五等分の花嫁 耳かきss 四葉編です。
風太郎編とも取れるかもしれないです。
暇つぶしにでも読んでくれたら嬉しいです。

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四女の欲しいもの

大きなリボンが特徴で運動神経抜群の四女、四葉。

誰とでもすぐに仲良くなれる明るさと人懐こさ。そして他人からのお願いを断れない超の付くほどのお人好し。かつては部活動に半ば縛られていたが上杉風太郎と姉妹の協力により解放された。才能の無い自分のことを見捨てず応援してくれている姉妹と風太郎のおかげで毎日明るく元気に過ごしている。

 

そんな彼女も風太郎に想いを寄せている。

6年前。京都で一度風太郎と出会いそれから今度は高校生になってからまさか家庭教師として再開するとは思ってもいなかった。

本当はすぐに私だと打ち明けたかった。しかし中々言い出せず、姉妹も風太郎に惹かれているのを知り自分の一歩を踏み出せずにいた。

 

四葉「上杉さん。私なんかがもっと我が儘言っていいんですか?上杉さんから欲しいもの、要求してもいいんですか?」

 

姉妹のことが大好きで、昔から5人一緒なことにこだわっている。

しかし風太郎への駆け引きでちょっとの間姉妹間でギスギスしてしまった。今はもう丸く収まり前のように仲良く戻ったが、今度は自分のせいで仲が悪くなってしまわないかが心配なのである。

 

四葉「みんな上杉さんを狙ってる、よね。みんなが幸せになればいいなって思うけどこればっかりは無理だよね……私だって、上杉さんのことは諦めきれないし。うあーー!私の頭じゃ何も思いつかないよーー!!」

 

頭を抱えテーブルに突っ伏す。

運動が出来ても勉強は他の姉妹同様てんでダメ。プラス天然が入ってるのが四葉だ。

漫画のような表現をするならば今の四葉の頭からは煙が出ているだろう。

プシュー、といい音が出てそうだ。

 

四葉「さすがに上杉さんにこのことを相談するわけにもいかないし」

 

風太郎のことを考えだす。

少し前に勤労感謝の日に彼から急に欲しいものは無いかと聞かれたことを思い出す。

あの時は五月の好きなレストランに行き、三玖の好きなスパに行き、一花の出てる映画を見て、二乃のためにショッピングに行った。

彼から四葉自身の欲しいものはなんだと聞かれ笑いながらこう答えた。

 

私が欲しいものはなんでしょうか

 

四葉「今なら……今なら上杉さんに欲しいもの、しっかり言えるかな。う、う……上杉さんが、ほ、ほし……ってー!これはさすがにやりすぎだよ私ー!!」

 

再び頭を抱え突っぷす。

 

四葉「で、でも上杉さんに何かして欲しい、な……思い切って頼んでみようかな……」

 

四葉は1人悩みながら休日を過ごしていた。

 

 

 

四葉「はぁー、昨日はあまり眠れなかったなー……」

 

あくびをしながら廊下を歩く。両手にはプリントを持っているので口を押さえることは出来なかった。

もともとそこまで気にしないタイプではあるが。

 

四葉「えーっと、このプリントは教室に持っていくやつ。これが職員室に持っていくやつ。これが」

 

風太郎「四葉」

 

四葉「わ!上杉さん!?どうしたんですか?」

 

風太郎「それは俺のセリフだ。なんだそのプリントの量は」

 

四葉「これですか?先生から頼まれたプリントです!」

 

風太郎「はぁ……相変わらずお人好し過ぎだ。そんなに渡す先生も先生だが。お前はもう少し断ることを知れ」

 

四葉「いやー、私なんかが役に立つならそれで嬉しいですから!」

 

風太郎「いいから半分寄越せ。一緒に行くぞ」

 

四葉「そんな!悪いですよ!!」

 

風太郎「俺だって誰かが推薦したせいでクラス委員長なんだ。お前だけにやらせるわけにもいかないだろ」

 

四葉「あ、あはは……ありがとうございます!」

 

 

 

四葉「上杉さんありがとうございました!おかげでかなり早く終わりました!」

 

風太郎「まったく、お前は何でもかんでも引き受け過ぎなんだ。許容量をいい加減覚えろ」

 

四葉「が、頑張ります!」

 

風太郎「それじゃあ俺は帰るわ」

 

