新型機運用テストを無事に終え、再びオデッサの地へと戻ってきた第046独立部隊。
グフカスタムを無事に手に入れ、戦力を充実させた第046独立部隊は、その後も数々のミッションをこなした。
失ったルッグンを再び買い戻す為、更なる戦力強化の為の資金を蓄える為。
第046独立部隊の面々は、戦闘系から非戦闘系まで、様々なミッションをこなす。
無論、ミッションばかりをこなすだけではない。
その間にも行われるイベント、アフリカ地域制圧の為の第四次降下作戦にも参加し、経験値と資金稼ぎに努める。
なお、この第四次降下作戦をもって、イベント『地球侵攻作戦』は終わりを迎える。
正史ではこの後、ジオンが攻撃限界点を迎えた為、暫く小康状態が続くことになるが。
この俺の野望では、正史とは異なり、プレイヤー主導による侵攻作戦等は行われる為、まだまだ地球各地での戦火はとどまるところを知らない。
因みに、新型機運用テストの終了後。
オデッサへと戻ったユーリアンは、出発前にメイと交わした約束を守るべく、メイに感想と共に戦闘時の映像データも添付して送ったのだが。
『何これ……、ふざけてるの?』
と、その特殊過ぎて参考にならない戦闘機動に、冗談かと疑う返事が返ってきたそうな。
最も、それでもメイにとっては貴重なデータなので、続けて感謝の言葉も送られた。
閑話休題。
そんな第046独立部隊の俺の野望での活動が続く中。
同部隊は、最近、とある計画を立てていた。
それが、同部隊への更なるプレイヤーの加入である。
事の始まりは、ミッションをこなす中で、ランドニーがマンパワー不足を感じた事であった。
「二人も知っての通り。最近は、母艦を運用するプレイヤーも増えて、NPCが使用するモビルスーツの性能も高くなりつつある」
俺の野望が正規サービスを開始して、既に相当の日数が経過していた。
最近始めたばかりのプレイヤーや、こだわりのあるプレイヤーを除き、プレイヤー達の使うモビルスーツも初期装備の機種は少なくなり。
また、それはNPCの部隊等についても同様であった。
「敵の機種が型落ち程度なら、数が多くても技術や戦術でカバーして問題ないが。今後さらに機種が更新されていく事を考えると、戦闘系ミッションは辛くなる」
戦闘系ミッションの成功条件は、主に指定された敵戦力の殲滅となる。
その為、必然的に戦闘は避けられず。
使用する機種の性能差が縮まれば縮まる程、操縦技術と数が重要となってくる。
しかも、ミッションに出現するNPC部隊の戦力は、基本的にプレイヤー側よりも多く出現する為。
数の暴力に押されない為には、やはりその差が小さいほうが望ましい。
勿論、世の中には数の暴力にも打ち勝てるほどの技術を持った変人というものがいるが、生憎と、第046独立部隊はそんな部類には属していなかった。
よって、現在の少数精鋭のような編成では将来に不安が残る。
新たなプレイヤーの加入は、そんな将来への不安を払拭する為でもあった。
「それに、今後は他のプレイヤー軍団とも遭遇する確率も増えてくるだろうし。ここらで、我ら第046独立部隊も新メンバーの加入すべく、勧誘活動に力を入れていくべきだと思う!」
「で、具体的にはどういうの考えてるんだ?」
「先ずは、オーソドックスにギルドメンバー募集用の掲示板を使って加入者を募集しようと思う。で、これがその募集要項の原文なんだけど……」
その為に活用する募集用掲示板に記載する募集要項の原文を、タブレット端末を使ってユーリアンとシモンの二人に確認してもらう。
すると、早速シモンが感想を漏らした。
「いやあのさ、この"皆が笑顔で楽しめる、アットホームな部隊です"って、これ逆に敬遠されないか?」
「え? そうか? ん~、いいキャッチコピーだと思ったんだけどな?」
どうやら、ランドニーが考えたキャッチコピーは、あまり受けがよろしくないようだ。
「あ、それじゃさ、シモン。お前が新しいキャッチコピー、考えてくれよ」
「えぇ!? 俺が!?」
まさか自分に任せられるとは思ってもいなかったシモンは、突然の任命に驚きを隠せない。
「だって一〇〇の現場を渡り歩いた男だろ? なら、色々見てきたから、傾向とか分かるだろ?」
「まぁ、そりゃ……」
「なら頼む! この通り!」
「……分かったよ。考えてやるよ」
「サンキュー!!」
「ん~そうだな。それじゃ例えば、"明日のプレイは、もっと楽しくなる"とか、"その意思が、すべてを変える"とか、こんなのはどうだ?」
「お、いいな」
思いついたキャッチコピーの候補を挙げていくシモン。
その完成度の高さに、ランドニーはやはりシモンに任せて正解だったと思わずにはいられなかった。
そして、それから幾つかの候補を聞き、それらをタブレット端末にメモしたランドニーは、早速候補の中から一番良さそうなものを選ぶと、募集要項の原文に書き込むのであった。
「よし、それじゃ後でギルドメンバー募集用の掲示板に書き込んどくとして。勧誘活動はこれだけじゃないぞ」
「何だ? まだあるのか?」
「掲示板を見て、加入したいってプレイヤーが直ぐにくるとも限らない。そこで、やはり確実性と即効性を兼ね備えた方法。そう!
