機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

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外伝 戦場はこ──、アレ?

 イベント発生後、両勢力、特にジオン側のプレイヤー達は、アムロの乗機等を含めたホワイトベース隊の、原作との差異、その理由について議論を交わした。

 

 イベント映像の他、独自に収集した情報などを整理すると、どうやらホワイトベース隊の変更点はアムロの乗機だけではなかった。

 まず一つは、上級士官は少ないものの、下士官等、ホワイトベースには襲撃を生き残った相当数の正規クルーが乗艦しており、人的な余力を持っている事。

 また上記により、原作通りの民間志願パイロットの他、複数の正規パイロットを擁している関係から、運用する戦力も大幅に増加。

 内訳は、ガンダムNT-1一機にガンキャノン三機、ガンタンク三輌にコア・ファイター数機、そしてガンペリーの名を持つ戦術輸送機一機を搭載している。

 

 なお、未確認の噂程度ではあるが、予備戦力としてRX-78系統の機体を搭載しているとの情報も流れている。

 

 

 この様に、原作よりもパワーアップしているホワイトベース隊。

 この様な原作からの変更について、プレイヤー達が議論し、そして導き出された仮説は、差別化を図る為、というものであった。

 

 イベント発生時、両勢力の廃人プレイヤーは言わずもがなだが。

 上級プレイヤーや一部中堅プレイヤーも、既に原作の設定でRX-78-2 ガンダムに匹敵するとされる、一年戦争末期に登場する高性能モビルスーツを保有しており。

 この為、原作主人公及び物語の中心となるホワイトベース隊の差別化が図りにくくなる。

 その結果、変更が行われたのではないか、との仮説を立てたのであった。

 

 なお、変更としてアムロの乗機がガンダムNT-1に選定されたのも、本機の設定で、最終的にアムロ専用に調整された。というものがあったり。

 また、別のゲーム作品において、同機がファンサービスの一環としてアムロの搭乗機として扱われた事もある等。

 上記を加味した結果の選定ではないか、との仮説も立てられている。

 

 

 しかしながら、変更の理由がどうあれ、ジオン側のプレイヤー達にとっては、ホワイトベース隊の存在は無視できぬ頭痛の種に違いはなかった。

 その為、急遽、戦略会議が開かれ、ホワイトベース隊に対する今後の対応について、話し合いがなされた。

 

 当然ながら会議は紛糾したが、意見としては大まかに二つの意見に分かれた。

 一つは、不安の芽は小さいうちに摘んでおく。即ち、まだ経験が浅く、原作の本編後半で描かれた様な能力を開花させていない現状で叩き潰す、という意見と。

 もう一つは、あえて積極的に手を出さず、こちらからは最低限の監視のみを行う。

 即ち、ホワイトベース隊が伝説的な部隊となったのも、ジオンが次々に同部隊に対してエースをぶつけ経験値を献上した為であり、不必要に経験値を積ませなければ、化け物じみた成長はなく、並の練度に収まるだろう。という意見だ。

 なお、この意見には、正史になぞってジオン側のネームドを不必要に戦死させる必要はない、との側面もある。

 勿論、主人公補正云々という無粋な意見は、この際脇に置いておく。

 

 当然、どちらの意見にも一長一短はある。

 早々にホワイトベース隊を撃破できたとして、アムロ達ネームドが必ず死亡するとも限らず。

 また、必要以上に手を出さなかったとしても、ホワイトベース隊の練度が原作と同様にならないとの確証もない。

 

「もう既に、連邦側には黒い方の悪魔がいるのに、この上白い方の悪魔まで呼び出す事はない」

 

「長期的な視野で考えれば、ネームドと言う人材資源をいたずらに浪費すべきではない」

 

「でもやっぱり、名場面を見たいよね? ね?」

 

「ラル大尉には是非、アムロ相手に、グフとは違うのだよとか、ドムとは違うのだよ、とか言ってもらいたい!」

 

 ──等々。

 どちらの意見を踏まえて対応を行うか、会議は更に紛糾し。

 そして、激しい意見の対立の末、遂に、決定が下った。

 

