綺麗だなぁ…綺麗だなぁ…えへへへへへ 作:キリツ峰山
・『騎士の鎧シリーズ』
最初に着てた防具
硬めだけどあんまり効果なかった
結構重たい
視界が悪くて好きじゃない
あと重たい
きれいなそら
「━━━━━ぉぉぉ…?」
空を見上げていたら、いつの間にか寝ていたらしい
動きたくないなぁなんて思って目を開ければ、視界が真っ白
しばらくしたら目が慣れて、入ってくるのは綺麗な青空
「…お〜…」
生まれて初めて見た、青空
ふわふわとどこからかやってきた白い雲が太陽を遮り、飽きたとでも言わんばかりにまたどこかへと跳んで行く
太陽はサンサンとこちらを照り付け続けるけれど、不快な暑さはない
ひらひらと、どこからか白い蝶々が飛んできた
花を探していたのだろうか?何を思ったか私の兜の先端に止まってしまった
スリットの隙間から、蝶々と目が合った気がする
「……私は甘くないぞ〜」
私が言えば、蝶々は飛び去って行った
私が甘くないと気付いたからかだろうか?
ふと辺りを嗅げば、焦げ臭い臭いや灰の臭い、血の臭いではなく花や植物の匂いがした
目一杯息を吸えば抜けていた身体の力がさらに抜ける
息を吐き出すと、これまた更に身体の力は抜ける
「…まるで底の空いた瓶だぁ」
はふぅ、と息を着けば兜の中には自分の血の臭いではなく和らい匂いがした
「……きれいなそらだなぁ…」
あぁ、私。このままでいい…
「いや、なんだこいつ…」
「んん…?」
頭上で声がした
ゆっくりこちらに目を向ければ、なんとも禍々しい装備をして大剣を担いだ騎士がいた
「…おぉ〜、貴公。珍しい装備と大剣だなぁ。ところで、空を見給え。あそこの雲、なにに見える?私はどうしてもあれが結晶トカゲに見えるのだよ」
「お、おう…いや、それよりも何故逃げない。」
「動きたくないからに決まっているだろう…?こうして横になってみろ…」
「…こうか?」
なんだ、中々ノリがいいな、この騎士
「そう…そのまま目を閉じて、息を目一杯吸う」
「…すぅぅぅ…」
騎士は頭を押えながら息を吸った
「そしたら、溜め込んだものを吐き出すのだ」
「はぁぁぁ…」
そうしてどこか重い息が吐き出された
それが吐き出されたのなら、今はきっと軽いはずだ
「…どうだね?」
「……楽になった、気はするな。動きたくなくなるほどではないが…リラックスというのも大事だな。俺はもう行こう。それと、この森には危険なモンスターがいる。日没前に帰ることを勧めるぞ。…ではな」
「…おぉ〜、働き熱心だなぁ。また会おうではないか〜」
そうして働き熱心な騎士は馬に跨り、どこかへ行ってしまった
…そうかぁ、ここも、モンスターがいるのか…
「まぁ、いいかぁ…もう少し、こうしていよう…」
私の身体に止まった色彩豊かな鳥を驚かせないようにしながら、私はまた空を見た
あぁ、綺麗だなぁ…
「…えへへへへへ……」