機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

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第二十一話 外人部隊と模擬戦

「ケン、分かってると思うけど、手抜いちゃだめだからね!」

 

「あぁ、分かっている」

 

「隊長、三対一なんだから、少しくらい手抜いておちょくってやりましょうよ」

 

「ジェイク、あまり油断していると、足元をすくわれるぞ」

 

「レッド・ツー、レッド・スリー。兎に角、先ずは慎重にいくぞ。基はグフとはいえ、データの無い改造機だ」

 

 そして、開始の合図と共に模擬戦が始まった。

 

 ケンの指示通り、まとまって行動するレッドチームの三機に対して、グフ・インフェルノは早々にバーニアを噴かせ、近くの建造物に飛び乗ると、そのまま屋上伝いにレッドチームの方を目指す。

 

「にしても、レッド・ゼロのサポートなしじゃ、相手がどの方向から近づいてるのか分からなくて不便で仕方がないぜ」

 

「ジェイク、レッド・ゼロのサポートまで付けたら、模擬戦の意味がなくなっちまうぞ。ただでさえ、数的にはこっちが有利なんだぞ」

 

「でもねぇ、ガースキー曹長」

 

 因みに、今回の模擬戦には、この他ミサイルやバズーカの類の仕様も厳禁とされている。

 理由は、万が一が起こってはならない為である。

 

「二人とも、お喋りはそこまでだ。お相手のご到着だぞ」

 

 私語を慎まない二人であったが、ケンの言葉に、二人の表情に緊張が走り、言葉数が途端に少なくなる。

 各々が装備したザクマシンガンの銃口を、予測方向へと向けると、レティクル内にグフ・インフェルノが現れるのを待った。

 

 そして、程なくして、彼らのレティクル内に、建造物の屋上を伝って接近するグフ・インフェルノの姿が現れた。

 

「遮蔽物の無い屋上から接近する、その度胸は認めてやる! だが!」

 

 刹那、ケンの陸戦高機動型ザクが装備した、銃身ガードとバレルジャケットを装備した、ザクマシンガン中期生産型が火を噴き。

 それに続くように、ガースキーとジェイクの陸戦型ザクIIが装備するザクマシンガンが火を噴いた。

 

 演習用に、着弾すると外装が割れ、塗料が付着する。

 そんな仕組みの演習弾がグフ・インフェルノに襲い掛かるも、シールドで防ぎつつ、グフ・インフェルノは歩みを止めない。

 塗料により、シールドをカラフルに染めながら、やがてグフ・インフェルノは、再びバーニアを噴かせると、屋上を蹴り、空高く跳躍した。

 

「く! 全機、建物の影に隠れろ!」

 

 ケンの指示で各々が身近な建造物の影に身を隠すと、刹那、空高く位置取ったグフ・インフェルノから、自らの銃撃に比べればまるで嵐のような七五ミリ演習弾が降り注ぐ。

 その勢いや凄まじく、一瞬にして着弾点一帯を鮮やかに染め上げる。

 

「凄まじい弾幕だな。各機! 建物を盾にしつつ、攻撃を続けるぞ」

 

「レッド・ツー、了解」

 

「レッド・スリー、了解だ」

 

 建造物を盾にしつつ、攻撃を再開するレッドチーム。

 

「それにしても、機体の性能か? それともパイロット自身の腕か? 空中であれ程姿勢制御をやってのけるとは……」

 

 自分達の頭上を飛び回るグフ・インフェルノ。

 そのアンバランスな見た目に反して、空中ではまるで無重力で戦っているかの如く姿勢を崩さない。

 

(いや、例え機体の性能が高くとも、それを最大限まで引き出せるか否かは、パイロットの腕次第だったな)

 

 ふと、ケンは機体を生かすも殺すもパイロット次第である事を思い出すと、ユーリアンの操縦技術に内心舌を巻いた。

 

「隊長! このまま攻めあぐねてちゃ、何時まで経っても状況は好転しませんよ! 数じゃこっちが有利なんだ、一気に畳みかけましょう!」

 

「まて、ジェイク! 今はまだ我慢を……」

 

 と、いい加減頭を抑えられ続ける事に対して我慢の限界に達したのか、ジェイクの陸戦型ザクIIが建造物の影から飛び出した。

 その時、不意にジェイクの陸戦型ザクIIの右脚に、何かが飛来し付着した。

 

「ぬわぁぁぁ!?」

 

「ジェイク!?」

 

「あ、馬鹿、くそ!」

 

 空から飛来した細長いそれは、グフ・インフェルノの放ったヒートロッドであった。

 ヒートロッドが右脚に付着したとジェイクが認識したのも束の間、勢いよく引っ張られ、開始前にガースキーが言っていた通り、足元をすくわれ転倒するジェイクの陸戦型ザクII。

