そこまで暴れる要素はないので日常回ですね。
平和なものです。
数日後。
休暇も始まり人気が少なくなった六課廊下ではやてが背中を伸ばしながら歩いていた。
「お? エイダにデルフィ」
「どちらへ?」
「少し横になってくる。仕事がひと段落したんや」
「そうですか」
「せや。2人は六課の中なら好きなようにしてええで」
「了解です」
はやてを見送った後私達は自室へ移動した。
自室の前に人影を確認する。
「あっ」
扉の前にはスバルが立っており、こちらに気が付いたようで私達に駆け寄ってくる。
「あ、あの!」
「ご用でしょうか? 出張任務では?」
「特に行く当てもなくて……それで、えっと……」
スバルは数回深呼吸を行う。
「私を強くしてください!」
「発言の意図不明」
「私! 前回の戦いで自分の無力さを思い知らされました……」
スバルが俯く。
「それに私は教官の2人に守られていて……だから私はもっと強くなりたいんです! だから!」
「しかしなぜ我々なのですか?」
「それは貴女達がとても強かったからです!」
スバルが顔を上げこちらを見据える。
「ですからお願いします!」
スバルは勢い良く頭を下げる。
「了解です」
「ありがとうございます!」
スバルが再び頭を下げる。
「具体的な目標はございますか?」
「えっと……少なくとも自分の身は自分で守れるくらいには……ですかね」
「了解です」
「では現在の戦闘能力を計測させていただきます」
「トレーニングルームへ向かいましょう」
「わかりました!」
私達はトレーニングルームへと移動する。
トレーニングルームに到着すると既に先客がいた。
「ん? なんだお前達か」
こちらに気付いたシグナムがタオルで汗を拭う。
「何の用だ?」
「彼女のトレーニングです」
スバルが一礼する。
「トレーニング? しかし既に訓練メニューは教官が作っているはずだが?」
「私はもっと強くなりたいんです!」
「っ……フッ……そうか」
シグナムが小さく笑う。
「その気持ちわかるぞ」
「本当ですか!」
「あぁ、だが無理をして体を壊しては意味がない。まぁこの2人の指導なら大丈夫だろう」
「はい! ところで……」
「ん? なんだ?」
「出張任務はどうされたんですか?」
「主が休んでいないのに我等が休めるわけないだろう」
「そうですか」
スバルとシグナムが苦笑する。
「さて、私はそろそろ主の元へ行くとするか」
「はやてなら先程就寝されました」
「そうか。なら少し出かけるとするか。それくらい良いだろう」
シグナムはそういうとトレーニングルームを後にした。
「大変ですね……」
「そうですね」
私は端末を操作し起動させる。
「それではまずが基礎体力から測定させていただきます」
「はい! お願いします」
スバルが行動を開始した。
体力テストを開始してから30分が経過する。
「はぁ……はぁ……もっ……もう……だめぇ……」
スバルはその場で仰向けに倒れ込み荒い息で胸を上下させる。
「測定を終了します。30分の休憩の後次の測定を開始します」
「はぁ……はぁ……」
スバルは息を荒らげ続けた。
その後、戦闘スタイルの測定、状況判断、簡易的な戦闘訓練を行う。
全てが終わる頃にはスバルは満身創痍だった。
「終了です。お疲れさまでした」
「はぁ……はぁ……はい……はぁ……」
「結果をお伝えしますので体力が回復したら我々の部屋へお越しください」
「わかり……ました……はぁ……」
15分後ふらつきながらスバルが入室する。
「失礼します」
「どうぞ」
スバルを椅子に座らせデルフィが紅茶を出す。
「それでは、結果をお伝えします」
「お願いします」
「基礎体力B、戦況判断能力D、応用能力D、回避能力C、総合戦闘能力D+です」
「えっと……それはつまり……」
「端的に申し上げますと、現状では戦場での生存確率は36%程度です」
「自信はあったんですが……まさかこんな結果とは……」
スバルのメンタルコンデションレベルが低下する。
「体力は平均値を超えております」
「体力には自信があるんですよ」
スバルが小さく笑う。
「それでは今後の訓練メニューをお伝えします」
「はい!」
「まずは、戦況判断能力の強化。こちらはホログラムなどを利用した模擬戦で行います」
「はい」
「続きましては、戦闘中における生存能力の強化です」
「生存能力?」
「はい。敵を殲滅するだけが戦いではありませんので」
「こちらは実際に体で覚えていただきます」
「わかりました」
