翌日
トレーニングルームに到着した2人に私達は独自に開発したストレージデバイスを手渡す。
「これは?」
「我々が作成したストレージデバイスです」
「作成って……」
ティアナが受け取ったストレージデバイスを展開させる。
すると、セミオート型のスナイパーライフルデバイスが展開される。
「このデバイスは射程距離と精密射撃に特化しています。魔法弾は6発装填でリロードには魔力の再充填が必要になります。魔力の充填度を変更することで着弾と同時に小規模な爆発を起こす炸裂弾を発射することも可能です」
「すごい……ですね」
ティアナは若干恐縮しつつストレージデバイスをカード状に戻す。
スバルがストレージデバイスを展開する。
すると、スバルの体表にエネルギーフィールドが発生する。
「こちらはエネルギーフィールドを発生させる防御装置です」
「近接戦闘における生存率が向上するでしょう」
「発生位置を調節することで防御力を高めることができるでしょう」
「そうなんですか、でもこれって……すごいですね」
スバルはエネルギーフィールドを解除する。
「それでは、本日はそれらを利用した戦闘を行いましょう」
「「了解です!」」
「戦闘スタイルが違いますので個別に説明を行います。私はティアナに、デルフィはスバルを担当します」
「わかりました」
スバルはデルフィと共に少し離れた位置へと移動した。
「それでは我々も移動しましょう」
「はい」
私はティアナと共に訓練を開始できる位置へと移動した。
「まずはスナイパーの基本的な使用方法についてご説明します。まずはデバイスを起動させてください」
「はい」
ティアナはデバイスを展開させる。
「狙撃の基本は1撃で仕留めることを心がけてください」
「はい」
「構え方ですが、基本は命中精度の向上の為、腹ばいでの伏射を推奨します。もしくは膝立ちです」
「立ったままでは駄目なんですか?」
「不可能ではありませんがバランスが取りにくいので」
「そうなんですか」
「はい。構え方の見本を見せるのでデバイスをお借りします」
「はい」
ティアナからデバイスを受け取ると私は立ったままだがスナイパーライフルを構える。
「基本的な構え方はこれで問題ありません。後は状況に応じ、膝立ちと腹ばいを使い分けてください」
私はティアナにスナイパーライフルを返却する。
「この棒みたいなのは何ですか?」
「こちらはバイポッドと言い、展開し地面に立たせることで安定させることができます」
「わかりました」
「それでは実際に射撃を行ってみましょう。では50m先に目標を展開しました。体制はお好みで構いません」
「わかりました」
ティアナは立ったままスコープをのぞき込む。
「重力計算、風量計算、速度計算等はデバイス内で自動的に行われます。なのでレティクルの中央を目標に合わせるようにしてください」
「はい」
スナイパーライフルを持つティアナの手が震える。
「呼吸を止めることで手振れを抑制させることができます」
「はいっ!」
ティアナは呼吸を止め狙いを定める。
数秒後、引き金が引かれ魔力弾が発射される。
発射された弾丸は目標を外れて地面に着弾する。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「はずれです」
「中心を狙ったんですが……」
「恐らく手振れによるものでしょう」
「でも、手振れでもそんな差が……」
「数ミリのずれであれ目標との距離が離れるに連れ大きくなります」
「……わかりました」
「次は腹ばいで射撃をしてみましょう。バイポッドの使用を推奨します」
「わかりました」
ティアナはその場で腹ばいになるとバイポッドを展開しスナイパーライフルを構える。
「すぅ……ふぅ……」
ティアナは深呼吸をした後、呼吸を止め目標を定める。
「っ!」
引き金を引き魔法弾が放たれる。
放たれた魔法弾は目標に命中する。
「命中確認」
「ふぅ……やった!」
「中央から5cm程ズレています。訓練を積みズレを修正するようにしましょう」
「はい!」
「続いては炸裂弾の説明を行います。デバイスに魔力を流し込んでください」
「こう……ですか?」
銃身に赤いラインが走り出力が上昇する。
「問題ありません。それでは先程同様に射撃を行ってください」
「わかりました」
ティアナは先程同様に目標に向け引き金を引く。
放たれた炸裂弾は目標に着弾すると同時に小規模な爆発を起こし、目標を破砕する。
