君、爆弾は好きかね?   作:イシグロ

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私は親無し、孤児だ。
でも、まだ私は良い方だ。孤児院に預けられたのだから。
そんな私はあのユーハバッハに見初められ、滅法師と言う職を与えられた。どうやら、才はあるらしくロバートさん、師によって鍛え上げられ、一人前までになった。ロバートさんは、意外と優しく本当の父のように思って慕っていた。あの頃が、一番…私にとって尊いもの、短くとも充実していた。
思い出したくなかった、思い出したくなかったのに…私がバンビエッタだったことを。

死にたくない、今でも。
でも、ゾンビは嫌だ。そんな板挟み、でもやっぱりバンビエッタは敵だから…退場は当たり前。
なら、やりたいようにやる。
後悔の無い死に方で、終わらすんだ。
私は蛇、神の叛逆者であるサマエルなのだから。




エピローグ

 

そういえば、このとき総隊長とかち合ったのってあの双子コピー滅法師どもだっけ。

なら、面倒だな手札見せてしまったし…。

だったらこの時、私はどのユーハバッハを相手しているのかしら。

「……焼身死体を目にするのは、初めてだよ」

うげぇ、臭いし吐きそう……。

トラウマ待ったなしだよ。確認するにも、やだなぁ…さらにSANチェックが入るんですけど。

「閣下、卍解は戻りましたかな?」

「その閣下と言うのは止めよ」

「はて、それは無理な話だ。私は、卿を知らぬゆえ…」

「…護廷十三隊総隊長、山本元柳斎重國である」

「バンビエッタ・バスターバイン…Eの聖文字を持つも」

胸部に熱く激しい痛みが走る。

は、はは…やはり、アレは違うか。

「……よもや、ロイドごと私を殺しきったものは貴様くらいだ」

「光栄だよ、卿は…死に底なったがね……がっ、ぐぅう!」

この野郎、剣の柄まで深く入れやがった。

息が、苦しい…まずい、足が地面についていない…浮かされているのか。

「貴様のお蔭でここまで返り咲くのに、手痛い出費をしたものだ。…あの男、ロバートもよくやった。

だが、能力は返してもらうぞ」

「……えぇ、返しましょう。この能力は、私にとっては出来過ぎた…」

…先生も、もう居ないんだっけ。

聖別で、…息が続かない。それに思考もまともに働かなくなってきたな、そういえば…総隊長、まだ、そこに…居るだろうか。

「…山本、殿」

先の爆発で採取したユーハバッハの肉片が入った試験管を視界に見えない山本へ放り投げる。…おそらく受け取ったのだろう、地面に落ちた音がしないのだからそう、思うしかない。

「師<お父さん>、この身…あなたと共に過ごせたこと……とても、楽しかった」

このまま、死ぬわけにはいかない。

聖別が起こる瞬間、霊子を流し込み最後っ屁と行きましょうか。私、バンビエッタは長らく舞台に立つ存在ではない、ゾンビになり果てるはずだった。でも、ゾンビだけは嫌で、ここまでやり遂げたのだ…最後は、絶対にゾンビになんてなりたくない。

「死ね、神の叛逆者よ」

頭上から、一筋の光が見える。

あぁ、アレを見た父さんは死んだのか。…きっと、魂までもが消えてしまうだろう…残酷だな、神様って。

私は柄にもなく、祈る様に手を伸ばし添える。

 

 

「神よ、我が身を持って鎮魂歌を謳いましょう…」

 

「滅法師完聖体 神の慈愛<サマエル>」

 

 

バンビエッタとユーハバッハを囲う様に、周囲に壁を模る光の柱が幾度も上空から突き刺していく。バンビエッタの身体は火花をまき散らし、背中の肉を抉り燃え盛る翼が生えその身体の血肉を炎に焼かれながらユーハバッハごと火を包む。

燃え盛る身体に、二つの光…金色に輝く瞳は曇り陰る事を知らず輝き続ける。

「く、くそ、…バンビエッタァア!!」

「…何を、慌てる。卿はこれ位、直ぐに……ゴブ、ゲフ…甦る、だろう」

「火が、燃える!“私は、私に…”ぐ!」

煩いぞ、死ぬならさっさと静かに死んでくれと付け加え足蹴りするバンビエッタ。

ユーハバッハは剣を手放し、炎から逃れようとするが光りの柱がそれを遮り、逃す事を許さなかった。僅かに宙に浮いていたバンビエッタは受け身を取れず、地面へと転がされる。

「ユーハ、バッハ…卿は、本当に哀れな児だ」

そう、今にでも消えそうな声を掛け胸部から噴き出る血液を垂れ流し、ユーハバッハへ声を掛ける。

「神は、いかなる万人もすべからく慈悲を与え、なさる…と言う。…サマエルである私は、神の慈悲は、…無いに等しい……。

神の敵対者、サタン……ふ、ふふ。我ながら、馬鹿な事を言うようになった…ガハ」

炎は勢いを増し、壁の中の全てを焼き尽くさんばかりに勢いを増す。

膨れ上がり、昇る黒い硝煙は天を貫く。

 

その様子を瓦礫の下から覗く一人の小柄な少女が居た。あちこち傷だらけで、埃被った姿で、ただジッと見据えている。

リルトットであった。

「…まるで、竜だな」

そう、零しながらポケットから小さな包みを取り出す。

包みを広げると、中は悲惨なものだった。ボロボロに砕け散った、クッキーらしきもの。リルトットはそれをつまみ一口、ひとくちと口に含んだ。

「…味気、ないな」

そう溢し、再度黒い硝煙を見た。

瞬間、黒い硝煙の後を追うように爆炎の柱が天へと突き刺した。劫火、それは全て残さない火である。

 

 

このあとの展開、それはバンビエッタには解らない終演だろう。

この劫火でユーハバッハはまた甦り、霊王を殺し一護たちに挑まれているかもしれない。はたまた、本当にユーハバッハは死んですべて焼かれたかもしれない。

だが、一つだけバンビエッタは遂行したのだ。

彼女がかねてから遂行しようとしていたこと、それは…ゾンビから逃れる事だ。

彼女は達成したのだ。経緯は本筋から大きくそれる事になっても、それでも彼女は成し遂げた…拍手を、賛歌を彼女に捧げて欲しい所である。

 




はい、幕は降りました。
これまで、応援評価してくださった読者様に感謝を、喝采を。
なんか違うだったりしますけど、もとはサマエルにしようと心掛けました。
ユーグラテスもまた叛逆者だと思ってます。
やだ、ユーハバッハの側叛逆者だらけやん。こわ。

とりあえずおまけまで上げて完結します。
ちょっとおまけは別れる話ですが、あくまで可能性と言い訳しときます。
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