四葉「あ、待ってください上杉さん!」

 

風太郎「なんだ?今日は勉強会の予定じゃないはずだが」

 

四葉「はい!今日は勉強会じゃないので、この後少し散歩しませんか?」

 

風太郎「散歩?」

 

四葉「今日のお礼をしたいので一緒に散歩に行きたいんです!」

 

風太郎「お礼ってお前……散歩したいだけなんじゃ」

 

四葉「上杉さん!さっそく行きましょー!!」

 

風太郎「おい!引っ張るなー!?」

 

 

 

四葉「今日はいい天気ですねー!」

 

風太郎「いい天気なのはいいが……もう少しペースを下げてくれ……散歩のスピードじゃないだろこれ……」

 

四葉「良い運動にもなっていいじゃないですか!」

 

風太郎「たくっ……今日はなんでまたこう強引なんだ……」

 

四葉にお礼がしたいと言われ散歩に付き合うことにした風太郎だが自分の選択を誤ったと早くも痛感していた。どうにも今日の四葉はこちらの意見を通さない。普段なら空回りするにしてもブレーキをかければある程度の矯正は出来るのだが今日はコントロール出来そうにない。

 

風太郎「よ、四葉……頼むから少し休もう」

 

四葉「もーしょうがないですね上杉さんは。あ、ベンチがありますよ!座ってゆっくりしましょう!!」

 

風太郎「た、助かった……」

 

公園のベンチに2人で腰かけしばしの休憩を取ることにした。

四葉の体力に風太郎が付いていけるわけもなく座ってからもしばらくは肩で息をしていた。

隣に座ってる四葉はケロッとした顔で涼んでる。

いったいその細い体のどこにそんな無尽蔵ともいえる体力があるのか。風太郎の解けない謎の1つである。

 

四葉「上杉さん大丈夫ですか?」

 

風太郎「はぁ……なんとかな」

 

四葉「上杉さんも私と運動しましょうよ。もっと体力つけたほうがいいですよー」

 

風太郎「体力なくても勉強は出来る……問題ない」

 

四葉「えぇー……」

 

風太郎「……そんなことよりだ。四葉、早く用を言え」

 

四葉「ふぇ?」

 

風太郎「だいたいお前が強引にくるときは何か自分だけ省くときか要求するときだ。いい加減俺もお前らの癖くらい分かってる」

 

四葉「ま、まさか上杉さんがそこまで女子の事を理解でき…あっーー!リボンは!!リボンだけはやめてください!!」

 

風太郎「こっちはお前の散歩という名のランニングに付き合わされてクタクタなんだ。早いとこ吐かないとリボンがどうなるかわからんぞ」

 

四葉「リボンを人質に取るなんて卑怯ですよ!?わっー!それ以上は!それ以上はお許しを!!言いますから!言いますからーー!!」

 

風太郎「で、なんのために俺を付き合わせたんだ?」

 

四葉「そ、それは……そのー……えっとー……う、上杉さんにお世話して欲しいなー、なんて……」

 

風太郎「……は?」

 

四葉「だ、だからですね!?以前上杉さんに言われたじゃないですか。私の欲しいものはなんだって。私考えたんです。私って何が欲しいんだろうって。姉妹5人でいれれば満足ですし欲しいものは無いって思ってました。でもようやく少しだけ分かってきた気がするんです。上杉さんはもう私にとって姉妹同然の大切な方です」

 

風太郎「……お前の世話なら勉強教えてるわけだしもうしてるだろ」

 

四葉「そ、そういうお世話じゃなくてですね。女の子としてお世話して、欲しい、なー……」

 

風太郎「……」

 

四葉が不安そうな目で見てくる。

普段の活発でキラキラしてそうな瞳から少し潤んでいる瞳に変わっていた。

そして何よりあの日言ったことを覚えていて自分の思いを見つめ考えていたことに驚いた。

あの四葉が自分でしっかりと答えにたどり着いた。

勉強とはかけ離れているとはいえ家庭教師で普段面倒を見ている風太郎からしたらちょっと心を揺さぶる何かがあった。

 

風太郎「はぁ……分かったよ。何をして欲しい?」

 

四葉「上杉さん?」

 

風太郎「問題ではなかったかもしれない。だが確かに俺はお前に聞いた。欲しいものは何か、と。その答えを言われた以上応えるしかないだろ」

 

四葉「っ!ありがとうございます!!」

 

 

 

風太郎「……お前。最初から狙ってやがったな」

 

四葉「しししっ。でも上手くいくか分からなかったですから」

 

風太郎は四葉の頭を膝に乗せている。

膝枕。

四葉にお世話して欲しいと言われ何をすればいいと聞いたら返ってきた答えがこれだ。

まずは膝枕をしてください!!

