敵ガジェット部隊を殲滅後、私達はなのはが指定した合流ポイントへと移動を開始した。
「えらい時間がかかってもうたな」
「ガジェットの機能向上と閉所という条件、回避行動に重点が置かれていたのが原因でしょう」
「敵さんも強くなっとるっていう事やな……対策せなあかんな」
「そうですね」
「それよりエリオ達は大丈夫でしょうか?」
スバルが心配そうな表情を浮かべる。
「なのはちゃんと合流しているはずやし、フェイトちゃんも居るはずやし大丈夫やろ。もう少しで合流できるで」
「急ぎましょう」
「そやな」
はやて達が走り出し私達はその速度に合わせ飛行する。
数分後、合流地点に到着する。
はやてが扉を開ける。
「お待たせやね。思った以上に時間が……え?」
「なに……これ……」
部屋の中心には折り重なるように倒れ込むキャロとエリオ。
そして、2人を庇うように倒れ込むフェイトの姿があった。
「どういう事や? 一体……一体何が起こってるんや!」
はやてはパニック状態になりながら3人に駆け寄る。
室内には3人のほかに動体反応などはないがAMFの残渣が残されている。
「AMF残渣を確認。恐らくガジェットが先程まで存在していたものと思われます」
「そんな……とにかく応急処置……を……」
フェイトに駆け寄ったはやてが言葉を詰まらせ悲鳴を上げる。
フェイトは右目と左足を銃弾の様なもので打ち抜かれていた。
その悲鳴を聞きスバルとティアナが駆け寄る。
「どうしたんですか!」
「こ……これは……」
「こんな……こんな事って……なぁ! 3人は大丈夫なんか!」
はやてが私に縋りつく。
「診断終了。損傷部位確認。まだ息はあります」
「早く! 早く応急処置を!」
「了解」
「応急処置を開始します」
デルフィがエリオとキャロの処置を開始する。
私はフェイトの傍らにしゃがみ込み首筋に医療用ナノマシンを注射する。
しかしそれだけでは右目を貫通した銃創と脳の損傷は防げない。
フェイトの頭部を包むように医療用ジェルシートを展開する。
「これは?」
「ナノマシンを医療用ジェルシートに含ませてあります。これにより損傷した脳を保護します」
「助かるんか?」
「これはあくまでも応急処置です。医療施設で治療を行わない限り危険です」
「そんな……」
スバルがエリオを、ティアナキャロを抱え。私とデルフィでフェイトを空中に固定し移送を開始する。
「そう言えば……なのはちゃんは……どこや?」
「周辺に反応はありません」
「無事やと良えんやけど……」
「なのはさんなら大丈夫ですよ。今はとにかく」
「せやね……さぁ! 行で! 急いで本部に戻るんや!」
私達は重傷者を確保し、撤退を開始した。
研究施設を出ると同時にはやてがヘリパイロットへ通信を繋ぐ。
「ダメや……繋がらない……」
今度は本部に通信を繋ぐ。
「大変なんや! フェイトちゃんが! 負傷者が多数いるんや! 急いで迎えを!」
『……じ! 申し訳……しゅう……』
通信は不安定でありアインスの声にノイズが交じる。
「どうしたんや!」
『六課本部に敵襲が!』
「なんやって!」
はやての表情が凍り付く。
『どうやら施設整備の業者が犯人のようで。各地の管理局事務所でも同様の事件が』
「そんな……まさか……クーデター……」
『敵はリミッターがなされておらずガジェットも大量に有しています!』
「皆は! 皆は無事なんか?」
『今からロストロギアの保管室へ全員で──』
無線越しに爆破音が響き無線が途切れる。
「アインス! アインス! くそっ!」
「どうしたんですか?」
「六課本部が敵襲を受けたみたいや……恐らくほかの場所も……」
「そんな……」
次の瞬間周辺に大量のETR反応が発生する。
「警告します。敵性反応多数を確認」
「なんやて!」
「猛攻きます」
直後、研究施設の屋根を突き破り大量のガジェットが私達を取り囲むように散開する。
「なんて……数なんや……」
「空が埋め尽くされている……」
「総数は優に1000を超えています」
「こんな時に……」
はやては負傷者を守るように立ちはだかり、それに倣うようにスバル達も陣形を組む。
だが、ガジェットは攻撃する訳ではなく、こちらを静観している。
「攻撃してこない?」
「どういう事や……」
その時、複数のガジェットからホログラム映像が投影される。
その映像には1人の男性が映し出されていた。
「あの人は!」
「ジェイル・スカリエッティ……奴がこの騒動の首謀者か!」
はやては拳を握りしめる。
『初めましてと言っておこうか、六課機動部隊、および管理局の諸君』
スカリエッティは楽しげに語る。
