帰ってきたなぁ…
焦りを感じながらも辿り着いた狭霧山は変わらず空気が澄んでいて体が浄化されるようだった。
「錆兎、真菰、よく帰ってきた。」
「鱗滝さん‼︎ただいま‼︎」
鱗滝さんは匂いで分かったのだろう、わざわざ家の前で待ってくれていて真菰が顔を綻ばせて駆け寄る。
そのまま家の中へ入れば陽の光が届かぬよう奥の部屋の戸が締め切られていた。
「この奥に例の女の子の鬼が?」
「ああ、名を竈門 禰豆子という。ここに来てからはずっと眠ったままだ」
この中に禰豆子がいる…なんだか緊張するな…
なんとなく女の子のいる部屋を勝手に開けるのはどうかと思いせめて鱗滝さんに視線で許しを得てから戸を引いた。
そこにいたのは綺麗な女の子だった。鬼になった事で肌は青白いがそれでも本当に綺麗で幼い子供だった。
すうすうと静かに寝息をたてる禰豆子の横へ物音を立てぬようゆっくり座り覗き込む。
贔屓目なしに様々な鬼と死闘を繰り広げ培った経験でわかる。
この子は普通の鬼とはなんとなく違う…と。
眠っているから殺気を感じないのは当たり前だが鬼独特の気配が薄い。
…こんな小さな体で自身の中にある鬼と戦っていると思うと胸が張り裂けそうだ。
「それで鱗滝さん、この子のお兄さんの修行はどこまでいっているんですか?」
「岩を斬るところまでいっている。だが半年たっても未だ炭治郎が岩を斬れる様子はない」
真菰と鱗滝さんが炭治郎の話をしているのを聞き禰豆子の頬を撫でる手を止め立ち上がる。
「鱗滝さん。その少年、炭治郎をみてもよろしいでしょうか?」
「…ああ、いいだろう。」
よし、鱗滝さんから許可がおりた。
「真菰、行こう」
「炭治郎は儂と同じで鼻が効く。風下から様子を見るといい」
「わかりました」
鞘の部分をキュッと握り、背筋を伸ばして外へ出る。
ついに炭治郎に会う。
見上げた狭霧山は緊張からかいつもより重く、大きく見えた。
竈門 炭治郎side
鱗滝さんが何も教えてくれなくなって、そして岩を斬れないまま半年が経った。
俺…ダメなのかな?禰豆子はあのまま死ぬのか?
わあぁあ‼︎くじけそう‼︎負けそう‼︎
何も進まない自分に焦り考えたくない事まで頭によぎり感情がぐちゃぐちゃになる。
それでも、俺はやらなければいけない。禰豆子を人間に戻して家族の仇を討つ‼︎
だから…‼︎
「頑張れ俺‼︎頑張れ‼︎」
「うるさい‼︎」
「‼︎⁉︎」
「そんなに喚くな見苦しい」
岩に頭を打ち付け自分を奮い立たせていると岩の後ろから怒鳴られた。
そしてふわりと重さを感じさせない動きで岩の上に飛び乗った人物に目を見開く。
珍しい宍色の髪を靡かせ羽織の中は冨岡さんと同じ服装で綺麗な顔立ちをした女性。右頬に大きな傷があるもののそれもひっくるめてその人の凛々しさが際立っていた。
いつの間に‼︎風上に立っていて匂いに気付かなかった‼︎
「どんな苦しみにも黙って耐えろ。お前が妹を助けたいのであれば」
そう言って斬りかかってきた木刀は重く、休む暇を与えずに蹴りが横っ腹に入り転がった。
鱗滝 錆兎。
のちにそう教えてもらったその人からは厳しさとそれ以上の温かくて優しい匂いがした。
もう少し原作のシーン書こうかと思いましたがグダリそうなのでやめました。
錆兎さん、稽古や手合わせになると性格変わります。
次も狭霧山の話を書いていきたいと思います。