機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

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第二十三話 戦場でフレンドシップ

 我々は、多くの英雄を失った。しかし、これは敗北を意味するのか? 否!! 始まりなのだ!!

 地球連邦に比べ、我がジオンの国力は三十分の一以下である。

 ……にも拘らず、今日まで戦い抜いてこられたのは何故か!?

 諸君! 我がジオン公国の戦争目的が、正義だからである。

 

 この正義の為の戦い、ジオン公国が掲げる自由の為の戦いを、神が見捨てる筈はない!!

 

 しかし!

 その戦いの中で、諸君らの愛した、家族、恋人、友人たちは死んだ! 何故だ!!

 

 

 ──国民よ、立て! 悲しみを怒りに変えて、立てよ国民よ!!

 その怒りを連邦軍にぶつけ、我らジオン公国国民は、自由を勝ち得るのである。

 

 ジーク・ジオン!

 

 

 

 

 

 それは、実質的に隠居状態にあるジオン公国公王、デギン・ソド・ザビに代わり、実質的にジオン公国の最高指導者である総帥の肩書を有する男性。

 デギンの長男にして、IQ240の天才。

 ギレン・ザビ総帥による、全地球規模の大演説であった。

 

 正史では、この大演説はギレン総帥の弟であり、デギン公王を家長とするザビ家の末弟、ガルマ・ザビ大佐の国葬に際して行われたが。

 俺の野望では、ガルマ大佐の死因となったホワイトベース隊が、ガルマ大佐が管轄する北米地域に降下していない為、死亡せず今なお存命の為。

 この為、今回の大演説は、開戦から半年以上が経過し厭戦ムードが漂い始めたジオン公国内の士気を鼓舞する目的で行われた。

 

 しかし、この全地球規模という大規模演説を行ったのには、もう一つの理由があった。

 

 それは、この演説の数日前より、ヨーロッパやアフリカの地域において、連邦軍の活動が活発になりつつあり。

 これにより、同地域の幾つかの占領地が、連邦に奪還され、その事実を、国民の目から逸らす為に行われたのであった。

 

 ただ、それ以外の地域の連邦軍の動きについてはそれ程活発ではなく。

 これが大規模な攻勢の開始を告げる狼煙かどうかは、まだ断定できない状況であった。

 

「ジーク・ジオン!!」

 

「ジーク・ジオンッ!!」

 

 しかしながら、そんな裏事情など、今の第046独立部隊の面々には些細な事であった。

 何故なら、演説会場の最高潮に達した雰囲気を前にしては、如何なる問題も些細なものに成り果てるからだ。

 

 演説内容が変更されているなど、問題ではない。

 重要なのは、原作等でも多く描かれた演説シーン、その瞬間を、同じ会場内で立ち会えたという喜び。

 第046独立部隊の面々を含め、会場内の誰もが、ジーク・ジオンと声を張り上げ、会場を振動させていた。

 

 そう、今この瞬間だけは、そこにいる者全員が、ジオン公国の一員である事を誇るのであった。

 

「では続いて授与式を行いますので、授与される方々は壇上の方へお上がりください」

 

 こうして、鳥肌が立ち背筋を震わされた演説も終わると、続いて、司会進行役のアナウンスが会場内に響き渡る。

 

 実は、この授与式こそ、今回第046独立部隊一行が本来なら抽選の所を、確実に演説会場に入場できた理由であった。

 今回、演説の後に、戦績ランキング上位十名に対するジオン十字勲章の授与式が行われる事になっており。

 その為、ランキング九位である沙亜の関係者として、他の第046独立部隊の面々も会場入りを果たせたのである。

 

「彼ら偉大なる十名の戦士は、我がジオン公国軍の誇りであり、敬愛すべき──」

 

 壇上でスピーチを行うギレン総帥の一言一言に、会場内の誰もが耳を傾ける中。

 やがて、スピーチが終わると、ジオン十字勲章の授与が始まる。

 

 壇上に立ち並ぶ、真新しい軍服を着込んだ十名のプレイヤー一人一人にギレン総帥自ら声をかけると、短く言葉を交わした後、自らの手でジオン十字勲章を胸に取り付けていく。

 

「貴官の活躍も私の耳に届いている」

 

「光栄であります」

 

