今回の連邦軍輸送部隊襲撃に際して、第046独立部隊は、襲撃を担当する輸送部隊が飛行すると予想される飛行ルート上付近に到着すると。
手ごろな巨大岩石の裏に陣を設け、モビルスーツを展開させていた。
「今回のターゲットは、輸送部隊の中核をなすミデア輸送機。極端に言えば、ミデア輸送機以外は撃破せずとも問題ないんだが。ま、そういう訳にもいかないんだなぁ、これが」
艦橋内のモニターに表示されていたのは、飛行ルート上の安全を確保する様に、既に展開を終えていた連邦軍の部隊を示す赤い光点であった。
「ルッグンからの偵察によると、敵はガンタンクタイプや61式戦車等、砲撃能力に秀でた相手だ。市街地などと異なり遮蔽物も殆どない砂漠だからな、距離を詰めさせまいと遠距離からバンバン撃ってくると思われる」
「それで、今回の作戦は?」
「幸い、相手は砲撃型ばかりで、近接戦闘が行えるモビルスーツは確認されていない。だから、沙亜とユーリアンの二人は、持ち前の機動性を生かして懐に飛び込み敵を叩く。シモンとメノは二人の援護、ロッシュはシモンとメノの護衛をしつつ、突撃した二人の後詰をしてもらう」
ランドニーの口から作戦が語られると、各々から了解した旨の返事が返ってくる。
「それじゃ、輸送部隊がやってくる前に、さっさと現場のお掃除、よろしく」
ランドニーの声を他所に、熱砂を駆ける五機のモビルスーツは、そのスピードを更に加速させるのであった。
青い空の下、地平線の彼方まで続く熱砂の大地。
その片隅で、鳴り止まぬ銃声と砲撃音、そして巻き上がる砂塵と爆炎、更に黒煙が立ち上っていた。
「一発撃ったら、五発も返ってくるぅぅ!?」
「大丈夫だ、そうそう当たらないって!」
隆起した砂山の影から砲撃を行うメノは、一発撃つ毎に、お返しとばかりに相手から倍以上もの砲撃が返され、それによって砂山の反対側に爆音と共に現れる砂塵の数にたじろぐ。
隣のシモンが接触回線でメノの安心させるような言葉を投げかけると、砲撃が止んだタイミングで自身のザクIIF型の身を乗り出させると、装備したMS用対艦ライフルを発砲した。
と、一拍置いて、発砲音の倍以上はある砲撃音と共に、砂山に爆音と共に幾つもの砂塵が巻き上がった。
「あー、でも確かにこりゃ、ビビっちまうのも分かるな」
直ぐに砂山の影に身を隠したザクIIF型のコクピット内で、砲撃の脅威にさらされる心理的効果の威力を痛感するのであった。
「にしても、こんな砲撃の只中を蛮勇じゃなく、勇気をもって突っ込んでいくからこそ、エースなんだろうな……」
そして、後方で援護する自分達と異なり。
この砲撃の弾幕の中を突撃する沙亜とユーリアンの二人の凄さを、改めて思い知るのであった。
その脇で、ロッシュが操縦する陸戦型ザクIIのモノアイが、砂山の影から、熱砂の中を駆け抜ける二機のモビルスーツを捉えていた。
「……、すごい」
モノアイが捉えた二機の機動を目にしたロッシュは、コクピット内で小さく感想を呟いた。
そして、ロッシュに凄いと言わしめた二機。
ザク・アライヴとグフ・インフェルノは、嵐のような弾幕を掻い潜り、弾幕の発射元である連邦軍部隊目掛け、熱砂を蹴っていた。
「ロケットランチャーで分断する。私は左翼を」
「了解、それじゃ右翼は任せて」
互いに担当する相手を決めると、刹那、ザク・アライヴの背部に装備した二基の五連装ロケットランチャーが火を噴いた。
放たれたロケット弾は、部隊の中央部に着弾。
そこに位置取っていたガンタンクと61式戦車二輌を巻き込み、黒煙と砂塵を巻き上げ、部隊を分断する。
「もらった!」
着弾と同時に、速度を上げ、一気に左翼に飛び込んだザク・アライヴは、最初のターゲットとなったガンタンク初期型目掛け、右腕に装備したヒートホークを振るった。
左肩の砲身ごと、ヒートホークにより上半身の左部分を斬り裂かれたガンタンク初期型は、程なく炎と黒煙の中に姿を消した。
一方、下手人のザク・アライヴは、斬り裂くや間髪入れずに跳躍すると、落下地点の61式戦車を踏み潰し、左手に装備したザクマシンガンを残りの戦力に発砲していく。
