とあるプレイヤーが、ある日、ギルドメンバー募集用の掲示板を眺めていた。
ソロプレイで活躍していたが、ソロプレイでの限界を感じ、チームでのプレイに転身すべく、新規加入を求めているチームを探す為だ。
雰囲気や活動の特徴等を伝えるキャッチコピーが並び、そのどれもが、心惹かれるものであった。
と、その中に、文字のみならず映像での紹介を行っているギルドがいる事に気が付き、興味を惹かれ、その映像を再生してみた。
我々は、一つの名機を失った。しかし、これは終焉を意味するのか? 否! 始まりなのだ!!
"EMS-04 ヅダ"はMS-05 ザクIに比べ性能では勝っていた、にもかかわらず、採用競争で敗れたのは何故か!?
諸君! あの採用競争が、出来レースだったからだ!
あの屈辱的な敗北から幾年、繁栄を謳歌するジオニック社の影に隠れ、ツィマッド社は後塵を拝し続けた!
しかし! それでも諦めずに自らの強みを磨いたツィマッド社を、そしてEMS-04を神が見捨てる筈はない!!
その証拠に、EMS-04は、"EMS-10"として、不死鳥の如く蘇った!!
にも拘らず、諸君の愛してくれたヅダは、今一度歴史の闇に消えようとしている!?
何故だ!!?
(……欠陥機だからさ)
辛く苦しい立場に立場に置かれているのは理解している。
なればこそ! 我らは襟を正し、この状況を打開しなければならない。
ヅダ好きよ、同志達よ! ヅダに日の目を浴びせる為、立てよヅダ好きよ!!
傑作機であるヅダこそ、ジオン公国を救い得るモビルスーツである。
ジーク・ヅダ!
ジーク・ヅダ!!
ジーク・ヅダ!!!
ギルドの長と思しきプレイヤーの演説映像を再生し終えたプレイヤーは、そっとそのギルドの募集ページから離れると。
自身に合った、新たなギルドを探し始めるのであった。
宇宙要塞ア・バオア・クー。
ジオン公国における重要拠点の一つで、一年戦争と言う原作ラストを彩った最終決戦の舞台でもある。
二つの小惑星を結合した、キノコの様にも傘の様にも見える独特の形状をした宇宙要塞。
その宇宙要塞ア・バオア・クーを拠点に活動しているギルドこそ、先ほどの勇ましい演説で新規加入者を募集していたギルドであった。
「はぁ……。何故だ、何故一向に集まらん!」
ギルドの名は、第100技術試験隊。
そして、同ギルドの専用ロビーで、一向に新規加入者が現れない事を嘆いている人物こそ。
第100技術試験隊の軍団長、金髪オールバックの壮年男性プレイヤー、トウバンジャン・リック・スバル少佐、その人である。
因みに、第100技術試験隊の専用ロビー内は、ツィマッド社の企業ロゴや、愛してやまないヅダのガンプラや写真などが所狭しと飾られていた。
また、スバル少佐自身も、敬愛するキャラクターと同じ階級になりたいが為に、コマンダープレイヤーながらパイロットとして活動するなど。
これらの事からも、彼が如何にヅダを愛してやまないかを物語っている。
「私の熱意のこもった演説を聞けば、多くの同志達が賛同し、集まるとばかり思っていたのに……」
「スバル少佐、やはりヅダでは魅力が乏しく……」
「ヒトデ軍曹! 君までヅダの魅力に疑念を持ってどうする!?」
「す、すいません!」
そんなスバル少佐に注意されたのが、同隊所属のプレイヤーの一人、取り立てて特徴のない黒髪の青年プレイヤー、ヒトデ・ワッシャー軍曹である。
「しかしスバル少佐。既に新規加入者の募集を募ってから二週間ですが、映像の再生回数は二桁前半で、このままでは、待っていても望み薄と思われます」
