「フィクサー、聞こえる? 新手よ、敵の第二波が接近中! 数は五!」
「ったく、今日はどうなってんだ? 次から次へと……」
ダイバーから敵の第二波接近を告げる連絡を他所に、フィクサーは、休む間もなく訪れるに敵の第二波出現に、小さくため息を零した。
「丁度いい。暴れ足りない所だったんだ!」
最も、リッパーなどはこの事態をむしろ歓迎していたが。
「ダイバー! 敵モビルスーツの機種は判明してるか!?」
「大まかだけどね。ザクタイプが四にグフタイプが一。でも、ザクの内一機はとても早いわよ!」
「了解だ。……ヒーリィ中尉、アラン少尉、聞いての通り、敵の第二波だ。新型は含まれてないようだが如何せん数は今回の方が多い」
「では、どうしますか?」
「ま、急ごしらえじゃ三隊連携でって訳にもいかねぇから。……さっきと一緒で、テキトーによろしくって事で」
「は、はぁ……」
少々困惑の表情を浮かべるヒーリィ中尉とアラン少尉を他所に、フィクサーは敵の第二波に備える。
「っ! 何だと!?」
刹那、原生林群の中から、細長い何かが空に向かって飛び出す。
それは、ビッグ・トレー撃破の瞬間を撮影すべく、基地上空を旋回していたものの、攻撃能力を持たず脅威足り得ないと判断し放置していたド・ダイII目掛けて飛来し。
程なく、ド・ダイIIの機体下部に付着した。
そして、次の瞬間。原生林群の中から、それは飛び出した。
ド・ダイIIに付着させたヒートロッドをガイドに、バーニアを噴かせ姿を現したのは、黒い鋼鉄の巨人。
グフ・インフェルノであった。
「デルタ・ツー! 狙えるか!?」
「やれます!」
同じその様子を見ていたヒーリィ中尉は、ラドリー少尉にグフ・インフェルノを狙撃させるべく指示を飛ばした。
それを受け、ビッグ・トレーの最上部に陣取ったラドリー少尉の陸戦型ジムは、構えた一八〇ミリキャノンの砲口を、グフ・インフェルノに向けたが。
「っ!?」
刹那、響き渡る発砲音に遅れる事コンマ数秒。
突如、一八〇ミリキャノンが爆破し、ラドリー少尉の陸戦型ジムを衝撃が襲う。
「スナイパーだと!?」
「おいおい、マジかよ!?」
その様子を目にしたデニス曹長とボマーは、それが敵スナイパーの仕業であると、瞬時に判断するのであった。
「ちっ、自分を囮に先ずは最大射程と火力を誇る奴を片付けたってのか!?」
フィクサーが驚嘆している間にも、今度はグフ・インフェルノが次なる動きを見せる。
ヒートロッドを使用し、宙づりで安定しない中、二連装七五ミリガトリング砲が火を噴いたのだ。
飛来する七五ミリ弾の弾幕は、前衛として前進していた六人の機体に襲い掛かった。
「っち、何て火力だよ!?」
その弾幕の前に、迂闊に動けず、小型シールドや木々の影に機体を隠して防御をとる六人。
「フィクサー! 一機抜けるわよ!」
「しまった!?」
刹那、原生林の中から、今度は轟音と共に、赤い鋼鉄の巨人、ザク・アライヴが姿を現す。
ザク・アライヴはバーニアを噴かせると、一直線にビッグ・トレーへと向かう。
「ボマー! そいつを止めろ!」
「デニス! 頼む!」
「ったく、了解!」
「了解だ、任せとけ!」
それに対して、デニス曹長とボマーの二人は、乗機の装備した火器でザク・アライヴを迎撃すべく動くも。
「っち!」
「またか!?」
そんな二機に対して、再び原生林の中から銃弾が飛び出し、装備した火器を狙う。
幸い、今回は外れたものの、安心したのも束の間、今度はグフ・インフェルノからの七五ミリ弾の弾幕が襲い。
これでは、ザク・アライヴに狙いを定められない。
「だぁぁぁっ!」
そうしている間にも、ザク・アライヴは更にビッグ・トレーへと迫る。
だが、その時。
ザク・アライヴ目掛け、横合いから何かが勢いよく飛び出し迫った。
「っ!」
そして、飛び出したそれは、ザク・アライヴ目掛け装備したビーム・ダガーの一閃を喰らわせようとするも。
寸での所で避けられてしまう。
だがそのお陰で、ザク・アライヴの動きは止まる事となる。
「ははは! いいぞ、この感覚!! 最高だ!!」
