革命呉に時間と精神を削られておりました。
なかなか時間をうまく使えず、皆様には多大なるご迷惑をおかけしております。
頑張ります。
反董卓連合解散後俺たちは一時的に洛陽に留まり黄巾党の残党と一部の暴徒(袁紹と袁術軍)の所為で荒れた街の復興をしていた。
全く、本当に袁紹軍に身置いていて良いのか考えさせられるぜ…
「あ!北郷さん!」
声をかけてきたのは劉備だった。
昨日の酒盛りの後。殆どが二日酔いでうな垂れていたので俺たちの天幕に寝かせていたのだ。
朝無事に起きれたのは、月、詠、霞の三名のみだったので
仕方ないが4人で炊き出しをしている。
「二日酔いはもう良いのか?」
「はい!もう大丈夫です。北郷さんも大丈夫ですか?昨日私達より遅かったですよね?」
「まぁ、いつも通りだよ」
一刀はそう言って汁物の調理に意識を戻した。彼なりの拘りがあり、丁度いい状態で具材を入れて料理したいのだ。
「今、炊き出しをしてるんですか?手伝います!」
正直では足りているから休む様に言うつもりだった一刀だが予想以上に近い距離でグイグイと接近され思わず口を零してしまう。
「ああ、ありがとう。それなら向こうを手伝ってあげて」
「わっかりました!」
劉備は月達の方へ走っていった。
正直向こうも手が余っているだろうと思うが
俺の身に何かあった場合、劉備の所へ降るのが最善。
ならば、将と将の交流は多い方がいい。
まぁ、咄嗟の判断にしては我ながら良い判断だな。これから乱世は更に深まって行き情勢は不明瞭だ。
俺がいつまでこちらに居られるかわからない以上歴史に名を残している劉備に近づいて居た方が彼女の未来は少しは長くなるだろう。曹操や孫堅とも考えたが月達を受け入れるというより利用しようと考えるだろうからな。
「ほう、君主自ら炊き出しとは中々味な事をする。」
考えながらスープに具を入れていると
思わぬ人物から声をかけられた。
「まさか、こんなにいきなり来るとは思っても見なかったよ…孫堅さん」
全然気を感じなかった…
「あははは、何分暇なのでな北郷と次の段階の話をしに来た。」
目の前に現れたのは、孫堅だった。
決戦前夜に話していた件の続きだろうか。
「ははは、暇だからね。」
「帰っても、溜まっている政務やら何やらがあるのでな!」
「それは暇じゃないでしょ!早く帰った方が良いでしょ!」
「そうだな、政務も必要な事だが北郷との対話も今後の我々に必要な事のだ。」
「…随分と含んだ言い方だね。次の段階ってどういう事?」
「何、簡単だ袁紹との契約期間は残り僅かであろう?それまで我らと同盟を組んでくれないか?」
「かの有名な孫呉と同盟を組めるなんて有難いけどそっちに利益があるの?」
「ある、大いに。」
「参考までに教えて頂きたいのですが」
俺たちと同盟を結ぶメリットを知っておけば今後の駆け引きに使えそうだ
「それは同盟を結んでからだ」
「ですよね。その同盟の条件は何?」
「ふふ、二つ返事を期待していたが中々食えんな…条件は一つ…江東で同盟の義を行う。二つ…年に何回か江東へ訪問する事。この二つだ。」
勿体つけた割に随分と軽い条件だった。いや、寧ろありがたいと言えばありがたいぐらいだ。何か裏がありそうだけどね。
只々、江東に行く事を袁紹が許すかな…
「わかった、それでいいよ。ただ少し時間をくれないか?少しこの街に留まった後袁紹に許可を貰わないと動けないからさ」
「構わん、待っているぞ」
そう言い残し孫堅は去っていった。
と思いきや孫の牙門旗を持った何人かの兵が兵糧を持ってきた。孫堅からの手土産らしい。俺たちと同じ事を考えて居たんだろうか。
本当に助かる。正直、袁紹はケチだからそこまで兵糧をもらえなかったんだよな国力はあるはずなのに…
「一刀様。こちらは終わりました。」
「本当、人使いの荒い奴ね。」
「いや、君には何も頼んでないけど?」
「うっさい!!」
「あーはっはっはっ!!賈っち一本取られたな。」
「いや、事実を言っただけなんだけどなー。あ、劉備もありがとう!」
「いいえ、私達も炊き出しをしたいと思っては居たのですが兵糧が少なくて汜水関で精一杯でした。」
汜水関でも炊き出ししたのか、流石は仁徳と名高いあの劉備と言うわけか。
でも、戦いが終わっていないあの時にその選択をしてしまう劉備はちょっと王としては問題だな…近づく相手の選択を間違えたか?