「これからも、我がジオン公国の為、一層の活躍を期待している」

 

「は!」

 

 そして、沙亜とも短く言葉を交わした後、彼女の胸に、ギレン総帥の手によってジオン十字勲章が取り付けられるのであった。

 

「それでは今一度、偉大なる十名の戦士に盛大な拍手を!」

 

 司会進行役の声と共に、会場内を割れんばかりの拍手が鳴り響く。

 こうして、授与式もつつがなく終了すると、参加者たちが会場を後にしていく。

 その中に、第046独立部隊の面々の姿もあった。

 

「なぁ沙亜、本物のギレン総帥と対面した感想はどうだった!?」

 

「あ、あぁ、やはり、ジオン公国と言う国家を担うだけの人物だ。圧倒されっぱなしだったよ」

 

 未だ興奮冷めやらぬ様子のランドニーは、沙亜にギレン総帥と対面した感想を聞くべく、彼女を質問攻めにし。

 ユーリアンが止めに入るまで、質問は続いていた。

 一方他の面々も、会場の余韻に浸り。

 原作をあまり知らないメノも、現実のコンサート等のイベントに参加したのと同じような感覚を味わえた為、楽しんでいた様だ。

 

「よーし、何時か俺も、ジオン十字勲章を授与される様に頑張るぞ!」

 

 新たな目標を掲げたランドニーを先頭に、第046独立部隊一行が、今回会場となったジオン公国の首都、サイド3からオデッサに戻るべく会場を後にして程なくの事。

 

「君達、少しいいかな?」

 

 不意に、誰かに声をかけられたので立ち止まって声のする方へと振り返ると。

 

「……! が、が、ガルマ・ザビたいさぁぁぁっ!?」

 

「あぁ、すまない、驚かせてしまった様だ」

 

 そこにいたのは、紫の髪に端正な顔立ち、何処か優美な雰囲気を醸しだす一人の青年士官。

 地球方面軍の北米方面軍司令官という要職にありながら、その端正な顔立ちでジオン公国国民の人気も高い人物。

 誰であろう、ガルマ・ザビ大佐その人であった。

 

 まさかガルマ大佐に声をかけられたとは思いもしなかったランドニーは。

 ガルマ大佐の姿を確認した瞬間、驚嘆せずにはいられなかった。

 

 勿論、他の面々もガルマ大佐の素性は知っていた為、ランドニー程ではないにしろ内心驚いていたが。

 ただ一人、メイだけは、ガルマ大佐の素性を知らなかった為、首を傾げ、疑問符を浮かべていた。

 

「あの人はさっき演説していたギレン総帥の弟さんだよ」

 

「あぁ、成程」

 

 そんなメイの様子に気付いたユーリアンが、こっそりメイにガルマ大佐の素性を分かり易く説明すると。

 漸く、メイはランドニーが腰を低くして対応している人物が、物凄い人物であると理解するのであった。

 

「それで、ガルマ大佐。一体自分達に何用でお声を……」

 

「あぁ、個人的に沙亜 阿頭那武婁少佐に直接エールを送りたくてね。私の友人に、名前や雰囲気が似ているので、以前より一度直接会ってみたいと思っていたんだ」

 

 似ているのも当然、その人物をモデルに沙亜は自身をメイキングしたのだから。

 という無粋な事は誰も言わず。

 沙亜はガルマ大佐からエールを賜ると、最後に固い握手を交わすのであった。

 

「それと、もう一つ」

 

「と、言いますと?」

 

「君達第046独立部隊は、MS特務遊撃隊と親しいそうじゃないか」

 

「え、あ、は、はい」

 

 こうしてガルマ大佐の用件は終わったかと思った矢先。

 ガルマ大佐の口からMS特務遊撃隊の名が飛び出し、肩をびくと振るわせるランドニー。

 

「そう警戒しないでくれ。別に、咎める訳ではない」

 

「そ、そうですか」

 

「実は、彼らが北米方面に異動し、着任の挨拶に訪れた際、ダグラス大佐から君達の事を聞いてね。君達の事を嬉しそうに話すダグラス大佐の顔を見ていて、私も実際に一目会ってみたいと思っていたのだよ」

 

「それは、光栄です!」

 

