機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

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第二十二話 ア──は伊達じゃない!

 ホワイトベース隊がアフリカ大陸北部に降下した事を知った第046独立部隊。

 特にランドニー、ユーリアン、そして沙亜の三人はこの想定外の事態に困惑せずにはいられなかった。

 

 旧エジプトの西方砂漠からオデッサまでは、直線距離にして約二四〇〇キロメートル。

 勿論、降下地点とオデッサの間には、地中海や黒海、更にはジオンの防衛網等が存在している為、オデッサが危機に晒されている訳ではない。

 それでも、自分達の活動拠点であるオデッサからそう離れていない場所にホワイトベース隊が降下してきた事実は、三人の頭を悩ませるに十分な威力を持っていた。

 

 とはいえ、ホワイトベース隊が今後、どの様な進路に出るのか。

 ジオンの勢力圏内である北部から、未だ連邦勢力圏内であるアフリカ大陸南部へ抜け、そして南大西洋を渡ってジャブローを目指すのか。

 はたまた、東へ進み、紅海やアデン湾、更にはアラビア海を抜け、連邦勢力圏のインド亜大陸最大の連邦軍基地、マドラスを目指すのか。

 

 もしくは、無謀とも思えるが、意表を突く北上ルートを進むのか。

 

 いかなる進路を選択するのかは、ホワイトベース隊の今後の出方次第であり。

 対応を考えようにも、先ずは続報を待つ他なかった。

 

 ただ、この予想外の展開は、悪い側面ばかりではなかった。

 それは、この変化に伴い、原作で描かれていた北米ジオン軍の悲劇や、MS特務遊撃隊がホワイトベース隊と遭遇する等が発生する可能性などが極端に低下したからだ。

 その点は、喜ばしい変化と言えた。

 

 

 そして、その翌日。

 ホワイトベース隊の進路に関する続報が飛び込んできた。

 

 ホワイトベース隊は、降下地点から東へ進み、紅海へと出たとの事だ。

 この続報に、とりあえずランドニー、ユーリアン、そして沙亜の三人は安堵した。

 もっとも、この先マドラスを目指さずに、途中で転進する可能性は残されており、完全に安心できるわけではないが。

 原作同様、艦内に多数の民間人を抱えている状況では、彼らの安全と下船先を確保する意味でも、一刻も早く連邦軍の勢力圏内に逃げ込みたい筈だ。

 

「とはいえ。これでオデッサが安全になったって訳じゃない」

 

「そうだね。特に、マドラスに到着した後の行動が気になる所だし」

 

「そのまま更に西を目指すか、はたまた、北上して原作の再現を行うか……」

 

「ま、いずれにせよ。連邦側はまだ大規模な行動を起こしていないって事は、少なくともホワイトベース隊がマドラスに到着するまでは動かない可能性が高いって事だ。そうすると、少しの間、備える準備期間が出来た事は喜ばしいな」

 

 ランドニーの言う通り、連邦側は未だ本格的な反転攻勢に出てはいなかった。

 この為、連邦の本格的な攻勢開始まで準備の為の猶予が残されている可能性が高く、それは、第046独立部隊にとっては喜ばしい事であった。

 

「兎に角、ホワイトベース隊の続報を確認しつつ、俺達は俺達で準備を進めるとするか」

 

 こうして、ホワイトベース隊、更には連邦軍の動きを警戒しつつ、第046独立部隊は、来るべき時の準備に備え、活動を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 第046独立部隊が反転攻勢に備え、活動を行っている頃。

 ホワイトベース隊はと言えば。

 

「ぶったね! それも二度も!! 親父にもぶたれた事ないのに!!!」

 

「甘ったれるな!」

 

 成り行きとはいえ、慣れない軍隊生活に、慣れない地上での戦闘などで心身ともに疲弊したアムロは、遂に命令拒否して自室に閉じこもってしまう。

 一方、こちらも成り行きとはいえ、書類上未だ民間人を含めた乗組員達の頂点、新造艦の艦長を任せられ、アムロを気遣う余裕のないブライト・ノア中尉は、このアムロの行動に対して気遣うどころか売り言葉に買い言葉となり。

