演奏はサイバー・ギアでした。
さて、今回のソフトは"機動戦士ガンダム 俺の野望"。ガンダムの世界を体験できる夢のVRゲーム。
ガンダム・ザク・ジム・ドム、エトセトラエトセトラ……。モビルスーツがよく分からない人はお父さんか叔父さんに聞いてね。
機動戦士ガンダム、日本が生み出したロボットアニメの金字塔。
派生作品はアニメのみならず、漫画や小説等、数多の媒体に上る怪物的人気を誇る作品。
その魅力といえば、なんといっても主役というべきロボット、モビルスーツ。
作品ごとに様々な形状や性能を有したモビルスーツ、そんなモビルスーツに搭乗して戦う、個性豊かなパイロット達や周囲のキャラクターもまた、魅力の一つである。
そして、そんなモビルスーツやキャラクターを引き立てる、綿密に練られた世界観(意味深)の相乗効果も相まって。
ガンダムシリーズは、大人から子供まで、老若男女様々な人々に愛され、知らぬ者はいない、そんな作品群となった。
そんな、ガンダムシリーズの世界観の一つと言えるのが、宇宙世紀である。
機動戦士ガンダムを始め、続編アニメ作品等の舞台としても登場し、ガンダムと言えば宇宙世紀と呼ばれる程、ガンダムシリーズにとっては代名詞とも呼べる世界である。
そんな宇宙世紀、ひいてはガンダムという作品群の世界を、もしも実体験できるとしたら、どう感じるだろうか。
無論、そのような試みのもと制作されたアトラクションも過去には存在していたが、それらは、既に作られたストーリーを追体験するものでしかなかった。
また、アトラクションという性質上、大規模な設備の整備が必要不可欠で、誰でも気軽に体験できるものでもなかった。
だが、今回、新たに登場したのは、そのような事前に決められたレールの上を走るだけのアトラクションとは一線を画す品物。
大規模な設備も不要で、誰でも必要なものを揃えれば、簡単に体験できる品物。
自身の選択、自身の行動が世界に反映され、まだ見ぬ未来を作っていく。まさに、現実となんら変わらぬ実体験を体験できる品物。
科学の進歩によって生み出された、新たなるガンダムの世界。
その名を、『機動戦士ガンダム 俺の野望』、通称"俺の野望"と言う。
仮想現実、所謂VRをご家庭で楽しめる家庭用VR機器、サイバー・ギア。
同ゲーム機を使用して仮想現実世界に作られた宇宙世紀の世界を、プレイヤーがその世界の一員として体験できる、それが俺の野望という次世代のガンダムゲームだ。
オンライン環境で行われる同ゲームは、ガンダムを題材としているので、プレイヤーは各々の陣営に分かれ、用意された様々なモビルスーツのパイロットとして、相手陣営のプレイヤーやNPC達とモビルスーツ戦を繰り広げる事が出来る。
勿論、既存のモビルスーツのみならず、ゲーム内ではプレイヤーの手によって改造・強化する事が可能で。
それは即ち、プレイヤーだけのオリジナルモビルスーツを作り上げる醍醐味も味わえるのだ。
そんな次世代のガンダムゲーム、俺の野望。
その正規サービス開始が、もう間もなくに迫っている頃。
ガンダムを生み出した国、日本のとある都市のアパートの一室に、そんな俺の野望正規サービス開始を、今か今かと待ちわびている一人の青年がいた。
彼の名前は、
オタクを自称してはいないが、周囲の者に言わせればオタクな、ガンダム好きの青年である。
彼の住んでいるアパートの一室、そのメインとなる洋室には、置かれた棚にガンダムのプラモデル、所謂ガンプラが幾つか飾られている。
それ以外にも、一人暮らしの青年らしく、洋服等が置かれているが。一番いい場所に、ガンプラは飾られていた。
「三、二、一……。きた!」
そんな優は、壁に架けられた時計の針が、正規サービス開始時刻を過ぎたのを確認すると、机の上に置かれていたとあるカードを手にし、サイバー・ギアの本体に挿入した。
挿入したのは、プレイヤーの個人情報などが記憶されている、所謂IDカードだ。
サイバー・ギアは、仮想空間にフルダイブして遊ぶという、従来のゲーム機とは一線を画すゲーム機の為、プレイヤーのプレイ環境にも、従来とは異なる仕様が設けられている。
それがIDカードの存在である。
このIDカードによって、プレイヤーの性別や年齢の偽造を防ぎ、また、サブアカウントと呼ばれる不正の温床になり得るアカウントの取得を防ぐ目的がある。
これら厳重なセキュリティは、十年ほど前のフルダイブ式VR機器が一般に発売された当初、世界中で起こった様々な事件等からの教訓で取り入れられたものだ。
因みに、サイバー・ギアが従来のゲーム機とは一線を画す証拠の一つに、同ゲーム機を購入する場合、病院で診断書を発行し最寄りの役所の担当窓口に提出する必要がある。
なお、これにより、IDカードを発行してもらえるのだ。
そして、当然ながら、IDカードを偽造すると、お巡りさんのご厄介となる。
「準備完了」
