魔法少女ZOË   作:サーフ

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やってみせろよ! ジェフティ!


聖王のゆりかご

   パーティー会場へと移動したハーマイオニーとトムは周囲を見回す。

 

「良い会場だな」

 

「そうね。軍施設とは思えないわね」

 

「そりゃそうだろう。今回は軍関係者以外も大勢いるようだしな」

 

 周囲には軍服のほかに、燕尾服やパーティードレスに身を包んだ来賓客が大勢いた。

 

「これだけ大きなパーティー……よほどの重大発表でもあるのかしら?」

 

「さぁ?」

 

 しばらくすると進行役と思われる男性が壇上に上がる。

 

「皆様大変長らくお待たせいたしました。これより新生時空管理局発足記念パーティーを開始します」

 

 周囲から拍手と歓声が上がる。

 

「全く……大層な名前だな」

 

「本当ね」

 

 2人は呆れながら壇上に目線を向ける。

 

 すると壇上に軍服に身を包んだ将校と思われる男性が現れ演説を始める。

 

 しかし2人は興味なさそうにそれを聞き流す。

 

「全く……長い演説ね」

 

「飽きてきたよ」

 

 その後演説は数十分以上続いた。

 

 終わった頃に2人はため息を吐く。

 

「やっとか……」

 

「こういうのを無駄な時間って言うのよね」

 

「続きましては今回のメインイベントです!」

 

 進行役がそう言うと会場が騒めき立つ。

 

「何かしら?」

 

「さぁ?」

 

 進行役が手を上げると、照明が落ち、壇上にスクリーンが映し出される。

 

 そして、白衣の男性が壇上へと上がる。

 

「あの男は……」

 

「確か写真で見たわね……名前は確か……」

 

「ジェイル・スカリエッティです!」

 

 進行役がそう言うと、スカリエッティは一礼する。

 

「さて、今回私が紹介するのはこちらだ」

 

 そう言うとスクリーンに宇宙空間に浮遊する1隻の戦艦が映し出される。

 

「これは聖王のゆりかごと呼ばれるロストロギアだ」

 

 会場が騒めき立つ。

 

「聖王のゆりかごね……」

 

「大げさな名だな」

 

「これは旧時空管理局が封印していたものだが、今回の作戦において極めて重要なカギを握るという事で決戦兵器として使用する」

 

 スカリエッティは端末を操作すると詳細なデータがスクリーンに表示される。

 

「聖王のゆりかごは現在軌道上に存在しており、2つの月から魔力と、そこに建設したエネルギー供給施設により強大な力を貯めている。そしてゆりかご本体にも私はメタトロン技術を使い改良を重ねてある」

 

「全く……厄介なことを……」

 

 トムはため息を吐く。

 

「メタトロンの空間圧縮能力とゆりかごの次元跳躍攻撃を組み合わせることで、この次元に居ながら特定の次元そのものを圧縮させることが可能となった」

 

「なんですって!」

 

 ハーマイオニーが驚愕するが、周囲の騒めきによってそれはかき消される。

 

「どういうことかお分かりになっていない方の為に説明しよう。圧縮された次元は、その時点でその文明がすべて圧殺され消滅することとなる。それがたとえ広域次元であろうと、圧縮の反動の開放によるエネルギーで生き残る方法はない」

 

「とんでもない兵器を作り出してくれたものだ……遠隔起動可能なアーマーンとでもいったところか」

 

「これは、あってはならない技術よ……」

 

「あぁ、もちろんだ」

 

 スカリエッティはテンションを高め身振りが大きくなる。

 

「この技術により! 我々は全ての次元を支配したも同然だ!」

 

 会場の熱狂がさらに高まる。

 

「さて……質問等がある方はいるかな?」

 

 スカリエッティが問いかけるとハーマイオニーが手を上げる。

 

「おい……」

 

「そこのお嬢さん」

 

「いくつか質問良いかしら」

 

「構わんよ」

 

「ではまず1つ。聖王のゆりかご……とてもすごい兵器だと思うわ。でもそのエネルギーとなっているメタトロンについてはどこまで理解しているのかしら?」

 

「まるで君は私より多くの事を知っていると言わんばかりの言い方だな」

 

「出資するからには危険性について知っておきたい。それだけよ」

 

「そうか。まぁいい……無論多くを把握しているさ。もし詳しく知りたちと言うならば、パーティーの後にでも詳しくお話ししてあげよう」

 

「この場では言えないということかい?」

 

「企業秘密と言うやつさ。後で答えよう」

 

「そう。それは助かるわね」

 

 2人の間に不穏な空気が流れる。

 

「さ、さぁ! 次の演目へまいりましょう!」

 

 進行役が慌てた様子で次の項目へと移動した。

 

 しばらくするとパーティーも終わり、来賓客が帰り始める。

 

 そんな時、2人の前に黒服が現れる。

 

「こちらへ」

 

「あぁ」

 

「分かったわ」

 

