。通信が切れやがった」

 

俺は少しイラつきながらも操縦席から離れSOP達がいる方へと向かう。彼女達はもう不時着することが分かっているのか表情を崩さずに落下に備えている。

この際、オートパイロットからマニュアル操作に切り替える事は可能なのだがーー今更操縦桿を握って上昇させようとしても手遅れだろう。なにせ、尾翼がやられているのだ。例え上昇したとしても持ってせいぜい数分が限界だろうーー

 

「分かっていると思うがこの輸送機は間もなく墜落する。覚悟はできてるな?」

「はいーー」

「私らは何とかなるが……指揮官。あんたは人間だ。不時着となるとーー」

「んな事は分かってる」

 

M16の懸念はもっともな事だ。人間にとってヘリや飛行機の不時着時による身体のダメージはかなり大きく、当たりどころや場所によっては最悪死亡する確率が高い。

 

しかし、俺も過去に何度か不時着を体験しているため恐怖なんてものは今更である。

 

「ーーこんな所で死ぬわけにはいかないからな」

「何か言いました?」

「いや、何も」

 

こんな所で死ぬわけにはいかない……かーー

 

「しっかり掴まってろよーーまた地上でなーー」

 

そんな軽口を放った瞬間、身体が宙に舞いそうなくらいの揺れに襲われ俺は意識を失うのだったーー

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