機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

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第五話 有名プレイヤーとの繋がりを強くする好機です。

 ランドニーに知らぬ間に期待を寄せられているユーリアン、彼が今、何処にいるのかと言えば。

 そこは、バイコヌール宇宙基地の外縁部。

 先頭集団により見事に崩された防壁の傍、投下された多数の補給コンテナが立ち並ぶその場所は、ジオンの簡易的な補給拠点として整備されつつあった。

 

 現在侵入し制圧を試みている部隊の継戦能力を大きく左右する同拠点に対して、連邦側は、数人のプレイヤーが、同拠点を破壊しようと奇襲を試みていた。

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

 その内の一機であるザニーのパイロットが、叫び声と共に背面から大きな衝撃を受ける。

 理由は、乗機が荒野に意図せず倒されたからだ。

 そして、ザニーが倒れた原因を作った張本人。強烈なタックルをお見舞いした一機のザクIIF型は、倒れたザニーを死神の如く見つめていた。

 

 刹那、起き上がる間も与えず、ザクIIF型は手にしたザクマシンガンの銃口を、倒れたザニーに向け。そして、引き金を引いた。

 コクピット周囲に一二〇ミリ弾が被弾したザニーは、倒れたまま、再び起き上がる事はなかった。

 

「……ふぅ」

 

 今し方ザニーを撃破したザクIIF型のコクピット内、パイロットシートに腰を下ろしているのは、誰であろうユーリアンであった。

 進撃を開始した集団の後方に位置取りしたユーリアンは、そのままバイコヌール宇宙基地内に侵入する事無く、簡易補給拠点である同拠点の防衛に回っていた。

 

 それは、基地内で撃破の取り合いになるであろう撃破競争に参加するよりも、確実に敵モビルスーツを撃破できるチャンスが多いと踏んだからである。

 その証拠に、それぞれ単機ながらも、同拠点を襲撃したザニーを二機、ユーリアンは既に撃破していた。

 

「そろそろ残弾が心許ないな」

 

 モニター端に表示されたザクマシンガンの残弾数を確認したユーリアンは、残弾の残り少ないドラムマガジンをザクマシンガン本体から外すと、乗機を近くの補給コンテナへと近づけた。

 補給コンテナ内には、未使用のザクマシンガンのドラムマガジンが入っており。

 慣れた操作でその内の一つを手に取ると、ザクマシンガン本体に取り付け、初弾を装填する。

 

「制圧も、時間の問題かな……」

 

 ユーリアンには戦場の全体像は見えていなかったが、半ば確信的な予感があった。

 連邦側の初期選択モビルスーツは、そのどれもがジオン側とは異なり近接武器を標準搭載していない。

 基地外の荒野など、開けた場所ならば連邦側の射撃武器は有効ではあるが、遮蔽物の多い基地内では、ヒートホーク等の近接武器が猛威を振るう。

 

 勿論、改造を施せば近接武器も搭載できるし、機種転換で強化した機種等には、近接武器が標準搭載されている機種もある。

 だが、まだ正規サービスが始まってそれ程日数も経っていない。

 故に、多くのプレイヤーはまだ改造や機種転換などを行えていない筈。

 一部、突き抜けたプレイヤーがいるかもしれないが、それでも、数が揃っていなければ、劣勢を覆せる程ではないだろう。

 

 なので、ユーリアンは、ジオンの勝利は時間の問題と考えていた。

 

「ん?」

 

 そんな考えを浮かべながら、補給拠点を哨戒していると、不意に、ランドニーから通信が入る。

 スイッチを入れ通信をオンにすると、メインモニターの端にランドニーの顔が表示される。

 

「よぉ、相棒。まだ生きてるか?」

 

「なんとかな」

 

 ランドニーの挨拶に簡単に返すと、ユーリアンは通信を入れてきた目的を尋ねる。

 

「実はな、こいつを見てくれ」

 

 ランドニーが何やら機材を操作すると、メインモニターに新たなウィンドウが現れる。

 そこには、現在の戦況の簡単な図が表示されていた。

 

「見ての通り。俺達ジオンはバイコヌール宇宙基地内へ侵入後、作戦司令部の命令で集団を三つのグループに分散し、三方から基地内を制圧中だ」

 

「あぁ」

 

「中央と右翼は、見てわかる通り、シカクコシアス隊や闇夜のオオカミ隊と言った連中のお陰で、順調に制圧中だ」

 