そしてもう一人。
部隊の紅一点である、ポニーテールにした赤毛が目を引く女性プレイヤー、モナカ・キャロラック曹長が、新規加入者募集における危機的な状況を、スバル少佐に具体的な数字と共に説明する。
「む、むぅ……」
流石に、具体的な数字を告げられると、ぐうの音も出なかった。
因みに、参考までに、同時期に第100技術試験隊と同様の理念を掲げた、ザク好きが集まる第3939部隊は。
演説ではないが、ザクの魅力をアピールした映像紹介付きで新規加入者を募集しており、既に、映像の再生回数は五桁を突破していた。
「そうだ! 少佐、これはきっとジオニック社の妨害工作に違いありません!! 俺達の素晴らしさに他の皆が気付けば、ザクが見向きもされないと危惧したジオニック社の──」
「ヒトデ軍曹。もういい。……残念ながら、ここはゲームなれど現実なのだ。幾ら理由を取り繕おうとも、我々に魅力がないのは、何人たりとも消せはしない事実なのだ」
気落ちしているスバル少佐を励まそうと、ヒトデ軍曹が声をかけるも。
スバル少佐はヒトデ軍曹の肩に手を置き、その気持ちだけで充分だと、それ以上の発言を制するのであった。
「あの、スバル少佐」
「何だね、モナカ曹長?」
「事実を受け入れているというのなら、一体、どうすると言うのですか?」
モナカ曹長の質問に、スバル少佐は一旦間を置くと、静かに自らの考えを話し始める。
「魅力がないのであれば、作り出すまで」
「え?」
「あの、それって?」
「我らが更に戦果を上げ、ヅダの素晴らしさを証明してみせるまで!!」
それは至極単純なものだ。
自分達が使用しているヅダで更に戦果を上げ、他のプレイヤー達にヅダが如何に素晴らしいかをアピールする。
そして、ヅダの魅力に気付いたプレイヤー達は、否が応でも第100技術試験隊に興味を持たずにはいられず、加入希望者が殺到する。
スバル少佐は自らの算段を語った後、ヒトデ軍曹とモナカ曹長を交互に見据え。
「では諸君、勝利の栄光を掴むため、出撃する!」
「「は!」」
出撃の号令を放つのであった。
己の野望を叶える。
その第一歩を踏み出す為、スバル少佐ら三人を乗せたヨーツンヘイム級試験支援艦、個艦名『ヘルヘイム』は宇宙要塞ア・バオア・クーを出航。
一路、
元々民間貨客船であったヨーツンヘイム級は、開戦に先立ち軍に徴用。
自衛用の火器など、必要な改修を施され、改修完了の一番艦の名を取ってヨーツンヘイム級としてジオン公国軍の一翼を担う存在となった。
その最たるが、元は貨客船というだけはあり巨大なそのペイロードで、同様の性質を持つパプア級補給艦よりもその輸送能力は高く、ヤップ級大型輸送艦に迫る程だ。
だが、やはり元商船の為、戦闘に関わる能力は最低限と言ってよい。
そんなヨーツンヘイム級の同型艦、ヘルヘイムの艦橋で、スバル少佐ら三人は今後について話をしていた。
「所でスバル少佐。考えたのですが、戦果を上げると言っても、NPC部隊との戦闘で戦果を上げても、やはり宣伝効果としては、少々、弱いのでは?」
モナカ曹長の疑問に、スバル少佐は確かにと、彼女の意見に賛同を示す。
しかし、一拍置くと、スバル少佐はその様な考えを踏まえた上で、既に策を講じていると告げた。
「当然、狙うは上級プレイヤーの撃破だ。その為に、上級プレイヤーが出現するであろうシチュエーションは既に調べてある」
「具体的には?」
