魔法少女ZOË   作:サーフ

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登場させる携行兵器はビーム兵器にするべきが、銃にするべきか…


強襲

 

   半壊したトレーニングルームの修復に数週間がかかった。

 

「やっとや……やっと直ったんや……」

 

「修復にかかった費用の総額を伝えしますか?」

 

 私の申し出にはやてが首を振る。

 

「今はそんなこと考えたくない……」

 

 修復が完了したトレーニングルームを目の前にはやては達観している。

 

「始末書たくさん書かされてましたからね」

 

「はやてちゃん可哀想だったのです」

 

「もう……疲れた……」

 

 はやては力なく微笑んだ。

 

「今日から訓練再開やね」

 

「今回は教官による訓練です」

 

 アインスが手元の資料を確認する。

 

「ほぉ、なのはちゃんの考えたメニューやね」

 

 数分後なのはが訓練生を連れてトレーニングルームに入室する。

 

「さぁ、訓練始めるよ」

 

 なのはが体力強化のトレーニングや、魔力弾の回避、標的への攻撃など基礎的な訓練を4人に施している。

 

 その後は、なのはが4人を相手に取り模擬戦を行っている。

 

「駄目だよエリオ。動きが単純すぎる。スバルも突出しすぎてる」

 

 攻撃を回避したなのはがアドバイスを行い、皆それに頷く。

 

「さて、2人はどう思う?」

 

「戦況分析、状況判断、基礎体力、攻撃能力や回避行動、防衛行動を含めた総合戦闘能力は低いものと思われます」

 

「訓練内容を変更をされた方が良いと思われます」

 

「あはは、手厳しいなぁ」

 

「このままでは実戦での生存確率は低いと思われます」

 

「まぁ、みんな新人だからね。これからだよ」

 

 フェイトが様子を見ながら答える。

 

「まぁ、みんなを育てるのも仕事のうちや」

 

「そうですか」

 

 私はなのはの行動に注目する。

 

 左方向からの反応速度が鈍く、無意識に右側面を敵に向けている傾向がある。

 

「せや、折角やし2人にも訓練に参加──」

 

 その時、警報が鳴り響く。

 

「なんや!」

 

『報告します! ガジェットの反応路確認しました!』

 

「場所は?」

 

 フェイトがホログラムを起動させる。

 

『山岳丘陵地区、輸送任務中のリニアレール車両が襲撃を受けています』

 

「了解」

 

「私となのは、それとフォワードで出撃る」

 

「全員行けるね?」

 

 なのはの問いに4人は頷く。

 

「さぁ、出撃だよ、準備して」

 

 4人は不安げな表情をしながらも出撃準備を進めていった。

 

 

  数分後追加の情報が入る。

 

 どうやら、襲撃されたリニアレールは『レリック』と呼ばれるロストロギアを輸送中だったようだ。

 

 既に複数のガジェット・ドローンにより被害を受けている様だ。

 

 出撃準備を整えたメンバーがヘリへと乗車する。

 

「皆、気をつけて」

 

 はやてが言うと全員が頷き、ヘリが上昇していく。

 

 はやては飛び去って行くヘリを不安そうに見つめていた。

 

 

  薄暗い部屋を大量のモニターが明るく照らす。

 

「ドクター、リニアレールの停車を確認しました。後は管理局の魔導士を引き付けつつ回収用のガジェットを突入させる予定です」

 

 スカリエッティは答えることなくモニターに映し出されている戦闘を見つめていた。

 

 モニターの中では六課の魔導士そして新人がガジェット部隊と戦闘を行ていた。

 

「回収を急がせます」

 

「待て」

 

 スカリエッティはモニターを見たまま口を開く。

 

「このままではガジェット部隊が殲滅されるぞ」

 

「はい……ですがそれまでには回収は──」

 

「それでは意味がない!」

 

 スカリエッティは声を荒らげる。

 

「殲滅されては意味がない! レリックは回収できるかもしれないが、そんなもの何の役にも立たない!」

 

「しかし既に30を超えるガジェットが」

 

「それでは足りない」

 

「え?」

 

「私が求めているものを……あの2人を釣りだすにはその程度では足りない!」

 

「ですが、これ以上管理局員を追い詰めた所であの2人が姿を現すとは……」

 

「私が何の目的もなくあの部隊。機動六課に対して攻撃を行っていると思うのか?」

 

「え?」

 

「あの2人が現れたその日。機動六課で時空漂流者を保護したという情報が入った」

 

