機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

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第三十三話 あれが噂のバトリング・アリーナ

 重苦しい空気の漂う大人数収容可能な会議室。

 戦略会議が開催されている会場となった会議室内には、その場にいる人数に反して、数人の声が響くだけであった。

 その声の発生源である将官用の円卓形式のテーブルでは、激しい議論が交わされ続けていた。

 

「では、賛同はしていただけないと?」

 

「あぁ、悪いが今回はその案には賛同しかねる」

 

「猛将と名を馳せたガードルフ閣下ならば、私の作戦案に賛同していただけると思っておりましたが……、少々見当違いのようでしたな」

 

「俺も、エマージェンシー・オブ・オデッサ開始と同時に、ヨーロッパ方面に展開している連邦軍を挟撃し、一気にヨーロッパを手中に収めようってあんた(マ・クベ中将)の案は魅力的だが。ヨーロッパの代わりに北米を奪われる可能性があるのは気に入らねぇ」

 

 戦略会議に出席し、いつもの如く考えの読めない表情を浮かべているマ・クベ中将は、対面のコマンダープレイヤー、ガードルフから自身の案を反対する理由を聞かされても、特に表情を変化させる様子はない。

 

 今回、会議の議題であるエマージェンシー・オブ・オデッサにおける対連邦軍への対応の中で、マ・クベ中将が提唱したのは、オデッサを囮とし、北米からヨーロッパの連邦軍を挟撃するという大胆な作戦であった。

 具体的には、連邦の攻勢を強度を高めた戦線で堰き止めている間に、未だ有力な戦力の残る北米地域から、有力な戦力を大西洋を渡りヨーロッパへと侵攻させ、諸地域を制圧すると共に、戦線に攻勢をかけている連邦軍の後背から攻撃を仕掛け、連動して戦線も攻勢に転じ、挟撃する。というものであった。

 

 ただ、この作戦案に、ガードルフは幾つかの不安要素を指摘し反対した。

 一つは、北米からの戦力が到着するまでに連邦の攻勢を堰き止められているか。

 一つは、北米からヨーロッパへと戦力を輸送する為の輸送機や艦艇等々、その数が十二分にあるのか。

 一つは、上記二つを仮に問題なく達成できたとして、結果、防衛力の低下した北米地域を制圧すべく、南米の連邦軍が侵攻してこないかと言うもの。

 

 特に、ガードルフが一番懸念しているのが、最後の点で。

 仮にマ・クベ中将の作戦案がうまくいきヨーロッパ地方をジオンの手中に収めたとしても、その代償に北米地域を手放すようなことになれば本末転倒、いや、むしろ結果としてはジオン側にとって大きな痛手になるのではないか。

 ジャブロー攻略イベントが発生していない現状、ジオン側はジャブローを攻めることは出来ないが、連邦側は北米地域に侵攻する事は可能である。

 つまり、連邦側はジャブローの守りを気にせず、攻撃にのみ集中できる。現実ではできない、俺の野望だからこそ成せる優位性。

 

 その優位性を組み込んだ戦略を考慮すれば、むしろ北米から挟撃の為の戦力を派遣する事は、連邦側にとって好都合、いやそれどころかそうなる様に仕向けている可能性すらある。

 とし、ガードルフはマ・クベ中将の提唱した作戦案に反対を唱えるのであった。

 

「私も、ガードルフの意見に概ね賛成だ」

 

「おや、グデーツ閣下がガードルフ閣下の意見に賛同するとは、珍しい……」

 

「学級会議ではないのだから、賛同する時は賛同する。……と、話が多少逸れたが。北米地域は、地球上においてはオデッサに次ぐジオンの最重要地域だ。仮に、オデッサを失うようなことになっても、北米地域を起点として、勢力の巻き返しを図ることが出来る」

 

「しかしそれは、北米を失っても、オデッサを守りきれば同じことでは?」

 

「オデッサ……いや、ヨーロッパでは、連邦の中枢であるジャブローの喉元に突きつける短剣の役割は果たせんよ。目の上のたんこぶと言ってもいい。……気になるものがあるのとないとのでは、その後の勢いは大分異なるものだ」

 

「成程」

 