 遂には手を出してしまった。

 

 もはや両者の対立は決定的かと思われた矢先。

 退室する寸前に、ブライトが零したアムロに対する期待。

 その言葉を聞いたアムロは、ふと我に返り、更に、同じくホワイトベースに乗艦していたフラウが、アムロ自身が出撃しないのなら自分が出撃する、との涙ながらの発言を聞き。

 ここに至り、アムロは今のままでは自身が半人前と悟り、一人前の男になるべく自身を奮起させると、再び出撃すべく、格納庫に向かうのであった。

 

 そして、出撃したアムロ操るガンダムNT-1は、砂漠の大地を蹴り、空を翔んだ。

 

 こうして対峙したジオン軍部隊を退けたホワイトベース隊のもとに、一機のミデアの名を持つ戦略輸送機が補給の為に、危険なジオン勢力圏内を突破しやって来るのであった。

 自分達はまだ見捨てられていない。

 安堵するホワイトベース隊一行は、補給を終えると、再び西を、インド亜大陸の地を目指して紅海沿岸を進んだ。

 

 その道中。

 

「アムロ、行きまーす!」

 

 遭遇した、ジオン部隊との戦闘を繰り返し。

 

「たかがギャロップのカーゴの一つぐらい、アレックスで押し返してやる!!」

 

 降りかかる火の粉を払いのけ。

 

「アレックスは伊達じゃない!!」

 

 ホワイトベース隊はアラビア海沿岸を西へと進んだ。

 安息のインド亜大陸を目指して。

 

 

 

 

 

 一方同じ頃、第046独立部隊はと言えば。

 

「不味いな。これは……」

 

 オデッサ基地の基地司令部の一角で、眼前のモニターに表示された映像を目にしたランドニーは、映像から見て取れる悪い有様に、そう呟いた。

 

「って言ってもなぁ、今の俺達じゃどうする事も出来ないし」

 

「大丈夫だよ、二人とも強いから、ね?」

 

「……でも、状況はかなり不利です」

 

 そんなランドニーと肩を並べモニターを見つめる、シモン、メノ、ロッシュの三人。

 

 何故、四人が基地司令部の一角で肩を並べてモニターを見つめているのか。

 その理由は、モニターに映された二機のモビルスーツが関係していた。

 

 モニターの中に映し出されていたのはダークブラウンの塗装が目を引く、頭部が大きく手足が短い幼児体型のモビルスーツ。

 モビルスーツと言う兵器ながら、何処か愛くるしさを感じるその外見から、同モビルスーツはモビルスーツながら萌えキャラとしての地位を確保している。

 

 胴体部の基本フレーム等をザクIIから流用し、さらに伸縮式の腕部などを他の水陸両用機から流用した機体。

 ジオンの、水陸両用機種において、ハイローミックスのローを担うその機体の名は『アッガイ』

 形式番号MSM-04、ご存知、ガンダムシリーズにおいて、モビルスーツがカッコよいだけではない、愛嬌と言う真逆のイメージを確立させた立役者である。

 

 そのアッガイ二機が、沿岸部の市街地で、建造物を盾に銃撃戦を繰り広げている。

 モニターに映し出されていたのは、そんな戦闘の様子であった。

 

「くそ、これが運用テストのミッションじゃなきゃな……」

 

 そんな戦闘の様子を見て、ランドニーは、自身が何もできない悔しさを呟く。

 

 ランドニーの零した言葉に、今回ランドニーを含めた四人がモニターを眺めているしかない理由がある。

 今回第046独立部隊は、あまり資金をかけずに戦力強化を行える方法、即ち、新型機運用テストのミッションを受理していた。

 その新型機と言うのが、言わずもがなアッガイである。

 因みに、今回のミッションに関しては、プレイヤーの階級が"少尉"以上である必要がある為。

 第046独立部隊内で少尉以上の階級を有するユーリアンと沙亜の二人が搭乗している。

 