「ん、左翼は?」

 

「そう、それなんだよ。実は問題なのが左翼の状況で、そこには難読彗星の沙亜がいたんだが……」

 

「難読彗星の沙亜、それって沙亜 阿頭那武婁の事だよな。そんな凄いプレイヤーがいたのにどうして?」

 

「ま、簡単に言えば凄すぎたんだよ。難読彗星の沙亜の侵攻速度に他の連中が付いていけず、結果、難読彗星の沙亜が突出し過ぎて敵陣の中で孤立してる状況だ」

 

「左翼の他のプレイヤー達は!?」

 

「一応頑張ってはいるみたいだが、少し厄介なのに絡まれてるのか、速度は遅いな」

 

「それで、俺に難読彗星の沙亜の救助に行けと?」

 

 ランドニーのここまでの説明に、ユーリアンは察したように彼に質問を投げかける。

 

「そ、そういう事だ。単機なら、敵の間を縫って難読彗星の沙亜のもとまで行けるだろうと思ってな」

 

「簡単に言ってくれるな……」

 

「お前の腕前なら問題ないだろ? 相棒」

 

「はぁ、分かったよ。けど、どうして難読彗星の沙亜の救助を行おうなんて思ったんだ?」

 

「いやー、あれさ。助けたお礼に、俺達の軍団に加入してくれないかなって思ってさ」

 

 下心を包み隠さないランドニーの答えに、ユーリアンは再びため息を漏らすのであった。

 

「助けられたお礼に、軍団に加わってくれるようなプレイヤーじゃないと思うけどな」

 

「ま、軍団に加わってくれなくても、ジオン側でも一二を争う腕前を持つプレイヤーだ。助けて貸しを作っておいても、損はないだろう?」

 

「まぁ、そう言われれば、そうだが」

 

「じゃ、頼んだぞ。難読彗星の沙亜の大体の位置情報はそっちに送っておいたから、よろしくな」

 

 こうして、ランドニーからの通信が切れると、代わりに、彼から送信された位置情報がメインモニター端に表示される。

 

「仕方ない、やるか」

 

 短いため息を漏らした後、ユーリアンは乗機を近くの補給コンテナへと移動させると。

 補給コンテナ内に入っていた、未使用のザク・バズーカを装備する。

 

「さぁ、行くか」

 

 右手にザクマシンガン、左手にザク・バズーカを装備したユーリアンのザクIIF型は。

 難読彗星の沙亜の救助に向かうべく、バイコヌール宇宙基地内へと足を踏み入れた。

 

 

 

 宇宙と異なり、地上ではバーニアを噴かせても早くなる訳ではない。

 故に、人間同様、文字通り全力疾走で目的地を目指すユーリアンのザクIIF型。

 基地内には、激戦を思わせる、穴だらけとなった建築物や、ジオン・連邦、双方のモビルスーツの残骸。更には、車輛などの残骸や、両勢力のNPCの歩兵の姿なども随所に見られる。

 

 そんな基地内を移動していると、前方、移動ルート上にて、基地の建築物を盾にして戦闘を行っている友軍の姿を捉えた。

 

「お、応援か?」

 

 どうやら、戦闘中の友軍もユーリアンのザクIIF型に気付いたらしく。

 一機の角付きザクIのパイロットからの音声通信が入る。

 

「助かった。前進しようにも、あのガンタンク共が邪魔で進めないんだ」

 

 身振り手振りを交え、角付きザクIのパイロットが示した方向には、同じく基地の建築物を盾にしている、三台のガンタンク初期型の姿があった。

 三台ともチームを組んだプレイヤーが操作しているのか、よく連携も取れており、攻撃後の隙を互いにカバーするかのような動きを見せている。

 

 一方友軍は、プレイヤー操作の機体とNPC操作の機体が混在し、プレイヤーの腕前も不揃いで、互いに意思疎通もあまり出来ておらず。

 数では連邦側に勝っていても、連携が取れずに、あの三機を攻めあぐねていた。

 

「あの、いいですか?」

 

「ん? 何だ?」

 

「三台のガンタンク初期型、俺が倒してみますんで、その為に手伝ってもらいたいんです」

 

「え? あんた一人で!?」

 

 角付きザクIのパイロットは驚きを隠せなかった。

 両手にザクマシンガンとザク・バズーカを装備し、単機でここにやって来た事から、角付きザクIのパイロットはユーリアンをある程度の実力者だと考えていた。

 