「我々が今向かっているのは、地上で採掘された資源を積載したHLV等を回収する為のポイントだ。地上から打ち上げられた貴重な資源を満載したHLV。当然、連邦側からすれば、宇宙でのこれ以上の戦力強化阻止すべく、これら地上からの資源輸送ルートを脅かしたいはずだ」
とスバル少佐は一拍置くと、再び説明を始める。
「その為、これまでも、このポイントでは何度か連邦軍部隊の襲撃を受けている。当然、軍も座視している訳ではなく。打ち上げ時間の変更や警備戦力の強化などを行っているが。やはり、打ち上げ場所は移動できないので、正直、いたちごっこだ」
「あの~、それでそのポイントに、上級プレイヤーが現れるんですか?」
「あぁ、そうだ。我々にとってはここからが重要だが。私が調べた情報によれば、同ポイントを襲撃した連邦軍部隊内には、上級プレイヤーを含む軍団の出現が確認されている。それも、毎回ではないが、かなり高い頻度でだ」
「という事は、そのポイントにいれば!」
「上級プレイヤーと遭遇できる可能性はかなり高い」
刹那、艦橋内が歓喜に沸いた。
「おっと、喜ぶのはまだ早いぞ。それは、実際に上級プレイヤーを撃破した時に取っておきたまえ」
喜ぶモナカ曹長とヒトデ軍曹に念押しすると、スバル少佐は、艦橋の窓に広がる
「我々の輝きは、まだあまねく星々の輝きにも満たぬ小さなものだ。……だが、焦らず、腐らず、諦めず。前に進み続ければ、やがて我々の輝きは星々の中の一つになるだろう」
自身に、そしてモナカ曹長とヒトデ軍曹の二人に聞かせる様に語り終えたスバル少佐は。
暫し
しかし、その直後、艦橋に前方より接近する艦影を捉えたとの報告が舞い込む。
「司令、前方の味方艦より入電、貴艦の無事の航海を祈る、以上です」
「司令、返信はいかがするか?」
ヘルヘイムの艦長が返信の内容を尋ねるのを他所に。
スバル少佐は興奮した様子で、艦橋の窓から確認できる、前方より接近する味方艦の姿に、その視線をくぎ付けにしていた。
と言うのも、その味方艦。
ヘルヘイムの同型艦にして、ネームシップであるヨーツンヘイム級の一番艦、ヨーツンヘイムであった。
同艦は、何を隠そう、スバル少佐が愛して止まないヅダを始めとしたジオンの試作兵器にスポットを当てたガンダムシリーズの、フル3DCGアニメ。
機動戦士ガンダム MS IGLOO、において、主人公たち第603技術試験隊の母艦として登場している艦だ。
当然、スバル少佐にとっては、特別な艦である。
その姿を目に焼き付けようと、他人の声が耳に入らなくなるのも仕方がない。
「艦長。こちらも、貴艦の航海の無事を祈る、と返信してください」
その為、返信内容については、モナカ曹長が代わりに伝えるのであった。
なお、すれ違い、見えなくなるまでの間、スバル少佐はずっとヨーツンヘイムを目で追っていたのだった。
「ふ、ふふふ、むふふふ。これは、これはきっと吉祥だ。幸先がいいぞ」
そして、怪しげに笑みを浮かべると、余韻に浸るのであった。
ヨーツンヘイムとの邂逅などを経て、ヘルヘイムは、やがて目的であった衛星軌道上の一角に到着した。
「司令! 既に当該宙域では、警備部隊と連邦軍との間で戦闘が発生している模様です!!」
「了解だ。艦長! 艦の事は任せる!」
「アイ・サー!」
「ヒトデ軍曹、モナカ曹長! いよいよだ。偉大なる我らの第一歩を踏み出すぞ!」
「「了解!」」
「モビルスーツ隊、発艦用意! 繰り返す、発艦用意! モビルスーツ隊発艦後、本艦は左一二〇度反転、安全圏に退避する」
大音量のアナウンスが流れる中、ヘルヘイムのコンテナ式格納庫内は、騒音に包まれていた。
