機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

15 / 48
第十四話 会議は踊り、ドンは二度死ぬ

 三人の新たなメンバーを加えた第046独立部隊は、早速三人のポジション決めを兼ねて簡単な戦闘系ミッションへと出撃した。

 そのミッションの中で、ランドニーはそれぞれの適正を見極め。

 ミッション終了後、第046独立部隊用のロビーへと戻ると、そこで各々の適正を考慮した部隊の編成を発表した。

 

「という訳で、前衛と後衛の二個小隊に振り分ける。前衛はユーリアンと沙亜、それにロッシュ。で、後衛はシモンとメノ」

 

 ランドニーの編成に、五人は特に異論もなく、首を縦に振り受け入れる。

 

「勿論、今後更に新しいプレイヤーが加入すれば、その都度随時編成は変えていくが。ま、暫くはこの編成でいこうと思う」

 

 その後、更にこの編成がうまく機能するかを確かめるべく戦闘系ミッションに続けて出撃し。

 初心者であるメノとロッシュの動きは仕方がなかったが、それ以外は特に問題もないので、ランドニーはこの編成で最終決定を下した。

 

 

 

 

「さて、今日はお疲れさん。今日のプレイはこれで終了しようと思うんだが……」

 

 ミッションを終え、再び第046独立部隊用のロビーへと戻った面々に労いの言葉をかけるランドニー。

 そして、締めの言葉で解散するのかと思いきや、締める事無く、話を続けた。

 

「その前に、今後の活動について参考となる話をしたいと思う」

 

「参考になる話って? 何々?」

 

「ランドニー、勿体ぶるのはよくないぞ」

 

 メノとシモンが早く言えと催促する中、ランドニーは手で二人の声を制止すると、ゆっくりと話し始める。

 

「参考になる話っていうのは、昨日行われた『戦略会議』での話だ」

 

 戦略会議。

 それはジオン・連邦、両勢力に属するコマンダープレイヤーのみが参加可能な会議の事で。

 両勢力のコマンダープレイヤー達が、所属勢力の今後の戦略に対する各々の意見の提示・交換や大枠の決定、そして情報を共有する為に設けられた場である。

 なお、この戦略会議への参加は義務ではない為、参加せずとも構わないが。

 やはり、ゲームとは言え軍隊という名の"組織"の一員である以上、可能な限りの参加は望ましい。

 

 

 

 それは昨日の事。

 ランドニーは、とある巨大な会議室の一角にいた。

 同じ会議室内には、既に多くの他のコマンダープレイヤー達の姿も見られる。

 数百人は余裕で収容可能なその会議室は、将官用の円卓形式のテーブルを中心に、各佐官用のテーブルが階段式に設けられている。

 

 その一角、中佐の階級を有するコマンダープレイヤーに宛がわれたテーブルの一つに、ランドニーの姿があった。

 

「では只今より! 戦略会議を開始する!」

 

 司会進行役の開会宣言と共に、戦略会議は開始された。

 

「先ず宇宙での戦局についてですが……」

 

 司会進行役の進行と共に、中心に地球及び各コロニー等の位置を示した地球圏の立体映像が浮かび上がり、各テーブルに設けられたモニターにも、同様の映像が表示される。

 

「ご存知の通り、地球侵攻作戦を確実に成功させるべく、連邦側の戦力分散を狙ったルナツーへの期間中への断続的な陽動作戦は見事に成功し、地球侵攻作戦は滞りなく成功を収めました」

 

 映像内に表示された光点が、宇宙要塞ソロモンや月面都市のグラナダから発進し、連邦の宇宙拠点である宇宙要塞ルナツーへ、幾度も到達する。

 これは、地球で防衛戦力として活動する連邦側のプレイヤーを、宇宙要塞ルナツーへの攻撃を意識させる事により、地球から宇宙へ戦力を引き抜く為の陽動作戦であった。

 

 無論、簡単に陽動作戦とバレないように、場合によって宇宙要塞ルナツーを占領可能な戦力を投入している。

 連邦にとって唯一の宇宙要塞を喪失する事は、宇宙での反攻を行う際に確実に支障をきたす。

 さらに言えば、地球上で連邦が安全に頭を高く出来る場所がなくなる事も意味する。

 ある程度の戦略眼を持っている連邦側のプレイヤーにしてみれば、地上の一部を奪われるのと宇宙を抑えられる、どちらがより深刻か、容易に判断でき、そしてそれを阻止すべく行動する。

 