「ダグラス大佐の話していた通り。君達は温かな雰囲気に包まれているな、羨ましいよ」

 

「そ、そんな。羨ましいだなんて! 恐れ多い!」

 

「ふふ。……そうだ。もし、君達の迷惑でなければ、私と友達になってはくれまいか?」

 

「……え?」

 

 ガルマ大佐の口から飛び出した申し出に、ランドニーは目を点にしてしまう。

 いや、この場合は当然の反応だろうか。

 ランドニーでなくとも、宇宙世紀で有名な一家の末弟に、突然友達になってくれと言われれば、誰だって目を点にするだろう。

 

「迷惑、だったか?」

 

「ランドニー、ランドニー。ガルマ大佐が返事を待ってるよ」

 

「……え? あ、い、いえ! 迷惑だなんて、むしろ、光栄です!!」

 

 余りの事で固まっていたランドニーだったが、ユーリアンの声に我に返ると、慌てて返事を返す。

 すると、若干俯き加減であったガルマ大佐の顔が、明るさを取り戻すのだった。

 

「ありがとう、ハート中佐。──いや、ここは友人らしくランドニーと呼ぶ方がいいか?」

 

「そ、それはもうガルマ大佐のお好きなように」

 

「ははは、そういう君こそ、他人行儀じゃないか。──よし、これからは、お互い呼び捨てで呼ぼうじゃないか。勿論、TPOは弁えてだがな。それでいいか、ランドニー?」

 

「は、はい! 喜んで、ガルマた──、ガルマ!」

 

「他の皆も、これからよろしく頼む」

 

 ガルマ大佐と一人一人握手を交わし、友情の証に、一人一人名を呼び合う。

 こうして、ガルマ大佐と友達となった第046独立部隊一行。

 

「さて、友達となった事で、少し、私の話を聞いてはくれないか?」

 

「話とは?」

 

「先ほど話したMS特務遊撃隊についての事だ。君達も知っての通り、彼らはその出生故、軍内部でも浮いた存在であり、故に、その扱いはとても優遇されているとは言い難い」

 

「ですね」

 

「だが、彼らも同じジオン公国軍の一員であり、共に戦う仲間だ。それを、出生で待遇に差をつけるべきではない」

 

 ガルマ大佐の話は、MS特務遊撃隊の待遇を憂うものであった。

 

「でもそれは……」

 

「分かっている、所詮、理想論だという事はな。それに、私はザビ家の一員だ。彼らにすれば、私が手を差し伸べるのは快く思わないかもしれん」

 

「でもさ、そんなに気にしているのなら、助け舟を出してもいいんじゃない?」

 

 自身の立場と理想の間でどうしたものかと悩むガルマ大佐に声をかけたのは、メイであった。

 

「お節介って相手に思われても、手を差し伸べられる時に手を差し伸べないと、後でできなくなって後悔するよりもいいんじゃないかな?」

 

「……そうか、そうかも知れんな」

 

「ま、ダグラス大佐も、待遇を改善していただけるのは、喜んで受け入れてくれると思いますよ。流石に、露骨に嫌とは言わないでしょう。それでも気になるなら、ザビ家の一員としての贖罪等ではなく、心からの誠意だと、言葉を添えみては?」

 

「そうだな。よし!」

 

 メイとランドニーのアドバイスを聞いて、ガルマ大佐は決心したかのように握りこぶしを作る。

 

「可能な限り、便宜を図ろうと思う。私の心からの誠意だと伝えてな」

 

 こうして決心を決めたガルマ大佐は、第046独立部隊一行にお礼を述べると、急ぎ北米に戻るべく足早に去っていった。

 一方、残った第046独立部隊一行も、オデッサに戻るべく遅れて移動を再開する。

 

「まさか、ガルマ大佐と友達になっただけじゃなく、相談までされるとは……」

 

「でもよかったね、悩みが解決したみたいで」

 

「友達なら、相談に乗って解決するのは当たり前よね!」

 

「あ、どうせなら相談に乗ったお礼に、新型モビルスーツの一機でも回してくれって頼めばよかったな!」

 

「それは図々しすぎるだろう」

 

「……」

 

 先ほどの出来事の感想を呟きながら、一行は程なく、ドッキングベイ行きのエレカ乗り場に到着するのであった。

 