「北郷さん?」
「ん、ああ、ごめん考え事してた。そろそろみんなを起こしに行こう。」
それから俺たちはこの街に2日〜3日滞在した。
狙って居たかの様に新たな領主が決まり俺たちは炊き出しをやめ、帰る分以外の兵糧を街に置いて城に戻る事にした。
他の街の復興もそうだけど俺が知る三国志で言う乱世の始まりが見えてきた事もあり拠点の護りを固める必要があると考えたからだ。
「なぁ隊長。」
「ん、何だ真桜?」
「ほんまにこれで平和になるんかいな」
それは素朴な疑問だった。
世を乱した董卓は表向きは死んだ。だが、この戦いの本質は世の為ではなく私利私欲…乱世の始まりの鐘に過ぎない事を俺は知っている。
嘘を言って気を抜くよりは現実を伝え気を引き締める方が良いだろう。
せめて此処にいる仲間だけは志を同じくしていかなければならないからな。
俺のせいで死んでいった者達の願いを背負って…
「んー、ならないだろうね。」
「えー沙和もう戦いたくないの〜」
「こら、真桜!沙和!そんな事を隊長の前で!!」
「いいんだ、凪。戦いたい者もいればそうでない者もいるそれが人だよ。だからこそ戦う意味や理由が必要なんだ。死んでいった者たちの分も俺たちは生きて平和な世を創らなければならないんだ。」
「はい、隊長のお気持ち痛いほどわかります。」
「ありがとう…頑張らないとなぁ、俺たち。」
「一刀様の様な方ばかりでしたらすぐにでも平和な世が出来ると思うのですが。」
「そんな簡単な話じゃないわよ。人間にはそれぞれに考えや信念があるんだから」
「せやな、誇りちゅうのは命より重いからなぁ」
「それでも一刀様の願いを果たすのが私の使命です。あぅ」
言ってて恥ずかしくなったのか目の前で俯いてしまう雛里。
自然と頭に手を乗せて撫でてしまう。
俺の前に座る雛里を撫でていると背中から殺気の様なものを感じた。
うん、気のせい気のせい。
「隊長ー。みえてきたでぇー」
「はぁー帰ったら暫く休みたいなー」
「隊長、恐らく政務が溜まっているかと」
「凪ちゃん真面目過ぎなの〜」
「一刀様、私も手伝いますので…あの…頑張りましょう、へぅ」
「ありがとう雛里。」
お礼を言いつつ頭を撫でてあげるとまた下を向いてしまう。
あーもう!可愛いな!!
さっきとは別に若干周りから痛い視線を感じるけど気にしない!