 その思惑は見事に的中し、地球で活動していた一部連邦のプレイヤー達は、宇宙要塞ルナツーへと移動していた。

 

「しかしながら、この陽動作戦によって、我々ジオン側が被った被害も少なくはなく。暫くは、宇宙での大規模な攻勢を控えざるを得ない状況であります」

 

 だが、当然自軍側の被害も皆無な筈もなく、この隙に連邦側の反撃を警戒する者もいたが。

 

「ですが、連邦側も、特に大規模な攻勢を仕掛ける気配などはなく。暫くは、宇宙においては小規模な戦闘こそあれど、基本的には膠着状態が続くものと考えられます」

 

 どうやら、それは杞憂に終わりそうである。

 

「一方。地球、重力戦線に関しましては、今後も激戦が予想され、各占領地の帰属が頻繁に変更する事が予想されます」

 

 映像が地球圏から、現実世界などでもよく見られる地球地図へと切り替わると、地球上における現在の戦況がエリアごとに色分けされ表示される。

 

「ご存知の通り、地球侵攻作戦の成功により、我がジオンは、北半球の大部分を占領する事に成功いたしました」

 

 赤で色付けされたジオン公国の勢力圏エリアは、中央アメリカや一部メキシコ南部を除く北米地域にハワイ近郊。

 ユーラシア大陸においては、日本列島付近及びインド亜大陸に一部東南アジア、それにブリテン諸島や旧フランス、イベリア半島などの地域を除いた大部分を、その手中に収めている。

 

 一方、南半球においては。

 オーストラリア大陸及びオセアニアの一部地域に、アフリカ大陸の北部及びキリマンジャロを含む一部東アフリカ地域のみとなっている。

 

 なお、これ程の地域を手中に収めたジオン公国ではあるが、実は、正史とは少々占領した地域が異なっていた。

 これは、原作とは同じ轍を踏むまいと、プレイヤー達が意図的に動いた結果であった。

 

「これに対して、連邦側は、防備を固めるべく、戦線の縮小を行っております」

 

「それはつまり、連邦は戦線を縮小する事により防衛線の強度を高め、時間稼ぎを行おうとしている、という事かね?」

 

 司会進行役の説明に反応を示したのは、円卓形式のテーブルにいた一人の将官。

 中将の階級章を取り付けた、眼鏡が知将と呼ぶに相応しい雰囲気を醸し出す、五十路の男性プレイヤーであった。

 

「だからつまり、原作のようなV作戦の本格始動と、ホワイトベース隊のようなネームドの登場を待って、再び攻勢に出ようって魂胆なんだろ。なら、そんな魂胆に大人しく付き合ってやる義理はねぇ! 更に攻勢をかけて、一気にジャブロー以外を占領しちまえばいい!」

 

 そんな男性プレイヤーに続くように声をあげたのは、同じく中将の階級章を取り付けた五十路の男性プレイヤー。

 ただし、こちらは先ほどの男性プレイヤーと異なり、猛将と呼ぶに相応しい雰囲気を醸し出している。

 

「原作と違って、俺達は何度でも戦えるんだ! だったら、ガンガン攻めて、一気に切り崩せばいいんじゃねぇか!?」

 

「ガードルフ、そうやってのこのことやって来た我が軍を、連邦は待ち構えて罠に嵌めるかもしれんのだぞ。それに、理論上は確かに波状攻撃は可能だが、実際にはそうではない。加えて、攻勢の足並みが揃うとも限らん。仕掛けるなら、こちらも相応の準備を整えてからだな……」

 

「グデーツ! 勝負ってのは時に勢いに身を任せる事も必要なんだよ! 今がまさにその時だ!」

 

「ならば、勝手に隷下の軍団をもって攻勢に出るといい、私は、今はまだ準備と防備に徹させてもらう」

 

「俺の軍団だけじゃ攻め切れねぇから、皆で攻めようって言ってんだよ!」

 

 円卓形式のテーブルで言い争う二人のコマンダープレイヤー。

 二人は、互いにジオン側のコマンダープレイヤーにおいて、現在最高位の階級を有すると同時に。

 隷下に、多数のプレイヤー及びNPCを従えた、文字通り一個の軍と呼ぶにふさわしい最大規模の軍団の長でもあった。

 

 即ち、俺の野望のジオン側最大派閥の両頭である。

 

 そんな二人の言い争いに、口を挟もうとする他のプレイヤーはいなかった。

 否、出来なかった。

 

「まぁまぁ、両閣下、落ち着いてください」

 

