機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

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第二十八話 生きているからラッキーだ!

 第046独立部隊用のロビーを後に、第823機動偵察隊との顔合わせを行うべく、一行は軍事基地の格納庫群を歩いていた。

 若干いつもより足取りが重いような気がしなくもないが、待ち合わせ場所目指して歩く一行。

 

「えーっと、この辺りの筈なんだけどな?」

 

 先頭を務めるランドニーが周囲を見渡しながら、それらしい人の姿を探す。

 すると、明らかに周囲の者達とは異なる人影を見つけた。

 空を見上げながらポージングを決めているパイロットスーツ姿の男性。

 その明らかに不自然な様子に、その者の近くをと通り過ぎる人々は、その者の近くを通る時だけ歩く速度を速めていた。

 

「なぁ、ちょっと声かけて来いよ」

 

「えぇ!? 俺が!」

 

「リーダーだろ」

 

 そんな男性の姿を見つけた一行は、シモンの提案により、代表してまずはランドニーが声をかける事となった。

 

「えっと……、すいません」

 

 男性に近づくと、恐る恐る声をかけるランドニー。

 しかし、返事が返ってこない。

 聞こえていなかったのかと、もう一度呼び掛けてみようとしたその時。

 

「イェイ! 有名チームと共同の任務に出撃できるぞ!!」

 

 突然、芝居じみた仕草と共に、返事とは思えない独り言を話し始めた。

 

「イェイ! 足手まといにならないよう、全力で頑張るぞ!!」

 

 と、突然物陰から、同じくパイロットスーツを着込んだ男性が飛び出し、最初の男性の隣に並んだ。

 

「イェイ! バリバリ活躍して、可能性は無限大だって、皆に証明するぞ!」

 

 更に、次から次へと同じ格好の男性達が現れ。

 一人一言ずつ言葉を発していくと、最後に何故か、最初からいた男性を胴上げし、一連の儀式のような行為は終わりを告げた。

 

「あ、これは失礼。もしかして、第046独立部隊の方ですか?」

 

「え、えぇ、軍団長のランドニー・ハートです」

 

「そうでしたか! 僕は、第823機動偵察隊の軍団長を務めているタクミです、よろしく!」

 

 そして、漸くランドニーに対して軍団を代表して自己紹介を行った男性こそ。

 胴上げされていた第823機動偵察隊の軍団長、白い歯をのぞかせ素敵な笑顔を浮かべる三十歳前後の男性コマンダープレイヤー、タクミであった。

 

 対して、固い笑顔を浮かべるランドニー。

 そんな両者が握手を交わし終えると、今度は互いの軍団メンバーの紹介となったのだが。

 第823機動偵察隊の面々の眩しいまでの笑顔溢れる自己紹介に対して、第046独立部隊の面々は、終始その眩しさに圧倒され、表情がぎこちないままであった。

 

 こうして無事に顔合わせを済ませた両隊。

 用も済んだので早速出撃するかと思いきや、別れ間際、不意にメノが零した疑問が、第823機動偵察隊の足を止めた。

 

「でも、どうしてモビルスーツに乗らないんですか?」

 

「よくぞ聞いてくれました! そう、それは、聞くも涙、話すも涙の物語!」

 

 疑問に対して身の上話を語り始めたタクミに、第046独立部隊の面々は面倒くさい事になったと内心思っていたが。

 適当に誤魔化してその場を去れる様な雰囲気ではなかった為、仕方なくその涙の物語とやらを聞いていく事に。

 

「僕達はね、学生時代の友人グループでね。でも、恥ずかしい話なんだが、こう見えても当時はそりゃもう地元でも有名な悪でね。所謂ヤンキーさ。……通ってた学校も地元じゃ有名な不良校。そりゃもう、毎日毎日、飽きもせず喧嘩だ何だと、何度地元の警察に厄介になった事か」

 

 今ではとてもそうは見えない、とても爽やかな面々であるが。

 タクミ曰く、学生時代は漫画に出てきそうな典型的なヤンキーで、リーゼントや金髪を靡かせ、飲食店やコンビニの前でたむろし、煙草に喧嘩にと明け暮れ、警察の厄介になったのも両手では数えきれない程との事。

 