更に、着地したザク・アライヴに畳み掛ける様に、レイス仕様のガンダム・ピクシーはザク・アライヴに迫り、両腕を振るいビーム・ダガーでザク・アライヴを切り刻もうとする。
だが、ザク・アライヴも、ザクマシンガンを捨て瞬時にヒートホークを抜き構えると、ヒートホークでビーム・ダガーを受け止め、鍔迫り合いを繰り広げ始める。
「よし、リッパー。そのままそいつを抑えて……」
「隊長は手を出すな!! これは俺の獲物だ!!」
と、フィクサーが援護に向かう旨を伝えたものの、どうやらリッパーは一対一をご所望のようで、一方的に通信を切られるのであった。
「ホア! 敵スナイパーの狙撃地点は特定できたか!?」
「はい、隊長。今、データを転送します!」
一方その頃。
グフ・インフェルノからの七五ミリ弾の弾幕から解放されたアラン少尉は、厄介な敵スナイパーを排除すべく、ホア伍長から送られてきたデータをもとに、リル准尉と共に敵スナイパーのもとへと向かおうとするが。
「……させない」
「隊長!?」
「っ! こいつ!」
そんなアラン少尉の陸戦型ジム目掛け、不意打ちの如く現れ強烈なショルダータックルをお見舞いしたのは、一機の陸戦高機動型ザクであった。
「どうやら、こいつを倒さない事には先に進ませてくれないようだ。……リル、先にこいつを倒すぞ!」
「了解!」
対峙する陸戦高機動型ザク目掛け、互いの一〇〇ミリマシンガンの銃口を向けるアラン少尉とリル准尉。
だが刹那、陸戦高機動型ザクは軽やかなステップで距離をとる。
この行動に、一瞬トリガーを引く指が止まったアラン少尉とリル准尉の陸戦型ジム。
そんな二機に対し、次の瞬間。
砲撃音と共に、付近で爆発が起こる。
「しまった!? 砲撃か!?」
「隊長! 前!」
「っ! くそ!」
砲撃による爆発に気を取られたアラン少尉。
リル准尉の言葉に、はっとメインモニターに視線を戻すと、そこにはヒートホークを手に自機に迫る陸戦高機動型ザクの姿が映し出されていた。
振り下ろされるヒートホークの刃を、咄嗟に小型シールドで受け止め、何とか大事には至らなかったが。
(先ほどの砲撃はスナイパーとは別の機体か……。だとすると、こいつら、物凄く連携が取れている……。厄介だな)
アラン少尉は、第二波の敵が一筋縄ではいかない相手であると、感じずにはいられなかった。
「デルタ・ゼロ! 今すぐ俺達にも敵スナイパーの狙撃地点のデータを送ってくれ、俺達が叩く!」
「了解!」
アラン少尉達が足止めされたと判断すや、ヒーリィ中尉は自身とロフマン曹長で敵スナイパーを排除すべく動き出すも。
そんな彼らの目の前に、空から降り注ぐ七五ミリ弾の弾幕のカーテンが現れる。
「く! こいつら……」
ヒーリィ中尉は苛立ちを募らせると同時に、対峙するこの難敵をどう攻略するか、その為の考えを巡らせるのであった。
同じ頃、第二波として現れた敵が、難敵であると、フィクサーも認識を改めていた。
そして同時に、テキトーに対処しても勝てると踏んでいた、戦闘前の自分自身の認識の甘さを悔やんでいた。
「やれやれ、新型の次はエース様のお出ましとはな! だが面白れぇ! もっとドンパチやりたくてうずうずしてた所だ!」
「ちょっとフィクサー! あんたまで何リッパーみたいなこと口走ってるのよ」
「っと、悪い悪い。俺も年甲斐もなく、いつの間にか興奮してたみたいだ」
だが、ダイバーに注意され、フィクサーは自分自身でも気付かぬ間に難敵と戦える事に興奮している、その事を気付かされるのであった。
「まったく、戦闘狂はリッパー一人で充分よ」
「そうだな。……だが、奴を倒すには、ちょっとばかし無茶しねぇと勝てそうにないな」
そう言ってフィクサーがメインモニター越しに見つめたのは、今なお宙づりで空を飛ぶグフ・インフェルノであった。
「って、どうするつもより!?」
「まぁ、見てろって。……ボマー、聞こえるか?」
「あぁ、何だ、フィクサー?」
「俺が合図したら、あの黒グフにミサイルをお見舞いしてやれ。空中じゃ、満足に回避の仕様が無いからな」
「了解だ。で、フィクサーはどうするんだ?」
「俺か、俺は勿論……。ヒーリィ中尉、聞こえるか!?」
「は、はい! カークランド中尉、何か?」