それはまさに、圧倒的な戦闘風景であった。
一方、グフ・インフェルノの右翼はと言えば。
「こ、こいつ、うわぁぁっ!!」
「何だこいつ!? 目が幾つあるんだ──あぁぁっ!!」
軽やかな動きで右翼部隊の中心に舞い降りたグフ・インフェルノは、左腕に装備した二連装七五ミリガトリング砲と、右腕に装備したMMP-80と呼ばれる九〇ミリ口径の、ザクマシンガンに比べれば威力と射程が劣るものの、連射性と命中率が向上したマシンガンを、個別のターゲットに向けて発砲する。
左右に忙しなく動くグフ・インフェルノのモノアイ。
放たれた七五ミリ弾の雨と九〇ミリ弾の雨は、それぞれのターゲットに降り注ぎ、蜂の巣にしていく。
左右の武器で個別のターゲットを狙うという魔法の如き戦い方に、対する連邦パイロットは終始驚愕し、そして、まともな反撃の間もなく蹂躙されていくのであった。
「とりあえず、そいつで最後だ」
「了解だ」
ザク・アライヴが、最後の一輌となった61式戦車目掛けザクマシンガンを発砲し、刹那、砂漠の中に新たな残骸を生み出す。
周囲に立ち上る黒煙と、一部炎が燃え残る、少し前までガンタンク等の兵器であった残骸の数々。
モノアイがそれらの中に生き残りがいない事を確認すると、沙亜は、一息ついた。
「まだ気は抜き過ぎるなよ。こいつらは前菜で、メインディッシュはこれからだからな」
ランドニーの言う通り。
今し方倒したのは飛行ルート上の安全を確保する為に展開していた部隊。
目標である輸送部隊は、これからやって来る。
「ギャロップより全機へ、作戦エリアに接近する複数の機影を探知。解析の結果、目標のミデア輸送機の編隊であると思われます」
「よーし、皆聞いたな! いよいよメインディッシュのご到着だぞ、気合入れろ」
程なくして、目的の輸送部隊の接近を告げる通信が流れ。
沙亜を始め、コクピット内の全員が表情を引き締め直す。
すると、彼らのモノアイが、熱砂と世界を二分する大空の彼方から接近する複数の機影を捉える。
その見まごう事なき、迷彩効果など期待も出来ない黄色い塗装の施された、複数のエンジンに脱着式専用コンテナを胴体下部に抱え込んだ特徴的な外見は、紛れもなくミデア輸送機であった。
「待ってください! 先頭の機が高度を下げています!」
ギャロップからの報告通り、編隊の先頭を飛んでいたミデア輸送機は、後続の機と異なり速度を上げて高度を下げると、刹那。
「あれ? 何か落ちたよ?」
コンテナを開き、そこから何かを降下させると、再び機首を上げ上昇し始めた。
「おいおい、マジかよ」
「……ボスの登場?」
「ほぉ、ここにきて面白そうなものを相手にすることになったな」
「みたい、だね」
降下され、熱砂の中に着地したもの。
それは、白と黒の二機のモビルスーツであった。
「く、まさかここで、こんな大物の登場とはな」
各々がそれぞれの反応を示す中、艦橋内のモニターからその姿を確認したランドニーは、渋い表情を浮かべた。
それは、二機のモビルスーツの正体が関係していた。
四肢を持つ人型の体型に、特徴的な額のV字型ブレードアンテナ、防塵・対閃光用のバイザーに覆われたツインアイ。
その二機はまさに、"ガンダム"の名を持つモビルスーツ。
その正体は、パラレルワールドであるTHE ORIGIN版のRX-78 ガンダムの余剰パーツを用いて、地球環境での耐久テストを行う為に開発された試験機。
形式番号RX-78-01[N]、局地型ガンダムの名を持つモビルスーツである。
なお、設定では、同機種は陸戦型ガンダムの原型となった存在とされている。
当然ながら、その性能はガンダムと名が付いているだけはあり名折れなのではなく。
どのように戦うか、ランドニーは策を巡らせていたが。
「きゃぁぁぁっ!?」
「っ! 不味い!」
黒い局地型ガンダムが装備していたショルダー・キャノンの発砲音に次いで、メノの叫び声にふと我に返ったランドニーは、もはや綿密な作戦もへったくれもなく、慌てて指示を飛ばす。
「沙亜とユーリアンの二人であのガンダムを抑えてくれ!」
「了解した!」
「了解!」