膝枕って女が男にするもんじゃないのか?と聞いたがそんなことないですよ!と押し切られてしまった。

 

風太郎「なぁ四葉」

 

四葉「はい!なんですか?」

 

風太郎「いや、こんなんでいいのかと」

 

四葉「いやー、上杉さんの膝枕はなかなか快適ですよ!」

 

風太郎「男が膝枕を褒められてもな……」

 

四葉「いいじゃないですか!嫌って言われるよりは!」

 

風太郎「そうかもしれんが」

 

四葉「それにまだして欲しいことはありますよ?」

 

風太郎「次は何をさせるんだ?」

 

四葉「ふっふっふ、これです!」

 

四葉はポケットに手を入れ何かを取り出した。

木製の細い棒。片方だけに白い綿毛が付いている。

耳かき棒だ。風太郎も見た瞬間に理解した。が、それが出てきたことについては理解出来なかった。

 

風太郎「耳かき棒だな」

 

四葉「はい!耳かき棒です!」

 

風太郎「お前のか?」

 

四葉「はい!私のです!」

 

風太郎「そうか、良かったな」

 

四葉「はい!……って、えぇ!?なんでそんな流れに!?」

 

風太郎「流れも何もお前が見せてきただけだろう」

 

四葉「はぁ……まだまだ上杉さんも勉強不足ですね」

 

風太郎「なんでそうなる」

 

四葉「いいですか?膝枕されてる女子が耳かき棒を出したんですよ?これはもう耳かきするしかないですよ!」

 

風太郎「……え?俺がお前に?」

 

四葉「さすが上杉さん!正解です!」

 

風太郎「嬉しくねぇ正解だな。ホントに俺にさせんのか」

 

四葉「私がして欲しいので!」

 

風太郎はため息をついて四葉から耳かき棒を受け取る。

耳かきなんて自分にすることはたまにあるが他人にするなんてことは全くない。妹のらいはにすらしたことない。それこそ耳かきを生業にした人でないとなかなかないことだろう。

さらにいえば耳かきを素人にやってもらうなんてコイツは馬鹿なのか?いや馬鹿なのは知ってるが。

耳は人間の大事な器官だ。一歩間違えれば病院送り待ったなしの行為だ。

 

風太郎「……後悔すんなよ」

 

四葉「しませんよ。上杉さんにして欲しいです」

 

風太郎「分かったよ。ほら、じっとしろ……耳摘むぞ」

 

四葉「んっ……」

 

風太郎「す、すまん!痛かったか?」

 

四葉「だ、大丈夫です!続けてください!」

 

風太郎「わ、わかった」

 

四葉の耳を摘み耳穴を少し広げ耳かき棒が入るようにする。

時間帯は少し日が落ちているがまだ明るい。耳の中は日に照らされてオレンジ色に染まっている。自分の耳をまじまじと見たことなんてないが四葉の耳は綺麗だと直感的に感じた。女子なんだからしっかりと清潔にしているのだろう。耳かきする必要が果たしてあるのかと疑問に思ったが言わぬが吉だと感じた。

 

カリカリ……カリッ

耳かき棒を四葉の耳に入れる。

もちろん耳かきの知識なんてある訳も無く、適当にやっているだけだ。

ただ力加減だけは間違えるなと自分に言い聞かせる。

カリ……カリッ……

 

四葉「ん……うぅ……えへへ」

 

風太郎「な、なんだ。変な笑い方するな」

 

四葉「いえいえ、私幸せだなーって感じたんです」

 

風太郎「幸せ?」

 

四葉「上杉さんの耳かきは私を幸せにすることが出来るみたいです!」

 

風太郎「よくわからん持論を出すな。それとあまり動くな。病院行きになるぞ」

 

四葉「了解です!」

 

