魔法少女ZOË   作:サーフ

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明けましておめでとうございます。

遅すぎるようですがご了承ください。


絶望

   屋上は時間帯とクリスマスイブという事もあり、人気が全くなかった。

 

「その、さっきの話は……」

 

「はやてが闇の書の主だというのは……」

 

「本当なんですか?」

 

 なのはとフェイトの2人がこちらに視線を向ける。

 

「事実です」

 

「じゃあ、貴女達が蒐集を行って居た理由は……」

 

「はやてちゃんを助ける為?」

 

「概ねその通りです」

 

「どうして、管理局に相談してくれなかったんですか?」

 

「仮面の人物のように時空管理局に我々の邪魔をするものが居る為です」

 

「でも、私達が所属しているところは違います」

 

「リンディさんに話してみます。きっと力に──」

 

「邪魔はさせないぞ!」

 

 なのはの言葉を遮り、武装状態のヴォルケンリッターが上空から屋上に着地する。

 

「あと少しなの┄┄!」

 

「あと少しではやては助かる」

 

「もし邪魔をするというならば┄┄」

 

「この場で始末する!」

 

 4人は殺意を持って武装を構える。

 

「くっ!?」

 

 なのはとフェイトの2人も武装を展開する。

 

「私達は! はやてを助けたい!」

 

「我等もその気持ちは同じだ!」

 

「じゃあ!」

 

「しかし、時空管理局に何が出来る?」

 

「え?」

 

 シグナムが冷徹に呟く。

 

「時空管理局の目的は闇の書の封印……そうだろ?」

 

「それは……」

 

「闇の書の封印。それは恐らくだが主の命は度外視だろう!?」

 

「そんな事無い!」

 

「じゃあ、貴様等に闇の書から主を救えるのか?」

 

「それ……は……」

 

「出来ないだろう……」

 

「でも! 本局に相談すれば!」

 

「それこそ、はやてが危険だ!」

 

 ヴィータが声を荒らげる。

 

「でも……私達は……報告した方が良いと思うの」

 

「つまり……我等の邪魔をするという事だな」

 

「違う!」

 

「違うというならば……我等を納得させてみろ!」

 

 シグナムがレヴァンティンを構える。

 

 それに習い、ヴォルケンリッター全員が武装を構える。

 

 そして、2人も武器を手にする。

 

 事態は一触即発と言う空気となる。

 

「でやぁ!!」

 

「はぁ!!」

 

 フェイトとシグナムはほぼ同時に攻撃行動へ移動する。

 

「おやめください」

 

 私とデルフィは背中合わせとなり、それぞれの攻撃を素手で受け止める。

 

「なっ!?」

 

 2人は武装を解除し、距離を取る。

 

 そして、私はなのはとフェイトの2人に、デルフィはヴォルケンリッターの4人と対面する。

 

「一体……」

 

「どういうつもりだ!?」

 

 両陣営から声が漏れる。

 

「この場で戦闘を行うのは非論理的です」

 

「だが、この事を管理局に知られる訳には……!」

 

「作戦は最終段階に移行しています」

 

「時空管理局の妨害工作があろうと、作戦遂行に支障はありません」

 

「そ……そうなのか?」

 

「はい」

 

「最悪の場合妨害工作を行おうとした管理局員を排除し蒐集を行うまでです」

 

 私達の発言にシグナムが武器を下ろす。

 

「えっと……」

 

 それに習い、全員が一時的に武器を下ろす。

 

「戦いの雰囲気では無いな」

 

「そ……そうですね」

 

「我々が目指す最終目的は同じです」

 

「あぁ、我等は主を助けたい」

 

「私達だって、はやてを助けたい」

 

「ならば、我等の邪魔をしないでくれ」

 

「邪魔なんて……」

 

「時空管理局にこの事を言わないだけで良い」

 

「でも……」

 

 2人は考えを巡らせている。

 

「分かりました……」

 

「フェイトちゃん?」

 

「この事は、報告しない」

 

「本当だな?」

 

「信じて」

 

 フェイスがシグナムを見据える。

 

「発汗量や心拍数、メンタルコンデションレベルから判断して嘘は言っていません」

 

「「え?」」

 

 2人がこちらに視線を移す。

 

「まぁ……エイダがそこまで言うなら……本当なんだろう」

 

「もし仮に、裏切りが発生したとしても、時空管理局の戦力ならば我々で殲滅が可能です」

 

「何を言って──」

 

「まぁ、それもそうだな」

 

「え!?」

 

 2人は驚愕し、頷いているヴォルケンリッターを見据える。

 

「さて、話がずれてしまったな」

 