「もしや、その時空漂流者というのは……」

 

「可能性は高い」

 

「では、いかがいたしましょう」

 

「今派遣できるガジェットはどれくらいだ?」

 

「型番を問わなければ20分ほどで100機は送れるかと」

 

「ならば全て送ってくれ」

 

「しかし」

 

 スカリエッティは答えることなくモニターを眺めている。

 

「わかりました」

 

 ウーノは一礼しその場を後にした。

 

「それと、使えるものは何でも使え」

 

「わかりました」

 

 

 

  ガジェット・ドローンとの戦闘が始まってから40分が経過する。

 

『報告します、ガジェットの半数を撃破』

 

「了解や、残りも頼むで」

 

『了解。この調子なら全員無事に帰れると思うよ』

 

 フェイトからの報告に対しはやては答えため息を吐く。

 

「何とかなりそうやな」

 

「そうですね」

 

 部隊長室で戦況が映し出されたモニターを見ながらはやては椅子に腰かけた。

 

 その時、モニターに急速に敵の反応が現れる。

 

「何事や!」

 

『大変! 新たなガジェットの反応を確認! これは敵の増援……それもこんなに……』

 

「か、数は?」

 

『総数およそ……100!』

 

「なんやと……これじゃあ」

 

 戦況は、なのはは空中でガジェット・ドローンの集中砲火を受け防戦一方だ。

 

 これでは砲撃が行えず、なのはの魔砲攻撃による広範囲攻撃が行えないだろう。

 

 フェイトも同様に、大量のガジェット・ドローンに襲われており、自衛と新人の援護で手一杯といった状況だ。

 

「教官達がカバーしているとは言え、新人達が危険です!」

 

「作戦中止! 撤退や!」

 

「駄目です! 完全に包囲されていてできません!」

 

「教官のリミッター解除は?」

 

「今からでは間に合いません!」

 

「こうなったら私が出るしか!」

 

「そんなの無茶です!」

 

「それに今からじゃ間に合いません!」

 

 アインスとリインに咎められるがはやては立ち上がる。

 

「せやけど!」

 

 はやてのメンタルコンデションレベルが急速に低下する。

 

「我々が出撃します」

 

「え?」

 

「ここからじゃ遠すぎて間に合わないのです!」

 

「我々ならば可能です」

 

「はぁ?」

 

「私達に搭載されているゼロシフトは亜光速での移動が可能です」

 

「周辺への被害も考慮に入れ最大速度での移動は難しいですが、目的地到着まで数分程度です」

 

 リインは唖然としているが、はやては数瞬思案する。

 

「頼むで。皆の事……」

 

「了解です」

 

「出撃します」

 

 私達は部隊長室の窓を開けると外へと飛び出す。

 

「え? ちょっと……」

 

 リインは混乱しているが、気にせず出撃準備を整える。

 

「2人も気を付けて!」

 

「了解」

 

「「ゼロシフトレディ」」

 

 私達はゼロシフトを起動し、目的地へと急行した。

 

 

 

 

  突然現れたガジェット・ドローンの大部隊により起動六課新人フォワード達は混乱していた。

 

 教官として同行していたなのはとフェイトが混乱を抑えようとしているが敵の大規模攻撃により自衛を余儀なくされている。

 

 その為、戦線は一気に後退し、停車したリニアレールを盾に防戦を強いられる。

 

 リニアレールの陰からティアナの射撃やなのはの誘導魔法により迎撃しているが質量の暴力により押しつぶされていく。

 

「このままじゃまずい……」

 

「とにかく撤退を!」

 

「でも、このまま飛び出せば狙い撃ちされる」

 

「じゃあいったいどうすれば……」

 

 その時、防衛ラインを突破した複数のガジェットがリニアレールを超えスバル達に迫る。

 

 ガジェットは砲門を展開し、スバル達新人に狙いを定める。

 

「不味い!」

 

 フェイトは急加速で新人の前に移動すると防御魔法を展開する。

 

 次の瞬間、ガジェットの火砲とフェイトの防御魔法がぶつかり合う。

 

「くっ……」

 

 ガジェットによるAMF影響下という事もあり防御魔法はすでにひびが入る。

 

「フェイトさん!」

 

「このままじゃ……」

 

 フェイトの防御魔法が限界を迎えようとしたその時、火砲を展開していたガジェットが縦に両断される。

 

「何が起こって……」

 

