感情を瑠璃にぶつけて部屋を出てから、一刻。
私は、悶々と考えつづけていた。
「・・・天つ才とか鳳麟とかいう称号なんて、いらないのに・・・。」
瑠璃が、大事な友がいてくれれば構わないのに。
瑠璃だって、自分なりに考えて直前まで黙っていただろうに。私はそれを、壊してしまった。瑠璃に嫌われるのが怖かった。
自分の思い通りにならないことなんて、はじめて・・・。姫家のみんなとは特段付き合う必要もなかった。そもそも人の交流自体があまりなくて、みんながろくでもない
そんな中、姫家の仕掛けを抜けてきた瑠璃は荒んだ村に吹いた新緑の風みたいだった。
最初は面白いと思って、少し様子を見ようとしてみただけだった。でもくるくると動く表情、似た者同士だねという言葉、彼女の言動すべてが新鮮で・・・とても、慕わしかった。
瑠璃は、このままここを出ていってしまうの?それでいいの?
はじめての友達を手放していいの?
・・・
そうして答えが出ないまま考え続けて、一刻。
突然、扉が叩かれた。
「悠玉、いる?・・・ごめんなさい。」
そんな、瑠璃の言葉と共に。
「る、り・・・?」
思考がひどく不安定になり、瑠璃の名を紡ぐことしかできなかった。
扉を開ければ、瑠璃がいてくれた。
「悠玉、ごめんなさい。私・・・。」
瑠璃の言葉を遮るように、私は口を開いた。
「違うのっ!・・・私が言いすぎたわ。ごめんなさい、瑠璃・・・。」
「そんなことないわ、元はといえば私が一人で勝手に決めたからだもの。悠玉のいう通り、自分のことしか考えていなかったわ。」
「瑠璃・・・。」
ううん、違うの瑠璃。自分のことしか考えてなかったのは私の方。
「だから、ごめんね、悠玉。」
「ううん。・・・ね、瑠璃。」
「悠玉・・・。」
「また来てくれる?」
面喰ったように、瑠璃の言葉が詰まる。
やっぱり―――これは、無理な話だったか。
分かっていたけれど、聞かずにはいられなかった。初めてできた“友”という存在を失うなんて考えたくなかったし、がらにもなく“約束”がほしいと思ってしまった。
「・・・無理いってごめんね、瑠璃。」
「来るわ。」
「・・えっ?」
言われた意味が、一瞬わからなかった。
「また来るわ、悠玉。」
二度目に言われた言葉で、ようやくそれを理解して。
知らず、笑みを浮かべていた。
「待ってる。」
何年でも何十年でもいい、その約束があれば私は“悠玉”でいられる。
紅門姫家の鳳麟は、ただの悠玉を失わずにすむ。
姫家編もそろそろ終わりです。
悠玉をもっと書きたいとおもっても手は動いてくれず・・・。