 それは、ジオンの勝利に必要である貴重なネームドの保護を行う観点からも、最低限の監視のみで積極的に手を出さないという意見を採用し。

 同意見を基本方針とし、今後はホワイトベース隊に対する具体的な対応を行う。

 という最終決定を下し、ジオン側のプレイヤーに通達するのであった。

 ただし、事態の推移によっては臨機応変に対応する。という注釈も添えて。

 

 

 

 

 

 こうして、ホワイトベース隊に対する基本方針が決定し、ジオン側がそれに従い動き出した頃。

 正史とは異なるジオンの動きに影響を受ける事となる人物にも、新たな動きが生じ始めていた。

 

 その者は、ジオン側の上記の行動の為、本来の奪還・破壊命令も命ぜられることなく、補給を受ける事もなく。

 サイド7から、最寄りにして唯一の拠点である宇宙要塞ルナツーまでの航路上での襲撃を警戒した連邦プレイヤー達が、過剰なまでに戦力を投入して守りを固める中。

 イベント要員の為、難なく宇宙要塞ソロモンへと、母艦のファルメル共々帰還を果たした。

 

「むぅ……。しかしだな、シャア。今回の件について、誰もお前を罷免せよと声を挙げている訳ではないのだから」

 

「いえ、これは私なりのけじめなのです」

 

 宇宙要塞ソロモンの一角。

 同要塞の主が執務を行う為に設けられた執務室にて。

 部屋の主にして宇宙要塞ソロモンの主、更には同要塞を根拠地とする宇宙攻撃軍の司令官でもある。

 身長二メートルを超える巨漢に、顔の各所に縫合跡や傷痕が幾つも残る強面。そして、ジオン公国の中枢を担う一族の一員である四十代手前の男性。

 

 ドズル・ザビ中将は、自らの執務机を挟んで対峙するシャアの頑固な様に、困り果てた表情を浮かべていた。

 

「確かに、部下三名を失った事実は変わりないが。だがそれは、何もお前の責任ばかりでは……」

 

「いえ、貴重なモビルスーツパイロットを三名も失ったのは、私の不徳の致すところ。その責任は、取らせていただきたい」

 

「むぅ、しかしだな……」

 

 上官であるドズル中将は、サイド7での一件に関するシャアへの処分を擁護したい考えであったが。

 当人のシャア自身は、処分を甘んじて受け入れる姿勢を崩さず、ドズル中将の説得に応じる気配はない。

 

 こうして、同じようなやり取りを何度か繰り返した後。

 

「分かった。……それで、貴様の気が済むのなら、俺としては不本意だが、仕方ない」

 

 ドズル中将は渋々、執務机の上に置かれた一枚の書類に自身のサインを行うと、その書類をシャアに手渡した。

 

「だが忘れるな、宇宙攻撃軍のお前の席は、いつでも空けているとな」

 

「承知しました」

 

 敬礼し、ドズル中将の執務室から退室したシャアは。

 一度、手にした書類を何気なく見つめると、不意に、誰もいない廊下で不敵な笑みを浮かべる。

 

 シャアが手にした書類には、自身の人事異動に関する記述が書かれていた。

 その内容は、中佐への昇進の上、地球方面軍に編入、同軍隷下の潜水艦部隊の司令官に任命するものであった。

 

 一見すると処分どころか栄転にも思える内容だが。

 実は、ジオン公国軍において、潜水艦部隊は閑職なのである。

 元々、ジオン国国軍はその活動範囲が宇宙のみの為、当然ながら潜水艦のような軍艦を運用する必要はなかった。

 所が、地球侵攻作戦に伴い活動範囲が地球上にまで及ぶと、地表の七割を占める海洋での活動に際して、専用の艦艇の必要に迫られた。

 

 そこで、地球侵攻作戦に伴い、制圧した際に鹵獲した連邦海軍の艦艇を自軍戦力として改装したうえで運用を始めた。

 こうして地球方面軍隷下に、海洋戦力部隊が新設された訳だが。

 当然ながら、艦艇などを動かすには人員が必要となる。そこで、軍上層部は、宇宙艦隊の人員から、必要な人員を捻出する事とした。

 その際、海洋戦力部隊の人員として選定される基準となったのが、素行不良や軍上層部に覚えめでたくない者等、所謂厄介者であった。

 この半ば懲罰人事によって運用される事となった海洋戦力部隊は、一部では、懲罰部隊と揶揄されている。

 