「今思えば。あの頃の僕達は、ただ漠然と生活していて、自分が何をすべきかの道も分からず、それが故にイライラを募らせて、それを暴力やタバコ等で発散させていただけだったのかもしれない」

 

 そんな不良少年だった彼らに、ある日、転機が訪れる。

 

「でも、そんな僕達の人生を変えてくれた出会いが、その日、起こったんだ」

 

 その日も、彼らはコンビニの前にたむろしていた。

 そして、いつもの如くタバコをふかしていた彼らの前に、人影が一つ、近づいてきた。

 

「それが、"師匠"との出会いだった。……あ、師匠って言うのは、僕達が尊敬の念を込めてそう呼んでいるんだ。師匠の名前は幸佐 修治(こうさ しゅうじ)、師匠との出会いがなければ、多分今の僕達はなかっただろう」

 

 不良少年であった当時のタクミ達に近づいた師匠と呼ばれる人物は、彼らに、こんな所でタバコなど吸わず、心を入れ替えて真面目に勉学に勤しめと、説教を垂れたそうだ。

 だが、癪に障った当時のタクミ達は、師匠を近くの人気のない所まで誘導し、そこで打ちのめしてやろうと画策した。

 

「でも、全員で束になっても、師匠にはかすり傷一つ負わせられなかった」

 

 強者のような雰囲気も外見も持たぬ師匠なら、容易く打ちのめせる。

 そんな当時のタクミ達の考えは、程なく木っ端みじんに打ちのめさせられる事となった。

 

「"貴様らの力はその程度のものか!"、って、目を見開いて一喝された時、当時の僕達は悟った。この人には、絶対に勝てないと」

 

 こうして敗北を認めた当時のタクミ達は、敗北の悔しさと共に、囲って打ちのめそうとした浅ましく卑しい自らの行いを悔いて、涙を流し始めた。

 すると、そんな彼らの様子を見ていた師匠は、そんな彼らに寄り添うと、優しく語り始めたのだった。

 

「"日本男児たるもの、一度の敗北で泣き出すでない!"、"自ら膝をつき、涙を流すなど、勝負を捨てた者のすることぞ! 立てい! 人生と言う勝負を諦めたくなくば、立ってみせぇぇっい!!"。そんな師匠の言葉に、俺達は心を打たれた。そして、師匠に尋ねた。どうすれば師匠のような強い者になれるのかと」

 

 すると、師匠は彼らを自らの自宅に案内した。

 そしてそこで、自らが大好きだという機動戦士ガンダムのDVDの上映会を行う流れとなった。

 その際、当時のタクミ達に見せたのが、機動戦士ガンダムの第十四話、『時間よ、とまれ』であった。

 

「当時の俺達でもガンダム位は知ってたけど、それも一般的なもので。作中に出てくるワッパなんて、名前すら知らなかった。そんな状態で『時間よ、とまれ』を視聴していると、ガンダムとワッパとの戦闘シーンになってね。その時、師匠が語り掛けたんだ。"この様に、創意工夫でどんな難局にでも立ち向かえる。だが、その際最も重要なのは、それを行う為の一歩を、恐れず踏み出す事だ。彼らを見ろ、ガンダムと言う圧倒的な存在に臆する事無く創意工夫で立ち向かっている!"」

 

 やがて、物語は終局へと向かう。

 

「知っての通り、クワラン曹長たちの作戦は失敗した。だけど、彼らは最後に笑顔で去っていった。その時、師匠が語ったんだ。"人は何度も挫折にぶつかる。だが、その際、不貞腐れず、挫けず、膝をつかずに胸を張り前に進み続ければ、その先には無限の可能性が広がっている"。それを聞いて、当時の僕達は気付かされた、今の僕達は、一歩を踏み出す怖さに負けて、膝をつき、立ち止まっていたのだと」

 

 そして、当時のタクミ達は、視聴を終えると師匠に誓った。

 心入れ替え、恐れず一歩を踏み出し、そして、師匠のような偉大な人に少しでも近づけるようになると。

 

「勿論、実際に一歩を踏み出してみると、更に次の一歩を踏み出す大変さを知る事にもなったけど、それでも僕達は、膝をつかず、進み続けた。そして、今の僕達があるのさ」

 

「そ、それは、凄い人生だったんですね。……あ、もしかして、ワッパを使ってるのも、人生を変えてくれた切っ掛け、だからですか?」

 