「ちょっと……威力が高すぎませんか?」
「非殺傷なので問題ありません」
「そ……そうなんですか?」
「はい。それでは複数の目標を展開させますので、訓練を再開しましょう」
「わかりました!」
その後ティアナは膝立ちでの射撃や立った状態での狙撃などを行い訓練を積んでいく。
数時間後には命中率は50m圏内であれば50%を超えた。
しかし、150m以上となると命中率はそれほど高くはない。
「やっぱり、あれだけ遠いと……」
「経験を重ねるしかありません」
その時、デルフィから通信が入る。
『はい』
『こちらの訓練は終了しました』
『了解。合流しましょう』
「デルフィ達の訓練が終わったようです。1度合流しましょう」
「はい」
私達は合流ポイントへと移動した。
「ス、スバル! どうしたの?」
そこには満身創痍で体中至る箇所に軽傷を負ったスバルの姿があった。
「し、死ぬかと思った……」
その表情に生気は感じられない。
「一体……どんな……」
「こちらが展開した攻撃を回避、またはシールドでの防御を行っていただきました」
「一方的だった……訓練と呼べるのは……最初の10分だけ……後は……」
スバルは呟きながら倒れ込んだ。
「スバル!」
「本日は終了です」
「了解」
「ちょ! ちょっと!」
スバルをその場に残し私達はトレーニングルームの外へ出た。
数日後、新たなデバイスにも慣れた2人の戦闘能力は最初と比べて大きく向上した。
そんなある日、見学ルームではやてとシグナムが私達が行っている訓練を見ていた。
私達は2人に休憩を告げ見学ルームに向かう。
「いかがいたしましたか?」
「流石にあれは……」
「訓練というか……拷問というか……」
「見ていたのですか?」
「まぁな。下手すれば大事になるのでは……」
「非殺傷モードでの訓練なので安全です」
「そういう問題や……まぁ……良いか」
「主……まぁ……仕方ないか」
2人は同時にため息を吐く。
「それより、2人の調子はどうや?」
「現在は新たなデバイスで戦闘訓練を行っています」
「戦力の増強に関しては問題ありません」
「新たなデバイス?」
「はい。以前頂いたストレージデバイスを解析し2人の戦闘スタイルを拡張させるサブウェポンとして支給しました」
「ようやるなぁ」
「そんなことよくできたな」
「簡単でした」
「そうか」
はやては小さく笑た。
「それではそろそろ訓練を再開しますので」
「そうか。あまり無茶させんといてな」
「了解です」
「まだ時間もあることやし、もう少し見学して行こか」
「そうですね」
私達は見学スペースの端にあるコンソールの前に移動する。
『お待たせいたしました』
私は2人のデバイスに通信を繋ぐ。
『次は何をやるんですか?』
『次は今までの訓練を応用した模擬戦を行っていただきます』
私は手元の端末を操作し複数の訓練用ガジェットを展開する。
『模擬戦って……』
『これ全部ですか?』
ガジェットの数を目の当たりにし2人は後ずさる。
『その通りです』
『スバルは近距離での殲滅戦を、ティアナには遠距離からの火力支援。および無線での状況報告を行っていただきます』
『いや……でもさすがにこの数は……』
『確かに個別の戦闘力ならば作戦達成は困難でしょう』
『ですが、お二人のレベルならば作戦遂行は可能だと判断します』
「私達……」
「二人なら……」
二人は顔を見合わせる。
『わかりました!』
『やります!』
『了解』
「2人ともやる気が出たみたいやな」
「これは楽しみですね」
はやてとシグナムの2人は小さく微笑む。
『それでは、作戦開始位置へ移動してください』
2人は頷き移動を開始した。
『準備はよろしいですか?』
「「はい!」」
私の無線に対し、2人が同時に返答する。
『開始します』
模擬戦が開始すると同時に展開したガジェットが起動する。
「行くよ!」
「うん!」
スバルがエネルギーフィールドを身に纏いガジェット部隊に向かい走り出す。
全てのガジェットがスバルを攻撃対象とみなしロックオンする。
それを確認したスバルは方向を変え、走り出す。
対するティアナは正反対の方向へ走り出す。
「ティアナはどこへ向かっているんや?」
「恐らく狙撃地点の確保だと思われます」
「なるほど……ガジェットがスバルに気を取られている間に移動しているわけやな」
「射程距離は長いですからね。利点を生かした戦い方ですね」
「ほほぉ……」