 2人が通された部屋にはソファーに腰かけたスカリエッティと背後に一人の女性、ウーノが立っているだけだった。

 

「さて、座りたまえ」

 

「どうも」

 

 2人が対面に腰かけるとウーノが紅茶を差し出す。

 

「さて、聖王のゆりかごの危険性についてだったかな?」

 

「そうね。それと話に上がったメタトロン技術についても」

 

「ほぉ、メタトロン技術に興味がおありで?」

 

「未知の技術ですから。興味がありますし危険性について理解しないで出資はできません」

 

 ハーマイオニーの答えにスカリエッティは不敵に笑う

 

「なるほど……しかしご安心を。メタトロンは危険な物質ではない」

 

「なぜそう言い切れる?」

 

 トムか切り返すとスカリエッティは小型のタブレット端末を操作する。

 

 するとなのはとレイジングハートの資料がモニターに映し出される。

 

 映し出された資料を目にしたハーマイオニーが唖然とする。

 

「まさか……」

 

「エースオブエースのデバイスにメタトロンを組み込んではいるが、今のところ身体への悪影響は見られない」

 

「メタトロンを……デバイスに?」

 

「あぁ、だが今のところ問題はない、性能は向上しているそれに──」

 

「生身の人間に……メタトロンをそんな……そんな危険な……」

 

 ハーマイオニーの言葉を聞いてスカリエッティは笑みを浮かべる。

 

「危険? メタトロンについて何も知らないはずなのに……まるで熟知しているかのような口ぶりだ」

 

「そ……それは……」

 

「メタトロンを回収した部隊から報告があったが……保管していた船には男女2人の乗組員が居たと聞く」

 

 スカリエッティが立ちあがりる。

 

「それは君達の事ではないか?」

 

「そ……それは……」

 

「もしそうなら、君達の知っていることを教えてもらおうか」

 

 スカリエッティが指を鳴らすと部屋に武装を固めたガジェットが入り込む。

 

 

「さぁ……答えて──」

 

 次の瞬間、複数の銃声が響き渡る。

 

 一拍置いて部屋を包囲していたガジェットが火花を散らし沈黙する。

 

「なんだと!」

 

 スカリエッティが驚愕する中、いつの間にか立っていたトムの両手には小型のハンドガンが握られていた。

 

「ふぅ……念の為とは言え持ってきておいて助かったな」

 

 トムはそう言うと左腕の一部がスライドし左手に握られていたハンドガンが収納される。

 

「全く……穏便には行かないわね」

 

 ハーマイオニーは立ち上がると杖を手に取りスカリエッティに向ける。

 

 それと同時にトムも右手の銃をウーノへと向ける。

 

「さて、それじゃあ帰らせてもらおうよ」

 

「これは頂いていくわね」

 

 ハーマイオニーはテーブルに置かれたタブレット端末を回収する。

 

「レディファーストだ」

 

「えぇ」

 

 ハーマイオニーが部屋を出ると、トムもハンドガンを構えたまま部屋を後にした。

 

「ドクター!」

 

「直ぐにガジェットを! 逃がすな!」

 

 スカリエッティがそう叫ぶと、施設内に警報が作動した。

 

 

 2人が警報が鳴り響く廊下を走っていると行く手を遮るようにガジェットが現れる。

 

「くっ、急いでいるというのに」

 

「全くね」

 

 ガジェットが陣形を組むと一斉に砲門から砲撃を行う。

 

 発射された砲弾は2人が居た地点に着弾すると黒煙を上げる。

 

 数秒の静寂が流れる。

 

 その時、黒煙を突き抜け両手にハンドガンを構えたトムが現れる。

 

 トムは走りながらガジェットのメインカメラを打ち抜く。

 

 それにより2機のガジェットが機能停止する。

 

 残りのガジェットはトムに向け攻撃を行うが、トムは壁を駆け上がり攻撃を回避するとガジェットの真上に移動する。

 

 真上に移動すると同時に、ガジェットに向けハンドガンによる射撃を行い、弱点部を撃ち抜き機能停止させる。

 

 着地と同時に振り返ると、最後の1機のメインカメラを撃ち抜く。

 

「ふぅ……ざっとこんなもんかな」

 

「終わったかしら?」

 

 黒煙が晴れると杖を片手にしたハーマイオニーがトムに歩み寄る。

 

「あぁ、弾数ピッタリさ」

 

「そう。それはよかったわね」

 

 ハーマイオニーはポーチから2つのマガジンを取り出すとトムに手渡す。

 

 トムはそれを受け取ると歩きながらリロードを行う。

 

 それと同時にハーマイオニーはスバルに通信を繋ぐ。

 

『聞こえるかしら?』

 

『警報が! 何があったんです?』

 

『今から向かうわ。準備をしておいて』

 

『準備って……』

 

「さぁ、急ぐわよ」

 

「了解」

 

 2人は警報が鳴り響く中、合流を急いだ。

 

 

 依然として警報が鳴り響く中。

 2人は姿が戻ったスバル達が待機している駐車場へとやってきた。

 

