「・・・下山も下山で迷路ね・・・。」
考えてみれば、行きに迷路だったところが帰りに迷路じゃなくなっているなんて考えられなかった。
下山まで罠をしかけているとは姫家、恐るべし・・・。自分の一族さえも罠にかける気か。あ、でもあんまり降りないから別に被害なんてほぼほぼないのかな。
それでも山を踏破した瑠璃のこと、下山は苦でも何でもなかった。
ただ、面倒くさいというだけで。
「―――あーっ、もう!ほんっとうに面倒くさいわねこれぇっ!」
何も仕掛けこんなに七面倒なものにしなくてもいいのに、と瑠璃は思った。
いちいち無効にして罠をくぐりぬけなければいけないのだから七面倒なことこのうえない。しかも、一つでも罠を見逃したら普通に死に至ってもおかしくないほどだから気が抜けない。
下りる時は登る時と違って下にずるずると滑りやすいものだからこれがまた面倒で仕方がない。
「・・・悠玉の言葉、やっぱり正しかったわね・・・。下山にも罠あるかもって・・・。」
登る人だけならともかく、下りる人まで引っ掛かる罠をつくってどうする。下山する時に姫一族は引っかからないのか、もしそうならどれだけ身体能力高いんだ。あ、もしかして姫一族には別の抜け道あったりするのかな?それとも仕掛け知ってるから気を付ければいいだけの話?もしかして仕掛けを一発に無効にできる装置とかあったりしちゃう?
罠をどうにかして無効にしながら紅山の斜面を下り、尚且つ独り言をつぶやいたり考え事をしたりする暇がある瑠璃は縹家でいくら“無能”とされようとも縹家を出てみれば万能に違いなかった。
「・・・あれ?これで最後?」
思いのほかはやく下山できてしまったと、瑠璃は首を傾げた。
空を見れば、ちょうど夕暮れに差しかかるところだった。庵を出たのは早朝、ということは約半日しかかからなかったということだ。
「・・・やっぱり下山の方が楽なのかしら・・・?」
単純に瑠璃の体が二カ月前に解除した罠や仕掛けを覚えていたからことが早く進んだのだが、瑠璃はそれに全く気づいていない。
とりあえず下山はできたのだから本格的に旅に出てみようかと思い、瑠璃は歩きだすのだった。
幸い縹家で頭に叩き込んだ全州の地図は未だに記憶の中に健在だ。とりあえず方角を確かめておこう。えーっと、たしか太陽のある方が南だったかな?
ここは紅州、紅山の山麓。
とりあえずは適当にどこかをふらついてみようかと、瑠璃は歩きだすのだった。
すぐ先に、運命の出会いがあるとも知らずに―――。
ここで閉ざされた世界から飛び出すので、欠けてる常識というものが露見しそうです。