「その他複数ありますが、それはその都度お教えします」
「わかりました!」
「それでは明日の1100より訓練を開始します」
「1100?」
「11時からです」
「はい! お願いします!」
スバルは一礼した後に退室した。
翌日
自室の扉の前でスバルが待機していた。
「あっ! おはようございます!」
「おはようございます」
「1100までにはまだ時間があるはずですが」
「そうなんですが……えへへ」
スバルは頭を掻き笑う。
「少し時間は早いですがトレーニングルームへ向かいましょう」
「はい!」
私達はトレーニングルームへと移動した。
トレーニングルームに到着後、スバルは準備体操を始める。
「あの……」
準備運動中にスバルが口を開く。
「その……聞いてもいいですか?」
「なんでしょうか?」
「その……なのはさんから聞いたのですが……二人はその……人間ではなく機械だと」
「はい」
「その通りです」
「そう……ですか」
スバルのメンタルコンデションレベルが低下する。
「その……機械の体だからと不満に思ったことはありませんか?」
「「ありません」」
「そう……ですか……」
スバルが俯く。
「その……私……」
「体の一部が機械化されていることですか?」
「え?」
スバルが唖然とした表情でこちらを見据える。
「知っていたんですか?」
「はい」
「私は……普通の人と違う……いや……人間ですらないのかなって考えちゃって……それで機械で出来ている二人に……」
「そうですか」
「おかしいですよね……人間じゃない存在……なのはさんが以前お二人の事をそう言った時……私と一緒だって思ってしまって……」
メンタルコンデションレベルが乱れる。
「一緒にしないでください」
「え?」
デルフィの回答にスバルが顔を上げる。
「そう……ですよね……私は二人と違って出来損ないですから……」
「貴方は人間です」
「え? 人間……」
スバルが顔を上げる。
「完全な機械ならば我々同様、感情の無いただのプログラムです」
「ですが貴女は違うはずです」
「私は……」
「感情を持っているのであるならば少なくとも生物であると位置付けられるはずです」
「なので感情の無い機械である私達とは違う存在です」
「……はい!」
スバルは笑顔を浮かべる。
「なんだかスッキリしました! ちょっと顔洗ってきます!」
そういうとスバルはトイレへと移動した。
「なかなかええ話やな。まぁちょっと何が言いたいのか分からんかったけどな」
私達の背後からはやてが現れる。
「聞いていましたか」
「まぁな。シグナムから聞いたで。なんや、特別訓練だとか」
「彼女が指導して欲しいと言う事なので」
「そっか」
はやては小さく欠伸をする。
「あの子の事頼んだで」
「了解です」
「それと、一応あの子の指導はなのはちゃん達がやっとる。まぁ大事にならんとは思うけど……」
「了解です」
「まぁ、ほどほどにな」
はやてはそういうとその場を後にした。
数分後、スバルがトイレから戻る。
「すいません。お待たせしました」
「問題ありません」
「本日は回避と防御についてお教えします」
「はい」
私はコンソールを操作し周囲に仮想敵を出現させる。
「これより、仮想敵から攻撃を行います」
「その攻撃を判断し回避、または防御してください」
「はい!」
スバルが位置に付き、仮想敵が起動する。
仮想敵から発射された模擬弾をスバルは回避するが、模擬弾の中には追尾性能を有しているものもあり、それらはシールドを展開し防いでいる。
「くっ……」
しかし、訓練を開始して数分後には被弾してしまう。
「はぁ……はぁ……」
「無駄な動きが多すぎます」
「回避は最小限の動きで、防御も最小限に留めてください」
「ですが……追いかけてくるのは防ぐしかなくて……」
「防御もシールド展開以外の方法が存在します」
「え?」
「例えば瓦礫や障害物を盾にする等周辺の環境も利用し、エネルギー消費を抑えてください」
「盾に……ですか?」
「その通りです。板状素材、または敵対象を掴み盾として利用することが可能です」
「敵などを掴んだ状態でシールドを展開することにより、通常では防御不可能な攻撃ですら防ぐ事が可能でしょう」
「はい! やってみます」
そういうとスバルは再び訓練を開始する。
数時間後には、被弾数が減少する。
先程の助言を実行し、周囲の瓦礫を盾に身を潜め仮想敵からの攻撃を防ぎ、若干ではあるが仮想敵を掴み盾に利用するなどの応用も行えるようになっていった。
「訓練終了です」
