「ルート! そろそろかえろうよ!」
「なにいってるのおにいちゃん! これはつよくなるチャンスなんだよ? おにいちゃんだって『えいゆう』になるためにはつよくならなくちゃいけないんだよ?」
「でもっ、このもりには入っちゃダメだってみんながいってたし……」
「じゃあおにいちゃんはかえればいいでしょっ。わたしは『せかいさいきょう』になるためにたたかってつよくなるの!」
「うぅ、でも〜」
ガサッ
「っ」
「ガルルゥッ」
「っ、か、かかってこい!」
「ルート?! ぼくたちみたいなこどもにかてるあいてじゃないって! にげるよ!!」
「いやだ!!」
「いいかげんにしろ!! そんなにたたかいたいんだったらかってにすればいいよ! ぼくはかえるからな!」
「あっおにいちゃん…………っいまは、あいてにしゅうちゅうしなきゃっ」
「ガウッ」
ダッ
あ、だめだ……避けなきゃいけないのに、カラダが動かない。なんで、さっきまで……
ああ、そっか。さっきまではお兄ちゃんがいたから……
スッ
コボルトが右腕を大きく振りかぶるのを私はただみつめることしかできない。
私、死んじゃうのなか……そうなったら、お兄ちゃんやおじいちゃんにも会えなくなっちゃうのか。
そんなの嫌だっっ
私は世界最強になるんだ! だから、こんなところで立ち止まるわけにはいかない!!
「ふっ」
私はとっさに右に避ける。が、間に合わず、背中をコボルトの方に向けて避けてしまったためコボルトの鋭い爪が私を襲う。
「ぐぁ?!」
ブシャァアアア
「ぁ"ぁぁああ"ああ"」
逃げなきゃ……
「ガルゥッ」
でも、もうカラダが……
「ひっく、ぅ、ぐすっ」
やっぱり、私なんかが世界最強を目指すのは間違ってたのかな。
違う、だめだろ! 私自身が一番そんなこと考えちゃだめだ! この気持ちを否定しちゃだめなんだっ。
でも、それももう……
お兄ちゃん、おじいちゃん、いつもわがままばっか言って困らせごめんなさい。
心配ばかりかけてごめんなさい。
「うぅ、ずずっ」
お兄ちゃんとおじいちゃんよりも早くに亡くなる不孝者でごめんなさい。
私に素敵な夢を見させてくれて
こんな私に優しくしてくれて
「あり、がっ、とうっ」
大量の血が一気になくなった私はそこで意識を失った。
「はあ、はあっ」
思わずルートを置いてきちゃったけど、これじゃ僕の目指してる英雄にはなれないよね。
でも、僕の力じゃルートを助けられないっ。
そんな今の僕ができることは……おじいちゃんやみんなに助けを求めることだ!
待っててルートっ、必ず助けを呼んでくるから!!
「このさきです! いそいでください!」
「おう!」
大人の人を呼んできた僕はルートと別れた場所に来たけどそこには誰もいなかった。
「なあ、ベルくん」
「なんですか?」
「ルートちゃんここで別れたんだよな?」
「はい……あっ、もしかしてみつかったんですか?!」
僕はついうれしくなっておじさんの側に駆け寄った。
「それで! ルートはどこ……で、すか……」
駆け寄った僕が見たのはルートの姿ではなく、地面に広がる血の海だった。
「ぅあ、ああ、あ、ぁ……ぉえ"、げぼっ」
ああ、もし、あの時無理矢理にでもルートを引っ張って逃げていたら……置いていかなければ……
「ご、めんっ。ルートォッ」