第1話「転生」
目を開ける。
眼前に広がるのは生い茂る木々と、未だ肌寒い空気の中で、その隙間から差し込まれる暖かで穏やかな太陽の光。
動きにくい首で何とかキョロキョロと見渡しても、あるのは立派な木々達と草花。
そして、どうやら自身の後方には巨大な世界樹のような桜の巨木が花を少しずつ散らしながら立っているようだ。
ここは外で森の中だと言うことは理解出来るが、何故このような場所に自身が存在するのかは理解できない。
更には首もそうだが全身も動きにくい。
布に包まれて居るのはかろうじてわかるが、手も足も、自身の思うようには動かない。
仕方なくゆっくり動き手を外に出し
、眼前に持っていく。
うん、とても小さいなぁ~って!?
何じゃぁ!こりゃぁ!
いや血は出てねーぜ?
撃たれてもねぇ!
いやでも血行がええから手は赤みを帯びとるが……っじゃねぇ!
ちっさ!柔らか!ふにゃふにゃやんけ!骨あるんか?
てか頭身もちぃせぇ……。
俺は現状をほんのちょっぴりだが体感した。
い、いや、体感したというよりはまったく理解を超えているのだが……。
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!
俺は、目が覚めたら赤子になっていた!
な、何を言っているかわからないと思うが、
俺もどうなってるかさっぱりわからない。
頭がどうにかなっとるんやないか?
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチな感覚でもねぇ……。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わってるかもしれねぇ……。
野外放出森の中、と言うわけで赤子です、きっと夢です、そうであってくれ。
どうもありがとうございました。
また来週おやすみなさい……。
イヤイヤ、マテマテ、ゲンジツダゾコレ、オチツクンダ、オレ
シンコキュウヲ、スルンダ
すーはぁーすーはぁー・・・
落ち着いた?
落ち着いたか?
落ち着いたわ。
あー、これは俗に言う転生かとか憑依か?
俺自身、神様に会った記憶はないんやが……。
ん?、そう言えば俺何しとったっけ?
ん?んーん?
目覚める前はー……。
電車とか飛行機とか乗った事がある記憶はあるな……?
でもなんで乗ったのかは分からん……。
車の運転方法は分かるな……。
でもなんで乗ろうと思ったかは分からん……。
平成を過ごして年号が変わって少し経ったぐらいの記憶はあるが……。
何してたかは全くわからん……。
っていうか俺、誰?。
思い出せん……。
ヤバイ、記憶があやふやなんやけど……。
年号が令和になって、そんぐらいまでの『知識』はあるんやけども、自分がどんな人生を送っとったか、すっぽり抜け落ちてる感じがする。
エピソード記憶とかいうやつが消えてんな?
うーむ、俺は誰だー?
うーん?
(数分後、全く思い出せないので、自分が誰なのかを、赤子は考えるのを止めた。)
ふむ、思い出せんからしゃーない。
自分のことは分からんが、歴史とか他の常識や知識は検索かけるみたいに何故か思い出せるし、後々思い出すだろ。
思い出せたらええなー(白目)。
そんなことよりも、この状況。
赤子一人でおくるみ包まれ巨木の麓、自分がちいせぇからか全てでっかく見えらァ。
とりあえず動かん首でキョロキョロするが、見える範囲は結構深そうな森やな。
俺は捨てられたのだろうか?
捨て子だとでも言うのだろうか……。
産まれてまもねぇ赤子でも、森の中に捨てるとかふつーに殺人やぞ。
いったいどないしたんや?
もしや俺の親は無遠慮に子をこさえたりする糞野郎か?
それとも、生活苦から自身を生かすためのやむを得なしか。
にしても山に置かんでもええやん……。
施設でも何でも入れといてくれや……。
まあ、でも、今身につけとるおくるみは結構ええ生地やし、周りも何かちゃんと整えとるし。
身体に怪我見たいなんは全く無いな。
更には俺が、見た感じ綺麗な桜の木の下に置かれとるから、やっぱ訳ありだったんかなぁ?
そういや桜の花が咲いとるってことは春か?
知らんけど。
まぁどちらにせよ現状を受け入れるしかねぇか……。
うむ、それにしても赤子ボデー、動けん。
やっとこさ首を動かしたり、ゆっくり手を出す程度やな。
にしてもこの手、骨殆どないんちゃうか?