「残りの三人は、ミデアの襲撃! メノ、大丈夫か!?」
「う、うん。近くで爆発して驚いただけ」
「よし。……シモン! 襲撃班の指揮は任せるぞ!」
「了解!」
シモンのザクIIF型を先頭に、メノのザクキャノンとロッシュの陸戦型ザクIIが続く。
そんな三人目掛け、黒い局地型ガンダムが再びショルダー・キャノンを発砲しようと、その砲口を向けるも。
「させるか!」
ザク・アライヴの振り下ろしたヒートホークに妨げられ、発砲は叶わなかった。
「ほぉ、少しはやるようだな」
振るわれたヒートホークの刀身を、バーニアを噴かせた後方への跳躍で回避すると。
黒い局地型ガンダムは一旦距離を取り、手にした一〇〇ミリマシンガンを発砲し始める。
放たれる一〇〇ミリ弾の雨を、ザク・アライヴは素早い動きで避けつつ、こちらもザクマシンガンで応戦し始める。
一方、白い局地型ガンダムとグフ・インフェルノの戦闘も、中距離での撃ち合いとなっていた。
「流石はガンダム」
お互いに装備した火器が火を噴き、互いの装甲をかすめ、熱砂に幾つもの小さな砂塵を巻き起こす。
「っ!」
刹那、直撃かと思われた一〇〇ミリ弾をシールドで弾くと、咄嗟にMMP-80を発砲。
九〇ミリ弾が白い局地型ガンダムへと飛来するも、白い局地型ガンダムも、装備した小型シールドで数発受け止めると、残りは不規則な動きで回避していく。
「これで!」
刹那、白い局地型ガンダムの攻撃が緩んだ隙を見計らい、二連装七五ミリガトリング砲を再び発砲する。
更に、オマケとばかりに、脚部の三連装ミサイルポッドからもミサイルを発射する。
だが、飛来するミサイルを軽々避けると、濃厚な七五ミリ弾の弾幕を、機体性能故か、それとも乗り手の腕前か、白い局地型ガンダムは巧みな回避運動で被弾を最小限に躱していく。
その光景に、ユーリアンは少々苦々しい表情を浮かべる。
「なら、これで!」
刹那、グフ・インフェルノはMMP-80を投げ捨てると、代わりにバックパックに装備したヒート・サーベルを手に取り、白い局地型ガンダムとの距離を詰め始める。
すると、白い局地型ガンダムも近接戦を仕掛けてくることに気が付いたのか、一〇〇ミリマシンガンと共に頭部の六〇ミリバルカン砲を発砲し弾幕を張る。
降りかかる弾幕をシールドで受け流しながら、グフ・インフェルノはヒート・サーベルの刀身が白い局地型ガンダムを捉える距離まで接近した。
次の瞬間。
グフ・インフェルノのヒート・サーベルが白い局地型ガンダム目掛けて振るわれる。
だが、ヒート・サーベルの刀身は小型シールドに止められ、白い局地型ガンダムの装甲を捉える事は叶わなかった。
「っ!」
刹那、一瞬動きを止めたグフ・インフェルノ目掛け、白い局地型ガンダムの装備した一〇〇ミリマシンガンの銃口が向けられようとした。
だが、ユーリアンは咄嗟に一〇〇ミリマシンガン目掛けて、二連装七五ミリガトリング砲の砲身を叩きつけた。
まさか、砲身を叩きつけられるとは想定していなかったのか、白い局地型ガンダムの動きが、一瞬止まった。
「これで!」
その隙をつき、ユーリアンは咄嗟に使い物にならなくなった二連装七五ミリガトリング砲をパージすると。
新たに使用可能となった三連装三五ミリガトリング砲の砲口を、白い局地型ガンダムのコクピットへ向けた。
小型シールドはヒート・サーベルを受け止めている為、使用できず。
白い局地型ガンダムに、防ぐ手立ては残されてはいなかった。
そして、至近距離から放たれる三五ミリ弾の雨は、コクピット内を挽肉よりも酷い状態に仕上げるのであった。
「こちらユーリアン! 沙亜、そちらの状況は!?」
「ユーリアンか、大丈夫だ。こちらも今し方片が付いた所だ」
熱砂に倒れた白い局地型ガンダムを前に、ユーリアンは沙亜の状況確認を行う。
すると、どうやら沙亜の方も、黒い局地型ガンダムを倒したようだ。
「おー二人とも、ご苦労さん」
「あれ? ランドニー?」
と、沙亜の状況を把握した所で、メインモニターにギャロップの姿が現れる。
「後方にいなくても?」
「あぁ、もうこの辺りには敵の反応がないからな。……にしても、流石はガンダム、だな。グフ・インフェルノも無傷じゃいられなかったか」