「はぁ……はぁ……」
訓練終了すると同時にスバルはその場に倒れ込み激しい呼吸をする。
「どう、でした?」
「回避についてはまだまだと言ったところです」
「遮蔽物や障害物を利用し攻撃を防げているのは評価に値します」
「また、敵を掴み盾として利用している場面も見受けられましたので、そこも高評価です」
「はぁ、ありがとうございます……アハハ……」
「しかし、実戦では敵も抵抗します。長時間拘束するのは不可能だと思われます」
「わかりました」
「それでは本日の訓練を終了します」
「明日は総合的な戦闘訓練、様々な状況を想定した状況判断についてです。本日と同様に1100時に我々の部屋の前に」
「了解……です」
息を整えているスバルをその場に残し、私達は退室した。
トレーニングを開始して数日。
スバルの基礎体力も向上し始める。
1030時に自室の前に2つの反応があり扉がノックされる。
扉を開けるとスバルとティアナの姿があった。
「あっおはようございます」
「おはようございます……」
スバルとは対照的にティアナの表情は少し暗いものだった。
「どうされたのですか?」
「スバルが隠れてこそこそと何かしてるから気になって……」
「その、よかったらティアも今日から参加してもいいですか?」
「かまいません」
「ありがとうございます! 良かったねティア!」
「スバルが1人で何してるか気になっただけよ」
「そう言って、実は嬉しいくせに」
スバルは微笑みティアナは溜息を吐く。
「少し早いですが始めましょう」
「では行きましょう」
「そうですね」
「その、これって許可は?」
「はやては知っています」
「なら……いいのかな?」
私達はトレーニングルームへと移動した。
トレーニングルーム到着後
スバルが簡単なウォーミングアップを始める。
「まずは何をすれば?」
「基礎的な体力と戦闘能力を測定させていただきます」
「スバルと共に走り込みを行ってください」
「わかりました」
「じゃあ行くよ、ティア」
スバルがティアナを先導するように走り出した。
15分後、そこには息を切らし激しく呼吸を繰り返しているティアナの姿があった。
「もぉ、そんなんで音を上げるなんてだらしないなぁ」
「はぁ……はぁ……嘘でしょ……」
対するスバルは基礎体力の差とトレーニングの効果により疲れの色は見えない。
「30分の休憩を取りましょう」
「そうですね」
スバルが手に持っていたスポーツドリンクをティアナに手渡し休憩を開始した。
30分後、疲れの残るティアナが立ち上がる。
「次は、戦闘能力を測定します」
「戦闘能力?」
「はい。これより仮想敵を登場させますので戦闘を行ってください」
「わかりました」
ティアナが銃型のデバイスを取り出す。
「それでは始めます」
端末を操作すると同時に、仮想敵が動き出す。
それに合わせティアナも戦闘を開始した。
デバイスから魔力弾を放ち仮想敵に攻撃を行っていく。
しかし、複数の目標を同時に相手しているため、無駄玉や撃破の優先順位を見誤っている点がみられる。
その為、仮想敵の攻撃が徐々に熾烈になっていく。
「くっ!」
ティアナは物陰に隠れ攻撃をやり過ごすが手も足も出ないといった状況に追い込まれてしまった。
ついに追い込まれ仮想敵の攻撃がティアナに命中する。
「作戦終了です」
端末を操作すると同時に仮想敵が消える。
「はぁ……はぁ……」
「おつかれさま」
疲れ果てているティアナにスバルが手を差し伸べる。
「それでは先程の戦闘評価をお伝えします」
「基礎体力D+、戦況分析B-、応用能力C+、回避能力D-。総合戦闘能力D+」
「それって……」
「戦況分析能力は高いですが、それに対する応用能力が低いです」
「基礎体力を強化し、常に落ち着いた戦況把握をおすすめします」
「はぁ、はい」
「追加で報告します。銃型のデバイスという事もありアウトレンジからの狙撃などを重点的に特化することで戦闘能力が向上すると思われます」
「狙撃用のストレージデバイスをご用意しますのでご利用ください」
「それでは、本日の作戦は終了です」
「明日は2人で連携を想定した訓練を行います」
「え? 2人って私達ですか?」
スバルがティアナに視線を向ける。
「はい」
「双方で遠距離戦、近距離戦の欠点を補えば戦闘能力の向上がみられます」
「そう……ですか?」
「明日はそこを重点的に行います」
「お疲れさまでした」
私達は疲れ切った2人を見送りトレーニングルームを後にした。
2人はどこまで強化するか…