「その通りだよ」

 

 タクミの話を聞いて、何故彼らがワッパにこだわっているかを理解した第046独立部隊一行。

 

「ワッパは僕達の人生を変える切っ掛けであると同時に、僕達と師匠とをつなぐ大切な思い出の品だからね」

 

「え? あの、もしかしてタクミさん達の師匠さんって……」

 

 と、不意に悲しげな表情を浮かべたタクミ、それに他の第823機動偵察隊の面々。

 その口ぶりと雰囲気から、ランドニーは嫌な予感をせずにはいられなかった。

 

「あぁ、本当は、師匠と一緒に俺の野望をプレイしたかったんだ。でも、でも……」

 

 やはり、嫌な予感は当たっていたのか。

 そう思った矢先。

 

「でも、奥さんに愛想つかされたのが切っ掛けで暴飲暴食に走って、それが原因で、ドクターストップがかかったから、師匠とは一緒にプレイできないんだ!!」

 

 師匠ーっ! 師匠ーっ! と涙を流す第823機動偵察隊の面々を他所に。

 ランドニー達は、目を点にしていた。

 それまでの口ぶりから、てっきり師匠は亡くなったものとばかり思っていたからだ。

 

「えっと……、失礼な事をお聞きしますけど、その師匠さんは、今も存命で?」

 

「? 勿論。俺の野望はプレイできないけど、今でも元気だよ」

 

 不思議な質問をするねと言わんばかりの表情を浮かべるタクミを他所に、ランドニーは乾いた笑いを浮かべるのであった。

 

「だから、プレイできない師匠の分も、僕達が精一杯楽しんでいるんだ!!」

 

 こうして、タクミ達第823機動偵察隊がモビルスーツを使わずワッパを使っている理由も分かった所で。

 両隊は出撃の為、一旦別れる事となった。

 

 

 

 

 

 

 オデッサから北西に約七四〇キロメートル。

 ドナウ川支流のヘルナッド川沿いに位置する旧スロバキアを代表する工業都市の一つにして、かつては第二の都市としてその名を知られた都市、コシツェ。

 

 最近のヨーロッパ地域での連邦軍の攻勢により、ジオンは戦線を後退させ。

 現在では、旧ポーランド・スロバキア・ハンガリー等の東部が、ヨーロッパ戦線における最前線として定着しつつあった。

 

 そんな最前線のライン上からほど近い位置にあるコシツェの南東方向から、第046独立部隊と第823機動偵察隊、それに捜索救難部隊は侵入していた。

 

「よーし。それじゃ、連邦軍にバレない内に、フィリアン少尉を見つけて回収し、とっとと撤収するぞ」

 

 コシツェからほど近い小さな村に陣を設けた一行は、素早く部隊を展開させると、コシツェ市内に向けて前進を指示する。

 

「フィリアン少尉からの救助信号は確認できたか?」

 

「いえ、まだ確認できていません」

 

「マゼラ・トップの墜落進路の推定からして市内にはいる筈なんだがな……」

 

「脱出の際に機材にトラブルが生じているのかもしれません」

 

「となると、俺達が近くまで来ていると知って、本人が何らかのアクションを起こすのを待つ他ないか……」

 

 村に停止させたギャロップの艦橋で、ランドニーは艦橋乗組員からの報告を聞き独り言ちた。

 事前の観測で、フィリアン少尉がコシツェ市内にいるであろう所までは把握できていたが、市内の何処にいるのかまでは把握できてはいなかった。

 その際に大いに役に立つ救助信号も、現時点ではトラブルなのか確認できない為、フィリアン少尉の居所を把握するには、本人が何らかのアクションを起こし、目印となるものを出してもらうしかない。

 

 そして、ランドニーが見つめた艦橋内のモニターには、今まさに、コシツェ市内中心部に足を踏み入れた味方を示す光点が映し出されていた。

 

 

 

 

「くらえ! ばぁぁっくれつ! マイン・クラッシャーーッッ!!」

 

 コシツェ市内の一角、自身の愛機であるワッパに乗ったタクミは、樹脂のフェンスを飛び越え、その先をノロノロと進んでいた鋼鉄の軍馬、61式戦車の頭上を飛び越える。

 その際、タクミは手にしていた多角形の物体を61式戦車の主砲基部に放り投げると、多角形の物体は磁石の如く主砲基部に密着した。

 

「ヒーーット、エンド!!」

 

 そして、程なくして、タクミの掛け声と共に、61式戦車の砲塔が炎と黒煙に包まれた。

 それは、先ほど主砲基部に密着した多角形の物体が原因であった。

 多角形の物体の正体、それは吸着地雷と呼ばれる、文字通り装甲に密着して爆発する地雷の一種で。タクミはタイマーをセットしたそれを用いて61式戦車を撃破したのだ。

 

超級! 覇王! て・き・だぁぁぁーんっ!(アールピージー!)