 この様な経緯で運用されている海洋戦力部隊。

 その一部である潜水艦部隊も、当然ながら懲罰部隊の一部の為、エリートコースをひた走っていたシャアにとっては左遷も同然であった。

 

 しかしながら、本人にすれば、この左遷人事は、落胆するものではないようだ。

 

 

 

 

 

 こうして、シャアにも新たな動きが現れ始めた頃。

 ホワイトベース隊にも、新たな動きがあった。

 

 ホワイトベース隊は、原作の通り、地球連邦軍の総司令部ジャブローを目指し、宇宙要塞ルナツーを出航する。

 護衛に護られながら、ホワイトベース隊は順調に衛星軌道上に到着すると、ジャブローに降下すべく大気圏への突入を開始しようとした。

 原作等であれば、このタイミングでシャアによる追撃を受け、降下地点が南米から北米にずれるというアクシデントに見舞われるのだが。

 俺の野望では、シャアによる追撃もなく、当初の予定通りジャブローに降下すると思われていた。

 

 所が、事態は、ジオンどころか連邦側ですら予期していなかった方向へと進んでいく事となる。

 

 

 その一報は、両勢力にほぼ同時に伝わった。

 内容は、ホワイトベース隊が大気圏突入を行うタイミングで、ジオンの部隊が奇襲を仕掛けたというものであった。

 しかも、どうやらその部隊はNPCではなく、プレイヤー部隊であり。

 一旗上げたいが為に、通達は認識していたものの、大気圏突入を行うタイミングでホワイトベース隊に対して奇襲を仕掛けたとの事。

 

 だが、奇襲を仕掛けたプレイヤー部隊の練度はそれ程高くない事が幸いし。

 ホワイトベース隊はこの奇襲を退ける事に成功した。

 

 が、両勢力のプレイヤー達を驚愕させたのは、この後の出来事であった。

 

 何と、奇襲を仕掛けたプレイヤー部隊を迎撃する為出撃したアムロの操るガンダムNT-1を収容する為、ホワイトベースが突入角度を変更した事で、本来の降下地点であるジャブローから大きく外れ。

 ホワイトベース隊は、ジオンの勢力圏内である『アフリカ大陸北部』の旧エジプトの西方砂漠と呼ばれる砂漠地帯に降下してしまったのだ。

 

 この一報を聞いた連邦側プレイヤーの一人は。

 

「ここコズミック・イラじゃねぇよ!!?」

 

 と、予想もしていなった展開に、声を荒らげるのであった。

 正史では、ホワイトベース隊は大気圏突入の際の奇襲で、北アメリカに降下する。

 所が今回は、ホワイトベース隊にとって原作内でも縁もゆかりもないアフリカ大陸の北部に降下してしまった。

 

 因みに、プレイヤーが口にしたコズミック・イラとは。

 ガンダムシリーズの一つであり、新世紀のファーストガンダムを標榜して制作された、機動戦士ガンダムSEEDの世界観の紀元である。

 同作品には、その標榜通り、機動戦士ガンダムのオマージュが多く見られ。

 その中の一つに、同作品でホワイトベース的立ち位置の母艦アークエンジェルが、敵であるザフトとの戦闘により、当初の降下地点であるアラスカから、アフリカ大陸北部に降下してしまうというエピソードがあり。

 プレイヤーは、まさかの逆輸入的な今回の展開を言い表すように、先の台詞を口にしたのだろう。

 

 この原作の輪から外れた未知の展開に、連邦側は、頭を悩ませる事となる。

 

 

 が、それ以上に頭を悩ませているのが、誰であろうジオン側であった。

 何故なら、万が一にもホワイトベース隊が北米に降下してしまう可能性は考慮していたが、アフリカ大陸北部は、全くもって想定の範囲外であったからだ。

 

 戦場が荒野ではなく砂漠となったこの展開に、降下地点周辺で活動するプレイヤー等を含め。

 ジオン側は、混乱の嵐に見舞われるのであった。

 

 

 そして、今回の展開を受けて、両勢力のプレイヤー達は改めて認識させられる事となる。

 ホワイトベース隊が両勢力を引っ掻き回す存在である事は、俺の野望でも変わりないのだと。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。
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