 だが、そんな二人の言い争いに口を挟む者がいた。

 同じく円卓形式のテーブルにて今回の会議に参加していた、少将の階級を有するヒスパニック系の男性将官である。

 

「両閣下のご心配、まさにその通りです。ですが、ご安心ください! そんなご心配など、このジャブロー攻撃軍司令官のガルシア・ロメオが、間もなく杞憂に……」

 

「誰も貴様など当てにしてねぇよ!!(誰も貴方には期待していません!!)」

 

 今回の戦略会議にネームドの一人として参加してたガルシア・ロメオ少将は、息の合った二人の気迫に圧倒され、反論する事無く、直ぐに身を縮めるのであった。

 

 

 その後、話し合いの末。

 戦線縮小中の連邦軍に攻撃を仕掛け、戦線の再編成を遅滞させるという妥協点で落ち着き。

 それから幾つかの開発・生産の案などが話し合われ、その日の戦略会議は閉会したのであった。

 

 

 

 

「……という訳で、結局俺達からしてみれば、戦っていきましょうって事には変わりないんだけど。とりあえず、あまり身勝手に突出せず、深追い禁物って事で」

 

 こうして戦略会議の話を終えたランドニーは、最後に締めの言葉で締めくくり。

 第046独立部隊の面々はログアウトするのであった。

 

 

 

 

 

 

 そして翌日。

 第046独立部隊一行の姿は、旧ドイツと旧フランスの一部国境線となっているライン川。

 その近郊の旧ドイツ側田園地帯にいた。

 

 そこは、ヨーロッパ地域におけるジオンと連邦の最前線の一つでもあった。

 

「司令、ルッグンよりデータの転送を確認、モニターに表示します」

 

 艦橋内のモニターに、ルッグンから送られてきた最前線の様子の一部始終のデータが表示される。

 ライン川を挟んで、旧フランスの市街地側から連邦の部隊が、対岸の旧ドイツ側からジオンの部隊が、互いに撃ち合っている。

 

「全員聞こえるか? ブリーフィングの通り、今回の俺達のミッションは友軍部隊の掩護だ。ただし、昨日も言ったが、あまり深追いはするなよ」

 

「了解だ。所で、敵モビルスーツ部隊は、このデータ通りで間違いないんだな」

 

「あぁ、今の所、この小隊以外見当たらない」

 

 モニター上に表示された双方の戦力は、その殆どが戦車や装甲車などの通常兵器であった。

 そんな中で、連邦側にはモビルスーツで構成された一個小隊の存在が確認されていた。

 

 使用機種は陸戦型ガンダムで、内一機はロングレンジビームライフルを装備し、既にジオンの戦闘ヘリを数機撃墜していた。

 

「了解した」

 

 そんな敵モビルスーツ小隊の存在を再度確認した沙亜は、小さく笑みを見せた。

 

「よし、それじゃ、ミッション開始だ」

 

 そして、ランドニーの合図と共に、ギャロップより出撃していた鋼鉄の巨人達が、一斉に駆け出した。

 

「戦闘中の友軍部隊に連絡、こちら第046独立部隊、これより援護に入る、とな」

 

「了解!」

 

「さてと、とりあえず挨拶代わりに、ギャロップの主砲で援護といきますか」

 

 そんな鋼鉄の巨人達を他所に、ランドニーの搭乗するギャロップと僚艦のもう一艇は、後部に設けた大型連装砲の砲身を天高く向けた。

 刹那、ブリッジに響く爆音と小刻みな衝撃と共に、巨大な火焔が姿を現した。

 

「弾ちゃーーく、いまっ!!」

 

 ブリッジに響く艦橋乗組員の声と共に、ルッグンを介して送られてくる最前線の映像の一角で、突如、巨大な爆発が発生した。

 

「よーし、これで連邦も俺達の事に気が付いただろう」

 

「司令、戦闘中の友軍部隊から連絡です」

 

「よし、繋いでくれ」

 

「こちらヨーロッパ方面軍第一二装甲旅団、第一二三戦車大隊第二戦車中隊、第三戦車小隊小隊長のバリー軍曹であります! 援護、感謝します!!」

 

 友軍部隊から告げられる長い所属先の羅列に、一瞬頭が痛くなるランドニーではあったが。

 官姓名を聞くや、そんな苦痛も何処かへと吹き飛んだ。

 何故なら声の主が、ガンダムシリーズのOVA作品、機動戦士ガンダム 第08MS小隊に登場するジオン軍の下士官、バリー軍曹その人であったからだ。

 

