第4話
モノノフの余生
~爺さん~
25年前
ワシはある戦で重症を負って死にかけた。
仲間もワシも自身も、身も心も諦めるほどの重症。
だが、何故かワシは生き残った。
片目と片手と片足を失いながら。
数ヶ月寝たきりだったが、体は治った。
だが、いかんせん目と手足がないのがツラかった。
寝たきり衰えた手足は、鍛練で動くようになり、無くなった足には義足をはめたが、体の重心が変わって、片目が見えないことで、距離感も変わってしまい、思うように体が動かなかった。
このズレを直すのにまた時間がかかる、当時49歳だったワシは決断した。
ワシは長年世話になった仲間に別れを告げた。
仲間は戦いが無理でも指導者として残ってくれとワシを引き留めようとしたが、ワシ自身も説明が得意ではないことを承知していたし、ワシの武技が特殊過ぎたため、後継できないことは分かっていた。
そしてワシは一人で人里離れた山にはいった。
これから先ワシは一人で生き、一人で死ぬ、そう思って日々過ごしてきた。
それから15年後
64歳になったワシはしぶとく生きていた。
元々体が強かったためか、はたまた神の思し召しか山での暮らしは悪くなかった。
そんなある日、いつものように猟銃一丁携えて山へ狩りに出た。
その日は山は静かだった。
まるで獣が逃げたような、注意深く山を見ると木に熊の痕跡があった。
大きい、この痕跡の他にも足跡を見つけたことで、大体の大きさがわかった。
この熊は、近年山の麓の村で、人を食った熊と当たりを着け、これ以上の被害を押さえるため、そして食いぶちのために後を着けた。
熊はいた、大きな山桜の麓、こちらに背を向けて。
ワシは一発撃った。
熊は悲鳴をあげて振り向いた。
そこへもう一発、頭を撃ち抜いた。
これで食われた物も報われよう。
そうおもって近づくと。
「おぎゃーー!!」
赤子の声が聞こえた。
何故こんな山奥に何故?
山桜の下に向かうと良質なおくるみにくるまれた赤子がいた。
赤子はワシの顔を見ると安心したのかすぐに眠ってしまった。
赤子が拾い上げたあと、周りを良く観察した。
ここに赤子が置かれていたということは、ここまで誰かが来たはずだ。
しかも、赤子の状態から見て、つい今し方捨てられたはずだ。
物は動けば痕跡が残る。
足跡や、けもの道など。
だが不思議なことに、そのような痕跡は熊がやってきたであろう、けもの道以外無かった。
これも何かの縁かと、この子を育てることにした。
ワシ自身、赤子を育てたことはない。
だが見捨てる訳には絶対にいかなかった。
仲間との約束だったから。
ワシは必死で赤子を育てた。
赤子のおくるみには名前が刻めれていた。
名は天龍寺旅龍。
あまり見たことのない不思議な名前だった。
旅龍(以下リュウ)が赤子だったころ、助かったのは、赤子としては、とてもおとなしく、従順だったことだ。
たまに降りる麓の村での婦人に話を聞くと、普通の赤子はもっと大変なようで、この子は少し、いや、かなり異常なほどおとなしかったらしい。
まぁ、ワシは楽だからよいのだが。
たしかに、こちらの会話を理解しているふしがあり、この子の瞳にはどこか知性を持った瞳をしている。
まだ生まれ手間もない赤子だと言うのに。
それから月日がたつのが早い。
おくるみにくるまれた赤子が両足でたち、歩き、手を使い、片言ながら言葉を話すようになった。
不思議だったことは、それらをワシが教えることなく、旅龍一人で全てを成し遂げたことだ。
言葉もそうだ。
ワシが使ったこのない言葉を何故か使う。
どこで覚えたのか聞くのだが、リュウは首をかしげるばかりで、本人もわからないようだ。
本人も解らんものを考えてもしかたない。
何もせず勝手に覚えるならワシは楽だしな。
リュウが歩けるようになってからと言うもの。
目を放した隙にあちこちいってしまい、肝を冷やした。