 しかも、それだけにとどまらず、近くのガースキー機目掛けて引きずられる。

 

 ぶつかるまいと建物の影から飛び出すガースキーの陸戦型ザクIIだが。

 次の瞬間、演習弾の嵐によって、機体が鮮やかに彩られてしまった。

 

「悪い、隊長。やられっちまった」

 

「お、同じく……」

 

 撃破判定を受けたガースキーとジェイク。

 

「いや、よくやった二人とも。後は任せておけ」

 

 そんな二人に労いの言葉をかけるケンであったが。

 内心、彼は焦っていた。

 数的優位が崩れ、機体性能でも相手が上回る現状、不利な立場に追いやられたからだ。

 

 だが、それでもケンは諦めてはいなかった。

 何とかこの不利な立場を逆転する手立てはないか、思考を巡らせる。

 

「一対一の真剣勝負という訳か……」

 

 と、不意に演習弾の雨が止み、モノアイを動かすと。

 そこには、まるでケンの陸戦高機動型ザクが建造物の影から出てくるのを待つかのように、大通りの真ん中で佇むグフ・インフェルノの姿があった。

 

 それに応えるように、程なくケンの陸戦高機動型ザクが建造物の影から大通りへと姿を現すと、暫し対峙する両機。

 

「ゆくぞ!!」

 

 刹那、ケンの陸戦高機動型ザクが先に仕掛ける。

 再びザクマシンガン中期生産型の銃口をグフ・インフェルノに向けると、間髪入れずにトリガーを引く。

 

 放たれた一二〇ミリ演習弾は、地面や建造物、そしてグフ・インフェルノのシールドに着弾する。

 

 攻撃を受け流しながら接近するグフ・インフェルノ。

 対してケンは、後退しながら撃つことを止めない。

 シールドを使用していれば、二連装七五ミリガトリング砲は使用できないからだ。

 

 加えて、この大通りの両脇には、背の高い建造物が立ち並び、脇道などはない。

 故に、横に避ける事も叶わず、何れ焦って隙を作ると、ケンはそう踏んでいた。

 

「なに!?」

 

 だが、そんなケンの見当に対して、グフ・インフェルノは予想外の行動に出た。

 何と、不意に足る速度を上げたかと思えば、脇に立ち並ぶ建造物の外壁を、重力に逆らって走り始めたのだ。

 

 勿論、それは勢いのある一瞬の出来事だったが。

 その予想外の行動に、唖然としてケンが攻撃の手を休めてしまった、その隙を作り出す事には成功していた。

 

「っ!!?」

 

 我に返り、攻撃を再開しようとした頃には。

 既に、ケンの陸戦高機動型ザクの上半身は見事に再塗装が施され。

 

 コクピットのメインモニターには、間近に迫った二連装七五ミリガトリング砲の銃口が映し出されていた。

 

 

 

 

 グフ・インフェルノとレッドチームとの模擬戦は、グフ・インフェルノの勝利で幕を下ろした。

 そして、所定の位置へと戻り、乗機から降りたパイロット達は、お互いの健闘を称える握手を交わすと、他の皆が待つ観覧室へと足を運ぶと、そこで目にしたのは。

 

「あら、流石に難読彗星の沙亜と呼ばれるだけの事はありますね」

 

「ふ、そちらも、ただの秘書官にしては大層やる。……能ある鷹は爪を隠す、という事か」

 

「お褒めに預かり光栄だわ!」

 

 十字路の真ん中で、予備機のザクIIS型とザク・アライヴが、互いに装備したヒートホークで鍔迫り合いを行う。

 巨大モニターが、そのような光景を映し出している情景であった。

 

「た、大佐……。もしかしてあのS型に乗ってるのって」

 

「それ以上は言うな、レッド・リーダー」

 

 スピーカーから聞こえるザクIIS型のコクピット内の音声に、とても聞き覚えのあるケンは、堪らずダグラス大佐に確認しようとした。

 だが、結局ダグラス大佐に制止され、それ以上確認はできなかった。

 

 しかし、観覧室内に声の主と目星をつけた人物の姿は見当たらず。

 これはもはや十中八九、ダグラス大佐から裏付けが取れずとも、ケンの予想した通りで間違いない事を証明していた。

 

「彼女が味方でよかったよ」

 

「女って、怖えぇ……」

 

 そして、ガースキーとジェイクの両名も、声の主の正体を察し、各々の感想を零すのであった。

 

「にしても、大佐。何故彼女が?」

 

「まぁ、君達の模擬戦を目にして、昔の血が騒いだそうだ」

 

 MS特務遊撃隊には様々な過去を持つ者がいる。

 彼女もまた、他人が容易に足を踏み入れていいものではない過去を持っているのだろう。

 