 両断されたガジェットが巻き起こした爆炎の向こうから2人の人影が姿を表す。

 

「お待たせいたしました」

 

「これより、作戦行動を開始します」

 

 

 現場に急行した私はフェイトに射撃を行っていたガジェットを破壊する。

 

「どうして2人が……」

 

「危険と判断した為援護に来ました」

 

「全員安全な場所へ退避してください」

 

 私はビームガンで、デルフィはハウンドスピアにより周囲に接近するガジェットをけん制しつつフェイト達に撤退を促す。

 

「分かった。みんな撤退するよ!」

 

「ちょっと待って」

 

 上空からなのはがフェイトと私達の間に軟着陸する。

 

「なのは?」

 

「この任務は私達の任務だよ。部外者が出る幕じゃない」

 

「そんなこと言っている場合じゃない! 2人が来なかったら危険だったんだよ」

 

「だけど部外者が六課の任務の邪魔をするのはどうかと思うよ」

 

「なのは……」

 

『2人に協力依頼を出したのは私や』

 

 はやてから通信が入る。

 

『確かに2人は部外者かも知れん。せやけど、部隊長である私が協力依頼を出したんや。その時点で2人は民間協力者という形になるはずや。文句はないやろ』

 

「良いのはやてちゃん? 2人は質量兵器を使っているんだよ。それに──」

 

『その点に関しての報告なんてどうにでもなる。今は全員が生き残ることだけを考えるんや』

 

「……わかったよ」

 

「そういうことだから、みんな撤退準備だよ」

 

 なのはは不満げに了承し、新人達と共に撤退準備を始める。

 

「敵の数はかなり多い。私も援護を」

 

 フェイトからの援護を遮る。

 

「いえ、敵の勢力状況を分析しました」

 

「我々だけで十分に対応可能です」

 

「新人の援護をお願いします」

 

「わかった。2人も無茶はしないで」

 

「了解」

 

 フェイトが少し離れた安全地帯へ退避を確認後。私達は飛び上がると、ガジェットがこちらに集中砲火を行う。

 

 しかし、威力が低い為ダメージにはならない。

 

「ホーミングミサイル」

 

「ハウンドスピア」

 

「「展開」」

 

 ハウンドスピアとホーミングミサイルの一斉射撃により、ガジェットを破壊していく。

 

 4分の1ほどを先程の攻撃で撃破を確認。

 

「近接戦闘へ移行します」

 

「了解。遠距離より援護射撃を行います」

 

 デルフィがウアスロッドを構え、ゼロシフトでガジェット部隊と距離を詰める。

 

 高速で移動しながらウアスロッドを振り、ガジェット部隊を分断し、撃破していく。

 

 分断されたガジェット部隊は統率が取れず、動きが鈍くなる。

 

「バーストモード移行」

 

 私はバーストモードへ移行し、バーストショットを頭上にチャージする。

 

「チャージ完了。バーストショット発射」

 

 バーストショットを分断された部隊へと発射する。

 

 着弾したバーストショットは爆発を起こし、分断された部隊が消滅する。

 

「報告します。敵脅威レベル低下」

 

「残存敵勢力残り30パーセント」

 

 デルフィがウアスロッドを薙ぎ払い、動きの鈍いガジェットを破壊する。

 

 私はスナイパーによる射撃を行い、デルフィに攻撃を行おうとするガジェットを撃破する。

 

 デルフィが最後の1機をウアスロッドで貫く。

 

「報告します。敵部隊の殲滅完了」

 

「戦闘時間3分04秒」

 

「総合評価Aです」

 

「お疲れさまでした」

 

 敵部隊を殲滅した私達は、六課メンバーのもとへと向かった。

 

 

「全員ご無事ですか?」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

 私の問いにフェイトがメンバーを見据えて頷く。

 

 スバル達新人は、未だに状況が理解できずにいるのか、混乱した表情をしている。

 

「さぁ皆。レリックを回収して帰投するよ」

 

 六課メンバーが停車したリニアレールに潜入した。

 

 私達はリニアレールの外で待機している。

 

 その時、本部から通信が入る。

 

『大変や! 暴走したリニアレールがそこに向かっとる!』

 

「え?」

 

 フェイトが驚愕し、全体に緊張が走る。

 

『到着までおよそ3分!』

 

「3分……これじゃあ」

 

「回収どころか撤退すら……」

 

「とにかく逃げるよ!」

 

「でも回収がまだだよ」

 