「一体……一体何が目的なんや! クーデターを起こしたんか?」
『その通りさ。そしてクーデターは既に成功した』
「なんやて……」
『そうそう。今回のクーデターに大きく尽力してくれた人物を紹介しよう。この放送は各地で流れているからな』
スカリエッティは一礼しフレームアウトする。
それと入れ替わるように1人の女性が姿を現す。
「え?」
「そんな……どういう……」
「どうして! どうしてそこにいるんや!! なのはちゃん!」
はやての叫び声が木霊するが、ホログラム映像のなのはは表情を変えない。
『私は、今までの管理局は腐敗していると考えています』
「なんやと……」
なのはは演説を続ける。
『今までの管理局はリミッターによる力の抑制、ロストロギアの取引を行うことで一部の人間が莫大な富を得る……そして多次元への干渉はしておきながら、危険と思われた次元へは干渉すらせず、放置する始末……』
はのはが首を横に振り、拳を握りしめる。
『ここまで腐り、堕落した管理局は1度ゼロに戻す必要があります』
「何を言っているんや……」
『そう。全てをゼロに……すべてを1度リセットする必要があります!』
『全てをリセットし新たな管理局がすべての次元や時空を管理する完璧な組織になる必要があります!』
なのはの演説に拍手が混ざる。
はやてはそのホログラム映像を睨みつけている。
『もし、私と同じ意見の人が居るなら私達の下に来てほしいと思います。私達は皆を受け入れる準備があります』
ホログラム上のなのはは慈愛に満ちた表情で微笑む。
『さぁ……皆で新たな管理局を作り、世界を作り替えましょう!!』
歓声が上がりなのはは陶酔した笑みを浮かべる。
「狂っとるで……なのはちゃん……」
はやては俯き唇を噛む。
ホログラム映像にスカリエッティが再び映る。
『まずは手始めに我々を高みへと導いてくれるエネルギーがある時空を手中に収めようと思う』
スカリエッティがそう言うと時空の座標が表示される。
「なんやあの座標……」
「あれは、我々が居た時空の座標です」
「なんやて!」
「恐らく目標のエネルギーは──」
『我々を高みへ導いてくれるモノ! その名はメタトロンだ!!』
「メタ……トロン……」
『既に一部の部隊がメタトロンを回収する為に時空を超えた』
ホログラム映像には複数の艦隊が時空跳躍をする映像が映し出される。
『さぁ! 新たな時代の幕開けだ! だが、その前に……』
周囲のガジェットに動きがみられる。
『邪魔者には退場してもらう必要があるな』
そう言うとホログラム映像は消え、複数のガジェットがこちらに襲い掛かる。
光の無い宇宙空間を1機の探査船。
リユニオンが航行している。
「2人の反応が消えてから時間が経過したが……連絡はないな」
トムは端末を操作しながら呟く。
「そうね……まぁ、あと数日は待ってみましょう」
ハーマイオニーは資料を片付けると背筋を伸ばす。
「さて、少し休むとしよう。スコーンでも焼くか」
「あら良いわね」
トムはキッチンスペースへ移動するとスコーンをオーブンに入れる。
その時、センサーが反応を示す。
「どうした?」
トムはティーポットを片手にハーマイオニーに近寄る。
「時空の歪みを計測したわ」
「時空の歪み? 2人か?」
「分からないわ……どんどん大きくなっているわ」
「おいおい、この大きさは……」
「時空の扉が開くわ!」
次の瞬間、センサーの針が降り切れ、ゲートが開く。
「おいおいおい! まずいんじゃないか!」
「巨大な物体が出てくるわ! あれは……戦艦?」
次の瞬間、リユニオンを取り囲むように2機の戦艦が現れる。
「挟まれた!」
「どうする? この船には戦艦に勝てるほどの武器は……」
「あれを使うにも時間が……」
その時、戦艦から通信が入る。
『こちらは新生時空管理局だ。そちらの船舶は我々が占拠する』
「新生時空管理局?」
「何を言っているんだ?」
『これからそちらに管理局員を送る。無駄な抵抗はするな』
「え?」
次の瞬間、2人の前に5人の時空管理局員が転送される。
「これは……」
「人体の転送か。危ないことするな」
「動くな、両手を上げろ」
1人の局員がデバイスを2人に突き付ける。
「ここは大人しく従った方が良いわね」
「あぁ、そうだな」
2人は手を上げ、その手がバインドで拘束される。
「艦内を探索しろ。まだ乗組員がいるかもしれない」
「安心していい。乗組員は僕達だけさ」
「黙っていろ。いいから探索しろ」
「了解」
2人がデッキを抜け艦内の探索に移行した。
『これは不味いわね』
『あぁ、そうだな。このままじゃスコーンが焦げる』
