なぜ、紅家の名が出てくるのだろうか?・・・いや、それより。
「ここは―――どこですか。」
「ご存じないのですか?・・・ああ、貴女、縹家と関わりがあるのですね。」
「・・・っ、どうしてわかったのですか・・・?」
「直系筋の姫君でしょう?・・・簪に、月食金環が刻まれています。」
「・・・ああ、不注意でしたね・・・。」
本当に不注意だった、と瑠璃は心の中でため息を吐いた。
「なるほど、ここがどこかわからないのですね?」
「ええ。」
「今日は私の家に泊まられません?」
「良いのですか?」
「ええ、そのご様子では宿を探していらっしゃるようでしたから。このあたりに宿はありません。」
「ありがとうございます。」
とりあえず、瑠璃は少女の厚意に甘えることにした。
罠であったとしても、瑠璃の武術の腕と頭があれば抜け出せる。
―――そう、考えて。
「貴女は、何という名なの?」
「本来ならば教えませんが、貴女は特別です。教えましょう。―――悠玉、です。敬称などはいりませんよ。」
「では、悠玉。私のことも敬称はいりません。お世話になりますので―――こちらを。」
「これは?」
「見ればわかりますが―――できれば、私が去ってからにして、いただけると。」
「では、あとでゆっくり見させていただきますね。」
口元に笑みを佩いて、少女―――悠玉は瑠璃の手をとった。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。・・・あの、悠玉。」
「どうしましたか、瑠璃。」
「あの・・・お父さんとか、お母さんとか、いないの?」
「知りません。」
「えっ?!」
「何かおかしいですか?」
小首を傾げた悠玉に、瑠璃はここがどこなのかをようやく悟った。
紅山の紅門姫家だ。縹家の書物で読んだことがある。
だから、さっき紅家という単語が出たのだと今更ながらにわかった。確かに髪は紅家によく似た黒髪だし、紅家に連なると思われても不思議はない。
「あの・・・長に挨拶とか、した方が良いの、でしょうか。」
長といえば、鳳麟。
瑠璃は思わず緊張した。
「構いませんよ。私が勝手に泊めるだけですから。」
瑠璃の緊張は、すぐに悠玉の言葉で打ち砕かれることになった。
「じゃあよろしくお願いします、悠玉。」
縹家を出たと思ったら、紅山の性悪一族姫家の集落に転がりこんでしまった。
波瀾万丈の予感しかしない、と思って瑠璃は苦笑した。
そして、少女を見てふと気づく。
先ほど見えた幻覚と同じ少女。
「・・・まさか、“先見”・・・?」
後天的な異能の出現。
あるわけないと、瑠璃はその考えを打ち消した。
英姫に飛ばされた場所は紅山でしたとさ。ちゃんちゃん。
瑠璃は世間知らずですが常識以外のことは知っています。悠玉も似たようなものです。常識なんて知ったこっちゃありません。や、姫家の常識(=正直者が馬鹿を見る)とか縹家の常識(=男は基本“無能”)とかいうのは知ってるんですけど。
縹家も姫家もよくも悪くも男尊女卑とかないですよね。閉ざされた場所の姫同士で出会わせてみる。
・・・ああ、言ってることが支離滅裂ですね。