懸架アームに固定され所定の位置に移動するヅダ。
やがて、ハッチが開かれると、美しい地球を背景に、幾つもの光りの輝きが生まれては消える、そんな情景を生み出す一角が現れる。
「トウバンジャン・リック・スバル! ヅダ、出るぞ!!」
ハッチの脇に備えられたランプがグリーンに灯ると、青き幻影のモビルスーツが、
「いいか、先ずは上級プレイヤーを探し出せ!」
「了解」
「しかし、こうも激しい戦闘の中では、難しい」
スバル少佐操る角付きのヅダを先頭に、三機のヅダは、戦場の只中へと飛び込んだ。
護衛対象のHLV群の近くでは、ジオン軍の警備部隊の戦闘艦や機動兵器が、襲撃を仕掛けた連邦軍の部隊相手に、火線や光線を絶え間なく放ち続けている。
連邦軍部隊も、負けじと応戦を続ける。
そこはまさに、光の戦場。
「さぁ、受けろ!!」
そんな中を駆け抜ける三機のヅダ。
途中、行き掛けの駄賃とばかりに、スバル少佐操る角付きのヅダはシールド裏に装備しているシュツルム・ファウストを、隙を見せた初期型ジム目掛け放ち。
綺麗な光の輝きを背に、三機のヅダは戦場を駆け抜け続ける。
「少佐! 敵はボールや初期型ジムなどで、特に上級者が使っていると思しき機体は見当たりません!」
「もっとよく探すんだ! 必ずどこかにいる筈だ!」
モノアイが捉えた敵機を確認していくも、目当てらしき機影が見当たらず、ヒトデ軍曹が弱音を吐く。
だが、スバル少佐はそんな彼を鼓舞すると、更に捜索を続けた。
「少佐! あれを!!」
と、その時、モナカ曹長が何かを見つけたかのように叫んだ。
そこには、右舷の熱核融合ロケットエンジンが火を噴き、船体を傾ける味方のムサイ級の姿があった。
「! あれは!!」
刹那、そんなムサイ級を、一筋の光が貫き、程なく、ムサイ級は巨大な光の中へと消えた。
ムサイ級を宇宙の藻屑へと変えた原因、一筋の光の発射点を探すと、そこには、一機のモビルスーツの機影があった。
「見つけたぞ! 間違いない、あれは上級プレイヤーだ!! ヒトデ軍曹、モナカ曹長! いくぞ!!」
「「了解!!」」
下手人であるモビルスーツ目掛け、三機のヅダは土星エンジンを噴かせた。
三機のヅダが突撃した先にいたモビルスーツ。
それは、額のV字型ブレードアンテナにツインアイ、それに、関節部のシーリング処理やサブアームを有した大型バックパック。
武装はバックパックに装備された大型メガ粒子砲や六連装ミサイルポッド、右腕部に二連ビームライフル、左腕部にはロケット・ランチャー。更には装甲内蔵式ミサイル等。
更に両腕部とサブアーム、合わせて合計四枚ものシールドを装備する。
まさに走攻守を高いレベルで兼ね備えたガンダムタイプ。
形式番号FA-78-TB、フルアーマー・ガンダムTB。
文字通り、現状では上級プレイヤーの多くが保有している、一年戦争末期に登場する高性能モビルスーツの一種だ。
「集中攻撃をかける!!」
次なる獲物を探していたフルアーマー・ガンダムTBは、自らに迫る三機のヅダに気付いたのか。
彼ら目掛け、右腕部の二連ビームライフルを放った。
「気を付けろ! 奴の火力は強力だぞ!!」
放たれた二つの光線を避けつつ、三機のヅダは各々が装備する火器を放ち始める。
だが、そう簡単に火線を当てられる程、簡単な相手ではない。
「ヒトデ軍曹! 背後に回り込んで攻撃を! モナカ曹長、相手の気をこちらに向けるぞ!」
「了解!」
互いに回避行動を取りつつ、互いの火線が交錯する。
と、ヒトデ軍曹のヅダが、フルアーマー・ガンダムTBの後背に回り込もうと、加速を強める。
