翌日
私達はヘリポートに集合した。
「さて、全員準備はええな!」
「問題ないです!」
全員が頷くと同時に、ヘリのエンジンが始動しメインローターが回転を開始する。
「じゃあ、出発や!」
はやてが指示を出すと全員がヘリに乗り込む。
それと同時にメインローターは回転数を上げ、ヘリが飛び立つ。
ヘリが飛び立ってから十数分後。
『もう少しで目標地点や』
ヘリの騒音により会話が出来ないためはやてが全員に通信を繋ぐ。
それと同時に、私がホログラムを投影する。
『まずは着地地点へ到着後入り口周辺を制圧。その後──』
『警告、攻撃反応。衝撃に備えてください』
『なんやて!』
次の瞬間ヘリ全体に衝撃が走る。
『何が起こったんや!』
『周辺に複数のガジェットを確認。攻撃を受けています』
ヘリの周辺に複数のガジェットが急接近し魔法弾を斉射する。
攻撃によりヘリが被弾し、エンジン出力が低下する。
『このままやと不味い!』
『我々が出撃し外部のガジェットを破壊します』
『出撃許可を』
はやてはヘリの揺れに耐えるように体を支えながら叫ぶ。
『了解や! 二人とも! 出撃!』
ガジェットの砲撃で扉が破損すると同時に私達はヘリの外部へと飛び出す。
それを確認したガジェットがこちらに一斉射撃を行う。
しかし、ガジェットが発射する魔力弾の威力は低く、シールドを貫くことはなかった。
「ファランクス展開」
マルチウェポンシステムからサブウェポンファランクスを周囲にばらまく。
ファランクスの弾幕によってヘリ周辺のガジェットが被弾し、撃墜する。
『周辺のガジェットを掃討しました』
『良し!』
『ヘリのスキャン結果をお伝えします。甚大な損害を受けています。このままでは目標地点までの飛行は不可能です。不時着を提案します』
『くっ……しゃあない……全員不時着に備えるんや! 2人は着地点の確保を!』
『了解』
ヘリの損傷状況を計算し、最適な着地ポイントへと移動する。
そこには既に複数のガジェットが占拠していたが、デルフィの戌笛により掃討され、着地点の確保に成功する。
『着地点確保。ガイドビーコンを展開します』
『了解や! 着地点へ移動するで!』
数分後、黒煙を撒き散らしながらヘリが荒野の着地点へと不時着する。
『さぁ! 皆降りるんや』
はやての指示に従い全員がヘリから降車する。
「現在地は?」
「目標地点より5km南東の地点です」
「ここからは徒歩やな……しゃあない。全員周囲に警戒しつつ移動を開始するで」
「了解」
全員に指示を出した後、はやてはパイロットへと近寄る。
「作戦終了までに修理しておいてくれるか?」
「了解」
こうして私達はヘリパイロットをその場に残し目標地点へと移動を開始した。
「ようやく到着や……」
目標の研究施設は、荒野の一角に隠匿されていた
「こんな場所にかなり大きな規模の施設だね」
「さて、潜入開始や」
はやての指示に従い、私達は施設内部へと歩みを進める。
施設内部は複雑な構造になっており散策に時間がかかる。
「スキャン完了。マップデータをデバイスに転送します」
私はスキャンしたデータをはやてに転送する。
「結構不気味だね」
「せやね……それにしても無駄に広いところやな」
「私は向こうを見てくるよ」
なのはがレイジングハートを構えて隊列を離れようとする。
「確かに分散した方が効率的やな……ならフェイトちゃんと──」
「私一人で良いよ」
「敵の本拠地や、一人は危険すぎるで」
「私は大丈夫。それよりこの先の大広間を散策して欲しいな」
はやてが本型のデバイスを開きマップデータを確認する。
「せやな……ならほかの所の探索はなのはちゃんに任せるで」
「了解」
なのははそう言うと別行動を開始した。
「さて、先へ進むで」
私達は扉を開け大広間へと移動した。
「ここは……」
「大広間……というより巨大な訓練施設?」
大広間だと思われた場所は訓練施設の様な開けた空間が広がっていた。
「一体ここは何の施設なんや?」