「まぁ、それが一番無難だよね」
「という訳で、シモン。今度の連休までに、ノルマ、一〇人な」
「いやいやちょっと待て! そりゃ無理だろ!!」
「えーまたまた、ご謙遜を。一〇〇の現場を渡り歩いた男なら、友達の一〇〇や二〇〇位いるでしょ」
「そんなにいねぇよ! 仮にいたとしたら、そいつらに声かけてソロプレイなんてしてなかったって」
「あぁ、そうだよな」
俺の野望を一緒にプレイする意思表示のある友達がいれば、ベータテストの参加時から参加しているだろうし。
仮にベータテストに落ちても、正規サービス開始と同時に参加していた筈だ。
それが、影も形もないという事は、知り合いや友達に俺の野望を一緒にプレイしたいと思う者がいなかったのだろう。
「分かった。それじゃ、ノルマの事は忘れて、一人でもいいから声かけてみてくれ。もしかしたら、正規サービスが開始した盛り上がりで、興味持った奴がいるかもしれないからな」
「オーケー。ま、とりあえず声かけまくってみるわ」
「頼んだぞ。俺達も俺達で、知り合いや友達に声かけてみるからさ」
こうして、リアル勧誘作戦を決行する事が決まった矢先。
不意に、ユーリアンがランドニーに質問を投げかける。
「所でランドニー。新しく加入するプレイヤーは、最終的にはどれ位を目指してるの?」
「あーそうだな。とりあえずプレイヤーだけで二個小隊編成できるぐらい。つまりあと四人ぐらいは欲しいな」
ユーリアンの質問に答えを返すと、今度はシモンが質問を投げかける。
「そういや、誘うの、初心者でもいいのか?」
「できれば経験者がいいが。ま、二兎を追う者は一兎をも得ずって訳で、初心者でもいいぞ。そもそも、誰だって初めは初心者だしな」
こうして、勧誘活動の活動方針が決定すると。
翌日から、三人は現実世界で勧誘活動を開始するのであった。
「行ってきまーす」
準備を整え、返事の返ってこない自宅のアパートを出ると、戸締りを確認した後。
彼、安館 優はいつものように駅を目指して歩き始める。
もはや見慣れた道を歩き、最寄りの駅から電車で、通っている大学の最寄り駅へと向かう。
そして、駅から大学へと到着すると、一時限目の必修科目を受けるべく、講義室へと足を踏み入れた。
「よー、優。おはよう」
「おはよう、来飛」
同じく授業を受ける他の生徒の何人かが既に席取りしている中、優が席取った隣の席にいたのは。
赤ではなく黒髪をオールバックに、オッドアイではない黒い瞳を持つ端正な顔の青年。
ランドニー・ハートこと、
「で、どうだ? 声かけてきたか?」
「ごめん、まだなんだ」
「そっか。一応、俺はもう何人かには声かけたけど、あまりいい返事はなかったな」
授業が始まるまでの間、時間つぶしの会話に、早速昨日話した勧誘活動の話題が始まる二人。
「声かけた奴の中には俺の野望に興味持ってる奴もいたんだが。やっぱ、一番ネックになるのは、サイバー・ギアだな」
「やっぱりそこなんだ」
家庭用VR機器、サイバー・ギア。
購入の為の手順が少々面倒なのもさることながら。
家庭用とはいえVR機器の為、従来のゲーム機の本体と比べると、その販売価格は気軽に手を出せる値段ではなかった。
勿論、現在の販売価格も、初期販売時に比べれば幾分値下げしたのだが。
それでも、やはり大台を軽く超えるその販売価格に、二の足を踏む者は多い。
特に、金銭的余裕の少ない学生ともなれば、尚更である。