 そして、もう一つ。

 本ミッションには付帯事項が存在している。

 それが、本ミッションは、テスト機以外のモビルスーツの参加禁止、である。

 

 この為、シモンやメノ、それにロッシュの三人はモビルスーツを使用してミッションに参加できない。

 ただし、通常兵器の参加には制限がない為、通常兵器に搭乗して参加する事は可能であった。

 

 しかし、通常兵器をあまり持たない事もあり、ランドニーは今回のミッションにユーリアンと沙亜の二人のみで出撃させた。

 

 テストエリアは、オデッサから黒海を隔てた旧トルコの沿岸部の都市。

 そこに出現した、敵モビルスーツ隊であった。

 

 水陸両用機の特徴でもある水中行動可能な性能を生かし、水中から奇襲を仕掛け、二人の腕前も相まって、難なく敵モビルスーツ隊を撃破した。

 所まではよかったのだが。

 

 何と、増援とばかりに、フライ・マンタと呼ばれる戦闘爆撃機と共に、都市郊外からガンタンクによる砲撃が始まったのだ。

 

 フライ・マンタにより頭を抑えられ、そこにガンタンクによる長距離砲撃。

 これが、いつもの二人の改造機なら、なんてことはないのだが。

 生憎と、ノーマル状態のアッガイは同系統の高級機であるズゴックのように高い運動性を持たず、またゴッグのような分厚い装甲も有していない。

 その為、多少の被弾を顧みず、砲撃を避けながらガンタンクを撃破するという芸当は、向いていない。

 

 そもそも、水陸両用機による陸上での戦闘は、水中からの奇襲戦法が基本であり、陸上戦闘用モビルスーツと同様に陸地で戦う事は推奨されていない。

 加えて、今回は新型機運用テストのミッションだ。

 成功条件であるアッガイそのものを危険に晒すのでは、本末転倒である。

 

 しかし、今戦える戦力は、ユーリアンと沙亜の二人のアッガイ以外に他なく。

 その為ランドニーは、こんな事ならば航空戦力を揃えておけばよかったと悔やむのであった。

 

(アッガイは二機揃っている必要はない、一機でも生還すればそれでミッションは成功だ。だから、最悪片方を囮にすれば勝機は見えるが……。いや、駄目だ、出来れば二機とも生還するのが望ましいが)

 

 頭上を飛び交うフライ・マンタ目掛け、アッガイの頭部に備えられた一〇五ミリバルカン砲四門が火を噴く。

 それを受けて、一機のフライ・マンタが右主翼を撃ち抜かれ、錐揉みしながら郊外に墜落する。

 

 だが、それでも頭上を飛び交うフライ・マンタの数は、減っている気配がない。

 

(このままじゃジリ貧だ……、どうすれば)

 

 と、モニターを見ていたランドニーは、モニターの端に映り込んだとある物を目にし。

 

(!! こ、これだ!!)

 

 それを見た瞬間、起死回生の戦法を思いつく。

 

「ユーリアン、沙亜! 聞こえるか!?」

 

「え? ど、どうしたの?」

 

「ん? 何だ急に?」

 

「現状を打破する一発逆転の方法を思いついたぞ!!」

 

 通信機のマイクを手にすると、ランドニーはユーリアンと沙亜の二人に、先ほど思いついた戦法を伝える。

 それを横で聞いていたシモンは、本当にその戦法で大丈夫かと不安そうな表情を見せていた。

 

「分かった、兎に角やってみる」

 

「では、私がトス役を、ユーリアン、バッター役を頼むぞ」

 

 程なくして、ランドニーから聞いた戦法を試すべく、二人の乗るアッガイが動き始める。

 ユーリアンのアッガイが、隙を見て海岸沿いにあるヤシの木を一本、手早く引っこ抜くと、急いで沙亜のアッガイのもとへと駆け寄る。

 そして、腕部のアイアン・ネイルを器用に使い、ヤシの木をバットを持つかの如く構えると。

 

