機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

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第二話 ソロモンよ、俺達は帰ってきた!

 ユーリアンが移動した宇宙要塞ソロモン。

 そこで最初に降り立ったのは、原作を再現しつつも、オンラインゲームとしての機能も取り込んだ、待合場所とも言うべき巨大なロビーであった。

 近未来的な内装が随所にみられる中、壁に設けられた巨大なモニターには、現在の戦況が表示されていた。

 

 ベータテストで行われた、ルウム戦役と呼ばれる、宇宙でのジオンと連邦との総力戦が終わり。

 南極条約と呼ばれる、今後の戦争のルール作りがなされた後。

 現在、ジオン公国は、連邦の庭である地球への侵攻作戦に向けた準備がなされている。

 

「さてと、先ずは機体の確認だな」

 

 プレイヤーやNPCで賑わいを見せるロビーを一通り見渡すと、ユーリアンは、移動を開始した。

 移動した先は、一つのドアの前。その脇には、オープン格納庫と書かれた看板が設けられている。

 

 自動ドアであるドアをユーリアンが潜ったその先に広がっていた光景は、文字通り、巨大な格納庫の光景であった。

 格納庫内には、様々なザクがハンガーに固定され佇んでいる。全高一七メートルを誇る巨人が整然と並ぶその様は、まさに圧巻と言える。

 そして、各機体の周囲には、作業着を着て作業に当たるNPCの整備士たちの姿も見える。

 まさに、アニメなどの作品で見られたシーンそのままの姿が、そこには広がっていた。

 

 この場所は、先ほどの看板に書かれていた通り、オープン格納庫と呼ばれる、モビルスーツ格納庫である。

 オープンの名が付く通り、この格納庫は、宇宙要塞ソロモンを拠点として活動しているプレイヤーのモビルスーツが収納されている。

 ただし、プレイヤーが保有している三機のモビルスーツではなく、搭乗登録している一機のみだ。

 残りの二機に関しては、プレイヤー個人が自由に使える個人格納庫に収納されている。

 

 さて、このオープン格納庫の利用目的であるが。

 自身の保有するモビルスーツを他のプレイヤーにも見てもらいたい、或いは、改造した機体を自慢したい。

 または、チームを組んでいる他のプレイヤー等と、モビルスーツ談議に花を咲かせたい等々。

 プレイヤー同士の交流の場として設けられている。

 

「えっと、俺の機体は……」

 

 運営の目論見通り、プレイヤー達が自分や他人の機体を前にして談笑している中。

 ユーリアンは彼らを他所に、自身の機体を探し始める。

 

「あった……」

 

 程なくして、彼はハンガーに固定されている、一機のモビルスーツの前で立ち止まった。

 ハンガーに固定されているのは、形式番号MS-06C、名称をザクIIC型と呼ぶモビルスーツであった。

 

 同機種は、原作において後に一年戦争と呼ばれるジオンと連邦との戦争、その戦争開戦時のジオンの主力モビルスーツである。

 C型の後継型にして、ザクの代名詞というべきF型に比べ、核攻撃との併用を前提とした設計の為、対核装備を備えたC型の全備重量は七二トンを超える程重く。

 対核装備を外し軽量強化されたF型と比較すると、機動性は高いとは言えない。

 

 そんな同機種の武装は、他のザクシリーズにも共通の一二〇ミリ口径のモビルスーツ用マシンガン、通称ザクマシンガンこと形式番号M-120A1。

 二八〇ミリ口径のモビルスーツ用バズーカ、通称ザク・バズーカこと、形式番号H&L-SB25K。

 そして、近接戦闘用のヒートホーク。

 その他にも運用可能な武装はあるものの、基本的な三種以外は、ゴールドを用いて購入する事で運用できる。

 

 なお、ゴールドを支払う事によりプレイヤー独自の塗装も施せるが、ハンガーに固定されているザクIIC型は、原作などに登場する一般的な緑色の塗装であった。

 

 因みに、ユーリアンはベータテストの参加時に、同機種の後継型であるF型に搭乗していたが。

 そのデータは、新規参加者との差を付け過ぎない措置の為か、引き継がれていないようだ。

 

「武装は、初期標準だな……。弾薬は、今はまだこのままでいいか」

 

 自身のザクIIC型の足元で、ユーリアンはタブレット端末を取り出し操作すると、画面に映った情報を目にしながら独り言ちる。

 プレイヤー個々人が所有するタブレット端末には、保有するモビルスーツの情報が確認できるようになっている。

 そして、ユーリアンが確認しているのは、装備に装填されている弾薬の種類についてであった。

 

