魔法少女ZOË   作:サーフ

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再就職が決まったので最終回です。


終演

 

 

 管理局内で起きたクーデター鎮圧報告書

 

 時空管理局内でクーデターが発生した。

 

 首謀者は時空犯罪者のジェイル・スカリエッティである。

 

 メタトロンと呼ばれる特殊な物質と聖王のゆりかごを使用し時空管理局内でクーデターを起こしたとされている。

 

 ジェイル・スカリエッティは作戦行動中に部下である人物によって射殺されて居るが、事件の詳細についてはジェイル・スカリエッティの部下である人物と司法取引によりいずれ白日の下に晒されるである。

 

 先の報告に出てきたメタトロンと呼ばれる物質は特定の時空にのみ存在すると言う情報がある為、その時空への航行を禁止する。

 

 また、首謀者の1人元時空管理局員。高町なのはであるが、捜索するも見つからず、MIA(戦闘中行方不明)とされている。

 

 

「ふぅ……」

 

 報告書類をある程度まで書き上げたはやてが欠伸をしながら体を伸ばす。

 

 その時、扉が数回ノックされる。

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

 入室したシグナムが一礼する。

 

「報告します。目標であった2隻の戦艦を停戦し占拠しました」

 

「そか、ご苦労様」

 

「いえ、エイダたちが早々にメインエンジンを潰しましたので」

 

「想像できるわぁ……さて、なら私も移動するかな。アインス」

 

「はい」

 

 アインスに車いすを押されながらはやてが自室からブリーフィングルームに移動する。

 

 ブリーフィングルームには既にテーブルに着いたハーマイオニーとトムの姿があった。

 

「お待たせいたしました」

 

「別に気にしないで」

 

 ハーマイオニーに促され、はやては車いすのままテーブルに着く。

 

 その背後に、シグナムとアインスが控える。

 

「目標だった、元、新生時空管理局の戦艦を占領しました」

 

「これでメタトロンの流失が防げたわね」

 

「えぇ。これもお二人の協力のおかげです」

 

「そんなことはないわ。私達はただ時間を巻き戻しただけ、時空航行技術は流石管理局と言ったところね」

 

 ハーマイオニーはテーブルの上に古びた時計を置く。

 

「時空を移動後に時間を巻き戻ってメタトロンを奪われる前に回収……時間を巻き戻れるって言うのは便利ですね」

 

「便利だけど危険も伴うのよ。今回のは色々計算した上でよ」

 

 ハーマイオニーはそう言うと紅茶で唇を湿らす。

 

「そうですね。もう少ししたら例の戦艦ごと、私達は元の時空の元の時間に帰ります」

 

「元の時空に戻ったらこちらの時空の航行を禁止するんでしょ」

 

「えぇ。まぁでも会う方法なんていくらでもありますよ。なんせ今の私は時空管理局の臨時とは言え局長ですから」

 

 はやての答えにハーマイオニーは小さく微笑む。

 

「流石ね。それにしても臨時局長ね……事件が終わってからまだ数ヶ月しかたっていないんだもの、やることは山積みよ」

 

「まぁ、こんなタイミングで局長職をやりたい人なんていませんから仕方ないですよ。それに……あの事件は色々ありましたから……」

 

「貴女も無茶をしたわね。まさかあの状況下で再びベクターキャノンを撃つだなんて、自殺行為よ。その程度済んでよかった方よ」

 

 はやては俯き自身の足を摩る。

 

「でもあれしか道はなかったですから……それに私はエイダとデルフィに出会うまでは車いす生活でしたし……足以外は失っていませんから。家族が……ヴォルデモートの皆が戻ってきてくれたのは本当に奇跡でした」

 

「それは主が強く我々を求めてくれたからです」

 

 シグナムは胸に手を当てはやてに応える。

 

「それに、何かを失ったのは私だけじゃありません。フェイトちゃんだって眼を……」

 

「そうね。でも彼女あの眼帯型の義眼を気に入っているそうよ。ちゃんとした義眼を用意するって言ったら断られたわ」

 

「フェイトちゃんらしくてカッコいいですからね。それに義眼の方が貫禄があって指導も進むそうで」

 

「もう現役復帰しているの?」

 

「えぇ、フェイトちゃんだけじゃないですよ。スバルとティアナも二人とも執務官として色々働いてくれています」

 

「それはすごいわね」

 

「えぇ、フェイトちゃんばかり働かせる訳にはいかないって言っていましたから」

 

「将来有望ね」

 

「そうですよ」

 

「ところで、その彼女はどこに? 彼女のデバイス、バルディッシュの修理が終わったから届けに来たのだけど」

 

「あぁ、フェイトちゃんなら用事があるようで」

 

「用事?」

 

「はい……とても大事な用事です……」

 

 はやてはそう言うと、小さく息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

  日も傾き、あたりがオレンジ色に染まる中、黒いコートに身を包んだ金髪の女性が病院の中を歩いていた。

 