 

 一方、別の場所でも。

 巧みな操縦でワッパを操る第823機動偵察隊の一人が、掛け声と共に、構えたラングベル対戦車ロケットランチャーと呼ばれる個人携帯ロケット弾発射器のトリガーを引いた。

 刹那、照準器の中心点を合わせたターゲット目掛け、空気を切り裂く鋭い音と共に、一筋の白い尾を引き、放たれたロケット弾頭が一直線に突き進む。

 

「……爆発!(弾着!)

 

 そして、連邦の履帯式装甲兵員輸送車(APC)目掛けて飛来したロケット弾頭は、車体上面に命中し、内包したそのエネルギーを爆発させ、乗員達の墓標へと変貌させる。

 

「成程。ワッパを推しているだけはあって、扱い方も相当心得ているな」

 

 そんな第823機動偵察隊の戦いぶりを視界の端に捉えつつ、沙亜は、自身が操るザク・アライヴが装備したヒートホークを振るった。

 刹那、刀身が、眼前の巨人の頭部から胸元にかけて真っ二つに斬り裂いた。

 

 程なく、道路に無残なその姿を横たわらせたのは、一機のジム。

 

 そして、いくつかの通りを隔て、同系機であるジムが、今まさに装備した全ての火器を、迫りくる敵目掛けて発砲していた。

 放たれる六〇ミリと九〇ミリの火線は迫りくる敵、のシールドに命中し、本体には致命弾を与えられない。

 だが、それはそれで都合がよかった、何故なら、シールドを構えている間、敵は有効な反撃をできない、とジムのパイロットは考えていたからだ。

 

 が、それは浅はかな考えだと、直後にジムのパイロットは思い知らされる。

 シールドを構えた敵は、そのまま勢いよく突撃、所謂シールドチャージでジムを吹き飛ばす。

 その際の衝撃で全身が、特に脳が酷く揺さぶられ脳震盪を引き起こす寸前にまで陥るジムのパイロット。

 何とか寸前で持ちこたえ、機体を起こそうとしたが、機体は、起き上がる事はできなかった。

 

 何故なら、敵が手にしたパイロットの命を刈り取った巨大な剣が、ジムの腹部を貫いていたからだ。

 

「こちらユーリアン。ジム一機を撃破」

 

「了解だ。……いや~、それにしても、第823機動偵察隊の皆さんの事、正直なめてたわ」

 

「え? そうだったの?」

 

「いやだって、せめて一機位モビルスーツがいてもいいだろうに、モビルスーツ保有数ゼロって……。って思ってたけど、戦いぶり見てたら、上から物言えないなって理解したよ」

 

 ユーリアンがランドニーとの通信を行っているその最中も。

 第823機動偵察隊の面々は、自身のワッパを巧みに操縦し、瓦礫や放置自動車などを速度を落とさず避けていくと、大通りにいた連邦軍の歩兵隊を左右から挟撃。

 その際、ワッパ操縦席の上部に設けられた、フレームアンテナ前部のブーム式懸架装に取り付けられたマズラ社製の汎用機関銃MG74、のワッパ搭載型であるMG74/Sを使用し。

 7.62mm弾の嵐が、連邦歩兵達を次々となぎ倒していった。

 

 モビルスーツよりも小回りの利くワッパは、装甲や火力はない分、その小ささと身軽さで市街地など障害物の多い場所ではその性能を十二分に生かし。

 戦車や装甲車など、通常兵器相手には、そのサイズに比例して高い出力を誇る事により生まれる数メートル、短時間ならば数十メートル上昇、という特性を生かし、上面などからの攻撃で、低い火力を補い互角以上に戦った。

 

