~上階~
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな、さい、ご……めんな…………さ…………。」
2体目の鬼も斬った。
最後の表情は、鬼に有るまじき、後悔の念を抱きながら号泣している、うら若き女性であった。
この鬼も、もしかしたら、鬼に狂わされた被害者だったのやも……。
死体の化け物も、メイドの鬼を斬った時、ただの仏に戻れた様だ……。
せめて、この亡骸だけでも仏の元に還れますよう……。
南無阿弥陀仏……。
残るは、この館の主鬼。
部屋の奥に、先程まで無かった新たな階段が現れた。
主鬼が己で対処しようと思っているのか……。
見くびられたものだ……。
「宇髄殿、助太刀助かった、礼をいう。」
「なあに、たまたま拙者が近くに居たものでござるからな!いい運動になり申した!しかし、やはり肩が凝り申すな……。鬼に勝てても、歳には勝てぬでごさるな!はっはっは!」
何を言うか、先程の動きは現役と変わらなかった。
「はっはっは!それだけ元気ならばまだまだ現役でしょう…………。残すは後一体、リュウのこともある……。急がねばならんが……。」
メイドの鬼を倒したとはいえ、鬼の毒霧を吸い込んだのだ、無事かどうわからん。
駆けつけたい気持ちもあるが……。
やはり、入って来た扉は鍵が掛かっていた。
「やはり一方通行か……。」
「なるほど、この屋敷はカラクリ屋敷でござったか……。ですが煉獄殿、旅龍殿のことならば、手練の援軍を送り申した。恐らく大丈夫でござろう。拙者達は急ぎ、この館の主を斬りましょうぞ!」
おお!良かった!援軍は宇隨殿だけではなかったか!
「承知!宇隨殿、急ぎましょう!」
それでも猶予は残されていないだろう。
そういって、新たな階段を登り始めた。
~下階、錆兎~
俺は急ぎリュウに駆け寄った。
だが。
「グルル!グアアアア!」
「リュウ!?どうした!正気にもどれ!」
リュウはひどく暴れていた。
いや、被害者達には傷一つ負わせることなく、的確に鬼の首を落としていた。
だが様子がおかしい。
言葉は獣のような唸り声をあげていて、目は爬虫類のように鋭くなっている。
そして、何故か隊服から漏れる様に背中が光っているのだ。
まさか鬼に!?
いや、リュウから鬼の気配はしない!
むしろ、どこか神聖な気配すらある……。
俺が鱗滝先生の元で、あの山で感じていた大自然の神々の様に。
どういうことだ?
俺はリュウと鬼の間に無理やり割って入り、鬼の首を跳ねる。
だが他の鬼が湧き出す。
まるで霞を切っているようだ。
「リュウ!しっかりしろ!俺だ!」
「こっちもふえた!なんで?なんで?なん」
斬!
鬼は出現した端からリュウに斬られている。
俺が手を下すまでもなく。
とんでもない技量だ。
部屋の隅に出現したとしても、瞬間移動したかのように鬼に迫り、首を斬っている。
援軍の知らせからだいぶ時間も立つ。
今まで、ずっとこれを続けていたのか!?
「なんで!?なんで!?なんで!?なん…………で…………。」
鬼の出現が止まった!?
これだけここに居た鬼を斬っていたのだ、ここには先程の鬼の本体は居ないはず……。
もしや上階に本体が……。
それを炎柱様や援軍で一緒に来た隠が倒したのか?
すかさずリュウの肩を掴み揺らす。
リュウの刀は俺には振られない。
「リュウ!!鬼は消えた!俺だ!錆兎だ!しっかりしろ!」
「グルァ?サ、サビ、ト?さびと、錆兎じゃねーか!?元気してた……か?あれ?力が……。」
ガラン!
リュウが刀を落とす。
よくもこの長い間、こんな超重量刀を振り回していた事だ。
「おっと!やっと正気にもどったか!?大丈夫か?」
リュウは、正気に戻った瞬間脱力したみたいだ。
とつさに捕まえたが、その場に座り込んでしまった。
リュウの目も背中の光も、元に戻った。
どういうことだったんだ?
「はぁ、はぁ、あれ?いつの間に鬼が消えたんだ?てか、さっきまでの記憶が曖昧なんだが……。」
ふむ、やはり意識はあまり無いまま鬼を斬っていたのか……。
無茶しやがる。
「鬼はさっき消えた。恐らく、上階で分身の本体を斬ったのかもしれん。取り敢えずは安全な様だ……。それよりこれを飲め、血鬼術用の解毒薬だ。」
「ああそうか……。俺はマスクを取られて……。そういえば霧と触手が消えたな。すまんありがとう、ごっくん。」
最近新たに蝶屋敷と隊家医院(零華が新設した隊士家族用医院)協力の元作られた、即効性の対血鬼術用の薬だ。
効果があるはずだ。
「お前、ここに入ってからずっと無限に鬼を潰していたのだろう?いまは休め。」
「そうだな、つかれ…………。すまん、そうもいってられん。やつが……来る。」
ゴゴゴゴゴゴ
「な!?」
バチン!
地揺れと共に屋敷の光が消えた!?
なにがおこった!?
グワン!
!?光どころか場所がかわった!?