 現実世界の銃器にも、様々な特徴を持った弾薬があるように。

 モビルスーツが使用する火器にも、様々な特徴を持った弾薬が用意されている。

 しかし、標準的な性能の弾薬以外は、概ねゴールドを消費して買わなければ使用できない。

 

 故に、まだゴールドをあまり浪費したくないユーリアンは、機体の情報を確認しただけで、特に手を加える事はなかった。

 

「よ! 未来のエースパイロット、新しい相棒の確認は終わったか?」

 

「あぁ、今終わった」

 

 機体の情報を確認し終えた矢先、ユーリアンの背後から、何者かが彼に声をかける。

 しかし、ユーリアンは声をかけた主が誰なのかを知っていいるらしく、特に驚くこともなく、振り返ると、親しい口調で話し始める。

 

「ランドニー、そっちの確認は?」

 

「おう、俺の方も確認済みだ」

 

 ランドニーと呼ばれた青年は、燃えるような赤い髪をオールバックに、青と黒のオッドアイが特徴的な端正な顔つきで。

 ユーリアン着ている軍服と異なり、マントが取り付けられ、同じく取り付けられた階級章は、彼が"少佐"である事を現していた。

 

 彼ことランドニー・ハートは、現実世界でユーリアンと交友関係のある人物、所謂リア友であり、ユーリアンと同じくベータテストの参加者でもある。

 そして、コマンダープレイヤーでもある。

 その証拠に、彼のプレイヤー名が示されている末尾には、丸括弧で囲まれたアルファベットのCの文字がある。

 これは、そのプレイヤーがコマンダープレイヤーである事を示し。パイロットプレイヤーであるユーリアンには、丸括弧で囲まれたアルファベットのPの文字がある。

 

「それじゃ早速、経験値稼ぎに行くか?」

 

「あぁ、イベントまでにF型位にはしておきたい」

 

「っと、その前にフレンド登録と軍団登録を済ませとかないとな」

 

「そうだった」

 

 互いに手にしたタブレット端末を操作し、フレンド登録と軍団登録を行う。

 程なくして、ユーリアンは、ランドニーとフレンド状態となり、また彼がリーダーを務める『第046独立部隊』の一員として、無事に登録完了となる。

 

 因みに、プレイヤーが設立した小隊及び軍団は、設立者のプレイヤーが自由に命名でき。

 ランドニーが命名した自身の軍団、第046独立部隊の由来は、楽しむの当て字である046と、ホワイトベース隊の正式名称たる第13独立部隊となっている。

 

「それじゃ、改めて経験値稼ぎに行きますか」

 

「その前に、俺達の母艦は?」

 

「ガガウル級駆逐艦をレンタルしておいた」

 

「流石、手際がいいな」

 

 母艦とは、母艦システムと呼ばれるシステムにおいて用いられる艦艇等の事で。

 活動拠点となっている場所に隣接しているエリア等に移動する際に利用、または、戦場などでも搭載する武装で、火力支援も可能となっている。

 

 エリア移動は、モビルスーツ等に搭乗すれば単独でも可能ではあるが。

 その際、戦闘などでも消費する推進剤が消費される為。移動先のエリアで戦闘をする場合、母艦で移動した機体よりも、活動時間が短くなるデメリットとなる。

 つまり、母艦を利用しエリア移動すれば、戦闘での活動時間は最大限まで確保でき。

 更には、火力支援や種類によっては補給なども受けられるのだ。

 

 ただし、そんなメリットが多い分、母艦となる艦艇等は、モビルスーツよりも購入金額が割高に設定されている。

 しかし、そんな割高な艦艇等でも、プレイヤーに手を出しやすいよう、レンタルという一時的な入手方法が存在している。

 使用期限が設定されてはいるが、ゴールドの少ないプレイヤーにとっても、また、ゴールドを貯めたいプレイヤーにとっても、ありがたい存在と言える。

 

 なお、各艦艇等は、原作の設定を基にして、モビルスーツなどの搭載可能機数が設定されており。

 今回の場合、ランドニーがレンタルしたジオン公国の簡易モビルスーツ運用宇宙駆逐艦、ガガウル級駆逐艦は、搭載可能機数が二機と設定されており、三機以上のモビルスーツは搭載できない。

 

 しかし、現在搭載できるモビルスーツはユーリアンのザクIIC型のみの為、定数は全く問題なかった。

 

「それじゃ、いざ、出撃!」

 

「おう!」

 

 オープン格納庫を後にした二人は、ロビーを素通りし、とある巨大なドアの前までやって来た。

 ドアの脇には、フィールドエリア移動、の文字が書かれた看板が掲げられている。

 