俺たちが戻ってすぐに袁紹から使いの者が来た。
内容が復興の目処も立ったのでそろそろ配下に加わらないかと言う内容だった。
この時期にこの話をしてくると言う事はすぐに戦を始める気だと考えた俺は一旦同盟にしてもらう為の交渉をしに袁紹の元へ向かった。
疲れが取れていない状態での強行軍…しんどい…体調的にも精神的にもあまりいいものではないけど此処は逃げちゃダメな所だ。
救いなのはみんなが来てくれる。
拠点には正体がバレたらまずい月と詠、
軍師として雛里、あまり表立って活動できない黄巾4姉妹、新たに召しかかえた知将、王経を残してある。
数日で着くからまぁ遠くは無いけれど大変なんだよなーこの時代の移動手段って…
だって馬だぜ。お尻が痛い痛い…
冀州まであと少しのところで俺たちは夜営する事にした。
冀州に入ってしまうとどこで監視されてるかわからないからだ。
袁紹がそんな狡猾な事は出来ないだろうがあの軍師は底が読めない。
本当恐ろしい奴だ…
「あー緊張する。」
「しっかりしいや!一刀。建国の第一歩なんやろ?」
「わかってるんだけど、下手したら全員敵になるかもしれない所に行くのは正直、嫌だよ。」
「沙和、ちょっと怖いけどみんなと一緒だから平気なの!」
「せやな!隊長がおればなんとかなりそうやしな」
「隊長、私達は何処であろうと共に行きます。」
たった数十人で敵国へ行く事がどんだけ無謀な事かは分かっているつもりだ。
正直ビビっているけどこれをやらなければ属国のままになってしまう。
俺は平和な国を作る事それが俺の為に散っていった者達に報いる唯一の方法だと考えた。
その為に袁紹の庇護下にいる状態から自ら君主として建国する必要がある。
しかし、あの袁紹にも恩はある。
だから、その義理を果たす為に袁紹と同盟を結び、属国とは別の形で恩義に報いるつもりだ。
「悩んでても仕方ないな。今はできる事やるだけだな。」
「その通りです!隊長!」
「明日は気張らなあかんからな、しっかり体を休めとこ!」
「夜更かしはお肌の敵なの〜」
「早いとこ寝るで!」
皆んなが寝静まった頃を見計らい目を開けた。
寝たふりでやり過ごしたが俺は眠れなかった。
天幕から出て空を見上げながら考えていた。
歴史は狂う事なく動いている。
死ぬ筈の者を生かし歴史を確実に改変しているにも関わらず大局は物語を書き換える事なく続いている。
もし俺のやってきた事が意味を成さないとしたら……
そもそも歴史を変えてしまったら現代の俺はどうなるのか?
あるいは未来に帰るのか?
御遣いの役目を終えたら俺は消えるのか?
そもそも乱世を鎮めるは俺が居なくても出来るのではないか?
そんな疑問が浮かんでは消え浮かんでは消えていく。
不安故なのか…
何かを諦める為のなのか分からないが…
ただ一つ言えるのは他の人間に害が及ぶより自身が滅ぶ可能性が高いという事。
何故なら俺が別世界の人間だから…
その結論は俺の心にそっと小さな影を落とした。
朝、俺たちはすぐに袁紹の元に使いを出し
袁紹の本拠地に足を踏み入れた。
街は意外にも活気があり、民達が喜んでいる風に見える。
約定に従って高い税を辞めてくれたのかな。
城門の前で斗詩が俺たちを出迎えにきていた。
「一刀さーん!」
「斗詩、久しぶりだね。」
「はい、一刀さんも皆さんもお変わりない様で!」
斗詩はそう言うとささっと城へ通してくれた。
道案内として迎えを寄越したのか、罠なのか。
斗詩の善意だけなのかもしれないが状況が状況なだけに疑心暗鬼になってしまっている。
まぁ、仲間の命を背負う君主なんだそれぐらいが丁度いいのかもしれない。
しばらく歩くとあからさまに豪華な扉の前で斗詩は足を止めた。恐らく謁見の間だろう。
「麗羽様は既にいらっしゃいますので、どうぞ」
扉を開けると中規模ライブぐらい出来そうなほど広い謁見の間が目に飛び込んで来た。
俺たちの城とは比べ物にならない広さの部屋に圧倒的な国力の差を見せつけられる。
「あーら、北郷さんお待ちしておりましたわ。」
一刀は袁紹からの挨拶を皮切りに気持ちを切り替えた。
「大変お忙しい中、お時間を作って頂き有難う御座います。袁紹様より頂きました書簡を拝読し参上致しました。」
「書簡?私は出しておりませんわ」
「麗羽様、あの件で私が出しました。」
横で沮授が耳打ちの様な進言をした。
袁紹の名前を勝手に使ったと言うことになるがそこはどうでも良いのだろうか…
「そーでしたわ!北郷さん。そろそろ私の配下になる返事を聞かせて頂きたいんですが?」
「その件で恐れながら提案が御座います。この度、私北郷一刀は、君主同士の同盟を結ばせて頂きたく参上致しました。配下ではなく盟友として軍列に加わりたく存じます。」
俺がそう話しをすると沮授は、不気味な笑顔を浮かべ袁紹に耳打ちをした。
袁紹は沮授の方を見て再度、一刀を見た。
そして数秒の沈黙の後、袁紹は口を開いた。
「いいですわ。但し条件があります。」
「こほん、一つ我が軍の将軍を一名客将として迎える。一つ定期的に我が領内へ訪問をする。一つ他国との衝突があった場合、共同で事に当たる事。以上の3つを盟約にするのは如何かな?北郷殿。」
タダでとは考えてなかったがまさか、軍事まで盟約に盛り込んでするとは。
やはり、天下を狙っているのか袁紹は…
「……一つ問いたい。この盟約を交わすと言う事は袁紹軍は何処かの国に宣戦布告を受けているのか?」
「そうではなく、あったらの話ですよ北郷殿。」
沮授はそう言って俺の前へ降りてきた。
そして、小さい声で耳打ちをした。
「従ってくださいませ。この盟約は北郷殿を縛る為のものではありませんのでご安心を…」
確かに沮授はそう言った。
この条文の何処が縛るものでないと言うのだろうか?