本当に分かってんのかと突っ込みたくなったが自分も今はあまり動けない状況なので我慢した。はぁ、とため息をして再度耳かき棒を持ち直し耳の中へ。

カリカリカリ……

カリカリ……コリッ

一瞬違和感を感じた風太郎は四葉の耳を摘みあげる。

目を凝らして見ると違和感の正体らしき物を見つけた。

見た感じ奥ではなさそうだが素人の自分に取れるのかはわからない。しかし四葉が自分を信じて耳かきをお願いしているのだとしたら応えてやりたい。

息を整え気持ちをリセットし、耳の中へ。

コリ……コリッ……カリカリカリ

 

四葉「ん、んぅ……」

 

風太郎「悪いな四葉。ちょっと我慢しろ」

 

四葉「う、うん」

 

カリカリ……コリッ

コリッコリ……

耳かき棒を一旦抜いてもう一度確認する。

さっき感じた違和感はどうやら耳垢のようだ。耳の中なんだから当然といえば当然だが。

耳垢をしっかりと捉えられるように耳を摘み攻めていく。

コリッコリッ……

コリコリッ……

少しずつだが剥がれていってるのは耳かき棒伝いに感じる。

焦って四葉の耳を傷つけるわけにはいかないので慎重に。

コリッ……ググっ

耳かき棒が耳垢を捉えたようだ。そこまで頑固ではないようなので外堀から攻めていく。

カリカリ……ゴリッ

 

四葉「あ、ん……」

 

四葉から声が漏れる。いつもの元気な声ではなく扇情的な声。

無意識に出たようで本人も気づいていないようだ。

風太郎もなんだかんだ耳かきに集中しており普段四葉から発せられないであろう声をスルーしていた。

グリ……グリッ

コリコリ……

 

四葉「あ、んぁ……ぅうん……」

 

カリカリ……

ググっ……グリッ

耳垢はもう少しで取れそうなのか風太郎も真剣だ。

クリ……グリッ

コリッコリコリ……ゴリッ

 

四葉「んん……っ」

 

風太郎「よし、取れたぞ四葉」

 

四葉「は、はい。ありがとうございます」

 

風太郎「ん?どうした四葉。少し顔赤……」

 

四葉「う、上杉さん!反対の耳もしてください!」

 

風太郎「お、おい!?」

 

四葉は風太郎のお腹に顔を埋めるように寝返りをした。

風太郎は観念したのか耳かきを始める。

カリカリ……カリカリ……

 

四葉(わ、私ったらあ、あんな声出しちゃって……は、恥ずかしいよー!!上杉さんの方今は見れない!しばらくこのまま落ち着くまで……)

 

カリカリ……カリカリッ

風太郎は四葉がこちらに顔をうずめて黙ってしまったので無言で耳かきを続ける。

頭がさっきより近くになっているので少しやりやすくなっていた。

カリッカリ……

カリカリ……

風太郎は耳かきをしながらも四葉の事を考えていた。

最初は勉強を教えて卒業させるだけを考えていた。

だがそれだけではダメだ。その先も一緒に考えてやろうと思い、四葉達の父親にも宣言した。まぁその時に父親に釘を刺されたわけでこちらからは少し距離をおくつもりだったんだが向こうからドンドン距離を詰めてくる。

最初こそ戸惑い意味が分からなかった。しかし二乃の告白を皮切りに自分もなにかが少しずつ変わっていくのを感じた。

恋愛。前までは一蹴していたがあんな真剣な眼差しと想いを馬鹿にする気は今はない。

まだまだ自分でも上手く理解出来ていないがコイツらと一緒にいればきっと真に理解出来る。そう感じていた。

 

カリカリ……コリッ

コリコリ……

反対側の耳はさっきみたいな耳垢はなさそうだ。このまま耳かきを続けても傷を付けてしまうだけだろう。

 

風太郎「四葉。こっちはこれで終わりだ」

 

四葉「……」

 

風太郎「四葉?聞いて……」

 

四葉「すぅ……すぅ……」

 

風太郎「寝てやがる……」

 

耳かきの途中でどうやら四葉は寝てしまったらしい。

規則正しい寝息が聞こえる。以前の自分だったらすぐに叩き起こしただろう。

だが今は……

 

風太郎「まぁ……たまにはいいか」

 

自分でも驚いたが四葉の頭を撫でていた。少しでも自分の膝の上で休めるのなら。

今くらいは膝を貸しておいてやろう。そう思った。


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