「瑠璃、それ素じゃないでしょう。敬語はなしで構いませんよ。」
「えっ?」
「慣れてはいるようですけれど・・・。別に私に飾る必要もないでしょう。」
「・・・そうだったわね。偽りと分かる者に偽っても意味がなかったわ。」
くすりと笑って、瑠璃は口調を崩した。それを見て、悠玉が僅かに口角をあげる。
「でもそれは貴女もじゃないの、悠玉?」
悠玉は瑠璃の言葉に微笑んだ。
「私の敬語は、貴女とは違いますから。」
「でも、もとは違うでしょう?」
「―――ああ、どうして見抜くのですか瑠璃。」
「あら、認めてくれたわね。だから悠玉、私にも敬語はなしよ?」
良いわね?そう言って悪戯っぽく笑う悠玉に、瑠璃も微笑んだ。
「あなたには本当に敵わないわ、瑠璃。こんなこと、初めてよ。」
「ねえ、悠玉。」
「何ですか。」
「だから敬語はなしって言ったでしょ。」
「ああ、そうだったわね。ごめんなさい。」
「謝ることなんてないわ、悠玉。ねえ、貴女は―――“鳳麟”でしょう?」
「・・・どう、して。」
「図星なのね。どうしてそんなに驚くの?」
「私が、当代の“鳳麟”だと知っているのはほとんどいないわ。みんな、見破れない。うちの一族さえ知らないのに、どうしてわかったの?」
「うーん・・・強いていえば、直感、かしら?」
「直感?」
悠玉は訝しげに眉を寄せた。
それもそうだ、“直感”だけで当てられては困る。
「冗談よ。」
「じゃあ、何なの?」
少しいらだった様子の悠玉に、瑠璃は微笑んだ。
「同じ者には、隠れている方がわかりやすいのよ、悠玉。」
「・・・やっぱり、そうなのね、瑠璃。貴女も、天つ才なのね。」
「さすがにここまで言っちゃえばわかるわよね。」
「・・・嘘、気づかなかったわ。」
悠玉は、あらためて瑠璃をまじまじと見た。
縹色のふわりと波打つ髪に、強い意志を秘めた黒紫の瞳。あらためて観察してみれば、顔立ちは相当整っているし傾国と言っても過言でないほどの美貌だった。
が、そんなことがわかっただけでは意味がない。
「貴女はどこまでわかっているの、瑠璃。」
なぜかは、わからなかった。
それでも、悠玉には瑠璃の底知れなさがはっきりとわかった。この非凡な少女の才を、人は“天つ才”と呼ぶ。
理屈ではない、それでも感覚で分かった。
理屈で解決できないなんて、悠玉にははじめての経験だった。それだけに、とても新鮮だった。
「面白いわ、瑠璃って。」
知らない自分を引き出してくれる瑠璃は、悠玉からすれば新鮮だった。
それは、瑠璃も同じで。
話しているうちに、新しい己を教えてくれる悠玉の言葉が、新鮮だった。
悠玉姫は先代“鳳麟”だったりします。先代ってのは悠舜から見て。
骸骨を乞うを読んであのお婆が先代って明記されてないのをいいことに捏造しました。お婆の後を継いだのが悠玉です。