「興味ある奴は金がねぇし。興味ない奴はサイバー・ギア持ってるけど、ガンダムに興味ないから俺の野望やらねぇし……。どっかにうちの軍団に二つ返事で加入してくれる奴いねぇかな……。あぁ、上手くいかないな、人生」
「あはは、そんな中年の愚痴みたいに」
実年齢よりも大分年寄り臭い台詞を吐く来飛に、優は苦笑いするのであった。
一方、二人がそんな会話を繰り広げている内に。
講義室内は同じ授業を受ける他の生徒たちで埋まり、他の生徒たちの雑談等が講義室内に響く。
「ん?」
「どうした? 優?」
「誰かに見られてるような気がして……」
と、そんな中、不意に視線を感じた優は、視線の主を探すべく周囲を見渡すが。
人が多く、一体誰が犯人なのかは、結局特定できなかった。
「気のせいだったんじゃないのか?」
「そうかな?」
確実に視線を感じた為気のせいとは思えない優ではあったが、刹那、犯人探しに意識を集中するのを止めた。
何故なら、講義室に教授が現れ、授業を開始したからだ。
それから九〇分後。
無事に一時限目の授業を終えた二人は、二時限目の各々の選択科目の授業を受けるべく、講義室を後にしようとした。
「ねぇ、ちょっと」
だが、不意に声を掛けられ、足を止める二人。
振り返ると、二人の女子生徒の姿があった。
「少し話がしたいんだけどさ、ちょっといい」
「あぁ、いいけど?」
知り合いでもない女子生徒にをかけられ、二人は頭に疑問符を浮かべながらも。
それでも、女子生徒の用件を聞くべく、近くの席へと腰を下ろした。
「まず自己紹介ね。あたし、
緑のロングヘアーを靡かせた、笑顔が素敵で明朗快活な女子生徒は、自己紹介を終えると。
隣で俯き加減の、綺麗な金髪ロングヘアーの女子生徒に自己紹介を促す。
「さ……、ら、……ら、です」
「え? 何だって?」
「あ、御免ね! ちょっと沙愛! 時間ないんだから、もっとハッキリ自己紹介しなさいよ!」
「あ、うん」
どうやら、沙愛と呼ばれた女子生徒は引っ込み思案なのか、自己紹介の声が小さい。
芽一に注意され、改めて自己紹介を行う。
「さ、
そして、最後はかき消されそうなか細い声になりながらも、自己紹介を終えるのであった。
「あ、じゃ俺達も。俺は愛川 来飛」
「俺は安館 優です。よろしく、草原さん、佐久良さん」
「よろしくね。……っと、それで、休憩時間も少ないからさっさと本題に入るけど。二人って、一時限目の授業が始まる前にさ、"俺の野望"の事について話してたでしょ?」
芽一の口から、まさか俺の野望という単語が飛び出すなど思ってもいなかった二人は、一瞬目を丸くする。
「あ、あぁ、確かに話してたけど? あ、まさか! 二人とも、俺の野望プレイしてるの!?」
俺の野望という単語が出てくるという事は、それは即ちプレイヤーなのでは。
そんな予想を立てた来飛は、早速真相を確かめるべく、質問を投げかけた。
「それが実はまだなんだけど、今度の連休から始めるの」
「本当に!? あ、それじゃ佐久良さんの方も?」
「あ、それがね。沙愛の方はもうプレイしてるんだよね。確か、ベータテスト? だっけ? の頃から」
「まじか……」
だが、予想に反して、方や初心者で、方やベータテストからの古参。
この結果に、来飛の口から心の声が漏れだすのであった。
「で、沙愛のプレイしている感想とか聞いてたら、あたしも実際にプレイしたくなっちゃってさ。……で、ここからが重要なんだけど」
「お、おう」
そして、話の流れから芽一が言わんとすることを予想できた来飛は、目を輝かせ始める。
