我が名は、竜狩りの鎧   作:マリア様良いよね

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理解は不要

相容れぬならば、争うのみ

本能のまま、貪り奪え




灰の意思

 

 

 

柳洞寺境内に入った直後、目的地方角から戦闘音と思わしき破砕音が聞こえた。

 

 

「今の音は……?」

 

「自然に聞こえる音と振動にしちゃあ不自然過ぎる———気を引き締めな、妙な気配がする。」

 

「妙な気配、ですか?」

 

「あぁ、どことなく竜狩りに近い気配がな。存外知り合いだったりするかもしれねぇぞ?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

口には出さなかったが、キャスターからすれば竜狩りも未知と言える。存在しない記憶を思い出そうとする度に、体が痛むのは恐らく本能が覚えているからだろう。

この違和感をマシュ達にも聞いてはみたが、何も感じなかったらしい。あくまで推測の域を出ないが、神秘がより濃い時代を駆け抜けた者程、この違和感を感じとりやすいのかもしれない。

 

 

「………このソウル……まさか。」

 

「……竜狩り?」

 

「………有り得るのか?いや、間違う筈もない、これ程濃密なソウルは…」

 

「ど、どうしたの!?」

 

 

突然、大斧と大盾を取り出し戦闘態勢をとった竜狩りの鎧に思わず困惑する。

 

「……備えろ。アレは、敵対する者に一切の容赦はしないだろう。」

 

「……()()、とは?」

 

「…………」

 

 

———火継の儀式を告げる鐘が響く時

薪の王を玉座へ連れ戻す使命を賜った不死の者

目的の為ならば、残酷に、冷徹に、非情にもなれる

 

幾度の死を重ねようとも、心折れることなく抗う者

 

運命を覆し、異なる可能性を生み出す者

 

世界を滅ぼ(救い)し、神への叛逆者であり

 

然れど、微かに残った人間性は終ぞ捨てなかった者

 

 

 

「………火の無い灰」

 

 

人の時代、その黎明を築いた英雄だ

 

 

 

 

———————————————————————

 

 

 

 

「……………」

 

『……………』

 

 

カルデア一行が洞窟入り口付近まで来ると。音の中心と思わしき場には、確かにナニカがいた。

 

 

「……………(サクッ、スッ)」

 

「………なぁ、アンタ。」

 

 

全身を覆うように赤い光に包まれた、襤褸を纏った騎士のようなナニカが。

 

 

「……………(サクッ、スッ)」

 

「……目が合ったって事は、確かに話は聞こえてるよな。もう一度聞くぜ?さっきから、なにやってんだ?」

 

 

敵対してくる者には、一切の容赦はしない者。

勝つ為には誇りも捨てる、貪欲な者。

もてる全てを以て、己の道を進む者。

 

それが、火の無い灰だ。

 

 

「………………(サクッ、スッ)」

 

「なんで槍で何も無い壁を刺しては盾構えてんだ。爆弾処理班かナニカかテメェは。」

 

 

その当の本人は現在。目の前で原始的な爆弾処理にも見える、おかしな行動をとっていた。

 

 

「……………(サクッ、スッ)」

 

「……なんというか、地味ね。」

 

「えっと、竜狩りさん?」

 

「………なんだ、マシュ。」

 

「………あの方は、お知り合いで「身に覚えはない」そ、そうですか。」

 

「…………………………(サクッ……スッ)」

 

 

騎士兜(フルフェイス)に覆われ、表情が全く見えていないにも関わらず。何処か悲しそうに槍を構え直した火の無い灰は、今度は地面を刺して盾を構え———

 

———カチリ

 

 

「——————!」

 

 

———罠が発動し、爆発した

 

 

………シャドゥアーチャーを倒したは良いものの。

投影魔術により複製された、対英霊用地雷が至る所に仕込まれていた。倒した身として、これを放置するのもどうかと考えた末に、黙々と処理していた所に丁度鉢合わせた訳である。

 