艦橋内のモニターに映し出されたグフ・インフェルノは、各所に幾つかの弾痕を残し、焦げ跡なども見られる。
「所で、ユーリアン。その局地型ガンダム、破損の程度はどの程度だ?」
「え? どうしたの急に?」
「いや~、何、今後も色々とお金がかかっていく訳だし、金になるのなら、程度の良い残骸を回収して売るのもアリと思ってな。特に、ガンダムは高く売れそうだし」
「なら、黒い局地型ガンダムの方も?」
「いや、あっちは……」
と、ランドニーが既に知ってような口ぶりで説明を始めようとした刹那。
ギャロップの影から、背部の五連装ロケットランチャーが片方パージされたザク・アライヴが姿を現した。
その手に、黒い局地型ガンダムの頭部を手にして。
「……という訳だ」
その姿を目にして、ユーリアンはランドニーが言わんとすることを察したのであった。
その後、白い局地型ガンダムの破損状況を伝え、回収する判断が下されると。
搭載容量に余裕のあるギャロップに、回収した白い局地型ガンダムを積み込むのだった。
「それじゃ、回収も済んだ所で、シモン達の所に向かうか」
「そういえばランドニー。先ほどロッシュが大活躍と言っていたが、どういう事だ?」
「え? なにそれ?」
その道中、沙亜がランドニーに気になる質問を投げかける。
「あぁ、二人の働きに触発されたんだろうな。何と、ミデア輸送機を一機、無傷で捕獲したそうだ」
ランドニーの口から漏れた質問の答えに、二人は、一瞬狐につままれたような顔をするのであった。
程なくして、シモン達と、捕獲したミデア輸送機が着陸した場所に到着するランドニー達。
先ほどランドニーが言った通り、捕獲されたと思しきミデア輸送機は、特に目立った損傷などは見られなかった。
「遅いぞ、ランドニー」
と、シモンから早速文句が垂れる。
シモンのザクIIF型の足元には、捕獲したミデア輸送機の乗員だろうか、縄で縛られた連邦軍兵士達の姿があった。
「悪い悪い。よーし、捜索班、直ちに捜索開始!」
そんな彼らの近くに停止したギャロップから、整備班から抽出した捜索班が降り立つと。
功労者であるロッシュの陸戦型ザクIIが見守る中、捕獲したミデア輸送機の機内へと進入していった。
程なくして、捜索班からランドニーに報告が入る。
「こちら捜索班、コンテナ内には何も確認できず。繰り返します、コンテナ内は空です!」
報告を聞いたランドニーは、口では悔しさを滲ませながらも、内心ではほっと安堵していた。
と言うのも、当たりを引き当て、ホワイトベース隊が救援に駆け付けるという不安な出来事が実現する可能性が低くなったからだ。
「念のため、撃墜した残骸も調べてくれ」
シモンをその場に残し、残りの四人に撃墜したミデア輸送機の残骸を調べさせるも。
特に補給品やモビルスーツの残骸らしきものは報告されなかった。
その報告を聞いて、ランドニーは安堵のため息を漏らす。
「よし、それじゃ、捕獲したミデ──」
「司令! 上空待機中のルッグンから緊急連絡! 攻撃を受けたとの事です!?」
「はぁ!?」
だが、安堵したのも束の間。
艦橋乗組員からの緊急報告に、ランドニーは目を見開く。
と、艦橋内のモニターに、黒煙を引きながら熱砂の中へと墜ちてゆくルッグンの姿を映し出した。
ただ、同時に、空には二つのパラシュートが開かれており、乗員は無事に脱出したようだ。
「救助班は直ちに乗員の救助を! それで、下手人は!?」
「捉えました、モニターに表示します」
慌ただしさを増した艦橋内のモニターに、ルッグンを撃墜させた下手人の姿が映し出される。
それは、大空を舞う、二機の小型戦闘機の姿であった。
青・白・赤のトリコロールカラーに塗装された二機の小型戦闘機、その正体を、ランドニーは既に知っていた。
「コア・ファイターだと!?」
それは、RXタイプのモビルスーツのコクピットカプセルとして開発され、後に、多目的戦闘機に転向した小型戦闘機。
その大きさの制約から、搭載している武装は機首の二五ミリ機関砲が四門と、内装式の小型ミサイル。