 しかし、幾ら実力のある者と言えど、三台のガンタンク初期型を相手にするには、分が悪い。

 

「幾ら何でも無茶だ」

 

「だから、倒せるように、手伝ってもらいたいんです。皆さんに」

 

「手伝うって、一体どうしろって言うんだ?」

 

「難しい事はありません。ただ、一度だけ、タイミングを合わせて一斉射をしてください。相手の動きを少しの間だけ止めておいてもらえればいいんです」

 

「成程、確かにそれは簡単だが……」

 

「お願いします。倒すには、協力が必要不可欠なんです」

 

 暫し沈黙が続き、突然現れた自身のお願いは、やはり聞き入れてもらえないかとユーリアンが思い始めた矢先。

 

「分かった。他の奴らにも呼び掛けてやってみよう! だが、そこまで言ったんだ、ちゃんと倒してくれよ!」

 

「はい!」

 

 角付きザクIのパイロットからの返答に力強く答えると、ユーリアンは操縦桿を握り直し、準備が整うのを待つ。

 その間、角付きザクIのパイロットは、他のプレイヤーに声をかけ、協力を取り付けてもらえるように頼み込む。

 中には、突然現れたユーリアンの提案に、疑念を抱く者もいたが。結局、他にいい打開策も思いつかない為、渋々ユーリアンの提案に乗るのであった。

 

「さ、こっちはいつでも準備オッケーだ」

 

「では、次の攻撃の切れ間に一斉射をお願いします」

 

「了解した」

 

 攻撃のタイミングを伝えられると、誰もが、その時が訪れるのを緊張した面持ちで待つ。

 やがて、ガンタンク初期型の両腕に装備された四連装機関砲の発砲音が途絶えると、遂に、その時は訪れた。

 

「今だ! 一斉射!!」

 

 角付きザクIのパイロットの声と共に、プレイヤー達が建築物の影から機体を突き出し、手にした武装を一斉に発砲する。

 その瞬間的な火力は、三台のガンタンク初期型を、文字通り建築物の影に貼り付けにした。

 

(今だ!)

 

 そんな一斉射が開始された刹那、ユーリアンはフットペダルを踏みバーニアを噴かせると、跳躍し、一気に友軍が盾として使用していた建築物の屋上へと飛び乗る。

 C型よりも軽量化されたとは言え、本体重量だけでも五六トンもあるザクIIF型、盾として使用され、柱がボロボロなこの建築物に、そんな重量を長時間支えていられるだけの耐久力は、殆どなかった。

 

 しかし、ユーリアンにすれば、眺めの良いその場所に、長く止まるつもりはなかった。

 三台のガンタンク初期型の位置関係さえ把握できれば、十分だったのだ。

 

(これで!)

 

 刹那、ユーリアンのザクIIF型は屋上を蹴ると、再びバーニアを噴かせ、そして、三機のガンタンク初期型目掛けて跳躍した。

 

「バカの一つ覚えみたいに撃ったところで──、っ!!?」

 

 程なくしてジオン側の一斉射が終わりを告げ、お返しとばかりに建築物の影から出てきた一台のガンタンク初期型が反撃の為に姿を現す。

 だが、ガンタンク初期型のパイロットは、コクピット内に響く警報音に気付くと、次の瞬間、目にする。

 自身の乗るガンタンク初期型目掛け、跳躍しつつ、ザク・バズーカの発射口を向けるザクIIF型の姿を。

 

「な!」

 

「先ず、一つ」

 

 刹那、不安定な姿勢ながらも、ザク・バズーカの発射口から放たれた二八〇ミリのロケット弾は。

 まるで吸い寄せられるかのように、意表を突く攻撃方法に唖然とし回避行動を取り忘れていた、ガンタンク初期型のコクピット付近に着弾。上半身共々、爆炎と共に吹き飛ばした。

 

「馬鹿な!? あの姿勢から!?」

 

「なんだよ、こいつ!?」

 

 仲間がやられ、残り二台のガンタンク初期型のパイロット達が色めき立つ。

 一方、ユーリアンのザクIIF型は、上半身が吹き飛んだガンタンク初期型の残骸前方に豪快に着地すると、間を置く事無く次の行動に移る。

 

 単発式の為、お役御免となったザク・バズーカを上方へと投げつける。

 と、一歩間を開け、再びバーニアとスラスターを噴かせると、残骸の影から飛び出した。

 