 面会時間寸前という事もあり、病院内に居る人はまばらだが、すれ違う人々が一瞬だが彼女の顔に視線を向ける。

 

 片目を黒い眼帯で覆った女性。フェイトはそんな視線を気にせず目的の病室へと足を運ぶ。

 

 その足取りは若干重く、しかし一歩一歩着実に歩みを進め終末医療区画へと移動する。

 

 そんな彼女の少し手前で個室病室の扉が開き、中から2人の女性が中の人物に名残惜しそうに出てくる。

 

 そんな女性を見た瞬間、フェイトは俯き顔を隠そうとする。

 

 しかし。

 

「あれ……フェイト……だよね」

 

「……」

 

 フェイトが横切ろうとした時、声を掛けられる。

 

「久しぶりだねアリサ、すずか……」

 

「フェイト! どうしたのその顔! それになのはに何があったの!」

 

 アリサは感情を露わにしフェイトに詰め寄る。

 

「ごめん……これは仕事上の事だから……言えないんだ」

 

「仕事上の事って……一体どんな危険なことをしているのよ! それに……なのはは……」

 

「ごめん……ごめんね二人とも……私の口からは……何も言えないんだ」

 

「うぅ……うぅう……」

 

 アリサはその場で泣き出し、すずかが駆け寄る。

 

「ごめん……いつか……話せる時が来たら……説明するから……」

 

 はやてはそう言うと2人をその場に残し病室の中へと入っていった。

 

 

 病室に入るとフェイトはベッドへと歩み寄る。

 

 そこには虚ろな目で虚空を眺め、ベッドで横になっているなのはの姿があった。

 

「なのは……」

 

 フェイトはさらに一歩なのはに近寄る。

 

 しかし、なのはは何の反応も見せずただその場にいるだけだ。

 

「大丈夫。何もしないから出てきて」

 

 フェイトがそう呟いてから数秒後。

 

「やっぱり、気付いていたのかい」

 

 病室の隅からユーノが姿を現した。

 

「安心して。別になのはを殺しに来たわけじゃないから」

 

「うん。わかっているよ」

 

 ユーノはそう言うと、近くの椅子に腰かけた。

 

「僕がいけないんだ……僕が……なのはを……彼女を魔法という世界に巻き込んだ……僕と出会わなければきっと彼女はもっと普通な人生を送れていただろうに……」

 

「…………」

 

 ユーノの独白に対し、フェイトは沈黙で答える。

 

「はやてにも感謝しているよ……なのはをこうして病院で匿ってくれていること……なのはの両親にも作戦行動中の事故でこうなってしまったって……」

 

「友達だから……友達だったから……あんなことご両親に言える訳ないでしょ……私もはやても……」

 

「うん……わかってる」

 

 二人の間に沈黙が走り、なのはから発せられる呼吸器による規則的な呼吸音だけが周囲を支配する。

 

「そうだ。折角だから外で話そう。時間はぎりぎりだけど……なのはもその方が良いだろうし」

 

「えぇ」

 

 フェイトが答えるとユーノはなのはを車いすに乗せる。

 

「じゃあ、行くよなのは……」

 

 ユーノに車いすを押され、虚ろな表情のなのはは大した反応も見せることなく病室の外へと出た。

 

 病院の敷地内の人気のない丘まで3人は移動する。

 

「ここから見える夕焼けはきれいなんだよ」

 

「そう」

 

 フェイトは呟く。

 

「フェイトはどうして今日来たんだい? なのはに話でもあったのかな?」

 

「……」

 

 フェイトは答えることなくなのはを見つめる。

 

「そうだね。僕が詮索するような事じゃないだろう」

 

 ユーノはそう言う振り返る。

 

「僕は少し席を外すよ。後でなのはを迎えに来るよ」

 

 そういい、ユーノは立ち去ろうとする。

 

「ユーノ」

 

「なんだい?」

 

「ユーノはこれからどうするの?」

 

「僕……は……そうだな……最期までなのはの傍に居ようと思う。たとえそれが短いものであったとしても」

 

「そう」

 

 ユーノは振り返ることなく立ち去った。

 

「なのは……」

 

 フェイトが呟く。

 

 しかし、なのはは答えることなく、どこを見るでもなく、その場で動かない。

 

 フェイトはポケットから赤い石の付いたペンダントを取り出すとなのはの手に乗せる。

 

「レイジングハート……なのはが宇宙空間で無事だったのは、レイジングハートが最期までバリアジャケットを張っていてくれたから」

 

 しかし、なのはは答えることなく、数秒手の平を見つめた後、再び虚空を見上げる。

 

「ッ!」

 

 フェイトは突如なのはの両肩につかみ掛かる。

 

 しかし、なのはは全く身動きすることなく無表情のままだ。

 

「なのっは……っ!」

 

 フェイトは手を放し数歩後退ると、その場を後にする。

 

「さよなら……私の親友(ともだち)」

 

 ただ一人残されたなのはは、何を思うでもなく、ただその場で虚ろな瞳で虚空を眺めていた。

 

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