 ケンはそう考えると共に、彼女に対して頭がますます上がらなくなるな、と感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、見事なものでしたな」

 

「いえいえ、レッドチームの皆さんもなかなかでしたよ」

 

 模擬戦終了後。

 第046独立部隊とMS特務遊撃隊の面々は、今回の模擬戦の労と、お互いの日頃の労を労う為に、慰労会を開いていた。

 因みに開催場所は、格納庫群の一角、MS特務遊撃隊が間借りしている場所で行われている。

 

「凄くカッコよかったです! 隊長も凄いパイロットだと思っていましたけど、やっぱり上には上がいるんですね!」

 

「ねぇねぇ! 今後も定期的に感想聞かせて! いいでしょ!?」

 

「いや~、モテる男は辛いでありますな、ルク中尉殿」

 

「あ、あはは……」

 

 ユウキにメイの、MS特務遊撃隊の女性陣二人から羨望の眼差しを向けられるユーリアン。

 そんな彼に、ガースキーが薄笑いを浮かべからかう。

 

 そして、困ったように苦笑いを浮かべるユーリアンの姿を、沙亜は見つめていた。

 

「ねぇ沙愛、また口をきゅって結んでるぞ」

 

「! ……な、わざわざ指摘しなくても、分かっている!」

 

「もう、可愛いんだから」

 

 そんな沙亜を、メノが再びからかっていると。

 不意に、そんな二人のもとにグラスを手にしたジェーンが近づいてきた。

 

「あら、随分楽しそうね」

 

「あ、あぁ。……おい、メノ」

 

「ごめんごめん」

 

 ジェーンに対応すべく、沙亜は顔を切り替えると、メノに自制を促す。

 

「今回は、私の我儘に付き合ってもらって、ありがとう」

 

「いや、こちらこそ、よい模擬戦であった」

 

「ふふ、噂通り、凛として素敵な人ね。……でも」

 

「でも?」

 

「親しみやすい一面を見られてよかったわ。恋する女の一面をね」

 

「な!?」

 

 まさかジェーンにまで見られていたとは思わず、沙亜は顔を真っ赤にして素っ頓狂な声を挙げるのであった。

 一方その頃。

 

「お前、ロッシュって言ったっけ?」

 

「はい……」

 

「お前って無口だよな。でも、その割にすげぇ"筋肉"してる──」

 

「ジェイク軍曹!? もしかしてジェイク軍曹も筋肉に興味がおありですか!? ならば、先ずは自室などでできる簡単な筋トレをお教えしましょう!!」

 

「え……、おま、キャラ変わりすぎだろ!?」

 

 ジェイクはロッシュの豹変ぶりに困惑し。

 

「これ、あの子が改造したんですか?」

 

「あぁ、メイは十歳の頃からモビルスーツに携わってきたからな、これ位は朝飯前だそうだ」

 

 シモンは、今回の慰労会で提供されている焼肉をケンと共に焼いていたが。

 肉を焼くために、まさかヒートホークを使用するとは思いもしなかったと、そんな感想を漏らしていた。

 

 ケン曰く、メイが機材の少ない野営等の際に使い勝手が良くなるように、ヒートホークの発熱出力を改造して、最低出力でお肉をいい加減で焼ける様に改造したのだとか。

 

「これこそまさに、無駄に洗練された無駄のない無駄な改造、だな」

 

「それは、つまり無駄という事か?」

 

「ま、そうですね」

 

 天才の考える事は分からない。

 シモンは、肉を焼きながらそう思わずにはいられなかった。

 

 

 

 こうして、各々が慰労会を楽しんでいる中。

 それぞれの部隊の長は、一通り互いを褒め称えた後、それぞれの近況について話を始めていた。

 

「え? 北米へ、ですか?」

 

「うむ。最近北米の連邦軍の動きが活発になりつつあるとして、我々にも北米への移動命令が下ったよ」

 

 近々に、MS特務遊撃隊が北米へ移動する旨を聞いたランドニーは、俺の野望内の暦月が、九月も半ばを過ぎた事を思い出す。

 

「だが、北米に発つ前に、君達と模擬戦を行えたことはとてもいい経験となったよ」

 

「いえ、こちらこそ、MS特務遊撃隊の方々との今回の模擬戦は、とても有意義なものでした」

 

「ははは、それはよかった。……では、ハート中佐、貴隊の今後の健闘を祈っているよ」

 

「こちらこそ、ダグラス大佐以下、MS特務遊撃隊の皆様の御武運をお祈りしています」

 

 第046独立部隊とMS特務遊撃隊の面々が、慰労会を通じて交友を深めた翌日。

 MS特務遊撃隊が北米に向けてオデッサを発ったと時を同じくして、第046独立部隊は、ホワイトベース隊がアフリカ大陸北部に降下した事を知るのであった。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。
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