それを悟られまいと、残りの二機のヅダから、熾烈な攻撃が繰り出される。
「こいつで!!」
と、目論見通りフルアーマー・ガンダムTBの後背に回り込んだヒトデ軍曹のヅダが、装備のザク・バズーカを放った。
「なに!?」
だが、放たれた二八〇ミリのロケット弾は、後ろから撃たれる事を予期していたかのように、サブアームのシールドによって本体に届くことはなかった。
「あー、ウザイ、マジウザイ」
そして、仕切り直しとばかりに、再び三機のヅダが連携しつつ攻撃を再開した矢先。
不意に、彼らのコクピットに聞き覚えの無い声が聞こえてくる。
「さっきからチョロチョロと、マジ鬱陶しいってゆーかー!」
どうやら、、声の主はフルアーマー・ガンダムTBのパイロットの様だ。
女性であろう声の主は、苛立ちを隠すことなく露わにする。
「とっとと墜ちろよって感じーっ!」
刹那、フルアーマー・ガンダムTBの最大火力である大型メガ粒子砲が吠えた。
「きゃっ!?」
その光が狙ったのは、モナカ曹長のヅダ。
何とか直撃は避けられたが、完全に避けきれず、左脚が吹き飛ばされる。
「ッチ」
一撃で仕留めきれず、フルアーマー・ガンダムTBは舌を打つ。
「大丈夫か!? モナカ曹長!」
「はい、少佐。まだ戦えます」
「よし! ヒトデ軍曹、モナカ曹長! 三方向から攻撃を仕掛ける、フォーメーションアタックだ!」
「「了解!!」」
一方、損傷したモナカ曹長のヅダを中心に一旦集結した三機のヅダは。
刹那、散開すると、各々三方向からフルアーマー・ガンダムTB向けて攻撃を再開する。
「……ぜ、……ウゼェ、ウゼェ!! ウゼェェェェッ!!!」
そんな三機のヅダによる攻撃を軽々と躱していたフルアーマー・ガンダムTBは、パイロットの雄たけびと共に、六連装ミサイルポッドから二発のミサイルを発射。
二発のミサイルは通常の弾頭と異なり、親となる弾頭から複数の子となる小型ミサイルを射出する、所謂多弾頭ミサイル。
外装が剥がれ四方に射出された小型ミサイル群は、周囲のデブリなどを巻き込みながら光りの壁を形成する。
「先ずはテメェだよ!!」
その圧倒的なまでの火力に、動きを止めてしまった三機のヅダ。
と、そんな光の壁を突き破り、一筋の光が、左右上下に高速で動きながら、モナカ曹長のヅダに迫った。
その正体は、言わずもがなフルアーマー・ガンダムTBだ。
「きゃぁぁぁぁっ!!」
あっと言う間に目の前に姿を現したフルアーマー・ガンダムTBは、モナカ曹長のヅダに見事な膝蹴りを喰らわせる。
コクピット内を襲う激しい揺れと衝撃に、モナカ曹長は堪らず悲鳴を上げた。
「先ずは一つ!」
膝蹴りで吹き飛んだモナカ曹長のヅダは、その衝撃の強さゆえか、起き上がるのに手間取る。
そんなモナカ曹長のヅダに照準を合わせた、フルアーマー・ガンダムTBの大型メガ粒子砲が、再び吠えた。
そして、モナカ曹長のヅダは、光と共に宇宙の塵と化す。
「く! よくも!!」
「次はテメェか!!?」
敵討ちとスバル少佐操る角付きのヅダが、装備したザクマシンガンを発砲するも、放たれた一二〇ミリ弾の弾道の行方は、空しく
一方、フルアーマー・ガンダムTBからのお返しの二連ビームライフルは、回避行動をとるスバル少佐操る角付きのヅダの捉え、メイン火器のザクマシンガン共々、右腕を吹き飛ばした。
「し、少佐ぁ!?」
圧倒的な力の差を見せつけられ、たじろぐヒトデ軍曹。
そんな彼の操るヅダ目掛け、フルアーマー・ガンダムTBは複雑な軌道を描き近づく。