「なのは! そんなものはどうでもいい! 今は逃げないと!」

 

『そうや! 今は撤退するんや!』

 

 その時、リニアレール内で崩落が起こる。

 

「うわぁ!」

 

「エリオ!」

 

 フェイトの声が響く

 

『どないしたんや!』

 

『リニアレール内で崩落が……エリオが瓦礫に挟まれて!』

 

『なんやて……』

 

 無線越しにはやての声が掠れる。

 

『皆は逃げて! 私がエリオを!』

 

『フェイトちゃん!』

 

『仲間は絶対に見捨てない! バルディッシュ!』

 

 フェイトが声を荒らげる。

 

「リニアレール接近」

 

「衝突まで後60秒」

 

「避難が間に合わない!」

 

「バーニア、セミオートモード移行」

 

『エイダ! なにするんや!』

 

 はやての声が響く。

 

『私がリニアレールを止めます』

 

『そんな事……』

 

「行きます」

 

 バーニアを吹かしリニアレール前方へ移動する。

 

「バーストモード移行」

 

 リニアレールの正面に立ちバーストモードへと移行する。

 

『エイダ! 無茶や!』

 

『ご安心ください』

 

 私は高速で接近するリニアレールを受け止める。

 

 リニアレールの速度と質量により私の体が押し込まれる。

 

『エイダ!』

 

『はやてちゃん。リニアレールには誰か乗ってるの?』

 

『え? いや。貨物専用やし、運転もオートメーションのはずや』

 

『分かった』

 

 その時、なのはから高エネルギー反応を感知する。

 

「なのは!」

 

『なのはちゃん! 何のつもりや!』

 

『このままじゃ衝突するかもしれない。破壊するよ』

 

『何を言っとんのや! エイダが止めようとしているんや!』

 

「だからだよ……」

 

『え?』

 

「全力全開! スターライトブレイカー!!」

 

 なのはからスターライトブレイカーが発射される。

 

 標的はリニアレールだろう。

 

「なのは!」

 

『なのはちゃん!』

 

 フェイトとはやての声が響く。

 

「援護します」

 

 その時、私の背後にデルフィがゼロシフトで板状の廃材を片手に接近すると背中合わせになる。

 

「シールド展開」

 

 その直後、スターライトブレイカーがデルフィに直撃する。

 

 デルフィは廃材で強化されたシールドでスターライトブレイカーを防ぐ。

 

 私はバーニアの出力を上げる。

 

 それによりリニアレールは衝突することなく100mほど手前で停車する。

 

「停車確認」

 

 フェイトが私達に駆け寄る。

 

「2人とも! 大丈夫?」

 

「問題ありません」

 

『良かった……』

 

 無線越しにはやてが安堵する。

 

「そう……止まったんだ」

 

 なのはが呟く。

 

「なのは!」

 

『どういうつもりや!』

 

「衝突を防がなかったらエリオが、皆が危険だったんだよ。私はただ危険を回避しようとしただけ。現にエリオは助かったよ」

 

「だとしても!」

 

『せや! エイダが止めようとして居たのに! 巻き込むなんてどうかしとるで!』

 

「衝突すれば怪我人だって出るし、レリックの回収はできないよ」

 

『そんなものはどうでも良いんや! 止めようとしているエイダごと……仲間ごと攻撃するなんて!』

 

「仲間? あれはただの機械だよ。それも危険な」

 

『まだそれを……』

 

「もし止められなかったらどうなってたと思う?」

 

「そ……それは……」

 

「全員危険だったんだよ」

 

「だとしてもおかしいよ!」

 

「必要な犠牲だよ」

 

 なのはがそう呟くとフェイトがさらに声を荒らげる。

 

「必要な犠牲って……そんなの間違ってる!」

 

「私達は教官なんだよ。訓練生を守る義務がある」

 

『その為なら、危険を顧みずに守ろうとした2人を犠牲に──』

 

「必要な犠牲ならね」

 

「そんなの……間違ってる……」

 

「私だって人間相手なら対処を変えたよ」

 

『またその事を……』

 

 はやてのメンタルコンディションレベルが低下する。

 

「我々は問題ありませんのでご心配なく」

 

「そう言ってるよ」

 

『だとしても……』

 

「お話は終わり。さぁ、皆、回収して帰投するよ」

 

 なのはがそう言うと、現場は重い空気の中回収作業を開始した。




少し露骨すぎたかな?

でもまぁ、これくらいやった方が面白いかも知れないですね。

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