 次の瞬間。

 沙亜のアッガイから投げられたコンクリートの塊を、豪快なスイングで飛ばし始めた。

 

「な! 何だ!?」

 

 警報音もなく、地上から飛来するコンクリートの塊に、慌てふためくフライ・マンタのパイロット達。

 まさか戦闘で破壊された建物のコンクリート片等を、ヤシの木のバッティングで飛ばして攻撃するなど、想像もつかず。

 遂に、自分達を襲う謎の攻撃の正体も理解できぬまま、フライ・マンタは全機地に墜とされた。

 

「航空隊が……、一体何が起こっている?」

 

 そして、その状況は当然ガンタンクのパイロットも把握してはいたが。

 やはり、バッティング攻撃については考えが及んでいなかった。

 

「!?」

 

 と、乗機のガンタンクの近くに、何かが落下してきた。

 それは、コンクリートの巨大な塊であった。

 

「な、なんだ?」

 

 何故こんな所にコンクリートの巨大な塊が。

 そんな疑問がパイロットの脳内を駆け巡った、次の瞬間。

 

「!? うわ──」

 

 気づいた時には、その巨大な影は自身が乗るコクピット部の目と鼻の先にまで迫っていた。

 そして、次の瞬間、パイロットの断末魔をかき消すかのように、巨大なコンクリートの塊は、その質量を持ってガンタンクのコクピット部を押しつぶし、ガンタンクの戦闘能力を喪失させた。

 

「ははは! やった、上手くいったぞ! どうだ、俺の考えた、名付けて『バッティング練習やろうぜ! お前、的な!』戦法!」

 

「いやネーミングセンス云々より、これでいいのか?」

 

「勝ったから、いいの、かな?」

 

「結果オーライ……?」

 

「ははは、いいんだよ、ゲームだからね!」

 

 釈然としないシモンやメノ、それにロッシュの三人を他所に。

 ランドニーは、最大パワーでウルトラジャンプを決めたかの如く笑顔と共に、無事アッガイ二機を生還できたので、終わり良ければ全て良し、とばかりに締めくくるのであった。

 

 

 

 

 

「えーという訳で、無事にアッガイ二機を手に入れた訳だが。暫くは活躍する機会もないと思うので、格納庫で休んでてもらう事になるな」

 

「おいおい、だったら何でアッガイの運用テストのミッション受けたんだよ」

 

「いや、本当はもっと高性能な機体の運用テストを受けたかったんだが、最近競争率も更に激しくなって、……で、結局手に入れられたのがアッガイだった訳で」

 

「まぁでも、考えようによっちゃ、売って新しいモビルスーツを手に入れる資金に……」

 

「駄目!」

 

 アッガイ運用テストを無事に終え、第046独立部隊用のロビーへと戻った一行。

 ふと、シモンがアッガイの処遇について提案を持ちかけようとしたその時、メノから待ったがかかった。

 

「え? いやでも、アッガイ売ってズゴックとか、もっと高性能な……」

 

「だってあのモビルスーツ可愛いじゃない! それを売っちゃうなんて、シモン君には愛がないの!」

 

「そーだ、そーだ!!」

 

「おいランドニー……」

 

 どうやらメノはアッガイの可愛さに魅了され、手放すのは反対のようだ。

 それに乗っかり、ランドニーも抗議の手を振り上げる。

 

「あ、じゃぁ、二機ある事だし、一機をう──」

 

「私も反対だ」

 

「え!?」

 

 と、今度は沙亜も反対の意見を表明し始める。

 

「時には、実用性云々を脇に置いておいてもいいんじゃないかな?」

 

「……」

 

 その意見に対して、ユーリアンも、そしてロッシュも黙って頷き同意を示す。

 

「アッガイの可愛さは伊達じゃない、ってか……」

 

 こうして、女性陣二人の意見を尊重し、二機のアッガイは格納庫で休んでいてもらう事となった。

 時に、ホワイトベース隊が、アラビア海を横断し、インド亜大陸へと上陸を果たした頃の事であった。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。
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