 巨大なドアの前に現れた最終確認というべき選択を、二人は"はい"をタッチして選択すると。

 刹那、巨大なドアが開き、ドアの向こうから光が溢れ出ると、二人の体が光に包まれた。

 

 そして、光が収まる頃には、二人は、軍服から宇宙服に着替え、先ほどまでとは別の場所にいた。

 それは、ランドニーがレンタルしたガガウル級駆逐艦の艦橋内であった。

 

「管制室より、出港の許可確認」

 

「よーし! 直ちに出港だ!」

 

「了解、出港します」

 

 艦橋乗組員を務めるNPCに、艦長席に座るランドニーが出港指示を出すと、船体が、ゆっくりと前進を開始する。

 スペースランチや宇宙服を着た作業員達の間を器用に進みながら、バースの出入り口たる第五スペースゲートを潜り、二人を乗せたガガウル級駆逐艦は、宇宙空間へと飛び出した。

 

「おぉ、懐かしの宇宙(そら)! そして、宇宙要塞ソロモン! ……ソロモンよ! 俺達は(俺の野望に)帰ってきたぁぁぁっ!!」

 

「それ、ちょっと違わないか?」

 

「いいんだよ。こういうのは雰囲気とかノリが大事だからさ」

 

 艦長席でハイテンションなランドニーに、隣に佇むユーリアンがツッコミをいれる。

 その一方、艦橋乗組員であるNPC達は、ランドニーのハイテンションに反応を示す事もなく、淡々と各々の作業に勤しむのであった。

 

 

 

「あーあ、早い所、経験値の養分さんに出てきてほしいものだな」

 

 宇宙要塞ソロモンを出港してから数十分。

 二人を乗せたガガウル級駆逐艦は、獲物を探す為、隣接する宙域に進出していた。

 しかし、獲物は簡単には見つからず。現実世界とは時間の流れが違うとはいえ、獲物を探して宇宙空間をさまようのは、退屈であった。

 

「マゼラン級とか、サラミス級とか」

 

「おいおい、いくら何でもマゼラン級はヤバいって」

 

「いやいや、第046独立部隊が誇るエースパイロットのユーリアン軍曹の腕前を持ってすれば、マゼラン級の一隻や二隻、楽勝だろう」

 

 茶化すような笑顔と共に口にしたランドニーの言葉に、ユーリアンはため息をついた。

 原作等では、モビルスーツに対していい的でしかない様な描写で描かれる事も多い、連邦の宇宙艦艇であるが。

 俺の野望では、簡単に撃沈できる的ではなく、その強力な火力を生かした難敵として、ジオン側プレイヤー達の前に立ちはだかっている。

 

 勿論、機体を改造・強化、或いは開発した強力なモビルスーツならば、簡単に撃沈する事も可能であるし。

 腕に自信があれば、性能の低い機体であろうとも、撃沈する事は不可能ではない。

 

 だが、今のユーリアンは、複数で連携するならばまだしも。

 単機でマゼラン級を撃沈できるほどの腕前を持っていると自負できるとは、自身では思えなかった。

 

「ま、なんにしてもだ。いい加減敵さん出てきてほしいよな」

 

「そんなこと言ってると、本当に出てくるぞ」

 

「フラグってか? 幾らなんでもそんな都合よく……」

 

「長距離レーダーに感! IFF(敵味方識別装置)反応ありません!」

 

「マジ?」

 

 レーダー手を務める艦橋乗組員からの突然の報告に、ランドニーは一瞬呆気に取られる。

 しかし、直ぐに頭を振るい気持ちを引き締め直すと、反応した物体の解析を急ぐよう命令を下す。

 

「解析完了。連邦軍のレパント級ミサイルフリゲートと確認、また敵艦周囲に複数の戦闘機を確認!」

 

「レパント級一隻にセイバーフィッシュが数機……。小規模な偵察部隊だな。ザニーは確認できないから、おそらくNPCの部隊だろう」

 

「なら、経験値の養分に最適だな。欲を言えば、もう少し数は欲しかったが」

 

 拠点となる特別エリア以外のフィールドエリアには、同エリアに進出してきた相手勢力のプレイヤー以外にも、様々なNPCの部隊が出現する。

 NPCの部隊はフィールドモンスターというべき存在で、両勢力のプレイヤーにとっては、経験値やゴールドを稼ぐのに丁度いい敵なのだ。

 因みに、出現するNPCの部隊編成はランダムで、今回のような小規模な事もあれば、パトロール艦隊等の小規模艦隊という編成もあり。

 当然ながら、質と量が高くなればなるほど、手に入る経験値やゴールドも増えていく。

 

