体調に気を付けましょう。
時空管理局との接触があってから数日が過ぎる。
その間も管理外世界において、魔法生物などから蒐集を行う。
何とか予定通りに蒐集は行われていく。
そんなある日、シグナムから報告が入る。
「ここ最近、蒐集中に妙な視線を感じる。結界は張っているのだが……」
「誰かに監視されて居るかもしれないな……」
ヴィータが呟く。
「恐らく、闇の書を狙う存在による可能性があります」
「候補としては複数が挙げられます」
「一つ、闇の書を手に入れその力を利用しようとするもの」
「だが、闇の書が完成したら主であるはやてにしか使えない」
「別件では、闇の書に恨みを持つ者」
「恨みだと?」
シグナムが首をかしげる。
「闇の書は主を変え、転々として居ます」
「その為、前任者が行った犯行による被害者、または前任者の関係者が恨みを抱いている可能性があります」
「確かに……それはあり得るな……しかし闇の書の破壊は……まぁ、お前達ならば可能だろうが並の魔導士には不可能なはずだ」
「破壊が不可能な場合、凍結、または封印を行うものと考えらえます」
「まさか……それが目的?」
「恐らく、現在は監視中の可能性があります」
「状況が動いたら……」
「監視者も行動を開始する可能性があります」
「しかし……一体誰がそんな事を……」
「現状最有力なのは時空管理局です」
「何故……時空管理局……奴等が?」
「時空管理局も闇の書の存在は把握している筈です。そして、闇の書の発動より前からはやては何者かによって監視されていました」
「何らかの事情により時空管理局の一部の人間がはやてが闇の書を保有しているという事を把握していた可能性があります」
「つまり、謎の監視者が時空管理局の人間だと……」
「可能性はそれが一番高いです」
「時空管理局ならば闇の書の監視を行うことも容易でしょう」
「時空管理局か……前回の奴等みたいなのばっかりだったらキツイな……」
ヴィータが前回の戦闘を思い出したようで苛立ち、舌打ちをする。
それから、数ヵ月の月日が流れ、12月に入る。
その頃には蒐集のノルマも進み、少なくとも数週間中には完成すると思われる。
ナノマシンの効果もあり、はやての余命が尽きるまでには間に合うだろう。
そんなある日、帰還予定時刻になってもシグナム達が戻ってこない。
そんな時、シャマルから通信が入る。
『どうしました?』
『大変なの! シグナムとヴィータちゃん、ザフィーラが結界に閉じ込められて』
『了解。合流地点へ向かいます』
『お願いね。それと、はやてちゃんには知られない様に……』
『了解』
私達はその場で立ち上がる。
「ん? どないしたん?」
「帰りが遅いので迎えに行ってきます」
「うん……わかった。夕ご飯の準備しておくね。でも無茶は……ううん……なんでもない」
はやては作り笑顔を浮かべる。
恐らくだが、何かしら勘付いたのだろう。
私達は家を出ると、合流地点へ急行した。
合流地点では心配そうに闇の書を抱えているシャマルの姿があった。
「お待たせいたしました」
「急に呼び出してごめんなさい」
「お気になさらず」
「状況は?」
「管理局の魔導士に囲まれているみたい……かなり強固な包囲よ」
「了解」
3人を取り囲むようにドーム型のシールドが展開されている。
その為、転送が行えない様だ。
私はビームガンを構え空中に向ける。
「出てきてください」
「ちっ……」
舌打ちしながら黒髪の少年が姿を現す。
「時空管理局執務官のクロノ・ハラオウンだ。君達をロストロギアの不正所持の容疑で拘束する。大人しく投降すれば弁護の機会もある。大人しく武装解除しろ」
クロノは杖を構える。
どうやら、以前戦闘を行った2人と同種のデバイスだろう。
私はシャマルに通信を繋ぐ。
『彼の相手は私が行います』
続いてデルフィが通信に割り込む。
『では、私が3人の援護に向かいます』
『シャマルはすぐに撤退を』
『でも……』
『自宅ではやての護衛をお願いします』
『わかったわ』
「動くな!」
動き出そうとするシャマルに杖を向ける。
「闇の書の主は誰だ? どこに居る?」
「申し訳ありませんが、お答えする訳にはいきません」
「そうか、なら聞きだすまでだ!」
クロノが杖を振ると複数のエネルギー弾が発生し、シャマルに襲い掛かる。
「くっ!」
シャマルは前面にシールドを展開し防御態勢を整える。
私は、シャマルとエネルギー弾の間に移動すると、シールドを発生させる。
「エイダちゃん!」
「急いでください」
「わかったわ!」
シャマルがその場から飛び出し、撤退行動に移る。
同時に、デルフィが飛び上がり、シールドにハッキングし、内部へと移動した。