『そうじゃないわよ。まぁとにかく何とかしないと……』
『そうだな』
数分後、探索を終えたのか1人が戻ってくる。
「報告します。貨物エリアと思われる場所で大量のメタトロンを発見しました」
「よし。急ぎ回収して本部へ移送するんだ」
「了解」
そう言うと、管理局員がメタトロンの強奪を開始した。
『不味いな。あれだけの量を持ち出されると……』
『えぇ、何とかしないと』
トムがその場から少し動こうとする。
「動くな!」
残った2人の管理局員がデバイスを突き付ける。
「すまない。だがこうしているだけでは少し疲れてしまってね」
「良いから動くな。動かなければ危害は加えない」
「そうかい」
数分後、メタトロンを回収した3人の局員が回収しに来た小型船に積み込むと時空の歪みへと消えていった。
『持ち出されてしまったね』
『不味いわ。管理局員と言っていたし2人が調査に行った時空かも知れないわ』
『またあの2人は厄介ごとに巻き込まれたのか……』
『相変わらずね』
トムは残りの2人を見据える。
『逃げ出すなら今がチャンスだな』
『そうね……やるしかないわね』
ハーマイオニーは深呼吸をする。
「ねぇ。一ついいかしら?」
「なんだ?」
管理局員は詰まらなそうに答える。
「この拘束に使っている魔法だけど珍しいわね。一種のカギの様なものかしら?」
「そんなことを知ってどうする? 第一この時空では魔法使いは居ないと聞いているぞ」
「だから興味深いのよ」
「ふん」
管理局員はハーマイオニーから顔を背ける。
「そうね。鍵なら……」
ハーマイオニーは一度咳払いをする。
「アロホモーラ」
次の瞬間、バインドが解れる様に解除される。
「なっ!」
「ね?」
「貴様! 何をした!」
管理局員はハーマイオニーにデバイスを突き付ける。
その時、キッチンルームからオーブンのベルが鳴る。
「なんだ!」
管理局員はキッチンルームの方を振り返る。
「まぁ、その辺にしておいた方が良い」
次の瞬間、トムはバインドを引きちぎり管理局員の首筋を手刀で殴り気絶させる。
「全く……無理するな、君は」
「そっちこそ。引き千切れるなら最初からそうすればいいのに」
「相手の出方を見たのさ」
「そう」
「貴様等!!」
部屋の隅に居た管理局員がトムにデバイスを向ける。
「不味い」
デバイスに魔力が貯まり、魔法弾が発射される。
しかし、発射された魔法弾は赤色の閃光によって打ち消される。
「なに?」
「気を悪くしないでね」
ハーマイオニーには杖を軽く振ると赤い閃光が管理局員に直撃し、気を失わせる。
「油断しすぎよ」
「あのくらいなら問題なかったんだがね」
「そう。それより現状をどうにかしないと……」
「大丈夫だ、スコーンは少し焦げただけさ」
「そう。それはいい報告ね」
リユニオンは依然として2隻の戦艦に狙われている。
「とにかく逃げるしかないわね」
「逃げるってどこへだ? 軍にこの事を知られれば戦争になるぞ。まぁ虐殺かも知れないが」
「それはどっちの心配かは聞かないでおくわ。それを防ぐ為にも2人と合流しましょう」
「おいおい、合流って……まさかあの時空の歪みに飛び込むのか?」
「それしか無いわよ」
「はぁ……全く君は無謀だ……だがしょうがない」
「そういうことよ。とにかくその2人を脱出艇に乗せて外へ放り出しておいて」
「はいはい」
トムは2人を脱出艇に乗せる。
「さて、でもどうやって戦艦に狙われた状況から逃げるんだ?」
「まぁ、何とかなるわよ。揺れるから掴まってなさい」
「君の運転か……とりあえずスコーンでも食べるかい?」
「いただくわ」
ハーマイオニーはスコーンを片手に運転席へ移動する。
「さぁ! 行くわよ!」
「了解」
次の瞬間、リユニオンの全エンジンが最高出力で始動する。
『警告する! 変な動きはするな!』
戦艦から警告が発生さえる。
「そんな話聞いてられないわよ!」
次の瞬間、リユニオンはその場で後部のメインエンジンと正面の補助エンジンを逆方向に噴射し宙がえりを行う。
『逃すな! 撃て!』
『しかし!』
戦艦から照準が向けられる。
「狙われているぞ!」
「2隻はこの船を挟んでいるのよ。同士討ちを恐れてそう簡単には撃ってこないわよ」
宙返りを終えたリユニオンはそのままエンジンを最大出力で時空の歪みへ進路を進める。
それと同時に脱出艇を射出する。
「最後に聞くが、本当にあの中に飛び込むのか?」
「もちろんよ」
「はぁ……とにかく2人に会えると良いんだが……」
「何とかなるわ」
「そうだな」
こうしてリユニオンは最高速度で時空の歪みに突入した。