「俺の野望って、チームでも遊べるんでしょ。だから、あたし達を二人のチームに入れてほしいんだけど?」
「キターッ!!」
刹那、予想が確信に変わった瞬間、来飛は喜びの声をあげた。
だが、ふと来飛は、大事な事に気が付く。
二人が連邦とジオン、どちらの勢力に所属しているのか。
もし連邦ならば、当然新加入などできない。
「所で、二人は連邦とジオン、どっちの所属で?」
「えっと、確か沙愛はジオンって所だったから、あたしも同じよ」
刹那、来飛はとびきりの笑顔となった。
「ようこそ! ウェルカム!! 初心者歓迎! 女の子大歓迎!! うちの軍団はアットホームな……じゃなかった。明日のプレイが、もっと楽しくなる軍団です」
「はは! 何その、バイト募集のキャッチコピーみたいなの! 面白い!!」
来飛の熱烈歓迎ぶりに、芽一は引くどころかノリよく乗っかる。
「あの、よろしく、……お願いします」
「こちらこそよろしく、佐久良さん」
「……はい」
そんな二人を他所に、優と沙愛は静かに握手を交わすのであった。
その後、休憩時間の終了が迫り、昼休憩に俺の野望内で合流する予定等を決めるべく、食堂で再び落ち合う事を約束すると。
各々の選択科目の授業を受けるべく、急いで移動を始める四人。
そんな中、優は、二時限目の選択科目の授業が沙愛も同じである事を知るのであった。
「佐久良さんもこの授業だったんだね」
「は、はい」
授業が始まり、講義室内に教授の声とチョークの音が響く中。
隣同士の席に座った二人は、小声で会話を交わす。
最も、傍から見ると優が一方的に喋っているように見える。
「佐久良さんも、ガンダム好きなんだね」
「う、うん。……特に、ジオンが好きなの」
「俺も。ジオンって悪役で引き立て役なんだけど、でも嫌いになれない、むしろ好きになる様な魅力に溢れている所がいいよね」
「……何だか、嬉しい、な。ジオン好きな人と、出会えて」
自身と同じジオン好きと出会えた喜びから、沙愛は頬を赤らめる。
「うん、俺も嬉しい」
と、優が爽やかな笑みを浮かべると。
沙愛はますます頬を赤らめる。
「……?」
とこそで、優は何かに気が付くと。
次の瞬間、不意に、沙愛の横顔、その目元を自身の手で隠す。
「あ……」
そして、優は気が付いた。
沙愛の声を聞いた時から、以前何処かで聞いた事のある声だと優は思っていた。
加えて、沙愛は俺の野望をジオン側でプレイしている、それもベータテストから。
様々な類似点はあるものの、思い当たる声の主と沙愛、二人の性格は真逆だ。
だから、勘違いかとも思った。
しかし、優は、目元を隠した沙愛の顔を見て、確信した。
「あの、佐久良さん」
「? 何?」
「おかしなこと聞くけど。……佐久良さんって、もしかして"沙亜 阿頭那武婁"なの?」
なので、優は本人に直接訪ねて確かめる事にした。
「なな!! なに言ってるの!」
すると、沙愛は明らかに動揺した様子を見せた。
「ん? そこ、どうしたのかね?」
「あ、すいません。何でもありません!」
突然声をあげた沙愛に、教授や他の生徒たちが反応するも。
優が何とか収めると、講義室内が再び授業に集中するのを見計らって、再び先ほどの話題を切り出した。
「やっぱり、沙亜さん、なんだね」
「……さんは、いらないって、言ったよね」
「あ、そうだったね」
すると、沙愛は頷き肯定すると、いつか注意した時の様に、呼び方を注意するのであった。