 偶然のこの出会いに、ランドニーは平静を装っていたが、内心はやはり興奮を抑えられずにいた。

 

「司令、第一小隊が攻撃を開始します」

 

「え、あぁ、おう!?」

 

 と、艦橋乗組員の声に、今はミッションの方に集中しなければと気持ちを切り替えると。

 モニターに映る映像に、視線を合わせるのであった。

 

 

 

「ったく、ようやく援軍の到着か、仕掛けが遅いな、ジオンも」

 

 突如、砲撃により市街地に展開していた友軍の一部が文字通り吹き飛んだ事に焦ったどんちゃんであったが。

 まだ数的に、そして質に関しても自らの側に分があると信じていた彼は、そんな台詞を吐くのであった。

 

「どんちゃん! 敵モビルスーツ、は、早い!!」

 

「まっつん、撃て! 懐に飛び込まれる前に狙撃しろ!」

 

「り、了解!」

 

 まっつんが操る陸戦型ガンダムは、装備したロングレンジビームライフルを構えると。

 一拍置き、トリガーを引いた。

 

 地平線の彼方を目指し伸びる一筋の光線。

 どんちゃんはこれで一機片付けたと、そう思った。

 

「ど、どんちゃん! よ、避けられたぁ!!」

 

「何だとおぉ!?」

 

「って、おい、もう来てるぞ!」

 

 だが、まっつんの報告に素っ頓狂な声をあげると。

 次いで、彼はもう一人の仲間の声に、メインモニターに目をやった。

 

 するとそこには、バーニアを噴かせ、対岸からライン川を一気に飛び越えようとする赤い改造ザク。

 ザク・アライヴの姿があった。

 

「た、たった一機で突っ込んでくる気か!? んにゃろう!」

 

 と、どんちゃんが自機の装備する一〇〇ミリマシンガンの銃口をザク・アライヴに向けた、その時であった。

 

「な!?」

 

 ザク・アライヴの背部に装備した二基の五連装ロケットランチャーが火を噴いたのだ。

 

「なめるな! そんなロケットごときでやられる俺達じゃねぇ」

 

 しかし、どんちゃんは迫るロケット弾を一〇〇ミリマシンガンとバルカン砲等で撃ち落とす。

 そして、空に幾つかの爆煙が広がる中、それを突き破るかのように、ザク・アライヴが突撃してきた。

 

「な、なにぃ!?」

 

 バーニアを噴かせ爆煙の中から姿を現したザク・アライヴに、一〇〇ミリマシンガンが再び火を噴く。

 だが、巧みな操縦とスラスターの噴射で、飛来する一〇〇ミリ弾を避けながら、一気にどんちゃんの陸戦型ガンダムに迫るザク・アライヴ。

 

「これが、これがザクの動きだと──」

 

 刹那、懐に飛び込んだザク・アライヴの左手に装備したヒートホークが一閃されると。

 どんちゃんの陸戦型ガンダムは、左肩から右腰にかけて、見事に斬り裂かれた。

 

「あ、あれ、まさ──」

 

 その鮮やか過ぎる動きに、仲間の一人が難読彗星の沙亜であると気づくも。

 唖然と気を取られていた隙に、シモンの凶弾に倒されるのであった。

 

「え、ちょっと!? ま、まま!!」

 

 そして残ったまっつんも、抵抗空しく、ザク・アライヴの装備したザクマシンガンの凶弾に倒れるのであった。

 

 

 

「やっぱり、相変わらず凄いや」

 

「煽てても、何もないぞ」

 

「見返りなんて求めてないよ、ただ、純粋にその操縦技術を褒めてるだけだから」

 

 住宅の片隅や道端で、炎と黒煙を上げながら、七五ミリ弾により鉄塊と化した大口径バルカン砲重装甲車や61式戦車を他所に。

 ランドニーは、沙亜へ称賛の言葉を贈るのであった。

 

「こちらランドニー、連邦の部隊は粗方片付けたから、あとは友軍の部隊に任せて、俺達は引き上げるぞ」

 

「了解」

 

「了解だ」

 

 こうして無事に任務を終えた二人は、母艦に戻るべくそれぞれの乗機を母艦に向ける。

 

「そうだ、ユーリアン。私からも礼を言おう」

 

「え?」

 

「私が川を飛び越えている時、私を狙っていたバルカン砲をユーリアンが片付けてくれたのだろう?」

 

「あ、見てたんだ」

 

「当たり前だ。……アシスト、感謝する」

 

 そんな会話を繰り広げながら。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。