「ま、最初だからあれ位でいいんじゃないか? 囲まれて撃墜されちゃ、元も子もないし」

 

 ただし、ランドニーの言った通り。

 NPCだからと油断して撃墜されれば、機体の買い直し等、結果的にマイナスになる可能性もある。

 

 遭遇しても全滅させなければならない事はないので、引き際を見極める事も、プレイヤーには要求される。

 

「じゃ、出撃準備に入る」

 

「オーケー、そんじゃ、ミノフスキー粒子を散布し終えたら出撃してくれ」

 

 出撃準備の為、艦橋を後にしたユーリアンは、通路を移動しながらヘルメットを装着すると、艦の両弦に設けられているドッキング・ベイにつながる扉を潜った。

 原作の設定では、ドッキング・ベイに露天繋止しているモビルスーツへの乗降には、チューブを用いたが。

 俺の野望では、そこまで再現はされておらず、扉を潜ればすぐにモビルスーツのコクピットに乗降できる。

 

「ランドニー、こっちはいつでも出撃できるぞ」

 

 シートベルトを締めながら、起動に必要なスイッチを入れていくと。

 ザクのメインカメラたるモノアイが赤い光を発し、機体が稼働状態となる。

 

「了解だ。たった今、ミノフスキー粒子を散布し終えた。ミノフスキー粒子を散布したから、敵も急激な濃度上昇で俺達がいる事には気づいただろうが、まだ正確な位置まではつかめてない筈だ」

 

「分かった」

 

「よし、それじゃ、第046独立部隊の正規サービスでの初陣といきますか」

 

「ユーリアン、出ます!!」

 

 ユーリアンの掛け声と共に、ザクIIC型を固定していたアンカーが外れ、機体が大宇宙へと放出される。

 ユーリアンはフットペダルや操縦桿を巧みに操り、バーニアやスラスターを駆使して機体の姿勢を整えると、レーダー画面を頼りに、敵艦目掛けて機体を進ませた。

 

「援護が必要ならいつでも言ってくれ、直ぐに援護射撃する」

 

「了解」

 

 ランドニーからの通信に応対しつつ、ユーリアンはバーニアの出力を上昇させ、機体速度を上げつつ敵艦を目指し続ける。

 

「っ!? 撃ってきた!」

 

 やがて、コクピット内に警報音が鳴るや、直後、漆黒の大宇宙を光の線が走った。

 警報音に反応しスラスターやAMBACを駆使し、光の線、レパント級ミサイルフリゲートの主砲である単装メガ粒子砲を避けると、臆する事無く敵艦を目指して進み続ける。

 

「お出迎えか……」

 

 レパント級ミサイルフリゲートの主砲が唸りを上げ、更にはミノフスキー粒子によって誘導性が低下したものの、搭載されたミサイル類がユーリアンのザクIIC型目掛けて放たれ続ける中。

 新たな敵が、ユーリアンのザクIIC型目掛けて襲い掛かる。

 

 それは、レパント級ミサイルフリゲートの周囲に展開してたセイバーフィッシュであった。

 

「っ、この!」

 

 メインモニターに映し出される、編隊を組んで襲い来るセイバーフィッシュ。

 刹那、機首に装備された四基の二五ミリ機関砲が火を噴き、ユーリアンのザクIIC型の表面装甲を叩く。

 だが、二五ミリ機関砲如きでは、ザクの装甲は貫けない。

 

「お返しだ!」

 

 何発か二五ミリ機関砲を被弾しながらも、そんな事は意に介す事無く、手にしたザクマシンガンが火を噴き始めた。

 モビルスーツと異なり、ただの戦闘機であるセイバーフィッシュにとっては、一二〇ミリ弾は一発被弾しただけでも致命傷である。

 回避を試みたものの、ザクマシンガンから放たれた一二〇ミリ弾は、無情にもセイバーフィッシュを貫き、二機が爆発と共に宇宙の塵と化す。

 

「これで!」

 

 相変わらず放たれるレパント級ミサイルフリゲートからの攻撃を回避しつつ、ユーリアンは、残ったセイバーフィッシュへの攻撃を続ける。

 旋回途中の一機を撃墜し、残るは、二機のみとなった。

 

「終わりだ!」

 

 互いに正面から対峙する両者、互いの火器が火を噴き、片や致命傷を与えられず、片や一機が撃墜される。

 最後に残ったセイバーフィッシュが、死なばもろともと直撃コースでユーリアンのザクIIC型に迫るも。

 