しばらく走ったティアナは朽ち果てたビルの屋上に到着するとスナイパーライフルを手に取る。
「狙撃地点はあそこかぁ」
「確かに、戦場全体が見渡せますからね」
「その分丸見えやがな……」
ティアナは屋上の柵を自身のデバイスで破壊すると腹這いになり、バイポッドを立て狙撃体制を整える。
『準備できたわ!』
『了解!』
スバルはその場で立ち止まるとデバイスを展開させ拳を構える。
「はぁあ!」
スバルが飛び出すと同時に複数のガジェットが射撃を開始する。
ガジェットから放たれたエネルギー弾はスバルが展開しているエネルギーフィールドにより防がれる。
しかし、ガジェットからは依然として射撃が続く。
その時、1機のガジェットが破壊される。
「何が起こったんや?」
「恐らくティアナによる遠距離狙撃でしょう」
「良い精度やな」
引き続き、2機目、3機目と魔力弾が命中し中破もしくは撃墜していく。
その頃にはスバルがガジェットを完全に捉える。
「そこだぁ!」
スバルの近距離攻撃により複数のガジェットが撃墜されていく。
しかし、その時スバルの背後に1機のガジェットが接近する。
「しまった!」
慌てて距離を取ろうとしているが、既にガジェットはスバルを捉えている。
しかし、次の瞬間そのガジェットが撃破される。
「ティア!」
「集中して! まだ来るわよ!」
「了解!」
スバルは体制を整え、別のガジェット部隊へ接近する。
「良いコンビやね」
「そうですね。これは予想以上ですね」
2人の動きを見て、はやてとシグナムは感心したようにうなずいている。
その後、数十分でガジェット部隊の半数を撃破した。
「想定より早いです。いいペースです」
「これは予想外やなぁ」
「そうですね」
「……せや……」
はやては手元の端末を操作し始める。
「何をしているのですか?」
「ちょっとな」
はやてが端末の操作を終えるとフィールド内に大型の反応を検知する。
「こ……これは!」
2人の目の前に大型のガジェットが姿を現す。
「主……いささか厳しいのでは?」
「まぁ、少しは厳しくするのもええやろ」
はやてが小さな笑みを浮かべるのと対照的にトレーニングルーム内の2人の表情は引きつっていた。
「このぉ!」
スバルが走り出し大型ガジェットへと攻撃を開始する。
スバルの拳はガジェットへと命中するがその装甲は厚く、まともなダメージを与えた様子はない。
「え? きゃぁ!」
巨大ガジェットはその巨体を震わしスバルを吹き飛ばす。
「スバル!」
「くっ!」
スバルは空中で態勢を整えようとするが、うまく行かず不格好な体制で着地する。
「スバル! 大丈夫?」
「あいてて……何とか大丈夫」
土煙が晴れると全身にエネルギーフィールドを発生させたスバルが立ちあがる。
「それにしても……」
「こんなのどうやって……」
「うーん……手も足も出ないって言ったところやね……」
「流石に厳しすぎたのでは? あの2人のデバイスでは破壊するには……」
「せやな……2人はどう思う?」
はやてがこちらに視線を向ける。
「2人の戦闘能力、および現在の武装ならば敵の殲滅は可能かと思われます」
「へぇ……」
はやてが小さく笑う。
「そこまで言うなら2人にアドバイスしてもらおうか」
「「了解」」
私達は2人に通信を繋ぐ。
『通信状態は良好ですか?』
『え?』
『はい、良好です』
私はティアナのデバイスとリンクする。
『敵大型ガジェットのスキャンが完了しました。これよりウィークポイントを転送します。レティクルを覗き込んでください』
『え?』
ティアナがレティクルを覗き込む息をのむ。
『目標を炸裂弾で狙撃してください』
『はい!』
ティアナは息を止め狙撃を開始した。
対するスバルはデルフィと通話を行っていた。
『こちらが行動、および攻撃タイミングについて指示を出します』
『わ、わかりました』
『『それでは、作戦を開始します』』
次の瞬間、敵大型ガジェットが攻撃動作として腕を振り上げる。
『攻撃を確認。右に回避してください』
『りょ、了解!』
スバルはその場から右に飛び出し、攻撃を回避する。
その時、私はティアナに指示を出す。
『今です、腕の関節部を狙撃してください』
「はい!」
ティアナが狙いをすまし、腕の関節部に炸裂弾を撃ち込む。
炸裂弾は関節部に着弾すると同時に激しく爆発する。
その爆発により、ガジェットがのけぞる。
「やった!」
『まだです』
炸裂弾の煙が晴れると、着弾部にひびが入った関節部があらわになる。