当然、偽造などしている筈もなく、正規の手順で手に入れたIDカードを挿入し、更にサイバー・ギアの本体に俺の野望のゲームディスクをセットすると、全ての準備が整う。
あとは、ヘルメット型ヘッドマウントディスプレイを頭に装着するだけだ。
「いざ行かん、魅惑の宇宙世紀」
意気込みを零し、優はヘルメット型ヘッドマウントディスプレイを頭に装着すると、ベッドに寝ころび、そして、仮想現実へとダイブすべく、リンクスタートのボタンを押した。
優の意識が現実世界から仮想現実へと無事にダイブし、閉じていた瞳を開いて、彼が最初に目にしたのは、真っ白な空間であった。
本当に何もない真っ白な空間であったが、程なくして、そんな空間に一つの緑の丸い物体が、優の目の前に現れる。
それは、ガンダムシリーズのマスコット的存在、"ハロ"であった。
「機動戦士ガンダム 俺の野望にヨウコソ! ヨウコソ! ここはプレイヤーの外見、所属勢力の選択、並びにパイロット或いはコマンダーどちらかのプレイスタイルを選択する場所です」
ハロの説明が終わると、次いで、優の周囲に幾つもの姿見が現れる。
性別や年齢は変えられないが、ゲーム内でのトラブルを現実世界へと持ち込まない予防策として、また、脳へのダメージや日常生活への影響を及ぼさない範囲で、ある程度、プレイヤーは自身の体を編集できるようになっている。
ゲームのジャンルによっては、人間という種を超えた体へと変貌も出来るが、俺の野望はそんなファンタジー色の強いゲームではない為、編集できる内容は限定的だ。
それでも、何千種類という瞳や髪色等、凝ってしまうと、それだけで軽く数時間は経過するだろう。
「ベータテストの参加者ですね。以前のデータをロードしますか?」
「はい」
だが、優にはそんな心配はなかった。
何故なら、彼は俺の野望のベータテストと呼ばれる正規サービス開始前のテスト期間の参加者であり、その時に作成したデータを残していたからだ。
優の返事の後、彼の体が一瞬光に包まれると、次の瞬間、彼の外見は、現実世界のそれとは異なるものへと変化していた。
現実の黒髪とは異なる白銀の短髪、透き通るような青い瞳をした青年。
プレイヤーネーム、ユーリアン・ルクの姿へと。
「続いて、所属する勢力を選択してもらいます。所属は、一度選択すると再度の変更はできません、慎重にご検討ください。……ジオン公国、地球連邦、どちらの勢力に所属しますか?」
機動戦士ガンダムに登場する二つの勢力、ジオン公国、通称ジオンと。地球連邦、通称連邦。
俺の野望では、どちらかの勢力に所属する事によって、所属した勢力が作品内などで開発・運用したモビルスーツを手に入れる事ができる。
例えば、連邦側ならば、ガンダムの代名詞というべきモビルスーツ、ガンダムやその派生型を手に入れる事も出来るし。
その量産型であるジムやその派生型を手に入れられる。
一方ジオン側では、ジオンの代名たるザクシリーズや、グフ、ドム等といった機種を手にする事が出来る。
因みに、俺の野望の初期装備として選択可能な両陣営での初期モビルスーツは以下の通りだ。
ジオンは、宇宙世紀において初の制式量産型モビルスーツ『ザクI』に、その後継機種である『ザクIIC型』所謂初期量産型ザクII。
対して連邦は、作品の設定に忠実であれば、ゲーム開始時点の時系列、ジオンの地球侵攻作戦時には、連邦はモビルスーツという兵器を有していなかった。
しかし、それではゲーム的に選択肢がジオン一択になる為、連邦のモビルスーツノウハウ蓄積用モビルスーツ『ザニー』の他。
アニメをベースとし独自のアレンジを加えた機動戦士ガンダム THE ORIGINに登場する『ガンキャノン最初期型』と『ガンタンク初期型』も選択可能となっている。
「ジオン公国で!」
一度選択すると再度の変更は不可能、普通ならば熟考してしまいそうな場面ではあるが。
優ことユーリアンは、迷うことなくジオンを選択した。
その理由は、彼がジオンが好きだからであった。
それを裏付けるように、現実世界の彼の洋室の棚に飾られていたのは、ジオン系のガンプラであった。
因みに、所属勢力を選択した刹那、ユーリアンの体に、いつの間にかジオン公国軍の軍服が身に着けられていた。
「承知しました。それでは次に、初期スタート地点を選択して下さい」
「ソロモンでお願いします!」
所属する勢力の初期スタート地点は幾つもある。
ジオンの場合、現時点では地球上にジオンの領土がない為、宇宙要塞ア・バオア・クー、宇宙要塞ソロモン。そして、月面都市のグラナダの三か所から選択でき。
連邦の場合は、宇宙要塞ルナツー、そして地球のジャブロー、トリントン、キャリフォルニア、オデッサの五か所から選択が可能となっている。
そして、今後の各勢力の展開により、初期スタート地点は数を上下し、変更も行われていく。
「承知いたしました。それでは最後に、パイロット及びコマンダー、どちらのプレイスタイルでゲームをプレイなさいますか?」