 

 

 

 

 サイド3での予期せぬ出来事はあったものの、無事にオデッサへと戻ってきた第046独立部隊一行。

 再び活動に精を出そうとした矢先。

 それは突然告げられるのであった。

 

「共闘、でありますか」

 

「そうだ」

 

 オデッサ基地の一角、地球方面軍司令部内に設けられたマ・クベ中将の執務室に、ランドニーは呼び出されていた。

 以前、新型機の受領書にサインを貰いに来たとき同様、高級感漂う執務室内で、ランドニーは直立不動の姿勢を維持していた。

 

「中佐も知っての通り。中央アジア地域は、我がジオンの勢力圏内にある。だが、最近そこに行方知れずであった"木馬"が出没し、ゲリラ的活動を開始、東アジア方面とヨーロッパ方面とを結ぶ補給路を脅かしている」

 

 執務机を挟み対面するマ・クベ中将は、淡々とした口ぶりでランドニーに説明を始めた。

 

 第046独立部隊がサイド3にて式典に参加していた間。

 地球では、ホワイトベース隊がマドラスに到着し、暫しの休息の後マドラスを出航。

 その際、インド亜大陸に展開する連邦軍の攻勢に連動し、前線を潜り抜けたホワイトベース隊は、一路進路を北に取った。

 

 しかし、その後の足取りについては、監視の為の部隊が現地の天候等に阻まれ見失い。

 自国勢力圏内で見失うという失態に、一時地球方面軍司令部内は騒然としたものの。

 

 程なくして、中央アジア地域のジオン軍部隊から、ホワイトベース隊との遭遇報告が舞い込み、大まかな居場所の特定には成功するのであった。

 

「上は最低限の監視に努めよと言うが、事、補給路が脅かされているとあっては、此度の方針が裏目に出たとしか言えん」

 

「……」

 

「しかし、嘆いた所で状況が好転する訳でもない……。故に、こちらも相応の対応を取る事とした」

 

「それが、今回の輸送阻止、でありますか?」

 

「そうだ。ホワイトベース隊の戦力は現状でも十分な脅威であるが、更に戦力の強化を図られては、殊更面倒なことになる」

 

 そんなホワイトベース隊に対する、補給と戦力強化を兼ねた連邦のモビルスーツ輸送計画をキャッチしたジオン側は。

 これを阻止すべく、計画の更なる調査を開始。

 そして、ホワイトベース隊に向かうと思われる輸送部隊を三つまで絞り込むことに成功した。

 

「この三つの内の何れか一つが本命である可能性が高い。そこで、我が軍としては、作戦成功の確実性を高めるべく、各々の輸送部隊に一つずつ、部隊を差し向ける事とした」

 

「それが、マルコシアス隊、及び第17MS特務遊撃班、通称ウルフ・ガー隊との共闘ですか」

 

「その通りだ、中佐。貴官の指揮する第046独立部隊は、両隊と共闘し、輸送部隊を襲撃、ホワイトベース隊への戦力強化を阻止せよ」

 

 しかし、その内の何れが本命かまでは絞り込めず。

 そこで地球方面軍司令部は、この三つの輸送部隊にそれぞれ部隊を差し向け、三つとも撃破する作戦を立案。

 その内の一つを担当する部隊に、第046独立部隊を選出したのであった。

 

「ジオン十字勲章を授与された沙亜少佐擁する貴隊ならば、造作もない事であろう?」

 

 目の奥を怪しく光らせ不敵な笑みを浮かべるマ・クベ中将に対して、ランドニーは暫し受け取った命令書を凝視していた。

 ホワイトベース隊とのニアミスすらあり得る状況。

 そんな状況すら発生する可能性のある任務への参加命令書。現実の軍隊の様に、上からの命令だから拒否権がない訳ではない。受けたくなければ、拒否する事も可能だ。受けなければ、他のプレイヤーに参加権が移るだけ。

 しかし、今回の任務の成功報酬として提示されたゴールドの額を目にすると、火中の栗を拾いに行きたくもなった。

 

「どうだね?」

 

「……、は!! 第046独立部隊! 此度の任務、拝命いたしました!!」

 

「期待しているよ、中佐」

 

 こうして、第046独立部隊は、一路東を目指す事となった。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。
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