「あっ! こっちです!」

 

「準備できています!」

 

「了解よ!」

 

 既にアイドリングとなった車に接近する。

 

 その時、大量のガジェットが飛来し出入り口を封鎖する。

 

「おっとこれは……」

 

「厄介ね……」

 

「ど……どうしましょう……」

 

「戦うしか……」

 

 4人はそれぞれ武装を構え迎撃態勢を取る。

 

 その時、スピーカーからスカリエッティの声が響く。

 

「逃げられると思ったのか?」

 

「そうね。できれば帰りたいんだけど」

 

「客人を持て成さずに帰すのは気が引けるのでね」

 

「なるほど……確かに大した持て成しだ」

 

 トムは小さく笑うとガジェットに向け射撃を行う。

 

 それに倣うようにスバルがエネルギーフィールドを展開し突撃する。

 

 ティアナも狙撃銃を構えガジェットに向け攻撃していく。

 

 しかし、ガジェットからも砲撃が行われる。

 

 ハーマイオニーは杖を振り迫りくる砲撃を無力化する。

 

「さて、さっさと片付けよう」

 

「そうね」

 

「「了解!」」

 

 トムは両手に構えたハンドガンで攻撃を行っていくが、やはり火力不足からか撃破には時間が掛かる。

 

「こいつじゃだめだな。何かないかい?」

 

「ぴったりなのがあるわ」

 

 ハーマイオニーは杖を振るとポーチからガトリング砲が現れる。

 

「全く。準備が良いじゃないか」

 

 トムは2門のガトリング砲を受け取ると片手に1門ずつ持ち、その場で乱射する。

 

 ガトリング砲の攻撃により、ガジェットが大量に撃墜されていく。

 

 しかし、撃墜する端からガジェットが供給されるため数が一向に減らない。

 

「これじゃ、キリがないな」

 

「どれだけいるのかしら?」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 スバルとティアナに疲れが現れ始める。

 

「2人とも、車にまで撤退して」

 

「りょ……了解!」

 

 ハーマイオニーの指示に従い2人は車にまで撤退する。

 

 これにより、戦線が下がり、ガジェットがさらに現れる。

 

 そんな中、巨大な足音が響き渡る。

 

「な、なに?」

 

「おいおい……あれは……」

 

 ガジェットを踏みつぶしながら6mを超える巨大なガジェットが姿を現す。

 

「このぉ!」

 

 ティアナが狙撃を行うが、炸裂弾でもその装甲に傷をつけるのが精いっぱいだった。

 

「こ……こんなのが……」

 

「どうすれば……」

 

 2人が絶望の表情を浮かべる

 

「トム」

 

 ハーマイオニーがポーチをトムに向ける

 

「全く……こんなものまで……君と言うやつは」

 

 トムはポーチに手を突っ込むと中から巨大な砲身を取り出す。

 

「RPGか」

 

「こんなものしか用意できなかったわ」

 

「ないよりはマシさ」

 

 トムはRPGを担ぐと巨大なガジェットに照準を合わせる。

 

 引き金を引くと弾頭が発射され巨大ガジェットの胴体に着弾する。

 

 巨大ガジェットが煙を吹きだす。

 

「やったか」

 

「えぇ」

 

 トムは撃ち終えた砲身を投げ捨てる。

 

「っ! まずい!」

 

「え?」

 

 次の瞬間2人が居た地点に爆発が起こる。

 

 巨大ガジェットは沈黙しておらず、若干の損傷はあるものの稼働には問題が無いようで、肩部からロケット砲が発射され2人が居た地点に着弾した。

 

「2人とも!」

 

「ご無事ですか!」

 

 スバルとティアナが声を荒らげる。

 

「え……えぇ……私は……」

 

 ハーマイオニーが周囲を見回すと自身の上に覆いかぶさるトムに目を向ける。

 

「全く……重いわよ」

 

 ハーマイオニーがそう言うとトムは小さく呟く。

 

「あぁ……すまない」

 

 ハーマイオニーが起き上がると、下半身が吹き飛び上半身だけとなったトムが倒れ落ちる。

 

「トム!」

 

「あ……あぁ……」

 

 駆け寄ったスバルとティアナが茫然としている。

 

「君は……無事か?」

 

「えぇ。私は大丈夫よ」

 

「そうか……少し休んでもいいかい?」

 

「駄目よ。まだ終わってないわよ」

 

「全く……君ってやつは……人使いが荒い……んだから……」

 

 トムはそう言うと力なく目を閉じる。

 

「トム……」

 

「あ……あの……」

 

 スバルが声を掛けようとしたその時、周囲にガジェットの砲撃が迫る。

 

 ハーマイオニーは杖を振ると、守りの魔法によりすべての砲撃を無力化する。

 

「まだ終わってないわ……」

 

 爆炎が巻き起こる中、ハーマイオニーは力強く呟いた。

 




何とでもなるはずだ!

オービタルフレームだと!
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