「研究施設? でも……目標の姿もないし……」
その時、周辺にメタトロン反応が急増する。
「警告します。周囲にメタトロン反応増大」
「ETR反応確認。ガジェット部隊だと思われます」
「なんやと!」
壁の一部が稼働しそこから大量のガジェットが放出される。
それにより、内部のAMF濃度が上昇する。
「くっ! 嵌められた!」
周囲を取り囲んだガジェットが一斉に攻撃を開始する。
「全員防御態勢!」
それに伴い、瞬時にユニゾンしたはやてが全体を覆うようにドーム型のシールドを展開する
複数回エネルギー弾が命中するだけでドーム型のシールドにひびが入る。
「くっ!」
「はやて!」
シールドに亀裂が入りはやてが苦悶の表情を浮かべる。
「なんちゅう威力や……」
「データ解析終了。ガジェットにメタトロンが組み込まれている為、威力や性能がアップグレードされてます」
「なんてことや……」
「迎撃します」
私達はドーム型のシールドから出るとガジェットに攻撃を介する。
「ビームランス発射」
私は複数のガジェットに目標を定めビームランスを発射する。
発射されたビームランスは数機のガジェットを貫通し撃墜するが、多くのガジェットは高速回避行動を行う。
それにより、予定よりも撃墜数が少ない。
「避けたやと……」
「恐らくですが攻撃よりも回避を重点的に行うようにプログラムされているようです」
「厄介やな……」
「こうなるとなのはが心配だ……」
「大丈夫やと思うけど……連絡が取れんのや……」
どうやら、AMFの影響で通信ができないようだ。
「このままだとジリ貧や! ガジェットの数を減らしながら撤退や!」
「了解!」
はやての指示に従い全員が攻撃態勢を整える。
「はい!」
フォアードとフェイトがはやてが展開したドーム型のシールドから飛び出すとガジェットとの戦闘を開始した。
ガジェットとの戦闘が開始してから10分以上が経過する。
既にガジェットの撃墜数は100を超えているが追加されるガジェットの数は衰えることがない。
「くっ……はぁ……はぁ……」
時間経過と共にAMF濃度が上昇しこちらの戦力が低下していく。
「く……一体……どれだけいるんや……状況は?」
はやてが全員に状況報告を促す。
「我々は問題ありません」
「私達も何とか大丈夫です!」
スバルがティアナと背中合わせになりながら報告する。
「フェイトちゃんは?」
「私は大丈夫、だけど……」
キャロが膝を着き、エリオとフェイトが庇うように立っていた。
このような閉所では召喚魔法は効果的では無い為攻撃手段が乏しいのも原因だろう。
「流石に……これは厳しいか……どうにかならんか?」
「このような閉所ではバースト兵器を使用しては全員に被害が及びます」
「外壁を破壊できんか?」
「現状で外壁を破壊した場合施設全体へのダメージが及ぶ危険性があります」
「打つ手なし……やな……撤退しようにも……これじゃあ……」
ガジェットは回避重視で行動しており、AMFによる全体の消耗を狙っていると推測される。
ガジェットの数を減らそうにも爆発系や広範囲攻撃でははやて達に被害が出てしまう。
「万事休す……か……」
はやてが呟いたその時。
「聞こえる? はやてちゃん?」
「なのはちゃんか!」
ノイズ交じりだがなのはから通信が入る。
「そっちは無事なんか?」
「こっちは大丈夫。状況は分かっているよ」
「どういう事や?」
「今私はモニタールームに居るから」
「そうなんか」
「うん。こっちで調べたところ逃げ込めそうな場所を見つけたよ」
「本当か!」
「うん。今データを送るよ」
データが転送されてきたようではやてがデバイスを開く。
「ここなら多分安全だよ」
「了解や!」
「まずははやてちゃんが撤退して」
「え?」
「今からその場所に行くよ。そこで合流しよう」
なのははそう言うと通信を切った。
「はやて、その場所は安全なの?」
「なのはちゃんはそう言っとるし、今から向かうらしいで」
「うん」
はやては一度全体を見回す。