 ユーリアンは巧みな操縦で機体を翻し、セイバーフィッシュの体当たりを躱すと、がら空きとなった背後から一二〇ミリ弾を叩きつけ、最後の一機を撃墜する。

 

「残るはフリゲートだけ……」

 

 最後に残った、先ほどから鬱陶しく攻撃を続けるレパント級ミサイルフリゲートを仕留めるべく、ユーリアンはバーニアを噴かして機体を進めた。

 

 迫りくるユーリアンのザクIIC型を墜とそうと、レパント級ミサイルフリゲートは二連装対空機銃も加え、猛攻を続ける。

 しかし、ユーリアンは巧みな操縦による機動で猛追を避けながら、自身に狙いを定めている武装に一二〇ミリ弾を叩きつけていく。

 船体の各部に設けられた武装から火が上がる中、それでもレパント級ミサイルフリゲートは、使用可能な武装を唸らせ続ける。

 

「いい加減墜ちろ!」

 

 だが、そんな健闘も空しく、レパント級ミサイルフリゲートに最後の時が訪れる。

 レパント級ミサイルフリゲートの艦橋上部を位置取ったユーリアンのザクIIC型は、手にしたザクマシンガンの一二〇ミリ弾を、艦橋目掛けて叩きつけた。

 

 一二〇ミリ弾が艦橋上部に直撃したレパント級ミサイルフリゲートは、一部の一二〇ミリ弾が艦橋部を貫き、船体内部の弾薬等に着火させたのか。

 程なくして、内部から放たれた爆破エネルギーによって、船体を真っ二つにするように、爆破撃沈した。

 

「ふぅ……」

 

 レパント級ミサイルフリゲートの爆沈を見届けたユーリアンは、無事に敵を倒せたことに安堵すると。

 母艦からの帰還信号を頼りに、機体を翻し、帰還の途に就くのであった。

 

 

 母艦であるガガウル級駆逐艦に、機体と共に無事に帰還したユーリアンは。

 コクピットから、再びガガウル級駆逐艦の艦橋に舞い戻った。

 

「よぉ、ヒーロー、おつかれさん。無事の生還だな」

 

「あぁ、おかげさまで」

 

 脱いだヘルメットを小脇に抱えながら、ユーリアンはランドニーとの会話で、戦闘での緊張を和らげる。

 

「いやー、それにしても。ベータテストの時に比べ、我らがエースパイロット殿の操縦技術は、メキメキと上達してますなぁ」

 

「お、おい……」

 

「覚えてるか、ベータテストのブリティッシュ作戦の時の事。お前、推進剤の残量も考えずに動きまくって、最後に仕留めようとしたサラミス級の爆発から逃れる分の推進剤がなくて、危うく爆発に巻き込まれそうになってたよな」

 

「その話は、もういいだろ」

 

「あの時、親切な他のプレイヤーが助けてくれなきゃ、どうなってたか。……ま、締まらないのはどっちでも変わらないけどな」

 

 誰だって最初はおぼつかないものだ、しかし、失敗や挫折を繰り返し、人は成長していく。

 ユーリアンもまた、そんな失敗や挫折を経験して成長している一人であった。

 

「それじゃ、一旦ソロモンに戻って機体の整備と補給を行うか。こいつ(ガガウル級駆逐艦)じゃ、できないしな」

 

 母艦によっては、補給と整備を行えない艦種も存在する。

 モビルスーツを運用できるとは言え、ガガウル級駆逐艦はあくまでも簡易的な露天繋止方式の為、補給と整備を行うには、一旦宇宙要塞ソロモンに戻る必要がある。

 

「ま、一旦戻って補給と整備を行っても、まだ時間に余裕はあるだろ?」

 

「まだ少しはな」

 

 艦橋モニターの右端に表示されている二つの現在時刻。

 一つは俺の世界の現在時刻で、もう一つは、現実世界の現在時刻である。

 

 現実での生活との兼ね合いもある為、長時間プレイできない二人。

 しかし、ギリギリまでプレイを続けるようだ。

 

「じゃ、さっさと戻って、補給を整備を済ませて、また経験値とゴールド稼ぎに出かけるか」

 

「おう!」

 

 こうして、二人を乗せたガガウル級駆逐艦は、宇宙要塞ソロモンへと帰還するのであった。

 その後、補給と整備を終え、再び出港するも。

 結局、その日のプレイ時間ギリギリまで、敵と会敵する事は叶わなかった。

 

 

 こうして、俺の野望正規サービス初日を終えたユーリアンこと優は。

 新しい生活への活力に大満足しつつ、明日に備えて就寝準備を進めるのであった。




この度は、ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
今後とも、どうぞご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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