 刹那、投げられたザク・バズーカを、四連装機関砲の嵐が襲った。

 

「な!? 囮!?」

 

「しまった!?」

 

「目がいいのも、時に仇となる」

 

 ザク・バズーカをユーリアンのザクIIF型と誤認し攻撃を行った二台のガンタンク初期型は、死角となっていた残骸から飛び出したユーリアンのザクIIF型に対し、無防備な曝け出していた。

 刹那、ザクマシンガンが火を噴き、二台のガンタンク初期型目掛けて一二〇ミリ弾の嵐が襲い掛かる。

 

 程なくして、二つの爆発音と共に、新たに二か所から黒煙が上がり始めた。

 その発生点は、残骸と化した、二台のガンタンク初期型であった。

 

「ふぅ……」

 

 有言実行。

 三台のガンタンク初期型を倒したユーリアンは、深い息を吐き、安堵の表情を浮かべる。

 

「けど、ちょっと無茶しちゃったかな……」

 

 モニターに表示された機体状況を目にし、ユーリアンは小さく反省の言葉を漏らす。

 被弾はしていないものの、相手の意を突く攻撃方法実行の為、特に脚部には負荷がかかり、黄色信号が点灯している個所もあった。

 

(俊敏力のないガンタンク初期型だったからよかったものの、他の機種だったら、危なかったかもな)

 

 ユーリアンは今回の勝利に慢心する事無く、気を引き締めるべく戒めのような言葉を心の中で漏らす。

 

「よぉ、あんた! 本当に凄いな! 本当に、たった一機で三台のガンタンクを倒してしまうなんて」

 

 と、そんなユーリアンの乗るザクIIF型に、先ほど協力を仰いだ角付きザクIが近づいてくる。

 しかも、音声通信ではなく、メインモニターの端には、角付きザクIのパイロットであろう、パイロットスーツに身を包んだ、恰幅の良い初老の男性の顔が映し出されていた。

 

「そんな。皆さんの協力があればこそですよ」

 

「はははっ! 若いのに謙遜を忘れんとは、ますます凄いよ、君は」

 

 角付きザクIのパイロットは豪快にユーリアンを称え終えると、今後の行動予定をユーリアンに伝える。

 

「我々は一旦休憩してから侵攻を再開するが、君はどうするんだ?」

 

「俺は、このまま進みます。この先に、助けを待ってるかもしれないプレイヤーがいますから」

 

「この先? ……それってもしかすると、赤い改造ザクに乗ったプレイヤーの事か?」

 

「難読彗星の沙亜の事をご存じなんですか?」

 

「難読? シャア? 乗ってるプレイヤーの名前はよく分からんが、兎に角、君の操縦技術に負けず劣らずの、凄い動きをしてたよ、あの赤い改造ザクは。我々なんか、付いていく事すら出来なかったからな」

 

 難読彗星の沙亜は、名前のモデルとなった人物の代名詞とも言うべき指揮官用ザクII、S型と呼ばれるザクIIを愛機としている。

 また、機体性能向上の為の改造を施し、機体の塗装も、シャア・アズナブル専用機を彷彿とさせる赤を基調とした塗装が施されている。

 

「しかし、あんな動きが出来るなら、助けなんて必要なさそうだがな」

 

「そうかも知れませんが、俺は行きます」

 

「そうか、なら、頑張れよ。……あぁ、そうだ、自己紹介がまだだったな。儂の名前はガ・デーム、今の階級は"上等兵"だ」

 

「ユーリアン・ルクと言います、階級は曹長です。よろしくお願いします」

 

「おぉ、曹長か、そりゃ凄い。では、ルク君……。いや、ルク曹長。縁があったら、またお会いしましょう!」

 

「はい、デームさん」

 

 互いに敬礼を交え通信を終えると、ユーリアンは乗機を動かし、近くに落ちていたザクマシンガンを手に取ると、拾ったザクマシンガンの残弾を確認する。

 そして、両手にザクマシンガンを装備した乗機のザクIIF型を、再び走らせ始めた。

 

 なお、再び目的地を目指して走り出した最中。

 ガ・デームと名乗ったプレイヤーの顔が、名前のモデルとなったキャラクターのトレードマークたる立派な髭を消すとそっくりだな。

 と、ユーリアンが考えていたのはここだけの話だ。

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