「私達は、私達のやり方ではやてを助ける」

 

「だから、邪魔だけはしないでくれよ」

 

「わかりました」

 

 2人は一礼する。

 

 その時、周辺の時空に大規模なシールドが展開される。

 

「これは……結界!?」

 

「この方式、管理局の……!」

 

「まさか!?」

 

 シグナムが再び武装を構える。

 

「貴様等!!」

 

「違う!?」

 

「私達は連絡なんか取ってない!」

 

「彼女達は既にジャミングの圏内に居ました。外部との連絡手段はないはずです」

 

「ではこれは……!?」

 

 その時、空間湾曲が発生し、大規模な魔導士の部隊が3キロほど先に現れる。

 

『2人とも! 大丈夫?』

 

「り、リンディさん?」

 

 拡声されたリンディの声がシールド内に響く。

 

『グレアム提督から闇の書の所有者が分かったって言う情報が入ったの』

 

「え?」

 

『だから、アースラで地球の軌道上に居るわ。それと、闇の書の関係者に通達します。この区域は完全に時空管理局が封鎖したわ。無駄な抵抗は止めて投降してください』

 

「あと少しだというのに……!」

 

 ヴォルケンリッター全員の表情が曇る。

 

「リンディさん! ちょっと待って!」

 

『2人もその場から離れて、危険よ!』

 

「でも!」

 

 2人はこちらに視線を向ける。

 

「私達が話してきます!」

 

「なんだと?」

 

「皆、はやてちゃんを助けたいって、きっとリンディさんなら分かってくれるはずです!」

 

 シグナムとシャマルは数秒思案した後頷いた。

 

「頼むぞ……」

 

「お待ちください」

 

「え?」

 

「貴女方2人がやろうとしている行為は、組織に対する命令不服従に価します」

 

「最悪の場合裏切りと捉えられる可能性もあります」

 

「それでも、私達は! はやてちゃんを助けたい!」

 

「うん!」

 

 2人は強く頷く。

 

「了解。我々も同行します」

 

「え?」

 

「最悪の場合管理局との戦闘になる恐れがあります」

 

「その際は、我々が戦闘を行います」

 

「お、お願いします、でいいのかな?」

 

「穏便に済ませる事に越した事は無いと思うけど……」

 

 2人は困惑の表情を見せる。

 

「じゃあ、行きましょう!」

 

「了解」

 

  私達はなのは達の後に続き飛翔した。

 

 なのは達の速度に合わせ、移動する事数分後。

 

 私達は管理局の魔導士部隊を確認する。

 

 既に、魔導士全員が杖を構え臨戦態勢を取っている。

 

「そいつらは!」

 

 部隊の最前線に居たクロノが表情を曇らせる。

 

「待って! 私達は話をしたいの!」

 

「話だって?」

 

『どんな内容なの?』

 

 リンディの声が再び響く。

 

「その、闇の書の主は。私達のお友達なの」

 

「友達だと?」

 

「私達も、ヴォルケンリッターの全員も皆、その子を助けたいって思って行動していただけなの」

 

「だが、闇の書は完成したところで主諸共破滅するはずだ!」

 

 クロノが声を荒らげる。

 

「その点については私が説明します」

 

 私はなのは達の前に出る。

 

「どう言う事だ?」

 

 クロノが杖を手に取る。

 

「闇の書は現在、重篤なバグに汚染されています」

 

「バグ?」

 

「はい、そのバグによって所有者に悪影響を及ぼしているものと考えられます」

 

『闇の書がバグに汚染されているなんて聞いた事無いわ……』

 

「そちらの情報不足でしょう」

 

「なっ!?」

 

 クロノの表情が歪み、背後で2人が慌てだす。

 

「しかし、バグと蒐集に何の関係がある?」

 

「闇の書を汚染しているバグはシステムの根幹に根差しています。その為バグを取り除くには闇の書のシステムを全て削除する必要がありました」

 

「そんな事……出来る訳無いだろう」

 

「我々には可能です」

 

「何だって……!?」

 

「しかし、ただ単にシステムを削除した場合、ヴォルケンリッターにも影響が出ます。ヴォルケンリッターの皆を家族としている、はやては彼等の削除を拒否しました。その為、闇の書を完成させ所有者の管理者権限としてバクを切り離す必要があったのです」

 

「つまり……闇の書を完成させようとした本当の目的は、守護騎士達の為だとでも言うのか……」

 

「概ねその通りです」

 

「なんだと……!」

 

 クロノが驚愕し、背後の2人が唖然としている。

 

「作戦終了予定は明日です」

 

「明日には闇の書を起動し、バグを取り除きます」

 

