悠玉が出ていってから、私は悶々と考えつづけていた。
このまま彼女との関係を終わりにするなんてことは、できなかった。
確かにこのままなにもしないで黙って出ていくのが一番楽な方法だっていうのはわかっていたけれど。
今、悠玉の手を離して関係を絶って、さよならも言わずに出ていったら絶対後悔する。
「天つ才なんてもの、役に立たないじゃない。」
ひとりごちて、天井を見上げた。
何をすればいいのか本当にわからない。書物はさまざまな知識を教えてくれたけど、仲直りの方法は教えてくれなかった。答えのない問いがあるのよ、って英姫姉様が言っていた。あのときはどういうことかわからなかったけど、今ならわかる。喧嘩して、どうやって仲直りするか。書物が教えてくれない、答えのない問いだ。人それぞれ、十人十色の答えがある問い。
そうして考えること、約一刻。
「やっぱり、謝りに行こ。」
今回の件の非はこちらにある。それなら、こちらから行くのが筋というものなのだろう。
悠玉の室の前まできて、深呼吸をする。
気持ちを落ち着けて、目を瞑った後―――静かに、扉を叩いた。
「悠玉、いる?・・・ごめんなさい。」
返事をしてくれなかったら、待つつもりだった。
「る、り・・・?」
そっと、扉が開けられる。そこにいたのは、迷子になった幼子のように頼りない瞳をした悠玉だった。
息を吸い込んで、口を開く。
「悠玉、ごめんなさい。私・・・。」
「違うのっ!・・・私が言いすぎたわ。ごめんなさい、瑠璃。」
私の言葉に悠玉の声がかぶせられて、続きを言えなくなった。泣きそうな顔をしている悠玉に、胸が痛む。本当に私は、自分のことしか考えていなかった。悠玉がこんなに傷つくなんて、思わずに。
「そんなことないわ。元はといえば私が一人で勝手に決めたからだもの。悠玉の言う通り、自分のことしか考えていなかったわ。」
一息に言いきって、私は悠玉を見た。
「瑠璃・・・。」
「だから、ごめんね、悠玉。」
謝って済むことじゃないけれど、謝らずにはいられない。
「ううん。・・・ね、瑠璃。」
私を罵るどころか、笑みさえ浮かべてくれた。
「悠玉・・・。」
「また来てくれる?」
虚をつかれて、一瞬言葉に詰まった。
「無理いってごめんね、瑠璃。」
悠玉の言葉に、我に返った。
「来るわ。」
「・・・えっ?」
「また来るわ、悠玉。」
駄目押しとばかりに言えば、悠玉は目をみはった後笑みを浮かべる。
「待ってる。」
微笑んで言われた言葉は、最高の言葉だった
仲直り編。
明日は悠玉視点です。