オプションとして翼下にミサイルを装備できるが、今回の二機にそれは確認されなかった。
「くそ! 対空攻撃開始!」
ランドニーの命令に、二梃のギャロップの船体前部に装備している連装機関砲が火を噴き、二機のコア・ファイター目掛けて火線が伸びる。
だが、火線は二機のコア・ファイターを捉えられない。
そこに、更に他の面々から放たれる火線も加わる。
が、二機のコア・ファイターは火線を掻い潜り大空を飛び続ける。
「くそ! あれを避けるか!?」
シモンが、自身の偏差射撃を躱すコア・ファイターの姿に驚愕の声を漏らした刹那。
不意に、一機のコア・ファイターが旋回し、シモンのザクIIF型目掛け機首を向けると。
突撃しつつ機首に装備した二五ミリ機関砲四門が火を噴いた。
「くそ!?」
ザクIIF型の装甲を貫くには威力不足でも、装備したMS用対艦ライフルを使用不能にするには十分すぎる威力である。
MS用対艦ライフルを使用不能にしたコア・ファイターは、シモンのザクIIF型とすれ違い様に機首を上げると、再び大空へと舞い戻る。
「司令! ミデアが!?」
「何だと!?」
こうして、第046独立部隊が二機のコア・ファイターに翻弄されている隙に、それは起こっていた。
縄を解き、混乱に乗じてミデア輸送機を取り戻した乗員達は、早速離陸させ逃走を図る。
「く、捜索班は!?」
「既にミデアから脱出しています!」
「よし、なら撃ち落と──、ぬわ!?」
逃走を図るミデア輸送機の撃墜を命令しようとした矢先。
艦橋内に衝撃が走る。
どうやら、コア・ファイターの攻撃で連装機関砲が破壊されたようだ。
「ったく、何て手際の良い奴らだよ! メノ、キャノン砲でミデアを撃て!」
「そ、それが、戦闘機からの攻撃でキャノン砲が使えなくなって」
「くそ! ロッシュ! マシンガン!」
「こちらも、同じく」
「くそ! ならユーリアン! 頼む!」
沙亜は黒い局地型ガンダムとの戦闘でザクマシンガンを喪失し、シモン、メノ、ロッシュも遠距離攻撃の手段を失った。
唯一、まだ火器を装備しているユーリアンのグフ・インフェルノが、ヒートロッドを放ちミデア輸送機のコンテナに付着させると。
砂塵を蹴って跳躍するや、ヒートロッドをガイドに、バーニアを噴かせ、至近距離から三連装三五ミリガトリング砲を叩き込もうとする。
だが、そうはさせまいと、一機のコア・ファイターが旋回し、グフ・インフェルノに機首を向けると、二五ミリ機関砲四門が火を噴いた。
「っ!?」
刹那、ヒートロッドが撃ち抜かれ、ヒートロッドが切れた弾みでグフ・インフェルノが体勢を崩す。
慌てて体勢を立て直し、何とか熱砂に着地すると、再び追撃をかけようとするも。
そこに、再びコア・ファイターの攻撃が襲う。
「──ロ、──ムロ。もういいわ、帰還して」
と、敵の通信を拾ったのか、コア・ファイターのパイロットに対する通信がコクピット内に流れる。
刹那、二機のコア・ファイターは、十分に足止めの役目を果たし終えると、翼を翻し、大空の彼方に消えゆくミデア輸送機を追う様に、大空の彼方へと消えていった。
「はぁ……。まさか、最後の最後に大当たりを引くとはな」
先ほどユーリアンの聞いた敵の通信を、ランドニーも傍受し聞いていた。
ハッキリと名前こそ聞こえなかったものの、ニュアンス等から、ランドニーは二機のコア・ファイターの内の片方のパイロットの目星を付けていた。
そしてそれは、ランドニーにとっては、出来れば遭遇したくない名前の上位でもあった。
(そういえば、乗機が変更されてるから、現場で合体なんてできないんだよな。……もしこれで合体した完全体で現れてたら、──それこそ悪夢だ)
ランドニーは、先ほどの遭遇戦を精査すると、まだ恵まれた状況であったと結論を下す。
「ま、兎に角今は、救助班と捜索班の回収と、ウルフ・ガー、マルコシアス両隊からの連絡待ちだな」
そして、頭を切り替えると、共闘する残りの二隊からの報告を待ちつつ。
撤収の為の準備を進めるのであった。
いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。