イベントを終えたプレイヤー達は、皆、個人格納庫に隣接している個人に宛がわれた自室と呼べる場所へと強制移動させられる。
この措置は、イベントによる気分の高揚によって生じるであろうトラブル回避の為に取られている。
イベントの高揚感、更にそこに勝敗と言う結果が加わる事により、プレイヤー間で勃発するトラブル。それを放置すれば、俺の野望と言うゲームの評判や運営に影響を及ぼす。それを見越しての事だ。
パイロットスーツから軍服へと着替え、自身の自室に移動したユーリアンは、窓から眺められる個人格納庫の様子。
ハンガーに固定された乗機のザクIIF型が、NPCの整備士たちの手により、戦闘の疲れを癒している姿を眺めつつ、手にしたタブレット端末の画面に視線を落とす。
そこに表示されていたのは、イベント参加により支給された経験値とゴールド。更には、戦績に伴い支給された経験値とゴールド。
そして最後に、必要数値達成に伴う昇進通知。自身の階級が"准尉"へと昇進した旨を知らせるものであった。
「よし……」
昇進通知に控えめに小さくガッツポーズをすると、ユーリアンはタブレット端末を操作し、ランドニーと会う約束を取り付ける。
続いて、フレンド登録したシモンにも、これから会う約束を取り付ける。
その目的は、シモンをランドニーに紹介する為だ。
約束を取り付け終えると、ユーリアンは自室を後に、バイコヌール宇宙基地のロビーへと向かった。
「おうー、こっちだ」
基本設計は同じか、ソロモンと似た作りのロビーの一角で、ユーリアンはランドニーと合流する。
「いやー、流石は第046独立部隊が誇るエース。一杯撃破してくれたお陰で、俺もウハウハだ」
合流後、早速ランドニーから先のイベントの戦績を肩を叩きながら褒められ、苦笑いするユーリアン。
当人としては、あまり撃破数など、戦績にはこだわりも、自慢する気もない様だ。
「で、そんなエース様が紹介したい奴がいるって話だけど? 何処にいるんだ?」
「そろそろ来ると思うけど……。あ、来た」
「どーも、おまたせしました」
と、タイミングを見計らったかのように、二人のもとに、シモンが姿を現す。
「貴方がランドニーさんでしょうか!?」
「おう、そうだが」
「シモン・ヘイチェフ曹長であります! スナイパーをしてます! どうか、俺を、ランドニーさんの軍団の一員に加えていただけませんか!?」
敬礼を行いながらランドニーに第046独立部隊への加入を願い出るシモン。
対してランドニーは、顎に手を当て、彼を加入させるか否かを考え始める。
「後方からの援護には自信があります! ですから──」
「いいよ」
「おねがとうございます!!」
アピールしつつ、再度加入を願い出ようとしたシモンであったが。
被るようにランドニーからの了解が出たため、おかしな感謝の言葉を口にするシモンであった。
「スナイパーか、一人位軍団に欲しかった所だ。これからよろしくな、シモン」
「はい、ランドニーさん!」
「あ、呼び捨てでいいから。この第046独立部隊のモットーは、明るく楽しく全力で楽しむ、だからな」
「はい!」
握手を交わし、シモンの加入を歓迎するランドニー。
その後、フレンド登録と軍団登録を終え、無事にシモンが第046独立部隊の一員となると、三人は、今後の第046独立部隊の活動方針などを話うべく、ロビーから別の場所へと移動した。
移動した先は、軍団用のロビーであった。
この場所は、軍団に所属しているプレイヤーのみが使えるプライベートルームで、この他、小隊用のロビーも存在している。
なお、軍団及び小隊用ロビーは、設立者のプレイヤーがゴールドを消費する事により自由に装飾を変更できる。
しかし、第046独立部隊用のロビーは、ガンプラが飾られている棚を追加している事以外、あまり装飾の変更はなされていなかった。
「それじゃ、今後の第046独立部隊の活動方針だが。……その前に、シモン。シモンって学生? それとも、社会人?」
「え?」
「いや、イベントの時とかは時間も調整がし易いけどさ。それ以外の時となると、加入しているプレイヤーの現実世界の生活様式をある程度把握できておかないと、プレイする時間帯合わせるのが大変だと思って。あ、因みに、俺とユーリアンはリア友だから、時間帯合わせるの楽なんだよな」
突然学生か社会人かと問われ混乱するシモンであったが、ランドニーの説明を聞いて納得した。
俺の野望をプレイするプレイヤーの生活様式は人それぞれ、ソロプレイヤーならば、己の生活様式を考慮し自由にプレイできる。
しかし、チームでプレイするとなると、生活様式の異なるプレイヤー達が集まれば、当然、チーム全員が同じ時間帯にプレイできるとは限らない。
折角チームを組んでも、全員のプレイする時間帯が異なれば、それはチームを組んだ意味がない。
故に、加入しているプレイヤーの生活様式を、ある程度把握するのは、チームとしての効果を高める為に必要不可欠な事であった。
「俺は……。ある時は飲食店! またある時はスーパーの総菜コーナー! またある時は工事現場! しかしてその正体は──」
「フリーターだな」
「あ、はい」
冗談を交えて面白おかしく言おうとしたが、その前にランドニーに正体を見破られ、素直に肯定するシモン。
「それじゃ、時間の都合はつけやすいよな」
「あの、質問、いいっすか?」
「ん? 何だ?」
「二人は学生ですか、それとも社会人?」
「あぁ、俺達か、俺達は学生さ。有名でもないごく平均的な大学に通う平凡な学生さ」
「憧れのキャンパスライフ……、羨ましい」
ランドニーの口から告げられた、ランドニーとユーリアンの正体を聞いたシモンは、羨ましさを零すのであった。
「一応言っておくと、一般に想像される大学生活とは違って、大変な部分も結構あるよ」
「え? そうなの?」
「ま、人によるだろうけどな。あ、因みに、俺は大学に入る前は大学の部活ってサークルと大差ないかと思ったが、実際は全然違って、高校の部活以上に厳しいもんだって知ったよ。……ま、そういう俺は部活にもサークルにも入ってないんだけどな」
しかし、ランドニーとユーリアンの口から語られる実情に、シモンは、想像していた大学生活像を、少しだけ修正するのであった。
「さて、お互いの正体を知った所で、本題に戻るが。先ずは、第046独立部隊は今後、地球をメインに活動を行っていく。それで、直近のイベント、第一次降下作戦第二部・オデッサ制圧作戦に参加しようと思うが、どうだ?」
「うん、いいと思う」
「俺は別に反対じゃないぞ」
「よし、それじゃ、オデッサ制圧作戦参加は決定として。次に、プレイする時間帯だが、俺とユーリアンは平日はこの時間帯で、土日はこの時間帯だが。シモン、お前は……」
「俺はいつもこの時間帯で……」
こうして三人は、第046独立部隊の活動方針を話し合い。
「そんじゃ最後に、締めの言葉で終わるとするか。──明るく楽しく全力で、楽しむぞーっ!」
「「おぉーっ!」」
数十分後、話し合いを終えた三人は、締めの言葉で締めくくると。
各々の現実世界での生活に備え、ログアウトするのであった。