 だが、やはり兵器である以上、その性能を生かすも殺すも操縦者次第。

 その点で言えば、第823機動偵察隊の面々は、まさにワッパを自身の体の一部のように扱う程、その扱いには精通していた。

 

 

 そんな彼らの手により、コシツェ市内に展開していた連邦軍戦力。

 その最後と思しき軍用トラックが炎と黒煙の中に没すると、市内には、脅威となる連邦軍戦力は確認できなくなった。

 

「よーし、それじゃモビルスーツ隊は周辺警戒、歩兵隊と第823機動偵察隊の皆さんには、フィリアン少尉の捜索を。発見し次第、直ちに──」

 

 と、ランドニーが次の指示を出そうとしたその時。

 

「シモン! 飛べ!!」

 

「は? 何だよ急に──」

 

 不意に沙亜がシモンに対して怒鳴る様な指示を飛ばした刹那。

 シモンのザクIIF型目掛け、一筋の光りが市内を駆け抜けた。

 

 そして、一筋の光は、シモンのザクIIF型の両腕前腕と手にしていたMS用対艦ライフルを貫き、吹き飛ばした。

 

「っわぁぁっ!?」

 

 吹き飛んだ影響で、シモンのザクIIF型は背後の建物に倒れ込む。

 

「何だ!? 何が起こった!?」

 

 そんな一部始終を見ていたランドニーは、直ぐに先ほどの出来事の原因を究明すべく指示を飛ばす。

 すると、程なくして艦橋乗組員の口から原因と思しき報告が告げられる。

 

「新たに敵モビルスーツを三機確認!?」

 

「何だと!? 上空のルッグンは何をしてた!?」

 

「それが、どうやらヘルナッド川の中に潜んでいたようで」

 

「何ぃ!?」

 

「映像出します」

 

 上空のルッグンより送信された映像には、ヘルナッド川の中から今し方姿を現したと思しき三機の陸戦型ガンダムの姿が映っていた。

 そのうち一機は、ロングレンジビームライフルを装備しており。おそらくシモンのザクIIF型を狙撃した下手人はこいつだろう。

 三機の陸戦型ガンダムを目にしたランドニーは、何度か対峙した事のあるプレイヤー部隊の事を思い起こさずにはいられなった。

 

「やったよどんちゃん! スナイパーを潰したよ!」

 

「よぉーし! きてる、きてるぞ。流れは完全にこちらにきている! ふふふ、あの赤い改造ザク間違いない。……いつかの借り、今日こそ返させてもらうぞ!」

 

 最も、まさかその当人達だとは、気付いてはいなかったが。

 

「ランドニー、どうする? 相手はスナイパーを含めて陸戦型ガンダム三機。火力を集中して一気に叩くか?」

 

「いや駄目だ。下手に市内に流れ弾をまき散らしたら、フィリアン少尉を巻き込まないとも限らん!」

 

 沙亜からの提案を、ランドニーは否定した。

 フィリアン少尉の居場所を把握できていないこの時点で、市内の損害を考慮せずに戦えば、任務の要であるフィリアン少尉の安否が脅かされる可能性すらある。

 

 因みにこの為、今回火力支援要員のメノとマゼラアタック小隊は、護衛の戦闘ヘリと共に村の陣で待機していた。

 

「だが、せめてスナイパーだけでも何とかしないと、こちらの被害も──」

 

「横から失礼するよ」

 

 だが、フィリアン少尉を救助するには、救助の際に脅威となる陸戦型ガンダムを排除しなければならず。

 自ずと制限がかかる中で、どの様に脅威度の高い敵スナイパーを排除するかの方法に頭を悩ませていると、タクミからの通信が入る。

 

「そのスナイパーの排除。僕達に任せてくれないかな?」

 

「え? 第823機動偵察隊の皆さんに?」

 

「一機位なら、僕達でも何とかなるからね!」

 

 タクミからの提案に、ランドニーは顎に手を当て考えを巡らせる。

 やがて、結論を出したのか、顎から手を離すと、下した結論を話し始めた。

 

「分かりました。では、スナイパーの排除、お願いいたします」

 

「任せてくれたまえ!!」

 

「よし、作戦を伝える! ロッシュはシモンと共に後退、沙亜とユーリアンは第823機動偵察隊がスナイパーを排除し易いように、残りの二機を可能な限りスナイパーから引き離せ!」