 北米地域は、ヨーロッパと比べても地政学的に、連邦側に圧力をかけ続けられるという点では重要である。

 と説くグデーツ。

 

 それを聞いたマ・クベ中将は、自らの思惑通りにいかぬ事に対するいらだたしさ等微塵も感じさせず。

 いつものように淡々とした様子で、自らの作戦案をすんなりと取り下げるのであった。

 

 その後、エマージェンシー・オブ・オデッサにおける対連邦軍への対応については、各方面から可能な範囲の戦力を集結させ、防衛する。

 という方向で調整される事となった。

 無論、万が一に備え、脱出の際の準備も行う事で話は進む。

 

「ではマーコック閣下。よろしくお願いしますね」

 

「えぇ、了解です」

 

 その中で、ヨーロッパ戦線の一角を受け持つこととなったのは、"准将"の階級章を取り付けるまでになったマーコック。

 そんな彼の返事をもって、エマージェンシー・オブ・オデッサを議題とした議論は終わりを告げた。

 

「では次に、各モビルスーツの生産・配備状況と、以前より要望のあった通常兵器の新規開発についてですが……」

 

 そして、司会進行役の進行により、会議は新たな議題へと移っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

「あー、終わった終わった」

 

 それから数十分後。

 戦略会議が終わり、第046独立部隊用のロビーへと戻ったランドニーは、ぐったりとした様子のまま、ソファーに座り込む。

 そして、張り詰めていた緊張感から解放され、心が落ち着いた事を示すかのように身体中の力を抜き、更にソファーに深くもたれかかるのであった。

 

 暫し解放感を堪能していたランドニー。

 しかし、程なく次の予定を発表すべく、ソファーから立ち上がった。

 

「あー、それじゃ、次の予定についてだが。その前に」

 

 そして、予定を発表するかと思いきや、その前に自身の私見を語り始めるランドニー。

 

「知っての通り、エマージェンシー・オブ・オデッサの開始日が近づいてきている訳だが。今回のイベントは、一つの山場であると同時に、これまでのイベントと攻守が逆転している。つまり、俺達が守る側になる訳だ」

 

 その言葉に、何人かが黙って頷く。

 

「当然、護衛対象となるものを守りながら戦うのは、攻めていた時とは違う訳だが。……ま、あまり気負いし過ぎず、俺達は俺達で楽しんでいこうって事で、よろしく」

 

 そして、私見を語り終えたランドニーは、本題である次の予定について話し始める。

 

「さて、そんなイベントの開始日が近づいてるわけだが。……楽しもうとは言ったが、やっぱり楽しむためにはそれなりの準備は必要だ。で、その準備状況が万全かと言えば、まだ十分とは言えない」

 

「誰かが計画的に貯めるどころか、散財してるからじゃねぇのか」

 

 シモンの指摘に、ランドニーは遠くを見つめながら話を続けた。

 

「えー、とは言え、残された時間も少なく、今までの稼ぎ方で残された時間内に万全な準備を整えるのは少し難しいと思い。……"アレ"を解禁する他ないとの考えに至った」

 

「アレ? アレって何、ランドニー君?」

 

「おいまさか、アレって魔法のカード(ご利用は計画的に)の事か?」

 

「いや、流石に魔法のカード(ご利用は計画的に)使えたら、とっくに使ってるよ」

 

 アレが何を指すのか分からず、疑問符を浮かべる面々に、ランドニーは一拍置いて説明を始めた。

 

「アレとは即ち、"バトリング・アリーナ"の事だ」

 

 バトリング・アリーナ。

 それは、俺の野望内においてプレイヤー同士の対戦、即ちPvPに特化した戦闘を楽しみたいプレイヤー向けに設けられている鋼鉄のコロッセオ。

 各拠点内に設けられた会場にて開催されるそれは、鋼鉄巨人の拳闘士達が織りなす、血沸き肉躍る欲望のステージ。

 

 同時に、モビルスーツの墓場。

 

「バトリング・アリーナは経験値とゴールドは稼げるが、戦績はランキングに反映されない。故に、ランキング入りしていないなんてなめてかかると、あっという間にスクラップの仲間入りさ」

 

