機動戦士ガンダム 俺の野望   作:ダルマ

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外伝 ジャブローに巣くう悪魔

 俺の野望正規サービス開始後初のイベント。

 バイコヌール・オデッサ・アラビアの三部構成で行われた第一次降下作戦は、好評の内に終わりを告げた。

 因みに、イベントでの戦闘の結果、上記の地域は正史同様、全てジオンの領土となった。

 

 このイベントを通じて、俺の野望の面白さを再確認した者、さらに成長した者、苦汁をなめ、更に高みを目指すと誓う者。

 様々なプレイヤーが、俺の野望の虜となっていった。

 

 そして、運営側も、そんなプレイヤー達の期待に応えるべく。

 既に、イベントの第二弾、キャリフォルニア・ニューヤークの二部構成で行われる、北米地域への第二次降下作戦の開催が発表されている。

 

 

 

 そんな、ますますの賑わいを見せる俺の野望の世界。

 その一角、地球の南アメリカ大陸はギアナ高地のロライマ山。その地下深くに、誰もその全容を把握できぬ程、巨大な空間が存在していた。

 そこには、整備されたライフラインや居住区画、更には軍需施設等、文字通り地球連邦軍の中枢が存在している。

 地表にカモフラージュされた無数の防衛火器、自然が育んだ鉄壁の防壁、まさしく難攻不落を体現した要塞。

 

 この場所こそ、地球連邦軍の総司令部、"ジャブロー"であった。

 

 未だ地球上ではジオンとの前線から遠いこのジャブローだが、同地を拠点として活動している連邦側のプレイヤーも少なくはない。

 その内の一人である、連邦軍の軍服を着たとある男性プレイヤーは、ジャブローのロビーの一角で、カウンター席に腰を下ろして自らのタブレット端末を操作し、画面を眺めていた。

 

「ちーっす、セトさん。何見てるんっすか?」

 

 とそこに、チームメイトであろう、気心の知れた者同士でなければトラブルにもなりかねない気軽さで、別の男性プレイヤーが彼ことセトに声をかけてきた。

 声をかけてきたのは、セトよりも年下と思しき二十代前半の金髪短髪の、その口調通りチャラそうな雰囲気を醸し出す男性プレイヤーであった。

 

「あぁ、これだよ」

 

 そんな男性プレイヤーに応えるように、手にしていたタブレット端末の画面を見せるのは、セトと言う名の男性プレイヤー。

 整えられた髭、黒髪に、渋みのある顔つきを有した三十代の男性プレイヤーだ。

 

「これって、最近発表された両勢力のプレイヤーランキングじゃないっすか」

 

 セトが見ていたのは、最近運営から発表されたランキングであった。

 それは、ジオン・連邦、両勢力に所属するプレイヤーの中で、現在の戦績の上位百人が載せられたランキングである。

 プレイヤーネームと戦績が記載されたそのランキングを目にした若い男性プレイヤーは、ジオン側のランキングの上位に記載されているプレイヤー陣を見て感想を漏らす。

 

「やっぱりランキングのトップテンに乗ってるプレイヤーは、俺達でも知ってる連中ばかりですね」

 

「そうだな」

 

 ジオン側のランキング、一位から十位までに記載されているプレイヤーは、連邦側のプレイヤーでもその名を知っている有名人が多い。

 特に、若い男性プレイヤーは、一位に記載されているプレイヤーを名指しして、感想を漏らし始めた。

 

「特にこの、"シンクの稲妻"、そのふざけた異名に反して、同じ人間かよって思う程、馬鹿げた動きしているんっすよね」

 

 シンクの稲妻、その異名を持つプレイヤーの名は、ジャック・雷電。

 因みにシンクの意味であるが、思考を意味するthinkではなく、流し台を指すシンクであり。

 異名の由来については、本人がピカピカに輝くシンクが好きと公言している事に加え、使用するモビルスーツの塗装が、ガンダムシリーズに登場するキャラクター、ジョニー・ライデンの愛機のように真紅に塗装されている事から、二つが組み合わさり、この異名が名付けられた。