それともこの盟約の裏に何かがあるのだろうか…
「それはどう言う事?」
「時機にわかります。そう遠くない未来で」
「わかった。どうせ選択の余地は無いんだ。なら君を信じるよ。虎牢関でも助けてくれたしね。」
「ふふ、ありがとう御座います。」
沮授はそういうと立ち上がり袁紹に条文を持って上がって言った。
そして、彼女は袁紹に耳打ちをし袁紹の隣に立った。
彼女が定位置に移動したのを確認すると袁紹は声を大にして言い放った。
「北郷さん!貴方の申し出をお受けいたしますわ!私、袁本初の名の下に北郷さんと同盟を結びますわ!」
その言葉を聞くと後ろに控えている。凪達が一斉に跪いて頭を垂らした。
それも効果音でザッと聞こえてきそうな勢いで…
格式なのかそう言うものなのかは知らないけどとりあえず俺も真似した。
「皆さん、これからは盟友ですわ!ささやかですが宴を用意致しましたのでどうぞ彼方の部屋へ。」
俺が立ち上がりみんなの方を向いた瞬間袁紹から呼び止められた。
「ああ、北郷さん。風歌さんが貴方と話がしたいそうですわ。」
「…わかった。」
個別の呼び出し!?
これは何かある。
「隊長。大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だよ。少し話をしてくるわ」
一刀は沮授に導かれるまま謁見の間を後にし軍議を行う様な部屋へと入っていった。
大きな机を間にして一刀と沮授は相対するように座った。
最初に口を開いたのは沮授だった。
「早速ですが北郷殿。北郷殿の国の名前は如何するのですか?」
「いきなりだね。でもさ、朝廷が居るのに国を建てるって不味く無いの?。」
「北郷殿も気づいているのでしょう?最早、朝廷に力は無く、形のみだと言う事を…」
彼女は朝廷の擁護を掲げる袁紹とは全く別の話を始めた。
「各諸侯の領土争いの時代が見え隠れしております。董卓の敗走後、諸侯達は均衡を保てないでしょ。あの戦いでお互いの力を知ってしまいましたから」
「だからこそ、今建国し名を示すって事?」
「そうです。新たな国が出来て同盟を結ぶ相手が最大の軍事力を持つ勢力ならば民や物資が集まるでしょう?」
確かにこの時代に警察は無い。強い者の庇護下に入れるか否かで人生左右される。
彼女の意見には歴然としたこの時代に置いての利がある。しかし、この話だとまるで俺たちを大きくしようしている様に感じる。
彼女の意図が読めない…
「わかった。実は国の名前は大和に決めてたんだ。」
「大和ですか。良い名ですね。」
国名を沮授に伝えると要件は終わった様で沮授は立ち上がり出口へと足を運んだ。
それを確認し俺も席を立った。
誘われるままに部屋から出ようとした時付け足す様に沮授は言った。
「それから一刀様。これからは私は風歌とお呼びください。」
「風歌さん?」
「いえ、風歌です……」
後でわかった事だけど、客将としてくる袁紹軍の将は風歌だった。
自分の右腕の軍師を客将にするなんて正直理解に苦しむわ。
ようやく建国しました。
名前は使い古されていますがしっくり来る大和です。
一刀君がこれから進む先で袁紹との関係はどうなるのでしょうか?
乞うご期待です。