 限られた空間、試合形式により制限される武装、基本的には味方はなく、頼れるのは己の腕のみ。

 そんな、フィールドエリアなどでの戦闘とは異なる戦闘形式ながら、そこで活躍するプレイヤー達の中には、ランキング入りを果たしているプレイヤー以上の猛者もいる。

 人によっては、軽い遊び感覚で足を踏み入れ、いざ試合が開始すれば、実戦以上の緊張感に苦しむ者もいるだろう。

 

 その様な特殊な環境故に、人により、バトリング・アリーナへの評価は割れる。

 

「で、そのバトリング・アリーナを解禁するのはいいけどさ。それって短時間で稼げるものなのか?」

 

「ん~、試合形式や相手にもよるな。対戦相手がバトリング・アリーナでも名うてのプレイヤーなら、勝った時の賞金は期待できるものがある。……だが、そんな名うてのプレイヤーが会場にいるかどうかは、実際に行ってみるまで分からない」

 

「おいおい、大丈夫なのかよ」

 

「ま、オデッサのようなプレイヤーが多く集まる様な拠点のバトリング・アリーナなら、名うての一人や二人、いる筈だ」

 

「んで、誰を出場させるんだ? やっぱり順当にいって沙亜か?」

 

「いや、流石に沙亜だと名も実力も知られてるからな……。相手が試合してくれない可能性もある」

 

「じゃぁ……」

 

 刹那、ユーリアンに視線が向けられる。

 

「……俺?」

 

「うん、ユーリアン、お前だ」

 

 こうして、準備を整えるに必要なゴールドを稼ぐべく、第046独立部隊はオデッサのバトリング・アリーナへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 オデッサ郊外に設けられた巨大な箱状の構造物、それが、オデッサのバトリング・アリーナであった。

 バトリング・アリーナの会場らしく、出入り口には、モビルスーツがボクシングを行っている造形看板が掲げられている。

 

 そんな出入り口を潜り、内部へと足を踏み入れた一行。

 

「んじゃ、俺とユーリアンは手続してくるから、少し待っててくれ」

 

 試合の手続きを行うべく受付の方へと消えていくランドニーとユーリアンを見送り。

 残った面々は、暇つぶしに、現在行われている試合の観戦をする事とした。

 

 既に座席は観戦客で埋まっており、最後尾に設けられている立見席から観戦する。

 

「決まったぁーっ!! フォスタイガー選手の操るザクの強烈な右フック!! これにはティオナン選手のザク、堪らずダウン!!」

 

 観戦客の安全を考慮してか、試合の観戦は、壁一面に設けられた大画面モニター越しとなっている。

 分厚い壁を挟み、会場内で繰り広げられているのは、ザクマシンガンもヒートホークも、武装らしきものを何一つ装備せず、己の拳のみで戦う二体のザクIIF型の姿。

 

 文字通り、モビルスーツ同士のボクシングとも呼べる試合。

 実況者の実況と共に、観戦客達の熱気は更にヒートアップしていく。

 

「おっとどうした? 立てない? 立てないのかぁ!?」

 

 カウントがコールされる中、倒れたティオナン操るザクIIF型は立ち上がろうとするものの、その動きは、あまりにも鈍く、最早、カウントを数え終える前に立ち上がるのは絶望的であった。

 そして。

 

「試合しゅうりょぉぉぉぉっう! 勝者、フォスタイガー選手!!」

 

 勝敗のアナウンスと共に、両手を掲げ勝利の喜びを表現するフォスタイガー操るザクIIF型。

 そして、観戦客達の熱気は、最高潮に達した。

 座席から、溢れんばかりの拍手や歓声が響き渡る。

 

 そんな様子を最後尾の立見席から眺めていた面々は、その熱量の凄さに圧倒される。

 

「これがバトリング・アリーナなんだね。本当にボクシングの試合会場みたい」

 

「あぁ、私も初めて足を運んだが、まさかこれ程とは……」

 

「おや、あんた等、バトリング・アリーナは初めてかい?」

 

 感想を漏らしたメノと沙亜の声に反応したのは、隣で観戦していた観客の男性であった。

 