「あの黒いグフに攻撃を仕掛ける。援護してくれ!」
「り、了解!」
「さて……、そんじゃ、おっぱじめるか!!」
刹那、スレイヴ・レイスは大地を蹴ると、バーニアを噴かせ、グフ・インフェルノ目掛けて大空へと羽ばたく。
そんな彼の羽ばたきを援護する様に、ヒーリィ中尉とロフマン曹長の機が装備した一〇〇ミリマシンガンが火を噴き、火線が伸びる。
「さぁ、こいつはどうよ!」
そして、グフ・インフェルノに迫るスレイヴ・レイスは、装備した一〇〇ミリマシンガンの発砲を開始する。
地上から放たれるのに比べ、放たれる距離が近い一〇〇ミリ弾を回避できず、堪らずシールドで防ぐグフ・インフェルノ。
刹那、フィクサーの口角が上がった。
「今だ! ボマー!」
「こいつを喰らいな!」
それこそ、フィクサーの狙っていた状況であったのだ。
ヒートロッドを使用し宙づりとなっている為、左腕しか自由にできないグフ・インフェルノ。
そこで、近づいて攻撃を仕掛ける事により、シールドを装備している左腕の自由も奪った所で、防ぐ術のない無防備な本体にボマーの六連ミサイルランチャーを叩き込む。
これこそ、フィクサーの狙いであった。
だが、次の瞬間、状況はフィクサーの思惑を大きく外れる。
不意に、グフ・インフェルノがその巨体を振り子のように揺らし始める。
揺れが大きくなり、最高点に到達すると、次の瞬間、揺れにより生じた遠心力を使い、ド・ダイIIが、その軌道を大きく変化させた。
それはまるで、グフ・インフェルノに迫る六発のミサイルを守る盾になるかの如く。
「何だと!?」
そして、空に爆発音と共に黒煙が現れ、地上に向かって破片を散らばらせる。
だがその正体は、フィクサーの思惑とは異なるものであった。
「っ! マジかよ!?」
刹那、黒煙を突き破り、グフ・インフェルノがその姿を現す。
だがその軌道は、ド・ダイIIを失った自由落下のそれではなかった。
バーニアを噴かせスラスターを併用し、グフ・インフェルノは空を駆けると、スレイヴ・レイス目掛け突撃し。
そして、スレイヴ・レイスに対し、見事な蹴りを入れる。
幸い、スレイヴ・レイスはフィクサーの咄嗟の反応で、左腕に装備していた小型シールドで蹴りを防ぎ、直撃は避けられたが。
代わりに、バランスを崩し、地上に向かって自由落下を行う。
そんなスレイヴ・レイスを他所に、グフ・インフェルノは、今度はヒーリィ中尉とロフマン曹長に迫る。
「デルタ・スリー! 迎撃するぞ!」
「り、了解!」
しかし、二人の操る陸戦型ジムから放たれる火線を掻い潜り、徐々に迫るグフ・インフェルノ。
そして。
「ぐっ!!」
「隊長!」
勢いを殺す事なくヒーリィ中尉の陸戦型ジムに迫ったグフ・インフェルノは、強烈なシールドタックルをお見舞いする。
シールドタックルを受けて一〇〇ミリマシンガンを手放し、倒れるヒーリィ中尉の陸戦型ジム。
さらに畳みかける様に、グフ・インフェルノの脚が、ヒーリィ中尉の陸戦型ジムの頭部を踏み潰した。
隊長の危機を目にし、咄嗟に一〇〇ミリマシンガンの銃口を向けようとするロフマン曹長であったが。
そんな彼の乗る陸戦型ジムに、グフ・インフェルノから放たれたヒートロッドが付着した。
刹那、ロフマン曹長の陸戦型ジムに高圧電流が流される。
「うわぁぁっ!」
ロフマン曹長の悲鳴と共に、高圧電流が全身を駆け巡った彼の操る陸戦型ジムは、程なく、煙を上げ、糸の切れた人形のように倒れ込む。
「隊長! アニッシュ!」
そんな二機のもとに近づく、一機の陸戦型ジム。
左腕の小型シールドを構えながら、右手にビーム・サーベルを持ったその機体のパイロットは、ラドリー少尉であった。
「デルタ・ツーよせ! こいつは一対一で倒せるような相手じゃない!」
ヒーリィ中尉の制止する声を他所に、ラドリー少尉の陸戦型ジムは、手にしたビーム・サーベルの間合いにグフ・インフェルノを捉えるべく進み続ける。
そんなラドリー少尉の陸戦型ジムが接近してくることを察知したグフ・インフェルノは、二連装七五ミリガトリング砲を向け、発砲を開始する。
「く!」