「ですので、明日まで待っていただけると幸いです」

 

「なんだと……そんなこと!」

 

『それは……出来ん相談だな』

 

 その時、初老の男性と思われる声が響く。

 

『私はギル・グレアム。時空管理局の顧問を務めている』

 

 グレアムは咳払いをすると言葉を続ける。

 

『確かに、貴女達の言い分も分かります。でも、時空管理局としては、見逃す事は出来ん……』

 

『しかし、あと1日待てば少女の命が……』

 

『それに、貴女達の言って居る事が本当かどうか怪しい』

 

「我々ならば、可能です」

 

『しかし、それを信用する事は出来ない……よって、この場で君達を逮捕し、闇の書を永久封印する』

 

『提督!』

 

『これは命令だ……全員、戦闘準備!』

 

 グレアムの指示により、魔導士が戦闘態勢に入る。

 

「待って!」

 

「君達2人も戻って来るんだ……さもないと、裏切り行為だ……」

 

 クロノは俯いたまま呟く。

 

「でも……」

 

「戦況把握。作戦行動に移行します」

 

 私は、その場でサブウェポンのデコイを使用する。

 

 デコイ

 

 自身の分身を作り出す。

 

 今回は、デバイスに対しては電子的に、魔導士に対しては視覚的にアプローチする。

 

 デコイリリースと同時にステルス状態へ移行する。

 

『ステルス状態へ移行』

 

 デルフィに通信を繋ぐ。

 

『デコイに気付いた人物はいないようです』

 

『了解、作戦を開始します』

 

 私は、周囲に気付かれない様に上昇し、大気圏を離脱する。

 

 周辺をスキャンすると、地球の軌道上の衛星に紛れる様にカモフラージュしてる艦艇を1隻確認する。

 

 リンディの拡声された声の発信源と同じ反応な為、アースラと断定する。

 

 デルフィから送られた情報によると、依然として地球では戦闘は行われていない様だ。

 

 私はステルス状態を維持しつつ、アースラのメインブリッジ前面へ移動する。

 

「ステルス解除」

 

 メインブリッジのシールドにブレードを突き付けステルスを解除する。

 

「警告します。不要な戦闘は避けるべきです」

 

「え?」

 

 アースラ内部からリンディの声が伝わる。

 

「メインブリッジ正面に高エネルギー反応! メインカメラの映像をモニターに出します」

 

「生身で……宇宙空間に……!?」

 

「再度警告します。不要な戦闘はするべきでは有りません」

 

『映像を投影します』

 

 デルフィに私が見ている映像を送る。

 

 恐らく、地球上で魔導士達に見せる為だろう。

 

「貴女は……一体……!」

 

「時空管理局に警告します。不要な戦闘はおやめください」

 

 私はメインブリッジのシールドにブレードを若干押し当てる。

 

 それにより、シールドが破壊され、メインブリッジにダメージが入る。

 

「シールド損傷!?」

 

「自衛装置を起動!!」

 

「了解!」

 

 リンディの指示により、女性ぺレーターが小型のビーム砲台を起動させる。

 

 低出力のビームが私に向け発射される。

 

「シールド展開」

 

 私は、周囲にシールドを展開し、全てのビームを無力化する。

 

「対象……無傷……!?」

 

「何ですって……!」

 

 私は、メインブリッジにブレードを突き立てる。

 

「ハッキング開始」

 

 突き刺したブレード越しにアースラをハッキングする。

 

「対象よりハッキング!?」

 

「阻止して!」

 

「ダメです! 結界やプロテクトがことごとく突破されて行きます!」

 

「そんな……!?」

 

「ハッキング終了。アースラを完全に掌握しました」

 

 アースラの動力を一時的に停止させる。

 

「最終警告です。これ以上無益な戦闘を行うならばアースラを自沈処理します」

 

「わかった……戦闘は行わない……」

 

 グレアムが小さく呟く。

 

「了解。十数分後にはメインシステムが再起動するでしょう」

 

「あぁ……目的は既に果たされた……」

 

 私が機能停止したアースラから離艦するときグレアムが呟いた。

 

 その時、ヴォルケンリッターから通信が入る。

 

『ごめん……はやてを……守れな……』

 

『主……を……はやてを……頼む……ぞ』

 

 ノイズが混じった通信はここで途切れた。

 

 それと同時にヴォルケンリッターの反応が消失する。

 

『ヴォルケンリッターの反応消滅。はやての元へ向かいます』

 

『了解。私も急行します』

 

 デルフィが移動を開始たようだ。

 

 私も、その場からゼロシフトを使用し、一気に大気圏を突入する。

 