 

 なお、シンクの稲妻の異名は、本人も気に入っているのか。

 機体に施せるパーソナルマークは、流し台を綺麗に洗うユニコーンが描かれている。

 

 そんなシンクの稲妻本人と直接対峙した事があるのか、若い男性プレイヤーは対峙した当時の記憶を思い起こしながら、更に語り続ける。

 

「ってか、シンクの稲妻もそうですけど、ジオン側の連中、そろいもそろってバケモンだらけなんじゃないかって思いますよ。あれっすね、連邦のモビルスーツは性能がバケモノっすけど、ジオンはパイロットの腕前がバケモノっすね」

 

「それは確かに、言い得て妙だな」

 

 若い男性プレイヤーの例えに、セトは納得するかの如く言葉を漏らした。

 

 所属勢力選択の公平さを期すために、両勢力のプレイヤー分布の数値は非公開となっている。

 それは、一方にプレイヤーが偏っていると判ると、その分、偏っている勢力が戦争による勝利に近づく確率が高くなり、勝ち馬に乗ろうと更に偏りが発生する。そんな現象を防ぐ為の措置だ。

 しかし、非公式の攻略サイト等が独自に集計した情報によると、連邦がジオンよりも一割ほど多く所属しているという情報も存在する。

 

 この要因としては、やはり機種転換や開発等で得られる機体の存在があるのかもしれない。

 連邦においては、初期の機種群ではジオン側に対して多少の不利に感じるが、その後の機種転換・開発などで得られる機種は連邦側が多少の有利となっている。

 特に形式番号RGM-79、ジムの愛称で知られる、ガンダムの戦時量産型モビルスーツ、及び同機種を母体とする派生型は、ビームライフル等の光学兵器を標準的な武装として運用している。

 その為、改造などの特殊な場合を除いては、ジオン側において光学兵器を標準装備している水陸両用機種やビームライフル標準装備のゲルググ等といった機種よりも、連邦側はプレイ次第で早く手に入れる事が出来るのだ。

 

 その他にも、やはりタイトルにも銘打っているモビルスーツ、ガンダム、及び同様の名を持つ機種を手に入れられる事や。

 正史の通りになるかは分からないが、一年戦争における勝者が連邦である、その事も、多少は関係しているものと思われる。

 

「ってか、ジオン側のランキング上位者のパーソナルカラー赤率、異常っすよ」

 

 そんな機体の性能面、無論、ゲームの為、調整などで原作通りの性能を有しているかどうかは不明だが、それでも仮に設定通りならば劣勢となるであろうジオン側。

 負け戦となる可能性が高いにも関わらず、そんなジオンに所属を決めたプレイヤー達は、これがゲームではなくあたかも本物の戦争、自身の生死を、人生をかけた戦いかの如く真剣に取り組んでいるものが多く。

 真摯に向き合う姿勢や熱量など、質、という部分では、連邦よりも高い様だ。

 それが乗機の塗装にも反映されているのかどうかは分からないが、どうやら原作等でもエースを意味する赤系色をパーソナルカラーとしているプレイヤーが、ジオン側には多い。

 

 ランキング十位以内の中で見ても。

 一位のジャック・雷電。

 三位のマンフレート・エリオット・レムヘア。

 その男爵を彷彿とさせる立ち振る舞いに、立派な髭、そして何より、ヘルメットの上からシルクハットを被るという奇抜なスタイルから、乗機の赤い機体も相まって、"レッドバロン"の異名を持つ。

 

 六位のデトレフ・オグス。

 寡黙で不愛想な人物像ながら、正確無比な射撃を得意とするスナイパーで、乗機の塗装は上記の二人と比べても比率は少ないものの、パーソナルマークに描かれた赤い燕から、"ロト"の異名を持つ。

 

 そして、九位の難読彗星の沙亜こと、沙亜 阿頭那武婁。

 ランキング十位以内のプレイヤーの内、四人がパーソナルカラーを赤としていた。

 