だが放たれた七五ミリ弾の弾幕は、ラドリー少尉の陸戦型ジムの手前に着弾し、着弾点周辺に砂埃を発生させ、疑似的な煙幕を作り出す。
「何処からくる……」
七五ミリ弾の弾幕を前に足を止めたラドリー少尉の陸戦型ジム。
視界が遮られた中、グフ・インフェルノがどの方向から仕掛けてくるかと身構え警戒していると。
突如、正面から何かが砂埃を突き破り姿を見せる。
「そこか!!」
咄嗟に反応し、砂埃を突き破って表れたそれに対して、ラドリー少尉の陸戦型ジムは手にしたビーム・サーベルを振るった。
そして、光の刃は、確かにそれを捉え、切り裂きはした。
「っ!? 何だと!?」
だが、ビーム・サーベルにより切り裂かれたのは、グフ・インフェルノの装備していたヒート・サーベルであった。
「しまった!」
囮に食いつき、隙を見せたラドリー少尉の陸戦型ジムに対して、次の瞬間、グフ・インフェルノから再び七五ミリ弾の弾幕が放たれた。
反射的にコクピット周辺を守るべく左腕の小型シールドを構えた為、幸いラドリー少尉自身の命は助かったものの。
機体の方は、七五ミリ弾の弾幕を前に、無残な姿に成り果てる事となった。
「三機相手にあそこまで立ち回れるか。……ハハハッ! いーいじゃん! 盛り上がってきたねぇ!」
バランスを崩しながらも、脚部に相応の負荷がかかった事と引き換えに、何とか無事着地する事に成功したスレイヴ・レイスのコクピット内で。
フィクサーは、柄にもなく、グフ・インフェルノとデルタチームの戦闘の一部始終を見て、強者と戦える喜びに心を躍らせていた。
「っと、いけぇね。またリッパー熱に当てられてやがった」
しかし、ふと冷静さを取り戻すと、一度深呼吸し。
そして、操縦桿を握り直す。
「さぁて、勝負はここからだ。……俺達レイスに出会った事、後悔させてやるよ!」
一〇〇ミリマシンガンを捨て、代わりにビーム・サーベルを装備すると。
フィクサーはフットペダルを踏み込み、スレイヴ・レイスをグフ・インフェルノ目掛け跳躍させた。
「っ!」
「さぁ、死神のお迎えだぜ!!」
スレイヴ・レイスの接近に気が付き、迎撃の為放たれる七五ミリ弾の弾幕を掻い潜り、スレイヴ・レイスはビーム・サーベルの間合いに飛び込むや、光の刃を振るった。
だが、それはグフ・インフェルノ本体を捉えず、二連装七五ミリガトリング砲の砲身を切り裂くのであった。
「さぁ、一気に行かせてもらうぜ!」
畳みかける様に、更に振るわれるスレイヴ・レイスのビーム・サーベル。
グフ・インフェルノはそれを巧みな動きで躱しながら、反撃に転じる隙を伺う。
そして、僅かに生まれた隙を見て、グフ・インフェルノはヒート・サーベルを手に取り、反撃に打って出た。
「っ、やるな。だが、押し切ってやるよ!」
ビーム・サーベルとヒート・サーベルがぶつかり合い、激しい光を放つ。
互いに譲らぬ鍔迫り合いが、ここでも繰り広げられ始めた。
そんなスレイヴ・レイスとグフ・インフェルノの鍔迫り合いの様子を、ボマーは自機のメインモニターで眺めていた。
「くそ、あんなに接近されてちゃ、迂闊に撃てやしねぇ」
そして、不用意に撃てばスレイヴ・レイスまで巻き込みかねない状況に、苛立ちを募らせるのであった。
「まぁ、フィクサーとリッパーが厄介な二機を引き受けてくれた分、こっちが楽できるか。……ダイバー、聞こえるか?」
「なに? どうしたの?」
「敵スナイパーの狙撃地点のデータを送ってくれ、先ずは敵スナイパーを叩いて、この状況の突破口を作る」
「了解。……って、ちょっと待って!」
「何だ?」
だが、厄介なザク・アライヴとグフ・インフェルノの注意がそれている隙に、敵スナイパーの排除に動こうとしたボマー。
その為に必要なデータをダイバーに送信してもらおうと思った刹那。
ダイバーの慌てた声が聞こえた、次の瞬間。
ビッグ・トレーの近くに巨大な爆発が発生し、黒煙を上げ始める。
「おい! 今のは何だ!?」
「砲撃よ! 敵陸戦艇からの! ビッグ・トレーを狙ってるわ!!」
「おいおい、マジかよ!」
自身のいるビッグ・トレーを敵陸戦艇の砲撃が狙っていると聞かされるや、ボマーは慌ててビッグ・トレーから退避を始める。