中でもワシが猟に行っている隙に山の麓の村まで一人で行かれた時には全速力で追いかけた。
もし日がくれ、夜になりでもしたら・・・
一人歩きする子供など、奴らのいい獲物だろう。
リュウを連れ帰り、しかりつけて話を聞くと、ワシを気づかって力をつけて手伝いたいと言い出した。
ワシは悩んだ。
もし力をつければ、あれと関わるようになるかもしれん。
ワシの人生のほとんどは血にまみれた戦いの人生だった。
この子にそんなの人生は歩んでほしくない、そう思ったが、この子は土下座までして頼んできた。
ワシはどうせ山で生活すのだから、基本的なことぐらいは教えてもかまわんか、と無理やり納得し、了承した。
それから基本的な鍛練、山での歩き方、獣のや山菜の見分け方等、付きっきりで教えた。
ワシの教えは、やはり難解なようで、リュウは何度も首をかしげながらも真似し、驚くべき理解力をもって吸収していった。
ワシは嬉しかった。
何度か他の者にも教えをこわれたことがあったが、全ての者が挫折し、離れていった。
この子は違う、もしかして・・・そう思った。
だが、まだ剣術だけは教えなかった。
この時代、刀を持つのはとある者たちと警官隊と軍ぐらい。
生活するだけならせいぜい解体用の小刀と猟銃ぐらいでことたりる。
そして、ワシの剣術を覚えるには、そもそも鍛練が足りない。
剣術を覚えるのはそれからで良いだろう。
そう思った。
また月日がたった。
リュウを拾ってから10年。
リュウは、あれからワシの厳しい鍛練をつづけ、9にしては、たくましくなった。
もう剣術以外には教えることはない、そう思い、山での狩りを許可した。
一人での狩りを通じ学べることがあるだろう。
そして大物狩って帰ったとき・・・。
1年がたち、朝から一人で狩りに出ていたリュウが
帰って来た。
10になったリュウは、ヤマドリに山ウサギ、そして鹿、をとってきたようだ。
それだけとれれば、もう立派な狩人だ。
だがリュウはさらにこう告げた。
リュウ「あ、爺さんごめん、帰りに熊も狩ったんやけど鹿担いでたからまだ置いてきたんよ。一緒に取りにいってくんない?大きくってさぁ、多分俺一人じゃまだ無理だと思う」
ついにこの日がきた。
直ぐに二人で山に入り、狩った時の状況を聞いた。
この子は10町(約1㎞90m)も離れた場所の気配を感じとり、9町(約1㎞)はなれた場所から、木と木の間わずか5分(1.5㎝)の隙間から見える熊の目玉を真っ正面から撃ち抜いていた。
この状況からして熊は止まっていたわけではないだろう。
恐るべき視力と集中力、そして、それを成す洗練された技。
これはもう、射撃に関しては全盛期のワシを越えている。
まだ、かろうじて体力だけは勝っているが、それも成長とともにすぐに追い抜くだろう。
ワシは決断した。
「あと、帰ったら少々話がある」
~家~
爺さん「リュウ、お前にワシの剣術を教える」
リュウ「!!本当か!爺さん!」
爺さん「ああ、今のお前ならワシの剣術を覚え、扱えるだろう」
リュウ「やった!ありがとう爺さん!」
爺さん「だが、ワシの剣術は特殊だ、それ専用の厳しい鍛練もしなければならない、万が一、命も・・・そしてワシは、わかっておろうが、教えるのが苦手だ、それでも覚えるか?」
リュウ「はい!爺さん、いえ師匠、つがもない弟子でありますが、精一杯覚えさせていただきます!」
爺さん「よせ、いつも通りの言葉でよい、だが厳しさは変わらんからな」
今日の明治こそこそばなし!!
爺さんは、リュウを育てだしてから、毎日日記をつけてるのだけども。
その内容は1割生活の内容。
残り9割は、リュウがいかに素晴らしいかをつづったポエム的な何かにかわりはててるらしいよ!!
黒歴史になるね!
次回第5話
今生世界の理
幸せだった時間は終わりを告げ、今本当の歴史が幕を上げる
第4話
モノノフの余生
終わり
お読みいただき、ありがとうございました