フェイトが目の前の扉を開け放つ。
「なのは!」
部屋に飛び込むと同時にバルディッシュを構える。
「待っていたよ。フェイトちゃん」
壁にもたれ掛かり、力なくレイジングハートを右手持ち、吐血により純白のバリアジャケットに複数の赤黒いシミを作ったなのはがフラフラと覚束無い足取りでフェイトに歩み寄る。
「なの……は……その力は危険すぎる……私達の技術じゃ使いこなせない」
「はは、そうかもね。けほ……もうあまり時間がないみたいだし、そんなの関係ないでしょ……さて……もう一度確認だけど、私と一緒に新しい管理局を作らない? フェイトちゃん?」
「なのは……前にも言ったけど私はそんな事しない! 貴女と一緒になんか行かない! エリオとキャロを傷付けた貴女を許さない!」
「じゃあもういいよ……もうフェイトちゃんもいらないよ。死んじゃえばいい」
「ふざけないで! こんな事の為に……一体何人の命が失われたと思っているの!」
「私が勝ったらこれからもっと増えていくよ! でも死んじゃうのはフェイトちゃんだけどね! さぁ! フェイトちゃん! どうせ死んじゃうんだし道連れに何百人だろうと連れていくと良いよ!」
「生憎と死ぬつもりはないし……もし仮に道連れにするなら……相手は決まっているっ! ……なのはっ!」
「アハハ! フェイトちゃんッン!」
二人が同時に飛び出すと互いのガジェットがぶつかり合い、火花が飛び散る。
「くっ!」
衝撃を受け流しきれずフェイトが後方へ吹き飛ぶ。
しかし、フェイトは受け身を取り着地する。
「そこ!!」
そんなフェイトの右後方から複数の魔力弾が迫る。
「ほらほら! ちゃんと避けないと本当に死んじゃうよぉ!」
「くっ!」
フェイトが居た着弾地点に瓦礫が巻き上がる。
「……」
周囲を静寂が支配し、その光景をまるで他人ごとの様に見つめている。
「あれだけ啖呵切っておいて……あっけない」
棒立ちのなのはの背後に突如としてフェイトが現れバルディッシュが急襲する。
「カートリッジ!! ロード!」
メタトロンが封入されたカートリッジを装填したバルディッシュの蒼白い刃がなのはの胴体を捉える。
「っ! なっ!」
横殴りに吹き飛ばされたなのはが壁に激突し瓦礫に埋もれる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
フェイトは肩で息をしながらバルディッシュからカートリッジを排莢する。
「やった……か……」
「へぇ……驚いたなフェイトちゃん」
「なの……は」
瓦礫からなのはが立ちあがる。
「まさかフェイトちゃんもメタトロンを使うなんてね。扱いきれないんじゃなかったかな?」
なのはがフェイトの足元に転がる薬莢を睨みつける。
「このカードリッジを作ったのは向こうの技術よ」
「そう……今の一撃は痛かったよ……痛かった……痛かったね!」
なのはは薬莢を踏みつぶしながら右手を上げるとフェイトの周囲を魔力弾が取り囲み、一斉に襲い掛かる。
「とても痛かった……でもね……私が怒っているのはそこじゃないんだよ……フェイトちゃん」
なのはの攻撃がさらに苛烈を極め、フェイトも回避しきれず、体を掠める。
「さっきの一撃……普通なら死んでいたよ。胴体が真っ二つだ……だから一つ聞きたいんだ……どうして……どうして非殺傷なの!」
なのはが両手を振り上げるとフェイトに一斉に魔力弾が着弾する。
「どうしてかな? 私の事を馬鹿にしているのかな? 舐めてんのかよっ! 答えてよ! 答えろっ!」
先程の攻撃で膝を着いているフェイトになのはが迫る。
「私は……私はなのはとは違う!」
「ふえ?」
「私は……管理局員のフェイト・テスタロッサとして……高町なのは……貴女を逮捕する!」
フェイトは再び立ち上がるとバルディッシュを構え直した。
「逮捕する? アハハ! 面白いこと言うねフェイトちゃん!」
「何がおかしい!」
「だってさぁ! フェイトちゃんとはやてちゃんが私を逮捕するなんて……ハハハッ!」
なのはは腹を抱え大笑いする。
「元々は時空犯罪者の2人がハハッ! 私を逮捕だなんだ! いひひっ! はっ! おかしなことを言うねぇ!」
「なっ……」
なのはが笑いながら手をかざすと目の前に複数の魔法陣が現れ、そこから赤黒い魔砲攻撃が打ち出される。
「それにね。逮捕って言うのはね。相手より強い奴が言うんだよ」
「くっ!」