ふにゃふにゃやぞ。
その辺の草や木の大きさから見積もってこの体は生後2~3ヶ月といったとこか?
ヤバイ、首もすわってねぇかも。
調子に乗って動かすと死ぬかも。
かもかもー(涙)
こんままじゃ獣に食われるが先か、餓死するんが先か、危機的状況にゃあ変わらんな……。
走るどころかハイハイも出来ん肉体なもんでな……。
んー、周りは、まじで森で道も無さそうやし、人なんて来るんか?。
とりあえず何かせんといかんか……。
てか俺、何でちらほら関西弁?で考えごとしとんやろ。
出身は関西やったんかな?
うーん、やっぱ思い出せん。
まぁええは。
とりあえず赤子でも声は出るのか?
誰かたすけて!
「おぎゃーー!!」
あー、アカン、声も出ん!
出ても泣き声?になるぁ……。
当たり前か、声帯発達してないし。
生後間もねぇ赤子ぼでー、半端ない……。
誰かに見つけてもらえるように、がんばって泣くしかないんかね~。
ここが何処だか知らんが、危ない獣が出んことを祈りつつな。
~約30分後~
ぜェぜェ(心の声)
ヤバイ、しんどい、腹減った、喉痛い、眠い。
このままじゃ寝る。
赤子の体力舐めてたわ……。
まぁ赤子やから体力は皆無やし仕方ないんやけど……。
にしても全然来んやん。
こんなとこにホンマに人くるんか?
周り完全に森やぞ。(何回目)
俺の近くは草が低くなってるから、この桜の木さえ見つけてもらったら、すぐ発見してくれると思うんやけどな……。
ガサガサ
ん?、なんか音したぞ?
人か!?、人がきたんか!?
ヌゥ(熊)
ぎやぁー!!
「おぎゃーー!!!!!」
熊だー!!!
ヤバイ、しかも大声で泣いてもた!
バレル~!!
「グルゥ?(ん?なんの音や?)グルゥ!(おぉ!ハゲ猿の赤子!)グルゥアー!!!(めしーー!)」
あっばれた、オワタ/(^o^)\。
人生オワタ\(^o^)/。
あぁ、短かったなぁ俺の人生・・・。
目が覚めてから一時間もたってないのに。
てか何か正確な時間がわかるぞ?
まあ、もう死ぬし意味ないか……。
怖いし目つぶっとこ……。
痛くありませんように……。
ターン
「ギョァアー!!!」
うお!?、なにごと!?
銃声?、熊撃たれた?
「グ、グルルゥ……」
でもまだ生きて。
ターン
「ぐぁぁ(飯くい、た、かっ、た・・・)」
ドスン……。
死んだ?
熊死んだわぁ、よかった……。
何とか生き延びたァ……。
神は見放しては無かったか……?
居るかは知らんけど。
撃たれて死んだってことは猟師か誰かいるのか?
山賊とか怖い人じゃ無ければええんやけど。
とにかく人がいるのか!
チャンス!
このチャンスを逃してなるものか!!
たすけて!、たーすーけーてー!!
「おぎゃーー!!おぎゃーーーー!!」
ガサガサ
「うん?、なぜこんな山奥で赤子の声がするのだ?」
人だ!!
やたらガタイのええ強面爺さんやけど……。
大丈夫か……?
あぁもう体力が……。
ぐぅ(眠り)。
「!赤子……?何故こんなところに……。人が通った痕跡は無かったはずだが……。熊の痕跡と被ったのか?これはもう少し熊を撃つのが遅れていたら食われていたかもしれぬな……。運がいい子だ、まぁ捨て子であるようだが……。見つけてしまっては見捨てて帰るのは心ぐるしい、しかたない。赤子など育てたことはないが、連れて帰るか。熊は・・・血抜きだけしてまた取りにこよう。少し待っておれ。すぐすむからな。」
今日のこそこそばなし!!
この赤子を襲った熊は、麓の村で3人の人間を食っていたそうで、村の目撃者から鬼熊と呼ばれて恐れられていたんだ!!
もしかしたら本当に鬼かもしれないと思った老人が急ぎで追ってきたそうだよ!
怖いね!
次回第2話
生きるために!
猟師に助けられた赤子は、見知らぬ地で育てられる。
果たして厳しい大自然の中で、赤子は生き残れることができるか。
お読みいただきありがとうございます
令和8年7月19日から再編集