もう既に破綻の予感。
怪異調停員とは。
全国各地で起こる様々な事件・事故の中で、特に人ならざる者――怪異によって引き起こされたものを調査し、平定する者たち。
大体が荒事になる、珍しいお仕事である。
また、怪異調停員として働く「人間」は非常に少ない、というのも特徴だ。
そんな怪異調停員の一員である花子は、休暇を潰されイライラした心持ちで、休暇を潰した原因を尾行している。
調査対象、アクロバティックサラサラ、以下アクサラ。
人間離れした挙動を以て人に害をなし、時に人を死に追いやる怪異。
身の丈、最小で2メートル以上。最大で8メートルという証言も有るが、信憑性に難あり。
「ココ最近でも、群を抜いていい加減な調査資料だね……」
アクサラの動向を目で追いながら花子は内容的にも薄い調査資料にちらりと目を走らせる。
尾行中に対象から目を離すのは如何な物かとは、野暮な言い草である。
こちとら人ならぬ身の怪異育ち、あたら目立つ妖気を見失うなど有り得ない事なのだ。
おまけに、ここは人通りの少ない運河沿いの堤防上。
其処をフラフラ歩く2メートル以上の高身長、長い髪に真っ赤なコートの女など、目立つことこの上ない。
妖気云々を抜きにして、そうそう見失う事など無いだろう。
「それにしても、ホント……色以外は、八尺の姉御みたいな後ろ姿だな。いや、服の趣味も違うか……? でも、姉御だったら白コートとか似合いそうだな」
どうでも良い事を考えながらも、対象の背を追い続ける。
のどかな昼下がり。空は何処までも青い。
あー。こんな日は部屋でポテチ食いながらゴロゴロしててェな……。
思う間に、アクサラは防波堤沿いにある、ちょっとした広場に踏み入る。
幾ら何でも、
今日は金曜日。
平日とは言え運河の向こうは団地群、すぐそこには最近建ったばかりの巨大マンション。
こういった広場ってのは、ご近所の奥さん達の憩いのスペースとかじゃないのか。
運河沿い過ぎてお子様から目を離せないから不人気なのか。
そもそも乳幼児から目を離そうとするんじゃない。
あまりにも尾行対象が隙だらけ過ぎて、思考がとっ散らかる。
花子さんも、この仕事はそこそこ長い。
だから、多少気を散らしたところで、尾行対象を見失う様なヘマはしない。
筈だった。
「……おいおいおいおい」
思わず髪を掻き回しながら、舌打ちを放つ。
まさかのヘマである。
運河沿いの歩道に沿って作られた、見通しも何も有ったもんじゃないほど開けたその空間で。
身長2メートル以上の目立つことこの上ない化け物を、完全に見失ってしまう。
神出鬼没。
調査資料に有ったその文言は、狐狸妖怪都市伝説界隈では有る種、必須のアビリティだ。
やろうと思えば、花子でも出来る。
だからこそ警戒していたし、見失わない自信なら十分に有った。
ぞわりと、背筋が粟立つ。
私が見逃す? ハッ、面白いじゃないのさ。
額に汗が浮かぶのを自覚しながら、強がり気味に内心で呟く。
だが、言うほど余裕もない。
急いで神経を集中させ、付近の妖気の感知に努めようとする。
「お嬢ちゃん……や、お姉ちゃんかな? 不思議なヒトだね、私になんか用なのかな?」
本日2度めの――厳密には何度目か数えていないが――ヘマは、尾行対象に気づかれるという挽回の仕様がない程のミスで。
気持ちのままに舌打ちしながら、花子は2メートルを超える大女の、
短いのは、次の話のインパクトに繋げるための
はい嘘です、思いつかないので区切って逃げただけです。