同じく、デニス曹長の陸戦型ジムもビッグ・トレーから退避を始める。
と、その時、再び砲弾が風を切って飛来する音が響き渡り。
刹那。
ビッグ・トレーの艦橋が、激しい爆発と共に、炎と黒煙に包まれた。
そして、艦の後部も同様に、炎と黒煙が包み込む。
「くそ、連中、最初から陸戦艇の砲撃でデカブツを仕留める腹積もりだったのかよ!」
炎と黒煙に覆われるビッグ・トレーの姿を目にし、ボマーは悔しさを滲ませるように奥歯を噛んだ。
一方他の面々も、周囲に響き渡った爆発音と、立ち上る黒煙に、何が起こったのかを瞬時に理解していた。
「っ! あれは」
グフ・インフェルノと死闘を演じているフィクサーもまた、側面モニターに映し出された、整備基地方向より立ち上る黒煙を視界の端に捉え、息を呑んだ。
「くそ、やってくれるじゃ……、何!?」
せめて目の前のグフ・インフェルノを倒し、任務失敗の補填にしようと思った矢先。
原生林群の中から、信号弾が打ち上げられた。
刹那、突如グフ・インフェルノがスレイヴ・レイスとの戦闘を中断し、撤退していく。
しかも、撤退したのはグフ・インフェルノだけではない。
ザク・アライヴや陸戦高機動型ザク等。
確認された敵の第二波の五機すべてが、信号弾を合図に、撤退支援の陸戦艇からの砲撃の中、一斉に撤退していった。
「はー、見事にやられちまったな」
周辺に敵影見られず、戦闘が終了した後。
護衛任務に失敗した三隊の面々は、消火作業中ながら、今なお黒煙に覆われている、無残なビッグ・トレー"だった"巨大な鉄塊を背に、再び顔を合わせていた。
「ま、任務は失敗したが、こうして全員生き残れたんだ。それだけでも上出来だろ?」
任務に失敗し、特に意気消沈した様子のデルタチームとSRT-ユニット1の面々を励ますべく。
フィクサーは、慎重にに言葉を選びながら励まし始める。
今回、大役を担っていた為か、ビッグ・トレーをオペレーション拠点として使用する事が叶わず。
その為、今回の任務のオペレーションに関しては、ミデアや74式ホバートラック等。三隊が日頃使用しているものを使用していた。
しかしその事が逆に、オペレーターを務める隊員達の中から、ビッグ・トレーの撃破に巻き込まれ戦死者を出すという事態を免れたのであった。
「生きていれば、今回の負けを取り返せるチャンスはまたやって来るさ。だから、何時までもクヨクヨしてないで、次に備えて気持ちを切り替えていこうぜ」
とはいえ、任務失敗という事実は変わりなく。
その悔しさから、拳を握り締めるヒーリィ中尉とアラン少尉の二人。
そんな二人の肩に、フィクサーはそっと手を置くと。
次の瞬間、二人の視線が自身に向けられるや、彼は白い歯を見せる笑顔を浮かべた。
「ま、任務失敗はだせーけどよ。それも、皆で分かち合えばださくないってか、ははは!!」
そして、同じ立場ながら悔しさを見せる事無く豪快に笑うフィクサーにつられ、ヒーリィ中尉とアラン少尉の二人の顔にも、少しばかり笑顔が戻るのであった。
「で、ハイヤー、どうだ?」
「どうって、見れば分かるでしょ、隊長。こんなに見事に真っ黒こげになってちゃ、サンプルの採取は無理ですよ」
「そうか……。はぁ~、どうすっかな……」
顔合わせを終え、今だ戦闘の混乱が残る整備基地を後に、基地外のとある場所に足を運んだフィクサーは、ハイヤーの説明にため息をついた。
彼の視線の先には、ちょっとしたクレーターと、その中心点に散らばる幾つもの破片が存在している。
それは、リッパーによって切り刻まれ鉄塊と化していた、先行量産型ゲルググの無残な最期の姿であった。
「切り刻まれてるとは言え、ジオンの新型のサンプルを持って帰れば、我らがボスも今回の任務失敗を大目に見てくれると踏んでたんだが、ったく、抜け目ねぇ連中だよ。しかし、こうなっちまったら、どう別の言い訳を考えるか……」
抜け目のなかった敵の行動に感服しつつ、フィクサーは、今回の任務失敗をどう取り繕うか、頭を悩ませるのであった。
ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。