フェイト目掛け放たれた魔砲攻撃をギリギリの所で回避する。
流れ弾が部屋の柱に命中すると、それだけで木っ端みじんに粉砕される。
「カートリッジ!!」
メタトロン製カートリッジをロードすると同時にフェイトが更に加速しなのはとの距離を詰める。
「くっ!」
なのはが更に魔法陣を作り出し魔砲の弾幕が濃くなる。
「これで!! 届けぇ!」
激しい魔砲攻撃の弾幕を搔い潜り、ついになのはの胴体にバルディッシュが迫る。
しかし……
「なっ……」
なのはの周辺に張られたプロテクトによりバルディッシュが防がれる。
「アハハ! 残念。フェイトちゃん」
なのはがレイジングハートを構える。
「バインド」
なのはが呟くとフェイトの身体をピンク色のバインドが絡め取る。
「昔もこんなことがあったね。懐かしいね」
「くっ! 離れない!!」
まるで親友に話しかけるように微笑ましい笑顔をフェイトに向けてそっとその頬に手を添えレイジングハートを構える。
「それじゃあ。バイバイ」
「っっ!!」
至近距離で魔砲攻撃を食らったフェイトはピンク色の魔砲に吹き飛ばされて壁に激突する。
フェイトが激突した壁は大きく抉れ威力の凄まじさが理解できる。
「かはっ……あっ……はぁ……うぁ……うぅ……」
「あれれ? まだ息がある? 流石はフェイトちゃん。寸での所でバルディッシュで受け止めたんだね。すごいよ! 殺しきるつもりだったのに」
息も絶え絶えでバリアジャケットの至る所が破れているフェイトはヒビが入ったバルディッシュを支えに震える足で何とか立ちあがる。
「あはっ! まだやるんだね! いいねぇ! 楽しいね!」
「はぁ……あ……は……バル……ディッシュ……まだいける?」
『問題あ……り……ませ』
ノイズ交じりにバルディッシュが答える。
『まさか……メタトロンカートリッジでも……なのはには……』
フェイトは口に出さずに考えを巡らす。
『残りのカートリッジは……5回分……』
「んふふッ……どうするつもりかな?」
まるで友人のサプライズを待つかのようになのはは満面の笑みを浮かべる。
『バルディッシュ……残りのカートリッジを1回で全部使う事ができる?』
『メタトロンは……未知数……どうなるか分……せん。……がやり遂げてみせます』
『でもセーフティが……』
『セーフティが解……除され……した』
『え?』
『恐ら……当初……より……カートリッジ……同時……使用するこ……想定されて……ようで、……解除コードになっていたようです』
「なるほど……行くよっ! バルディッシュ!」
『了解』
フェイトはなのはに向かって正面から走り出した。
「さぁ! 終わりにしよう! フェイトちゃん! 全力全開!!」
なのははレイジングハートを構え、前面に魔法陣が現れる。
「カートリッジ!!!」
バルディッシュが5回カートリッジを装填する。
カートリッジをロードした瞬間、フェイトの全身に蒼白いラインが走る。それはまるで全身の血管を廻るように。
対するなのはも全力全開で、全身に赤黒いラインが走る。
「さぁ! フェイトちゃん!」
「なのはぁぁあああ!」
魔法陣から赤黒い魔砲攻撃が放たれる。
それに突っ込むようにフェイトが迫る。
なのはの魔砲とフェイトの斬撃が激突する。
激突の余波が部屋中に駆け巡り、部屋の至る所にヒビを作る。
「あぁあぁぁああああぁああああああ!!」
フェイトが絶叫し、少しずつなのはに迫る。
「なっ!」
なのはが一瞬戸惑いを見せる。
「うああぁあああああ!」
フェイトの絶叫と共に赤黒い砲撃が切り破られる。
「あっ……」
「なぁのぉはぁあああああ!!」
勢いそのままのフェイトのバルディッシュの袈裟切りがなのはを捉えた。
「あ……あっ……」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
息を荒らげるフェイトの手の中でバルディッシュが音もなく砕け散る。
それと時を同じくして数歩後退ったなのはが倒れ込む。
「ごはっ……フェイ……ト……ちゃ……」
「な……の……」
フェイトはなのはが倒れるのを見届けるとその場で倒れ込む。
その時、部屋全体を揺らすような振動が訪れる。
その振動と先程の戦いの余波によりヒビが入った床が崩れ始める。
そしてなのはがそれに巻き込まれ奈落へと落ちていく。
「な……のは……」
フェイトは姿を消したなのはに手を伸ばすが、意識を手放した。