「まずは、キャロとエリオをその場所へ撤退させるで! それ以外の全員で撤退の援護や!」
「了解!」
エリオがキャロに肩を貸し立ち上がる。
「2人とも合図したら全力で撤退して。なのはがそこに居るから」
フェイトの指示に2人は頷く。
「じゃあ、作戦開始や!」
私はガジェット部隊にゼロシフトで急接近し、部隊を分断する。
分断された部隊にデルフィが急接近し、部隊をさらに分断する。
分断された部隊をフェイトとスバルが強襲する。
はやてとティアナが遠距離から攻撃を行い、その隙に2人が大広間から走りながら撤退する。
撤退した2人はなのはが指定したポイントへとたどり着き扉を開き中へと飛び込んだ。
部屋の中は静まり返っており、明かりが付いておらず闇が広がっていた。
2人が部屋の中央へ歩みを進めると突如扉が閉まり完全な暗闇が支配する。
突然の事に警戒する2人を取り囲むように、突如として複数の赤い光が点灯する。
その光はガジェットのメインカメラの光だった。
突然の事に驚きながらもキャロを守るようにエリオは前に出る。
「あれ? おかしいな……はやてちゃんが来ると思ったんだけどなぁ……」
聞き覚えのある声が暗闇から木霊する。
その声を聴いて2人は安堵の表情を浮かべる。
赤い光が割れ、声の主が現れる。
「まぁ……仕方ないか……」
赤い光に照らされ、声の主のシルエットがはっきりと映し出される。
「悪く思わないでね」
声の主が手を上げ、そして手を振り下ろした。
「ETR反応現象。残り半分程です」
「くっ……手こずらせおって……」
ガジェットの半数を撃破し、AMF濃度も低下し始めるが、想定以上の時間が経過してしまった。
「二人は……大丈夫かな?」
「なのはちゃんと合流しているはずやから大丈夫やと思うが……心配?」
「まぁ……ね。あれ以来なのはと連絡が取れないし……それに嫌な予感もする」
フェイトの表情が少し曇る。
「よし、残りは私達で相手するで。フェイトちゃんはなのはちゃんが指定したポイントへ向かってくれへん?」
「はやて……良いの?」
「この数なら問題ない。せやろ?」
はやてがこちらに視線を向ける。
「はい」
「問題はありません」
「そう言う事や。ここは任せて先に行くんや」
「うん。ありがとう、はやて」
フェイトは踵を返すと隊列を離れる。
「一度このセリフ行ってみたかったんや」
「あはは……」
スバルとティアナがはやてに視線を向け苦笑いをする。
「さて、さっさと片付けるで!」
私達は残敵の掃討を開始した。
隊列を離れたフェイトは合流ポイントまで走り出す。
「ここか」
指定されたポイントの扉を開ける。
「え……」
フェイトの眼前に広がっていた光景は予想を超え理解しがたいものだった。
部屋の中心には多数のガジェットに包囲され折り重なるように倒れ込んでいるキャロとエリオの姿があった。
「あぁああぁぁぁあああぁ!!」
半狂乱となったフェイトはバルディッシュを上段に構えると飛び出し、2人の周囲を飛行するガジェットに切り掛かる。
「エリオ! キャロ!」
倒れている2人に駆け寄り首筋に手を当てる。
「良かった……まだ脈はある……」
フェイトは2人を構うように立ちあがると周囲を見据える。
「数は……」
多数のガジェットに包囲されておりAMF濃度も高位を示している。
「このままじゃ……何とかしないと」
フェイトは通信を繋ごうとするがAMF濃度が高すぎる為通信能力に影響が出ている。
「くっ……」
フェイトは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべバルディッシュを握りしめる。
「近寄るなぁ!」
バルディッシュを凪ぎ、周囲のガジェットを迎撃する。
しかしAMF下においての行動は負担が大きく次第にフェイトにも疲労の色が見え始める。
「はぁ……はぁ……大丈夫……大丈夫だから! きっとみんなが……なのはが助けに来てくれるから!」
フェイトは倒れている2人と自信を励ますようにつぶやき続ける。
