竜衣の戦士と竜騎士《ドラグーン》   作:Nokato

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第三話『廊下の談笑』

 

 

 

 入学式が滞りなく終わった後、ミラとキールは他の生徒達が自身の教室に向かう中別の場所に向かうべく、閑散とした廊下を歩いていた。固まった身体を解すべく呑気に伸びをするミラを横目に、キールはミラが寝た後の事を話し始める。

 

 

 「あの愚帝の挨拶の後にあった事ですが、予定通り生徒会代表が舞台に立ち、激励の言葉と生徒会役員の紹介、並びに主だった委員の長の紹介をなさっていました」

 

 「……あぁ、なんだ。そんな事を報告するよう頼んでいた気もするな」

 

 「まだお寝惚けですか?しゃんとしてください、これから理事長に挨拶するのですからしっかりとしてもらわなくては困りますよ」

 

 「悪い悪い。ちゃんとするから、続けてくれ」

 

 

 言うだけ言って興味無さげに両手をポケットに突っ込んで気怠そうに前を見て歩く主にキールは小さくため息をつくが、言われた通り続けることとし、再び口を開く。

 

 

 「はぁ……生徒会の役員の中には、まぁ聞いていた通りですが第二皇子(・・・・)第二(・・)第三皇女(・・・・)もおられました。後は委員の長に帝国貴族が数名、まぁ名は憶えなくてもいいでしょう」

 

 「懐かしいな。兄上に姉上達か、顔だけでも見ておけばよかったかな」

 

 「変わらずでありましたので、見る価値はなかったかと」

 

 「そうか。ならばそうだったのであろうな」

 

 

 自身の家族、しかも血の繋がった兄弟の事であるのに全く興味のないミラ。これも変わらずだが、キールはそんな主を見て少しだけ同情する。

 

 幼くして化け物扱い、挙句には無能布告をされ生き育ったミラは当然のように家族との縁も薄い。唯一関わりを熱く持っていたのが同じく戦場にいた第一皇女だったが、仲が良好だったとは言えないのでミラはとことん家族なんかに興味はなかった。それをキールは思いやるが、当の本人はまったく気にしていないので気持ちを切り替えて続けた。

 

 

 「続けて新入生代表ですが、これは一見の価値ありかもしれません。機会があれば、でいいでしょうが、アレはこの歳にしては珍しく戦場を経験している顔でしたよ」

 

 

 これには流石のミラも少し興味を示したのか、垂れ下がっていた眉も瞼もあげて口を開く。

 

 

 「ほう……血の臭いでもしたか?」

 

 「猛者、ではないでしょう。別に魔物を殲滅した経験でもなければ敵国を壊滅に追い込んだわけでもないかと。ただ、戦場で等しく味わう恐怖を知っていて、それを乗り越えた顔でした」

 

 「地獄で生き残ったか。良い面構えなのであろうな、ソイツは」

 

 「良い女でしたよ」

 

 「女か。益々興味があるな。どこの国の者だ?まさか帝国ではあるまい」

 

 

 ミラがそう問うとキールはほんの少しだけ間を空け、眼鏡の位置を直してからこう言った。

 

 

 「ガルフォニア王国です。長年、帝国とは冷戦状態にある国ですね」

 

 「獣人を保護する珍しい国、か。興味深い、是非とも話してみたいものだ」

 

 

 獣人とは、遠く祖先から獣の如き力を発揮せんと言われている人種だ。その血からの多様性と強力さから魔物と交わった汚らわしい血筋とされ、クレイドル帝国を始め数国では入国すら禁止され、見つかれば即奴隷落ちとされてきた。ガルフォニア王国はそんな獣人に王族が救われた国であり、獣人に働き先をやり、厚く保護している国であった。そんな経緯からクレイドル帝国とは昔からよく小さな争いを続けている。

 

 

 「もしそうなさるおつもりなら止めませんが……彼女、恐怖を乗り越えてなお正義感に溢れる傑物でしたので、ミラ様……ミラとは合わないかと。救いの為なら自己犠牲も厭わないような印象を受けました」

 

 「いいことではないか。まるで夢見る聖乙女おとめだ。戦場に出てなおその馬鹿らしい志を捨てぬのであれば、ある種尊敬に値する。周囲の士気も上がろう。美しかったか?」

 

 「大変に。貴方の瞳と同じ髪色に、海よりも美しい蒼の瞳でした」

 

 「是非見てみたいものだ……っと、丁度着いたか」

 

 丁度話が落ち着いたタイミングで二人は目的地である理事長室に到着した。

 

 「ええ。ではさっさと入室してしまいましょうか」

 

 「そうするとしよう。下らん話だどされようものなら、どうしてやろうか」

 

 「どうもしないでください。学園生活を楽しみたいのでしょう?」

 

 「はっ……お前に免じて、今日は控えめにする事も考えておこう。今日以降にな」

 

 

 そういうとミラはノックもなしに重厚なドアを軽々しく開いた。その光景にキールは早速顔を歪めるがすぐに持ち直し、もうこうなったらと自身の主同様に堂々とその中に歩を進めていった。

 

 

 




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