 

「「了解!」」

 

 返事と共に、各々が行動を開始する。

 ザク・アライヴとグフ・インフェルノの誘いに乗り、二機の陸戦型ガンダムがまっつんの陸戦型ガンダムから離れていく。

 

 その一方、第823機動偵察隊は、一糸乱れぬ隊列で、気付かれぬ様に裏道などを使いまっつんの陸戦型ガンダムに接近していく。

 

 やがて、第823機動偵察隊は、まっつんの陸戦型ガンダムの付近にある建物の影までやってきた。

 

「よし、まだ相手は僕達に気付いていない。……必殺の"ワッパ同盟拳"でいくぞ!」

 

「「おう!!」」

 

 そして、第823機動偵察隊は、合図と共に行動を開始する。

 タクミは、シート脇のサイドケースから中折れ式の単発擲弾発射器を取り出すと、弾を装填し、まっつんの陸戦型ガンダム目掛けて発射した。

 山なりの軌道を描いて放たれた弾頭からは、もくもくと大量の煙が発せられる。

 そう、発射したのは発煙弾である。

 

「!!? な、なんだぁ!?」

 

 突然視界を遮る大量の煙に、まっつんはコクピット内で慌てふためく。

 すると、煙しか映し出さないメインモニターを、一瞬何かが横切る。

 

「えぇい、くそ、この!!」

 

 横切った何かの正体を突き止めるよりも、視界を遮る煙を一刻も早く何とかすべく。

 まっつんの陸戦型ガンダムは片手で煙を振り払い始めた。

 

「え!? な、なんだよこいつら!?」

 

 やがて、煙が晴れ、視界が戻ったまっつんが目にしたのは。

 乗機の周囲を飛び回る、第823機動偵察隊のワッパ達の姿であった。

 

「我らの魂が真っ赤に燃える!」

 

「勝利を掴めと轟叫ぶ!!」

 

「何だよこいつら!」

 

 何やら意味深な掛け声を放つ第823機動偵察隊の面々。

 一方、まっつんは乗機の周囲を飛び回る鬱陶しいワッパ達を振り払うべく、乗機の片手を振るい払い落とそうとする。

 だが、巨人の手を、ワッパは軽々と躱し。

 

「ばああぁぁぁぁっっくれつ!!」

 

 次の瞬間、一斉にまっつんの陸戦型ガンダムから離れたかと思えば。

 

「ワッパ! 同ぅ!! 盟ぃ!! けぇぇぇっん!!!」

 

 決め台詞と共に、まっつんの陸戦型ガンダムの各所に仕掛けた吸着式時限爆弾が爆発し、巨人は炎と黒煙の中に四散していった。

 

 

 一方、第823機動偵察隊がまっつんの陸戦型ガンダムを仕留めたのと同じ頃。

 残りの陸戦型ガンダム二機との戦闘にも、決着の時が訪れていた。

 

「やはり、強い……」

 

 十字路の真ん中に、四肢を斬り落とされ、不格好に擱座する陸戦型ガンダム。

 そして、それを見下ろすグフ・インフェルノ。

 

 そして、残るどんちゃんの陸戦型ガンダムはと言えば。

 

「貴様は水底に返っていろ!!」

 

「やっぱりかぁぁぁっ!!」

 

 ザク・アライヴの強烈な蹴りを喰らい、再びヘルナッド川に没するどんちゃんの陸戦型ガンダム。

 刹那、トドメとばかりに、ザク・アライヴの背部に装備した二基の五連装ロケットランチャーが火を噴いた。

 

 そして、どんちゃんの悲痛な叫びは、巨大な水柱の中へとかき消されるのであった。

 

 

 

 

 

 その後、無事に要救助者のフィリアン少尉を発見し、捜索救難部隊による救出を終えると。

 任務を完了した一行は、追手が来る前に急ぎオデッサへと帰還した。

 

「今回はありがとうございました」

 

「いや、僕達の方こそ、ありがとう。また共に戦える日が来ることを心待ちにしているよ!!」

 

 そして、オデッサに帰還すると、第823機動偵察隊一行は、爽やかな笑顔を残し。

 自らの道を歩む姿を広く知らしめるべく、オデッサの喧噪の中へと消えていった。




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