「くくく、なら、この程度で圧倒されてちゃ、この先もっと度肝を抜かれるぞ。バトリング・アリーナの面白さはこんなもんじゃない。さっきのはレギュラーゲームと呼ばれる、使用可能な武器が己の拳や足技のみという試合形式だが、あんなのは、俺に言わせりゃただのお遊びさ。……本当に、血沸き肉躍る試合ってのは"リアルバトル"こそよ」

 

「リアルバトル?」

 

「そうさ、文字通り、実戦同様に火器の使用が認められた箱の中の殺し合いよ。あれに勝る興奮と刺激的な試合はねぇさ」

 

「成程……」

 

「おぉ、話をすりゃ、丁度リアルバトル形式の試合が始まるぜ」

 

 観客の男性からバトリング・アリーナの醍醐味を教えてもらっていると、大画面モニターには、次の試合の開始を告げる様子が映し出されていた。

 

「皆さまお待ちかね! リアルバトル形式によります試合の開始でございます! 先ずは、選手入場。赤コーナー、このドリルで天を取る! ウォルフ・ルンバとその愛機、アッグ!!」

 

 入場コールと共に、入場ゲートから一体のモビルスーツが会場に姿を現す。

 非人型の何処か愛らしい真ん丸ボディながら、その両腕には鋭利な大型ドリルを備え、モノアイの両側、肩に当たる部分には、同じく鋭利なカッターも備えている。

 

 もはやその見た目から戦闘用に開発されたモビルスーツではないのは一目瞭然なその機体は、原作においてジオンがジャブロー攻略用に開発された特殊戦用モビルスーツ群。

 EMS-05 アッグは、そのフラグシップモデルとして開発された戦闘工兵用モビルスーツである。

 

「続きまして青コーナー! 夢の人工知能、超AI(物理)を搭載したモビルスーツを操る! アダムス・ガイとその愛機、グフ・ガイン!!」

 

 そして、入場コールと共に、もう一方の入場ゲートから、グフ・ガインなるモビルスーツが姿を、……現さなかった。

 

「? どういう事だ?」

 

「もしかして、試合放棄?」

 

「まぁ待ちな」

 

 沙亜とメノが小首を傾げるのを他所に、観客の男性はもう少し待つようにと言い聞かせる。

 

「ほら、きたぞ」

 

 と、観客の男性に反応するように大画面モニターに視線を戻せば。

 そこに映し出されていたのは、意外な光景であった。

 

「な! 戦闘機だと!?」

 

 入場ゲートから轟音を轟かせ颯爽と姿を現したのは、鋼鉄の巨人ではなく、鋼鉄の怪鳥。

 ジオン公国軍の大気圏内用戦闘機、ドップ。

 ただしその色合いは、トリコロールカラーに彩られていた。

 

 限られた空を飛ぶトリコロールカラーのドップは、挨拶代わりに翼を振るうと、パイロットの巧みな操縦で会場頭上を旋回する。

 

「ん? あのドップ。よく見ると幾分小さいような……」

 

「くくく、よく気付いたなお嬢さん。そうよ、ありゃ"リトル・ドップ"。オリジナルのドップとは違うのさ」

 

「リトル・ドップだと!? という事は……」

 

「さぁ、真打の登場よ」

 

 観客の男性の口から零れたトリコロールカラーのドップの正体を聞き、沙亜は、とあるモビルスーツの存在を思い浮かべる。

 それは、リトル・ドップと切っても切れない関係のモビルスーツ。

 

 刹那、観戦客達の歓声と共に、会場内に突如汽笛が鳴り響く。

 

「さぁ、合体開始だ!! いくぞ、レーーーーッツ! パイルダーーーッダッシュ!!」

 

 刹那、リトル・ドップのパイロットの掛け声と共に、入場ゲートから、巨大な影が飛び出す。

 それは、一体のモビルスーツであった。

 

 リトル・ドップと同じくトリコロールカラーに彩られながら、何故かショルダースパイクだけは銀色に塗装されたそのモビルスーツは、グフの改造機。

 両腕のマニュピレーターを七五ミリ五連装フィンガーバルカンとし、補助スラスターを内蔵した専用シールドを両腕に装備。

 更に脚部にもスラスターを増設し、機動力の強化を図っている。

 そして、胸部には一際目を引くGGの文字を表した装飾。

 