ハロの口から飛び出した最後の質問、それは、このゲームの仕様を変化させることを意味する。
パイロットは、文字通りモビルスーツのパイロットとして戦場を駆ける事が出来る。
また小隊システムと呼ばれるシステムにより、所謂クランと呼ばれるチームプレイも可能となっている。
その一方、パイロットでのプレイスタイルは、ゲーム全体の自由度という点においてはコマンダーでのプレイスタイルに劣り。
組めるチームの人数も、他のプレイヤー及びNPC、更には原作に登場したキャラクター、所謂ネームド、合わせて三人に制限され。
保有できるモビルスーツの数も、プレイヤー個人が保有できる上限の三機に制限されている。
また、所属勢力から一定期間ごとに支給されるゲーム内通貨、ゴールドの支給額も、コマンダーでのプレイスタイルよりも少ない。
パイロットでのプレイスタイルは、アクション性を高めた仕様と言えた。
一方、コマンダーでのプレイスタイルはと言えば。
パイロットとしても戦場に出撃できるが、基本的には、その名の通り指揮官として、隷下のプレイヤー、或いはNPCやネームドで編成した部隊を指揮して戦う。
その性質上、軍団システムと呼ばれるシステムにより、パイロットよりも多くの人数でチームプレイが可能となっている。こちらは、所謂ギルドと呼ばれている。
保有できるモビルスーツの数も、プレイヤー個人の枠の他に、指揮官枠として多く保有する事が出来る。
また、コマンダーのみの特典として、独自の開発レベルが存在し。
レベルの上げ方によっては、所属勢力が開発完了し、各プレイヤーが購入可能となる前に、一足先んじて開発・購入が可能となるのだ。
なお、この恩恵は、コマンダープレイヤーの隷下となっているパイロットプレイヤーにも受けられ。
開発レベルの高いコマンダープレイヤーの隷下にいれば、他のパイロットプレイヤーよりも、一足早く強力なモビルスーツに搭乗できる可能性があるのだ。
このように、パイロットに比べ自由度が高いコマンダーでのプレイスタイルではあるが、負担もある。
支給されるゴールドがパイロットよりも多いとは言え、その分、消費も激しく。
部隊編成の為の人件費や、補給品等の購入費用、更には開発レベルの向上にも費用は掛かる。
その為、計画的に運用していかなければ、あっという間にゴールドは底をついてしまう。
まさにコマンダーでのプレイスタイルは、シミュレーション性を高めた仕様と言えた。
なお、パイロットとコマンダーのプレイスタイルは、各々に偏りが発生しない様に、人数に上限が設けられている。
上限はそれぞれ、パイロット七割、コマンダー三割となっている。
その為、上限に達した場合、それ以降は上限に達したプレイスタイルの選択は不可能となる。
ただ、正規サービスの開始直後である現在は、そのような上限にはまだ達していない。
因みに、これもゲーム故、ゲーム内通貨であるゴールドは、何もゲーム内のみで増やせるものではなく。
また、仲間に採用出来るネームドに関しては、所属している勢力に原作で属している者で、しかも、ネームドがプレイヤーよりも階級、俺の野望におけるレベルの概念、が低い場合のみ可能となる。
つまり、シャア・アズナブルというネームドを小隊に、或いは軍団に加えたい場合、プレイヤーはシャアの階級たる少佐よりも高い階級になる必要がある。
因みに、設定された能力値が高いネームド程、採用の為のゴールドが高く設定されている。
なお、一部のネームドはゲームの進行状況により、階級が変化し。
また、採用可能ネームドは毎回ランダムとなっている他。撃破されると一定の確率で死亡状態となり、以降、採用可能ネームドとして出現する事はない。
「パイロットでお願いします!」
「承知しました。これで、全ての選択は終了となります。……ユーリアン・ルク"軍曹"、俺の野望を、どうぞ心行くまでお楽しみください」
新規にゲームを開始した場合のプレイヤーの階級は、勢力に関係なく、パイロットなら"二等兵"から始まる。
しかし、ベータテストの参加者であるユーリアンは、軍曹の階級から始める事が出来るのだ。
因みに、コマンダーの場合は、新規やテスターに関係なく"少佐"の階級から始まる。
なお、一般的なレベルの概念同様、俺の野望でも、レベルアップこと昇進には必要な経験値数が存在するが。
階級が高くなればなるほど、その必要数値も高くなり、簡単には昇進できないようになっている。
「それでは、ゲーム、開始します」
ハロの台詞と共に、ユーリアンの体が光りとなって空間から消えた。
初期スタート地点である、宇宙要塞ソロモンへと移動したのだ。
この度は、ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
今後とも、どうぞご愛読のほどよろしくお願いいたします。