「くるなぁ、くるなぁぁぁっ!!」
右手にザク・バズーカ、左手に予備のザクマシンガンを装備し、狙いも構わず撃ち続けるヒトデ軍曹のヅダ。
だが、そんな弾幕をいともたやすく掻い潜ると、フルアーマー・ガンダムTBは、ヒトデ軍曹のヅダの眼前にその姿を現した。
「さっきはよくもウチの可愛いガンダムっちを傷物にしようとしてくれたなぁ!! お返しだゴラァァァァッ!!」
「ウワァァァッ!!!」
そして、フルアーマー・ガンダムTB自慢の加速から繰り出される蹴りが、ヒトデ軍曹のヅダに直撃。
その勢いで吹き飛ばされたヒトデ軍曹のヅダは、瞬く間に地球の重力に引きずり込まれていく。
「少佐ぁ! スバル少佐ーぁ!! 助けてください、エンジンがかかりません!! 少佐ぁ! 助けてぇぇぇっ!!」
装甲外温度が安全値を上回り、コクピット内にけたたましい警報音が鳴り響く。
シートに押しつぶされるような感覚を感じ、奥歯を噛みしめながら、赤く染まるコクピット内で、ヒトデ軍曹は力の限り叫んだ。
「(流石のヅダにも大気圏を突破する性能はない。……だが、ヒトデ軍曹)──君の死は無駄死にではないぞ!!」
蹴られた衝撃でエンジンに不調をきたし、制御を失ったヒトデ軍曹のヅダは、摩擦熱により装甲を赤く染め上げる。
最早助けられぬヒトデ軍曹、彼の犠牲を無駄にせぬよう、スバル少佐は、まだ無事な自身のヅダの左腕のシールドに装備されている打撃用ピックを展開させると。
ヒトデ軍曹のヅダに気を取られているフルアーマー・ガンダムTB目掛け、後背の死角から、一気に突き刺すべく最大加速で突撃した。
「ヅダは! もはやゴーストファイターではない!! 貴様を討ち取り、厳然と存在していると証明してみせよう!!」
フルアーマー・ガンダムTB目掛け打撃用ピックが迫る。
だが、フルアーマー・ガンダムTBは避ける素振りを見せない。
勝った。
スバル少佐の脳裏に、勝利の栄光に輝くヅダの姿が駆け巡る。
──だが。
「!!?」
打撃用ピックの先端が、間もなくフルアーマー・ガンダムTBを捉えると言った所で。
不意にフルアーマー・ガンダムTBは、その巨体を翻すと、寸での所でスバル少佐の一撃を躱した。
「
会心の一撃を躱され、無防備な姿を晒したスバル少佐操る角付きのヅダ目掛け、フルアーマー・ガンダムTBが手にしたビーム・サーベルを振るった。
それは、一つの野望の終焉を告げる、儚い光であった。
「まだだ! まだ終わらんよ!!」
「でもスバル少佐、結局あの戦闘で一番目立ってたの、あのフルアーマー・ガンダムTBでしたよ」
「戦闘後のSNSを確認しましたら、一応、私達の事を書いているのもありましたが。……見ないのが賢明ですね」
戦闘終了後、専用ロビーに戻ってきた三人。
その中で、スバル少佐は敗戦の傷を癒すかのように、更なる意欲を口にする。
「ヅダは滅びぬ!! 何度でも蘇るさ!!」
果たして、彼らの野望が達成される日はいつになるのか。
それは、神のみぞ知る。
いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、お気に入り登録、並びに評価や感想など、皆様からの温かな応援は、執筆の大いなる励みになりました。
更には、誤字報告や気になった箇所へのご指摘等、こちらも本当にありがとうございます。
皆様の応援のお陰で、一時的ではありますが、日間ランキングの十二位という目を疑う様なランキング入りを果たしておりました。
本当に、ありがとうございます。
この場をお借りして、感謝申し上げます。