 そんなグフの改造機目掛け、翼を翻し迫るリトル・ドップ。

 

 衝突する、と思われたその時。

 リトル・ドップの機首が一八〇度回転すると、その状態のままグフの改造機の背部に収納されドッキングを果たす。

 

 ドッキングと同時に固定が行われたのか、蒸気が噴出される。

 

「グフ・ガイン! 起動!!」

 

 それはまさに、リトル・ドップを収納した事により命が宿ったかの如く。

 赤いモノアイを点滅させると、自らの拳を合わせ、ポーズをとり始めた。

 その様子に、観戦客達は大きな歓声を上げる。

 

 そして、一通り動きを終えた所で、対戦相手から声がかかる。

 

「出やがったな、グフ・ガイン」

 

「そう、その通り!!」

 

 ──銀のスパイクに希望(のぞみ)を乗せて! 灯せ勝利の発光信号!! 勇者戦士グフ・ガイン、定刻(ディーデイ)通りに只今到着!!

 

 モノアイの点滅と同時に、名乗りを上げ決めポーズを決めるグフ・ガイン。

 その様子はまさに、グフ・ガインそのものが意思を持ち喋っているかのようであった。

 

「しゃ、喋った!? まさか、本当にあのモビルスーツには人工知能が搭載されているというのか!?」

 

 その様子を見た沙亜は驚きの声を挙げるも。

 刹那、グフ・ガインのコクピット内の様子がワイプ内に映し出される。

 

 そこには、複座式となっているコクピット内のシートに座る、二人のパイロットの姿があった。

 

「残念だったな嬢ちゃん。あれが超AIの正体だよ」

 

「成程……。それで、カッコ物理、か」

 

「くくく、実戦って言っても、ここじゃ客を盛り上げるためにパフォーマーとしての素質も求められる。だから、選手ごとに色々試行錯誤してパフォーマンスをしてるのさ」

 

 超AIの正体が分かり、その出生の秘密が観客の男性の口から語られた所で。

 いよいよ、試合開始のゴングが鳴った。

 

「いくぞグフ・ガイン! 俺様のドリルの錆にしてやる!!」

 

 開始と同時に、アッグは両腕の大型ドリルを起動させ、脚部のホバー機能を使って、滑る様にグフ・ガインに突っ込む。

 一方グフ・ガインは、両手を突き出し、両腕の七五ミリ五連装フィンガーバルカンを発砲する。

 だが、アッグは多少の被弾も気にせず突撃を続ける。

 

「もらった!」

 

「おっと」

 

 そして、有効範囲に捉えた所で自慢の大型ドリルでグフ・ガインをえぐろうとするも、軽々躱される。

 

「さてと、あまり試合を長引かせると見てる皆が退屈してしまうから、そろそろ決めるとしようか、ガイン!」

 

「了解だ、ガイ!」

 

 そして、軽い身のこなしで一旦アッグから距離をとったグフ・ガインは、両脚部に収納していたヒート・サーベルを抜くと、両手に持つ。

 すると、ヒート・サーベルの剣身が温度の上昇と共に見る見る赤く光を放っていく。

 

「いくぞ! たぁぁぁっ!!」

 

 刹那、グフ・ガインがバーニアを噴かせ、一気にアッグの方に飛び込んでいく。

 それを受けて、アッグも、自慢の大型ドリルで迎撃の構えを見せる。

 

ヒート・サーベル(熱血剣)・十文字斬り!!」

 

 そして、決め台詞と共に、勝利の決めポーズを決めたグフ・ガインの背後で、アッグは無残にも爆発四散するのであった。

 

 

 

 その瞬間、まさに観戦客達のボルテージは最高潮に達し、グフ・ガインの勝利を称える声が、止め処なく響き渡った。

 それはまさに、会場を揺れ動かす程の勢いで。

 

「くくく、どうだい、これがバトリング・アリーナよ」

 

「成程。私の予想以上だな……」

 

 想像以上の熱気を前にして、沙亜は息を呑んだ。

 そして同時に、この熱気を生み出すあのステージに挑む、ユーリアンの身を案じるのであった。




いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。
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