余談だが、あと5分もしない内に罠は自然消滅していた。魔力源であるアーチャーが消滅したので、当然ではある。

 

 

「トラップがあるから、1人で処理してたんだね。」

 

「…………!(コクン)」

 

 

藤丸の何気ない呟きに、何処か嬉しそうに頷いた火の無い灰。

まだ出会って数分も経ってないが、なんとなく、藤丸は察した。

 

 

———あ、悪い人じゃないなこの人

 

 

 

———————————————————————

 

 

 

おかしな行動(地雷処理)の理由が分かったところで、騎士は名乗る。

 

 

「………火の無い灰。(アッシュ)、とでも………話すのは、苦手だ。」

 

「さっきの見りゃ誰でもわかるわ。」

 

 

話しかけられ気付いていながらも、黙々と処理を続けていたのだから当たり前だ。

 

 

「…………………許せ。」

 

「別に責めてねぇから安心しろよ。むしろ、アーチャーの野郎を仕留めたついでに道の整備までしてたときた。文句なんざある訳ないさね。」

 

「……………………感謝、する。」

 

 

人との交流が余りにも短いが故、関わり方が今一つ分からない灰は。戸惑いながらも気持ちだけは精一杯伝えようと努力する。

どう見てもコミュ障だが、時間が解決する……かもしれない。

 

 

「全身鎧にも関わらず、感情がわかりやすいな。」

 

「「「鎧の貴方(アンタ)が言うな。」」」

 

「竜狩りさんだけは、(アッシュ)さんの事を言えないかと。」

 

「……………同意。」

 

 

むしろ、意思のある鎧の方がおかしいのだ。

 

 

「それもそうか。」

 

「素直ね!?」

 

 

純粋なだけかもしれない。

 

 

「……………」

 

「……?」

 

 

困惑していた雰囲気が突然消え、火の無い灰は竜狩りの鎧をじっと見つめ出した。

首を傾げ、疑念を感じる視線と共に。

 

 

「どうかしたのか?」

 

「…………………何故、話せる?」

 

「………私が聞きたいくらいだ。」

 

 

確かに気になることではある。

鎧が何故話せるのか。元から当の本人ですら分からないが故に、皆そういうモノなのだと納得はしていたが、灰は違う。

 

 

「……………1度目は、傀儡だった。」

 

「今は意識があるな。」

 

 

謎があるならば、それを白日のもとに晒したいと。真実を追求し続けるのが灰だ。

 

 

「……………2度目は、暴走だった。」

 

「……ん?」

 

「……………輪の都に於いて、貴公は狩りの記憶に支配され……」

 

「………待て。2度目とは、何の話だ?()()2()()()()()()()()()()。」

 

「……………」

 

 

情報が、食い違う。

記録が、入り交じる。

 

 

「貴公は、何を言っている?今が2度目の再開だろう。悠久の時間を彷徨う中で、記憶違いでも起こしたのか?」

 

「……………(記憶の齟齬。或いは事象の改竄)………」

 

「………火の無い灰、貴公は何を知って———」

 

「———雑談はここまでにしとこうや、お二人さん?」

 

 

2人の間に割り込むように、キャスターが告げる。

 

 

「もうすぐこの特異点の大将(元凶)の目の前だ。気持ち切り替えな。」

 

「……むう。」

 

「……………」

 

「おっと。雑談終了と言っといてなんだが、1つ聞き忘れてたぜ。———火の無い灰、アンタの目的はなんだ?」

 

 

———客観的に、第三者目線だったからこそ。或いはよく観察していたからこそ。藤丸はこの時、違和感を感じ取れた

 

 

「……………決まっているだろう。」

 

 

火の無い灰が

 

 

「———聖杯を、回収する。」

 

 

()()()()()()()()

 

 

 

 

 

———————————————————————

 

 

 

 

 

己の名は、忘れた

名乗る記号(名前)など、火の無い灰で良い

今はもう、他の灰は記憶の中でしか存在しない

個体として、ただ1人しかいないのだから、己の名として使わせてもらう

 