「逃すか!」
移動しようとするクロノの前に、私が立ちはだかる。
「邪魔だ! スティンガーブレイド! エクスキューションシフト!」
クロノの周囲に刃上のエネルギー弾が複数展開する。
数にして100以上だろう。
クロノが手を振り下ろすと、刃が一斉に私に飛び掛かる。
しかし、放たれた刃は私の周囲で霧散する。
分析の結果、威力はファランクス程度なので、常時展開している全方位シールドにより容易に防ぐ事が出来る。
「なんだと……」
放たれた刃が意味を成さない事に、クロノは驚愕しつつも、杖を構える。
「てやぁ!」
クロノは手にした杖を構え、飛び掛かる。
「防衛行動に移行します」
腕をブレードに変化させ、杖による攻撃を防ぐ。
杖とブレードがぶつかり合い、火花が散る。
私はブレードを切り払い、クロノを吹き飛ばす。
「ちぃ!」
吹き飛ばされたクロノは空中で一回転すると、着地する。
「てやぁあ!!」
着地の反動を利用し、飛び上がると再び私に向け、杖を振りかざす。
私は、出力を抑えたビームガンをクロノに向け放つ。
「発射」
クロノは発射されたエネルギー弾を杖で弾こうとする。
しかし。
「なに!」
クロノが手にしているデバイス程度の出力ではエネルギー弾を弾く事は出来ず、杖を弾き飛ばしクロノに直撃する。
「ぐはっ!」
エネルギー弾の直撃により、再び吹き飛ばされたクロノは、フェンスに激突する。
「きっ……一体……何者なんだ……」
「申し訳ありませんが、しばらく気を失っていただきます」
私は倒れ込んだクロノに追撃として、ゲイザーを投擲する。
「くっ……」
クロノに直撃したゲイザーは、デバイスごと神経系に作用し、無力化する。
クロノの無力化を確認。
気を失ったクロノを右手で拘束しつつ、私は援護に向かう為、シールドを通過する。
「チッ! 雑魚ばかりだと思っていたが……」
「こうも囲まれては……」
シグナムとザフィーラとヴィータは互いに背中合わせとなり、周囲の魔導士達を睨み付ける。
「お願い! 私達は話をしたいだけなの!」
「うるせっ!」
「何か協力できることが──」
「誰がお前達の協力なんか受けるかよ!」
なのはの問いに対し、ヴィータは声を荒らげる。
「この……わからずや!!」
なのはのレイジングハートが複数の薬莢を排出しカードリッジをリロードする。
「あれは!」
「まずいぞ!」
「全力全開! スターライトブレイカーEX!!」
マガジン内のカードリッジ総てを使用し、レイジングハートから高威力の魔砲攻撃が3人向け放たれる。
「くそぉ!」
ザフィーラはヴィータとシグナムの前に立ち、強力な魔砲攻撃の盾となる。
「ザフィーラ!!」
魔砲攻撃は眼前に迫り来る。
その時。
「お待たせいたしました」
デルフィがザフィーラの前に瞬時に現れる。
「おい!」
「シールド展開」
デルフィは前面にシールドを展開する。
次の瞬間、スターライトブレイカーEXとデルフィが展開したシールドが衝突する。
高威力のエネルギーの濁流が起こり、周囲に土煙が舞い上がる。
「はぁ……はぁ……やった……の?」
なのはがダメージを負ったレイジングハートを握りしめ、肩で息をしている。
その様子をフェイトも見守っていた。
「大丈夫? なのは」
「うん、でも……結構疲れちゃった……」
フェイトはなのはに肩を貸し、支える。
「きっとこれで……」
「ウアスロッド展開」
「え?」
デルフィがウアスロッドを横に軽く薙ぎ、土煙を吹き飛ばす。
「うそ……」
「あれでも……無傷なの……」
スターライトブレイカーEXをシールドで完全に防ぎ切ったデルフィがウアスロッドを構える。
「そちらの戦闘能力の低下を確認。周辺のシールドを解除し、撤退してください」
「なのは、下がって」
「フェイトちゃん……」
フェイトはバルディッシュを起動し、デルフィと対峙する。
「前回の戦闘データ参照。貴女の勝率は0.25%。無駄な戦闘はおやめください」
「だとしても!」
バルディッシュはカードリッジをリロードし、出力を高める。
それと同時にフェイトは高速でデルフィに接近する。
対するデルフィはフェイトと同じ速度で後方へ飛び退く。
「クッ!」
距離が一向に詰められずにフェイトは焦りを覚える。
しかし、次の瞬間デルフィが空中で急停止する。
「え?」
突然の事に対応できず、フェイトは速度そのままバルディッシュを横に凪ぐ。
対する、デルフィはウアスロッドを解除し、迫りくるバルディッシュを素手で受け止める。
「どういうつもり……」
「勝負はもう着きました」
「何を言って……」
デルフィが真上を指差し、全員の視線が集まり、驚愕した。
一体何が起こるっていうんだ…