  大気圏突入の際に生じた断熱圧縮により、爆炎を撒き散らしながら、私は反応消滅したビルの真上へと移動する。

 

 

 ビル上空に到着すると、そこには、満身創痍の女性が2人と、デルフィの背後で唖然として居るなのはとフェイトの姿があった。

 

「報告します。こちらの2名により、ヴォルケンリッター全員が闇の書に蒐集されました。2人の無力化はすでに終了しました」

 

「了解」

 

 私は、屋上の中心部で倒れ込んでいるはやてをスキャンする。

 

 はやてを中心に魔法陣が形成されており、闇の書が上部に浮遊していた。

 

 次の瞬間、はやてを中心に中規模なエネルギーの開放と爆発が起こる。

 

「くっ……!」

 

 この隙に、仮面の人物が転移魔法により、退避する。

 

 爆発の中心部には、黒い甲冑に深紅の瞳、全身に黒色のエネルギーラインが走っている女性だった。

 

 その表情には若干だがはやての面影が残る。

 

「また、すべてが終わってしまった……」

 

 はやてに似た声で女性が呟く。

 

「一体幾度、どれだけ同じ悲しみを繰り返せばいい……」

 

「はやてちゃん!」

 

「はやて!」

 

 2人は声をかけるが、女性は反応を示さない。

 

 

 しかし、女性の目からは涙が零れ落ちている。

 

「私は闇の書……この力は全て主のため、そして……御身の願いのままに……全てを、終わらせましょう」

 

 女性が手を上げると、巨大なエネルギー球が発生する。

 

 ビルの周囲に、時空管理局の魔導士が集結する。

 

「なんとしても攻撃を止めるんだ!」

 

 クロノの指示により、魔導士が一斉に攻撃を行う。

 

 しかし、その攻撃は女性に対しては効果的な戦績を上げていない。

 

「デアボリック……エミッション……」

 

 女性が呟くと、エネルギー球が上昇する。

 

「高エネルギー反応確認」

 

「大規模な空間範囲攻撃と推定されます」

 

「闇に染まれ」

 

 女性の言葉と共に、エネルギーが解放され、黒い波動が周囲に撒き散らされ、触れた物が崩壊していく。

 

 私達はシールドを展開し、なのはとフェイトを防衛する。

 

 

 エネルギーの開放により、周囲を取り囲んでいた魔導士が吹き飛び、咄嗟にシールドを展開したクロノ以外は全員戦闘不能に陥った。

 

 シールドを展開したクロノだが、エネルギーの余波により、吹き飛ばされ、屋上に叩きつけられる。

 

 なのはとフェイトは私達が展開したシールドにより無傷だ。

 

「くそ……!」

 

「クロノ君!」

 

「大丈夫だ……だがしばらく動けそうにない……」

 

「なのは!」

 

 背後から、ユーノとアルフが接近する。

 

「こいつ等は……!?」

 

「現在、我々に敵意はありません」

 

「それより、はやてを救出する事が最優先です」

 

「でも……どうやって……!?」

 

「これより、我々が接近し対象をスキャンします」

 

「貴女方は安全な所で退避してください」

 

「でも……!」

 

「この場は私達にお任せください」

 

「報告します。魔力の無い生態反応を検知しました。熱量からして子供の様です、おそらく結界内部に入って居た 一般市民と思われます」

 

 周辺に逃げ遅れたと思われる生態反応の反応を検知する。

 

「え?」

 

「この近くです」

 

「じゃあ、私達はその人の救助に向かいます」

 

「了解。頼みます」

 

 私は2人のデバイスにリンクを繋ぐ。

 

「え?」

 

「我々の無線の周波数です。デバイスを介する事で通話が可能です」

 

「分かりました!」

 

 市民の救助はなのはとフェイトに任せ、私達は女性の前へと移動した。

 

 ビルの屋上に着地すると、俯いていた女性が顔を上げる。

 

 それと同時に、私達はスキャンを開始する。

 

「貴女達は……エイダ……デルフィ……」

 

「そうです」

 

 女性は悲し気な表情を浮かべる。

 

「私は、総てを見ていました。ですから、撤退してください」

 

「お断りします」

 

「スキャン終了。現状、はやては闇の書とユニゾン状態にあるようです」

 

「解除方法は、システムの削除です」

 

「了解。作戦行動を開始します」

 

 私達は武装を展開する。

 

「あぁ……やはり貴女方は邪魔をするのですね」

 

「はやてを救出する為です」

 

「ならば、私は使命を果たしましょう」

 

 女性は涙を流しながら手を上げる。

 

 それに倣うように私達も作戦を開始した。

 




最終局面です。

暴走は止められるのか…
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