灰は1度、残り火としての役目を終えた

神の時代は終焉を迎え、人の時代の黎明となる

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

終焉を受け入れたにも関わらず、新たな始まりが訪れるとは思いもよらなかった

 

託した想いは踏み躙られ、人の時代は滅びの危機に瀕する

 

()が目を覚ました時、目に映るのは見渡す限りの火の海だった

生きとし生ける凡百の生命体は、跡形もなく焼き尽くされた

断じて、断じて許容など出来るものか

この惨劇を生み出した元凶を滅ぼすべく、旅をした

 

()()()()と、名乗る者達と

 

 

———今でも鮮明に思い出せる

滅ぼす者と抗う者

双方が織り成す、輝きの旅路を

 

 

『卑王鉄槌———旭光は反転する』

『黄金の夢から覚め、揺籃から解き放たれよ!』

『命は壊さない———その文明を粉砕する』

『嵐の王、亡霊の群れ…嵐の夜(ワイルドハント)の始まりだ!』

『突き立て、喰らえ!13の牙!』

『我が力の限り、人々の幸福を導かん!』

『聖槍、抜錨』

『この一撃を以て訣別の儀としよう!』

 

 

英雄が、己の逸話(誇り)を掲げ

人類を救うべく人理修復を成す

 

 

『この星は転生する!

あらゆる生命は過去になる!』

 

 

そして、7つの試練を超えた先に

憐憫の獣と殺し合った

 

 

———結果だけ述べるなら、確かに獣は屠った

1年という短いようで、とても長い旅路の果てに

ようやく、ささやかな安らぎを得ることが出来た

 

 

だが、束の間の休息を得て間もなく

 

この星は、滅びた

 

地球上に存在する全ての生命体が、滅びた

一切抵抗も許されず

あたり前の日常は、再び崩壊したのだ

 

()は、何も出来なかった

否、正確には……()()()()()()()()()()()

異変に気付いた時には、既に手遅れだったのだ

 

 

『玉座は既に埋まっている———王の簒奪者には、消えて頂こう』

 

 

とある兄弟王に、()はまんまと嵌められた

問答無用に転移させられた挙句———

 

 

気が付けば、また火の海を呆然と見つめていた

 

 

因果なもので、結末を変えるべく()()旅を続けなければならないらしい

それは構わん

何も出来ぬまま、相手の思惑に嵌められるのは性にあわない

幾らでも、やり直してやろう

 

 

 

 

だが、早々に想定外な事が起こった

影の槍兵を屠り、探索を続けていると。懐かしい(奇妙な)鎧を目にしたのである

 

 

 

 

「………………………竜狩りの鎧、だと?」

 

 

 

何故、意思がある?

何故、███のソウルを宿している?

何故、███が存在している?

 

 

そもそも、何故ここ(特異点F)に居る?

 

 

本当に想定外だ。白状すると、かなり驚愕(ビックリ)した

 

 

「………………フッ」

 

 

()()()

 

結末は、必ず変えてみせる

それはそれとして、竜狩りの鎧(歪な鎧)が居ることでどのような物語になるのか、興味が湧いた

 

故に。盤面を眺める者ではなく、1人の不死として

 

 

勝手ながら、期待しているぞ

竜狩りの英雄

 

 

 

 

 

 

 

 

……………ところで、一方的に相手のことを知っている時、どのように接すれば良いのだろうか?

それに、旅の目的は語れる訳もない。嘘をつかざるを得なくなる。

これでは騙された時の常套手段、「内心でパッチ(嘘吐き)を罵る」が出来なくなる……

いや、騙してる訳じゃない……害する訳でもないのだが……

嗚呼……他人と交流する際の正解が、わからない

……当たり障りのないように、話せたら良いのだが

 







灰の人「…………(嘘付いちまった)」
パッチ「よ う こ そ 此 方 側 へ」
灰の人「( •᷄⌓•᷅ )」

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