~上階~
何処までも続く階段。
その終点に二人はたどり着いた。
「ふぅ、かなり長かったな。いつの間にやら霧も消えた。一旦はこの覆面は外そう。」
「そう、でござるな……。ふぅ。やはり体力の衰えは感じるでござる……。ここが最後でござるかな?」
今まで通った扉の二倍はある大扉がそこにはあった。
「ここが最後である事を祈るばかりだ。早くこの任務を終えるとしよう。では、開けるぞ。」
その扉をくぐる。
中はまるで王族かと言うような豪華な装飾を施された室内。
その奥の玉座に主はいた。
「ちっ、使えねぇやつらだ。昔のよしみで住まわせてやったものを……。よく来やがったな、俺の屋敷へ、楽しんでいただけたかな?」
まるで西洋貴族のような服装。
茶髪で、ホウキあたまの青年と言った風貌の男が出迎えた。
だがこいつ
鬼である。
しかもその瞳には
下弦の参と……。
名を邪館(じゃかん)
という。
「お前がこの館の血鬼術の主だな。」
「あぁそうさ、名は邪館と言う。以後お見知り置きを……。いい館だろ?本当は綺麗な寝室や風呂もあるんだが……。オメーらがきちまったからなぁ、全部階段にしちまった。」
この鬼の血鬼術は、この屋敷を自由に作り替えることが出来る。
だが、増やす事は出来ない為、他の部屋を全て階段に作り替えたそうだ。
「御託はいい、首を差し出せ。さすれば、多少は良い来世に行けるかも知れんな。」
「いぃぜ?切ってみな?どうなるか知らんがな?はっは!」
「舐めた口を……。炎の呼吸、壱の型、不知火!」
爆発的な踏み込みで近づき、首を狙う。
斬!
ゴゴゴゴゴゴ
鬼の首が墜ちる。
と同時に地震がおきる。
「はははは!きりやがった!残念だったなぁ!これは分身だ!俺の体はこの屋敷自体!だがこの首はスイッチだ!全ての血鬼術を俺本体に納めるな!!」
光が消える。
光が戻った頃には。
『床が無かった。』
~下階~
光が戻ると、先ほどまで洋館の一室だった空間が、ただ広い、白い空間になっていた。
だが人の配置は変わっていない。
リュウの隣に錆兎が。
その少し後ろにカナエと被害者達が寝かされている。
(カナエが眠らせた。)
そして、上空に。
「うお?!おおおお!!!!?」
「おおおお!?おおおおーでござるー!!!?」
「!?やべぇ!?おじさん達が降ってきた!」
「はぁ?はーーぁあ!!?」
「え!な、何事ですか!?」
ものすごい勢いで落ちてくる二人。
このままでは、さすがの現柱と元柱の忍びでも、落下死してしまう高さだ!
「錆兎!ヤバい!技!いいな!」
「ちょっ!?わかった!」
「私も手伝う!」
「「助かる!」」
三人は最低限の意思疎通を行い、おじさん二人の落下ポイントへ行き、刀を峰にして構える。
やる事はひとつ。
おじさん二人の落下ダメージを減らす為だ。
「花の呼吸!弐の型!御影梅!」
「水の呼吸!陸の型!ねじれ渦!」
「天の呼吸!伍の型!天孫昇逝!」
説明しよう!
伍の型、天孫昇逝(てんそんしょうせい)とは!
刀の遠心力と、体のねじれを駆使し、地面すれすれを通して、空へとカチアゲる!
切り上げ技である!
今回は切り上げの最におこる風圧を利用しているのである!
そして上空のおじさん二人は!
「炎の呼吸!弐の型!登り炎天!」
「静の呼吸!弐の型!静寂天荒!」
説明しよう!弐の型、静寂天荒(せいじゃくてんこう)とは!
飛び上がった最に、まるで芝を刈るかのごとく、下方向へ多数の斬撃を加える技である!
着地の瞬間、全員が技を放ち、衝撃を和らげる。
ドサァ!×2
「間に合ったか!?」
「炎柱様!隠殿!」
「あわわ!大丈夫ですか?!」
落下した二人に三人は駆け寄る。
「あたたたた……、うむ、どうやら骨は折れて無いようだ……、宇隨殿は?」
「いたた……、流石にあの高さから落ちた事はないでござるなぁ、まあ、大丈夫のようでござる。」
さすがは現柱と元柱の忍び。
何とか重症を負わず着地出来たようだ。
「だ、大丈夫ならいいです。それより、放出していた血鬼術を体内に戻したメイン……主の鬼が近いです!恐らく下弦、その上位でしょう!」
(嘘でしょ?6階建てのマンションの屋上ぐらいの距離から落ちたのにほぼ無傷?化けもんかこの人ら……。)
リュウはそう思いながらも、警戒を解かず、気配のする方向に向く。
そして。
空間の奥から巨大な人形が近づいてくる。
体長は7mほど、ムキムキで腰に布きれをまいている。
そして手には棘付き金棒が握られていて、頭には長々と角が生えている。
その姿は、まさに、原始的な【大鬼】だった。
「はっはっは!さっきはよくも首を斬ってくれたなぁ!これからは俺がおもてなしだぁ!!しね!!」
かなり遠くで大鬼が縦に金棒を振り、地面に当たる。
当たった瞬間、衝撃波が真っ直ぐこちらへ向かってくる。
この馬車屋敷、最後の戦いが始まる。
今日の明治こそこそばなし!
リュウが守った被害達は、リュウ達が来なければメイド鬼に殺されていたんだ!
原作(独自設定)では、どちらにせよ、殺されちゃうんだけど、今回は援軍がきたから、ちゃんと助かったんだ!
よかったね!
次回第8話
烈炎の咆哮
そして下弦の鬼との戦いの幕が降りる。
お読みいただきありがとうございます。