「ま、パーソナルカラーを何色にするかは当人たちの自由なんだから、仕方ないさ」

 

「そりゃそうっすけど。……あ、そういえば、このランキング九位の沙亜 阿頭那武婁、この間のイベントで、単機でヘビィ・フォーク級墜としてましたよ」

 

「ほぉ、そいつは凄いな」

 

「当時現場にいた知り合いが言ってましたよ、ありゃ本当に赤い彗星みたいだったって」

 

「確か、彼女の使う機体は、改造したザクだったな」

 

「えぇ、ザクIIS型の改造機で、名前は確か……、"ザク・アライヴ"だったっすかね」

 

「アライヴ……。成程、それが彼女が辿り着いた一つの"答え(Answer)"か」

 

 アライブ、或いはアライヴは、活動的や生きる、などの意味を持つ。

 しかし、同じ発音で別の意味を持つ英単語が存在する。そちらは、着くや到達する、などの意味を持つ。

 

 ザク・アライヴが、どちらの意味を持つ英単語を基にして名付けられたかは本人以外知る由もないが。

 セトは、不敵な笑みを浮かべると、まるで見透かしているのかの如く、小さく呟くのであった。

 

「え? セトさん、今なんて言ったんっすか?」

 

「なに、九と言う数字は、やはり魔性だと思っただけだ」

 

「え? 魔性? へ?」

 

「ふふ、いや、気にしないでくれ」

 

 セトの言葉の意味が理解できず、疑問符を浮かべる若い男性プレイヤー。

 それに対し、セトは、気にする必要はないと言うのであった。

 

「所でセトさん」

 

「ん? 何だ?」

 

「このランキングの中で、セトさんが一度戦ってみたい相手っているんっすか?」

 

「ふむ、そうだな……」

 

 話題を切り替えようと若い男性プレイヤーが投げかけた質問に、セトは、顎に手を当て考え始める。

 やがて、考えがまとまったのか、ゆっくりと質問の返答を答え始める。

 

「私は、一度このプレイヤーと戦ってみたいな」

 

「ん? どれっすか?」

 

 セトがタブレット端末の画面を指さしながら答えたその先にあったのは、ランキング九九位の欄であった。

 そして、そこに記載されていたプレイヤーネームは、ユーリアン・ルクと書かれていた。

 

「え……、セトさん、こんな圏外ギリギリの奴と戦いたいんですか?」

 

「駄目かい?」

 

「あ、いや、なんつうか、もっとランキング上位の奴と戦いたいかと思ってたんで、以外っつうか……」

 

「ふふ、所詮ランキングなど、そのプレイヤーの一部を切り取ったものでしかないよ、ランキングだけでプレイヤーの本質は分からん」

 

「え? それじゃ、セトさんはどうしてこんな奴と戦いたいんっすか? あ、まさか、九が二つもついてるからっすか!?」

 

「それもあるかもしれんが。──アイツが相棒に選んだ青年、だからかも知れんな」

 

「え? セトさん、最後の方、何て言ったんっすか!?」

 

「いや、気にしないでくれ。それよりも、そろそろ出撃するとしようか。他のメンバーのレベルアップを兼ねてな」

 

「了解っす。……あ、けどセトさん、出来れば今回は少し抑えてくれると助かるんっすけどね。なんせ、前回はセトさんのテンポに合わせたおかげで、他の皆へとへとだったっすから」

 

「そうか、では、そうしよう」

 

「助かりますっす。流石に、連邦のランカー"一位"のセトさんに合わせるとキツイっすからね」

 

 カウンター席から立ち上がり、出撃の為に移動するセト。

 そんな彼と肩を並べて歩きながら、若い男性プレイヤーは、セトの事をランカー一位と呼んだ。

 

 そう実は、セトこそ、先ほど二人が見ていたランキングの連邦側一位にその名が記載された張本人。

 "連邦の黒い悪魔"の異名を持つプレイヤー、その人であった。

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