その時、部屋に足音が木霊する。
「誰!」
フェイトは足音のする方へとバルディッシュを構える。
「な……なのは……」
フェイトは安堵の表情を浮かべる
だが、同時にある疑念が頭をよぎる。
「なのは、エリオとキャロが……急いで撤退し──」
「次こそはやてちゃんだと思ったんだけど……まぁいいか」
「なのは……何を言って……」
なのはが手を掲げると包囲していたガジェットが散開する。
「なのは……まさか!」
「2人が来るのは予想外だったよ」
フェイトはバルディッシュをなのはに突き付ける。
「まさか! 裏切ったの! どうして!」
「最初に私を裏切ったのは管理局とはやてちゃんだよ」
「どういうこと……」
「今の管理局は腐敗している。複数の次元に対して見て見ぬふりや黙認、汚職……公式と言いつつ危険なロストロギアの売買。個々の能力を抑制し反乱を抑えるためのリミッター。そして、私は何度も警告したにもかからず寄りにもよってあの2人を!!」
なのはは激高しその体から魔力があふれ出す。
「まさか……リミッターが……」
「ねぇ……フェイトちゃん」
「な……なに?」
「そんなに怯えないでよ」
なのはが小さく微笑むとフェイトにより添うように抱き着く。
「私と一緒に管理局を作り直さない?」
「管理局を……何を言って……」
「私達は今この腐った管理局を作り直すため! 新しい管理局を作るための準備を進めているの!」
まるで演説するように大手を振るうなのはの動きに合わせガジェットも動く。
「全ての時空を次元を管理し! 魔法を! 与えられた才能を! 運命を! その力を正しい道に使う! その為に私達はクーデターを始めるの!」
「く……クーデターを……そんなこと……ありえない……」
嬉々とするなのはに比例するようにフェイトは苦悶の表情を浮かべる。
「安心してよ。軍部はこちらが掌握しているし戦力もある。クーデターはもうすでに成功したようなものだから」
「一つだけ聞かせて……」
「なにかな?」
「クーデターを……仮にクーデターを成功させたとして……その後は?」
「そんなの決まってるよ! 他の時空や次元に進出して……いずれは全ての世界を支配するの!」
なのはがその場で高笑いをする。
その表情には赤いエネルギーラインが走っている。
「な……なのは……」
「ねぇ、フェイトちゃん。1つ提案があるんだ」
「な……なに?」
なのはが依然と同じ表情でフェイトに微笑む。
「私と一緒に行こうよ」
「え?」
「私と一緒に新しい管理局を作ろう」
なのはがフェイトに手を差し出す。
「ねぇ……なのは……」
「なにかな?」
「エリオとキャロはどうして……」
「あの2人は大した戦力になりそうもなかったし。仕方ないよ」
「そんな……そんなことで……」
「革命には犠牲が付き物だよ。でもフェイトちゃんは別だよ。一緒に行こうよフェイトちゃんの事は好きだから」
「ふざけ……ないで……」
「え?」
フェイトの声が次第に大きくなりやがては怒声に代わる。
「ふざけないで! そんなことで……そんなことで2人を!」
「フェイトちゃん……」
「どうして! どうして犠牲なんて! 考え直して!」
フェイトは立ち上がりバルディッシュを構える。
「なのは! 私は管理局員として貴女を逮捕し──」
その時、銃声が響きフェイトはその場に膝を着く。
「え?」
「残念だよ……実に残念だ……」
なのはが握りしめた銃の銃口から煙が上がる。
「な……なの……」
「意外と質量兵器も役に立つね。野蛮なものだと思ってたけど」
左足から血を流すフェイトをなのはが見下す。
「そろそろ時間かな……」
なのはが銃口をフェイトの頭部を狙う。
「な……なのは!」
「さようなら。フェイトちゃん」
銃声が木霊し、なのはが放った銃弾はフェイトの右目を貫通し床に着弾した。
その数瞬後、フェイトはその場に倒れ、血だまりが広がる。
「……」
その光景を一瞥したなのはが踵を返し暗闇へと消えていった。
最近忙しくて…更新はかなり遅れるでしょう…