『今です。関節部に攻撃してください』
『は、はい!』
スバルが飛び出し、ガジェットに取りつく。
ガジェットは体を震わし、スバルを引きはがそうとする。
『耐えてください』
「そんなこと言ったって……」
スバルは必死に体を押し付け衝撃に耐える。
『脚部に狙撃』
『はい!』
ティアナは炸裂弾を再装填する。
しかし、再装填に時間がかかりすぎている。
「ティア! 早く!」
「分かってる!」
慌てながらではあるが、ティアナは炸裂弾を再装填すると、脚部を狙撃する。
脚部で起こった爆発により、ガジェットが体制を崩し倒れ込む。
『今です』
「はい!」
スバルは両手の拳を握りしめる。
「てりゃああ!!」
渾身の力を籠め亀裂に拳をねじり込む。
「ふっ!!」
そのまま力を籠めガジェットの腕部を引きちぎる。
「やった!」
スバルはガジェットから距離を取り肩で息をする。
『いいえ、まだです』
「え?」
腕部を失ったガジェットはオイルを撒き散らしながら再び立ち上がる。
「まだ動くなんて……」
『ダメージは与えられています』
『攻撃を続けてください』
その時、ガジェットが排熱を行うため、背後の吸気口を開いた。
『吸気口にダメージを与える事により内部よりガジェットを破壊することが可能だと思われます』
『吸気口内部に狙撃を行ってください』
「はい!」
ティアナは背後の吸気口を狙い炸裂弾を発射する。
しかし、炸裂弾が着弾する寸前に吸気口の扉が塞がる。
「なんで!」
「くっ!」
スバルは走り出すとガジェットに取りつく。
「スバル!」
「ぐぅうううう!!」
スバルは吸気口の扉を掴むを無理やりこじ開ける。
「ティア!!」
「わかった!」
ティアナは一瞬息を止め吸気口を狙う。
放たれた炸裂弾は吸気口に吸い込まれるように着弾する。
その直後、ガジェットが内部から爆発を起こし機能停止する。
スバルは爆発を繰り返すガジェットから飛び降り爆発を見守る。
「はぁ……はぁ……勝った……の?」
『目標沈黙。作戦終了です。おめでとうございます』
「やった!!」
二人は歓喜の声を上げる。
「ほぉ、やるやないか」
「意外ですね」
はやてとシグナムは小さく笑う。
私達は再びトレーニングルームへと移動した。
「お疲れさまでした」
「お疲れさまです!」
スバルはその場で一礼する。
ティアナは狙撃ポイントで気の疲れからかため息を吐く。
「それでは今回の作戦について評価します」
「え?」
「作戦所要時間C、周辺への被害は軽微です。消耗戦力甚大。総合評価C+です」
「えっと……どういうことですか?」
「作戦所要時間につきましては短縮の余地があります」
「は、はい」
「スバルにつきましては、突撃など無茶をする傾向があります。もう少し身の安全を重視してください」
「ぜ……善処します」
「続きましてティアナです」
「は、はい!」
ティアナは狙撃地点から無線を繋ぐ。
「狙撃の精度と攻撃タイミングを向上させましょう」
「はい……」
「それと、狙撃に際しては定点狙撃は反撃の可能性もあるので定期的に位置を変更することをお勧めします」
「反撃……ですか?」
「はい。狙撃が相手に知られてしまえばこのように攻撃される恐れがあります」
私はスナイパーを装備すると、その場でティアナを狙撃する。
その瞬間デルフィがゼロシフトでティアナの傍らに移動すると、ウアスロッドを眼前に突き刺しスナイパーの弾丸を貫く。
「ひぅ!」
「このようにカウンタースナイプの恐れがあります。注意してください」
「は、はい……」
ティアナはその場で息をのみ震えだす。
「それでは、今回の訓練を終了します」
「お疲れさまでした」
私達はトレーニングルームを後にしようとする。
「待ってください!」
スバルが引き留める。
「なんでしょう?」
「その、さっきのは、瞬間移動みたいなのは一体どうやったんですか?」
「ゼロシフトの事ですか?」
「多分そうです」
「ゼロシフトとは背後の空間を圧縮し復元する際の反動を利用し亜光速で移動を行う方法です」
「え? え?」
スバルは理解できずに首をかしげる。
「簡単に説明すると、背後で衝撃を発生させ反動を利用し高速で移動する方法です」
「なるほど……」
スバルは頷く。
「本日はこれで終了です。お疲れさまでした」
「はい!」
「それでは失礼します」
私達はトレーニングルームを後にした。
このまま無事に訓練が終わってくれるとありがたいね。